「享受」という言葉はあまり耳にすることがなく、正しい意味と使い方を知らない人が多いのではないでしょうか。今回は、「享受」という言葉の意味と使い方を例文付きで解説します。また、「享受」の敬語表現や類語、英語表現なども合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「享受」は、「きょうじゅ」と読みます。 「享」は、音読みで「キョウ」とよみ、「受」も音読みで「ジュ」と読みます。
「享受」の意味は「受け取って自分のものにし味わい楽しむこと」です。 「享」には、「うける・うけいれる」という意味があり、「受」にも「うける・受け入れる」という意味があります。 さらに、「享」には「まつる」という意味もあります。 「享受」には「相手にたてまつられているものを受け取る」という意味もあります。 現在では「享受」は、「自分の思う通りに動かし、利益を自分のものにする」という意味や、「芸術を味わい楽しむ」といった意味でも使用されています。 ちなみに、”享受する内容”は、恩恵やメリットの他にも、自由や安全性、自然の恵みなど多岐に渡ります。
「享受」は、
といった言い回しで使用することができます。 「享受する」は、物理的な利益から精神的に優れたものまで幅広くポジティブなものを受け取り、楽しむ時に使える表現です。 その他の言い回しとしては、
などがあります。 「自然の恵み」など形のあるなしに関わらず、「受け取るすべてを自分のものにする」という意味合いがあります。 どちらかと言えば、「食べ物を享受した」といった表現よりも、精神的なものや権利に使用されることが多い表現であると言えます。
例文
「享受させる」は、「受け取る」という意味の「享受」+「使役」の意味がある「させる」という組み合わせでできている表現です。 したがって、「享受させる」は、「相手に受け取らせる」ということなので「与える」という意味になります。 相手に何かを受け取らせたり、相手が楽しめるようなこと、相手が便利だと思うことを、こちらから提供した場合は、「享受させる」という表現を使用することができます。
例文
「享受しろ」は、最近よくSNSなどでもよく見かけるネット用語です。 「〜する」の命令形である「しろ」を使用して、「享受」という言葉を命令形にしています。 簡単に言えば、「受け取って、楽しめ」「受け取って自分のものにしろ」という意味です。 例えば、イラストを書くのがとても上手な人が、人気アニメのキャラクターを書いてツイートをする場合に、「享受しろ」と書いてツイートをするといった感じです。 そのキャラクターやアニメのファンに「与える」という意味で使用されているということが考えられます。 同じようにレアな画像を添付したり、情報を提供するような場合に「享受しろ」と命令形で使用する人が多いです。
例文
「享受」は法律用語でもあります。 代表的なものを言えば、日本国憲法の中にも、「享受」を含む一文があります。 日本国憲法では、「福利は国民がこれを享受する」とし、福利についての権利を「享受」という言葉を使用して書いています。 「福利」とは「幸福と利益」のことで、国民は幸福と利益を享受する権利があるということを意味しています。
「享受」は「自然や国、神などから恵まれたもの、保証されたものをありがたく受け取り、味わい楽しむ」という意味の言葉なので、丁寧な日本語ですが、文法上は敬語ではありません。 よって、「享受」を敬語変換する場合は、敬語の補助動詞と組み合わせるか他の敬語に言い換える必要があります。
「享受」は、「享受します」「享受しています」だと丁寧語になります。 「享受します」は、「享受」に「〜する」の丁寧語である「ます」をつけています。 「享受いたします」は、「享受」に「して」という動作や状態が継続していることを表す補助動詞に「いる」の丁寧語である「ます」をつけた表現です。 「享受します」「享受しています」は、丁寧語なので使用しても失礼にはあたりませんが、丁寧に言っているだけであって、尊敬語や謙譲語ではないため、敬意はやや低くなります。 かしこまった場面ではしっかりと敬意をしめした表現にする必要がありますが、日頃の会話では「享受します」「享受しています」で十分でしょう。
例文
「享受」は、「享受いたします」だと謙譲表現になり、より丁寧な表現になります。 「する」の謙譲語「いたす」の語尾に丁寧語の「ます」が付いた言葉です。 謙譲語とは、自分のことをへりくだった言い方をすることで相手に敬意を示すことができる敬語表現です。 丁寧語である「享受します」「享受しています」よりも、相手に敬意を示したい場合は、「享受いたします」と使用します。
例文
「享受させていただく」という表現は、謙譲語を使用した非常に丁寧な敬語であるように感じますが、これは間違った敬語の使い方となります。 「させていただく」という表現自体は、使役の助動詞「させて」+「もらう」の謙譲語「いただく」で成り立っているので、間違いではありません。 しかし、「〜させていただく」は「相手に許可を得て、ある行為を遠慮しながらすること」を意味しますので、相手からの許可が必要な場面で使用する謙譲語です。 したがって、相手から与えてくれているものに対して使用する「享受」を「〜させていただく」という謙譲語と一緒に使うのは不自然であると言えるのです。
「受け取る」を意味する謙譲語は「拝受(はいじゅ)」になります。 「拝受」は、「受けることをへりくだって言う語」であるため、目上の人から何かを受け取る時にビジネスシーンで使う熟語です。 「拝」には拝んだり、おじきする、という意味合いがあり、目上の人に対する敬意を示す言葉です。それに「受け取る」を意味する「受」という漢字が組み合わさって「拝受」となっています。 しかし、「拝受」は、「享受」とは違い、「自然の恵みを拝受する」などと精神的なものに対して使うことはできません。 例えばクライアントや取引先から「あの資料、届きましたか」という連絡に対して「はい、拝受しました」などと返事をする場面などで使用することができる言葉です。
