「時節」という言葉をご存知ですか?「時節」は「時候」と混合されやすい言葉です。今回は、「時節」という言葉の正しい意味と使い方を例文付きで解説します。また、「時節」の類語表現や、言い換え表現、英語表現も合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「時節」の読み方は「じせつ」です。 「時」は音読みで「ジ」、訓読みで「とき」と読みます。 「節」は音読みで「セツ・セチ」、訓読みで「ふし」と読みます。 「時節」は共に音読みします。
「時節」は大別すると、 ①季節 ②好機 ③情勢 の3つの意味があります。 「時節」という漢字を分解してみてみると、 「時」・・・「とき」「月日のうつろい」「季節のうつろい」 「節」・・・「ふし」「くぎり」「機会」「気候の代わり目」など といった意味がある言葉を合わせてできているということがわかります。 「季節」の「節」をいう漢字を使用していることから、季節を表現する言葉という印象が強いかもしれませんが、「時節」は、季節の移り変わりを意味するだけではなく、「節目」と良く言われるように、なにかの区切りや何かを起こすのに良い時期という「好機」という意味があります。 また、季節や時の移り変わりから、「その区切りとなる時期の情勢」という、「情勢」や「時勢」を表す言葉でもあります。
「時節」は、挨拶文で使用されます。 例えば、目上の人に手紙や書面のお知らせを送る場合に、文頭や文末の挨拶の言葉に「時節」を使います。 挨拶文で使用される場合の「時節」は、「季節」の言い換えと認識するとわかりやすいです。 さっそく例文をみていきましょう。
例文
「時節柄ご自愛ください」は相手の健康を配慮する定型文です。 「時節」に「柄」をつけて「時節柄(じせつがら)」とし、単体で副詞的に使うことができます。 「時節柄」を使う場面は、2つあります。 1つ目は「このような季節ですので(暑さ・寒さ・気温の変化・雨・台風などに気をつけてください)」という意味で、天候を配慮した言い回しです。 2つ目は「このような情勢・時代・世の中なので(犯罪・感染病・精神疲労などに気をつけてください)」という意味で、現在世の中で起きていることを配慮した言い回しです。 よって、「時節柄」は季節の変わり目だけではなく、幅広く使うことができます。
季節を表す「時節柄」の例文
世間の情勢を表す「時節柄」の例文
「時節に合わせる」は、「季節や世の中の情勢をわきまえる」という意味になります。 例えば、「時節にあった服装を着る」というように、季節に合わせて何かをするという意味で使用されています。 また、「時節に合わせて最近は株を購入する人が増えている」は、時代や情勢、その時の状況に合わせてという意味になります。 基本的に「時代に合わせる」「情勢に合わせる」という意味で使用されるほうが多いでしょう。 反対に、「時節柄合わない」というように、否定の意味で使用することもあります。
例文
「時節を待つ」の場合の「時節」は「好機」「機会」という意味で使用され、「時節を待つ」で「好機を待つ」「チャンスを待つ」という意味になります。 例えば、何かをする時に「今このタイミングでない」という場合に「時節を待つ」という言い回しを使用します。 ビジネスシーンなどでも、タイミングを見計らうときってありますよね。 そういった場面で、「時節を待つ」という表現を使用することができます。
例文
「時節をわきまえる」は、善悪を区別して「やめたほうが良い」と判断したような場合に使用する言い回しです。 この場合の「時節」は、「情勢」と意味しています。 例えば、「コロナウイルスが流行ってるときにコロナ関連のエイプリルフールはやらない」などが「時節をわきまえる」ことを指します。 その時の状況などを判断し、「やめたほうがいい」とわきまえることを「時節をわきまえる」と言います。
例文
「時節を捉(とら)える」は、「好機をしっかりと掴む」「情勢を把握する」という意味で使用される言い回しです。 「捉える」の意味は、 1.視野や知識などの中にしっかりおさめる 2.手でしっかりとつかむ。しっかり握る。たまたま到来した好機などを自分のものとする で、認識や把握をすること・チャンスを自分のものにすること・しっかりと掴んで離さないことを表します。 したがって、「チャンスを掴む」という意味や、「情勢を把握する」「情勢を認識する」というニュアンスで使用することができる表現になります。
「好機をしっかりと掴む」という意味の「時節を捉える」の例文
「情勢を把握する」という意味の「時節を捉える」の例文
「時節を切る」はあまり一般的な表現ではありませんが、「◯◯の今を切る」などと同じニュアンスで「時節を切る」とジャーナリズムの世界で言われることが稀にあります。 この場合の「切る」とは「問題のある状況を詳しく調査し、皆が分かるようにする」という意味です。
「時節到来」とは、「チャンスがきたこと」「ちょうどいい時期になったこと」を意味します。 この場合の「時節」は「好機」という意味で使用されます。 「到来」は、
という意味で使用される言葉です。 「チャンス到来!」という表現をよく耳にすると思いますが、同じように、何かをする良い時期がきた・好機がやってきたといったニュアンスで使用される表現です。
例文
「時世時節」は「ときよじせつ」と読みます。 「時世時節」の意味は、「その時その時の移り変わり」「その時のめぐり合わせ」です。 「時世」は、「じせい」と読むこともでき、意味は、「時が経つにつれて変化する世の中」つまり「時代」です。 つまり、「時世時節」は、時代や情勢の移り変わりを表現する言葉になるということがわかります。 簡単に言えば、その時々のめぐり合わせ...ということです。
例文
「時節因縁」は、「身の回りに起きる出来事や、人とのめぐり合わせは縁であり、時節がきたからである」という意味の仏教用語です。 「因縁」は「物事はすべて、起原と結果を結ばせる縁がある」という意味の言葉です。 つまり、全てのことは、縁があって起きていることであるという考えです。 「時節因縁」は、出会い別れ、苦労、幸せ、すべてその「時節(時期)」が来ているから起きているという意味の四字熟語です。
「物には時節」は、「すべてのものには、良いタイミング、良い時機がある」という意味のことわざです。 また、「時機やチャンスがずれてしまうと、うまくいかない」という事を意味しています。 「やるかやらないか」で迷っている人などに対して、「物には時節」使用して、「今というチャンスを逃すとうまくいかないよ」ということを伝えることができます。 また、失敗してしまった人に対して「今はそういう時機じゃなかっただけだよ」と励ますこともできるでしょう。
例文
「時節の挨拶」は、よくある誤用で、正しくは「時候の挨拶」です。 「時候の挨拶」は、手紙やお知らせの文頭などに「拝啓...」という頭語の後に書き出す言葉です。 4つの四季がある日本ならではの挨拶で、1月〜12月まで、奇跡に合わせた時候の挨拶があります。 例えば、1月の時候の挨拶は、 寒の入りとともに寒さが一段と厳しくなってまいりましたが、◯◯様におかれましてはますますご壮健のこととお喜び申し上げます。 などとなります。 一方の「時節」は「季節」という言葉の言い換えで使用することができるので、 ・寒さ厳しきこの時節、いかがお過ごしでしょうか といった使い方をすることができます。 このように、「時節」と「時候」は違うものになるので混合してしまわないよう注意してください。
また、「時節の折」「時節の候」もよくある誤用です。 「折(おり)」も「候(こう)」にも、「季節」という意味があります。 「時節」という言葉に「季節」という意味がありますから、「折」や「候」を後ろにつけてしまうと、同じ意味の言葉を繋げた「二重表現」になってしまうのです。 「折」「候」は、時候の挨拶の中で、 「厳しき寒さの折〜」・・・「厳しい寒さの季節」 といった使い方をするのが正しいです。 非常にややこしいとは思いますが、誤用には気をつけましょう。
「時節」の1つ目の意味である「季節」という意味では、
などが、類語になり、それぞれ「春夏秋冬」の四季折々の季節を意味しています。
例文
2つ目の意味では、
が類語になります。 すべて、「その時にふさわしい」という意味があり、「チャンス」や「そのことを行うのに良い期間」「良い時機」という意味で使用される言葉です。
例文
3つ目の意味なら
など、「変化するものごとのその時々の様子」を意味する言葉が類語になります。
例文