例文
「甘受」は「かんじゅ」と読みます。 「甘受」の意味は、「甘んじて受け入れること」です。 「受け取る・受け入れる」という意味合いとしては、「享受」と同じ意味をもつ言葉であると言えます。 しかし「甘受」は、ありがたく受け取ったり、受け入れたりするわけではなく「やむおえず、甘んじて受け入れる」という意味で使用される言葉です。 つまり、簡単い言えば「仕方なく」受け入れているのです。 「享受」には「仕方なく」という意味はありませんので、そこが「享受」と「甘受」の大きな違いであると言えるでしょう。
例文
「教授」の意味は、「学術、技芸などを教えること」で、養護・訓練とならぶ教育上の基本的な活動、作用を「教授」と言います。 ビジネスシーンでは「ご教授」の形でよく使います。 この場合の「教授」についている接頭語「ご」は尊敬を表す敬語です。 「ご教授」は「ご教授ください」といったような使い方をし、学術や芸術といった楽器やスポーツなどの長期間に渡って、訓練や鍛練が必要なものを継続的に教えて欲しいといった場合に使用する言葉です。
例文
「享受」に最も近い意味合いをもつ熟語は「謳歌」です。 「謳歌」は「おうか」と読みます。 「謳歌」の意味は「恵まれた境遇を存分に楽しむ」です。 「謳歌」の元々の意味は「声をそろえて歌うこと」で、そこから転じて「声をそろえて褒め称えること」という意味になりました。 さらにそこから転じて、現在では、与えられた環境を楽しむというニュアンスで使用される言葉になっています。 「〜を謳歌する」という言い回しで使用されることが多いです。
例文
「享楽」は「きょうらく」と読みます。 「享楽」の意味は、「思いのままに快楽を味わうこと」です。 楽しいという感情を「享楽」という言葉を使用して表現することができます。
例文
「受益」は「じゅえき」と読みます。 「受益」の意味は「利益を受けること」です。 「享受」も、紹介したように「利益を受け取る」という意味で「利益享受」という表現をされることがあるので、類語になります。 しかし、「受益」の場合、「思うままに」というニュアンスは含まれないので、「享受」とはニュアンスの違いがあると言えるでしょう。
例文
「逸楽」は、「いつらく」と読みます。 「逸楽」の意味は、「気のままに遊び楽しむこと」です。 不健全なことも含め、やりたいように楽しむ、豪遊するという意味で使用される表現なので、「享受」とは違ったニュアンスになりますが、思いのままに楽しむという点でいえば類語にあたると言えるでしょう。
例文
「受領」は「じゅりょう」と読みます。 「受領」の意味は、「(正式に)お金などの重要な物を受け取ること」です。 「受領」の定義を詳細に書くと「他人から正式に物または金を受け取り、自分の中におさめしまうこと」となります。 「与えられたものを受け取る」という意味でいえば、「享受」の類語であるといえますが、「受領」は「金品」など重要なものに限られているという点と、「味わい楽しむ」という意味が含まれていないという点で、「享受」とは違いがあります。
例文
「受け取る」は「自分の元へ来たものや届いたものを手に取る」という意味です。 また、「人の言動をある意味として解釈する」といった意味もあります。たとえば「これは彼の悪意なのだと受け取った」などです。 「受け取る」は「受領」よりも広い範囲で使うことができます。 ちなみに、「受取(うけとり)」の場合は「お金や品物などを受け取った証拠としてに渡す書付け」のことです。要するに領収証のことを表しています。
例文
「提供」は、「ていきょう」と読みます。 「提供」の意味は「他者の役に立てるために、自分のもつお金や技術、商品などを差し出して使ってもらうこと」を指します。 「情報を提供する」「オフィスを会場として提供する」「臓器提供」などの言い回しで使用されます。 この差し出すという意味合いから転じて、「企業がテレビやラジオの放送で広告費を払って広告主になる」という意味でも使われることもあります。
例文
「供給」は「きょうきゅう」と読みます。 「供給」の意味は、「要求・必要に応じてものを与えること」です。 また、販売のために商品を市場に出すことを「供給」と言います。
例文
「供与」は「きょうよ」と読みます。 「供与」の意味は「ある利益を与え相手方に得をさせること」です。 相手が欲する物品・品物を与え、相手に利益を与えることを「供与」と言います。
例文
「be blessed by...」で「...の恩恵を受ける」という意味になります。 「享受」という日本語に「be blessed by」が一番近いでしょう。 「be blessed by children」だと「子供を授かる」という意味になります。
Japan is blessed by natural resources.
日本は自然資源を享受している。
I am blessed with three children with him.
私は彼との間に3人子供を授かった。
「楽しむ」という意味の「enjoy」も「享受」の英訳して使えます。
Japanese people enjoy freedom of speech on Twitter.
日本人はツイッター上で言論の自由を享受している。
いかがでしたか? 「享受」について理解していただけたでしょうか。 ✓「享受」の読み方は「きょうじゅ」 ✓「享受」の意味は「受け取って自分のものにし味わい楽しむこと」 ✓「利益享受」「便利さを享受する」などと使う ✓「享受させる」は「与える」の意味になる ✓「享受いたします」だと謙譲表現になりより丁寧になる