「季節柄」の意味は、「このような季節なので〜」という意味で季節に対して使用する言葉です。 「時節柄」とは違い、「季節柄」は「季節」のことに対してのみ使用し、「情勢」に対しては使いません。 「季節柄」は、「季節柄、ご自愛ください」といったように、手紙の結びの挨拶で使用されることが多いです。
例文
「時分柄」は、「じぶんがら」と読みます。 「時分柄」の意味は、「その時機にふさわしいこと」という意味です。 「〜をするのにちょうどいい時機である」「〜の時機にふさわしい」といったことを言い表すのに使用されます。 したがって、「時分柄」は「時節柄」と言い換えることが可能です。
例文
「折」は、「時機」「季節」という意味があります。 「折柄(おりがら)」、「ちょうどその時」という意味になり、主に副詞的に使用される言葉になります。 手紙などで「〜のときだから〜」という接続詞として使用することができる表現です。 したがって、「折・折柄」は「時節柄」の言い換え表現になります。
例文
「候」は、「そうろう」と読むこともできますが、この場合の「候」は「こう」と読みます。 「候」は、季節を表す言葉です。 手紙などで時候の挨拶を添える場合に、寒さや暑さを「候」という言葉を使って表現します。 「早春の候」「師走の候」といったように、季節に合わせた挨拶文にします。 これらはすべて「〜のとき」といった意味で使用されているので、「時節柄」の言い換え表現として使用することができます。
例文
「期節」は、「きせつ」と読みます。 「期節」は、「折」や「時期・季節」と同義です。 「季節」とは、季節を4つにわけて期間を区切ったものであるため、「季節」の「季」を「期」にしても意味が変わらないのです。 むしろ、「季節」より「期節」のほうが正しいとも言われています。
例文
「今節」は、「こんせつ」と読みます。 「今節」の意味は、「いくつか区切られた短い期間もうちの現在の期間」です。 「今の季節」や「今の時期」という意味で言えば、とても似ている表現ですが、「今節」はプロ野球など競技の期間をさして使用されることが多いです。 例えば、「今節の成績は...」といった使い方をします。
例文
「節季」は、「せっき」と読みます。 「節季」の意味は「歳末」や、「季節の終わり」です。 その昔、「二十四節季」といって、季節を表す工夫をして考え出されたものがあります。 「二十四節季」とは、1年を24等分して、区切りと区切りをつけたものです。 例えば、「立春」「夏至」などが「二十四節季」にあたります。
例文
「春節」は、「しゅんせつ」と読みます。 「春節」の意味は、「中国の旧暦の元旦」です。 日本では1月1日が元旦のように、中国圏で最も重要とされている祝祭日です。 親戚の正月よりも、旧暦の元旦である春節のほうが盛大に祝賀されて、数日間の祝日が設定されています。
例文
「折節」は、「おりふし」と読みます。 「折節」の意味は、「その時々」「時刻・季節」です。 副詞的に使用すると、「ちょうどその時」という意味になります。
例文
「節降り」は、「よおり」と読みます。 「節降り」とは、「御贖(みあが)の義」とも言います。 毎年6月と、大晦日の夜に宮中で天皇、皇后のために行われる祓式の一種です。 天皇、皇后、皇太子の慎重を竹の図り、祓います。
例文
「次節」は、「つぎぶし」と読みます。 「次節」は、「江戸吉原で流行した小唄」です。 また、文章や、音楽などでその「次の節」を指す場合にも使用されます。
例文
「季節」を意味する英単語は「season」です。 「時節の」は「in season」 「時節外れの」は「out of season」 などといいます。
There is a single sakura blooming out of season.
時節外れの一輪の桜が咲いている。
「好機」「情勢」を意味する「時節」の場合は「time」が幅広く使うことができます。
Take care of yourself in these hard times.
時節柄ご自愛ください。
The time has come.
時節到来。
いかがでしたか? 「次節」という言葉について理解していただけたでしょうか。 ✓「時節」の読み方は「じせつ」 ✓「時節」の3つの意味は「季節」「好機」「情勢」 ✓「時節」は挨拶文で使われることが多い ✓「時節柄ご自愛ください」は相手の健康を配慮する定型句 ✓「時節を待つ」「時節に合わせる」など様々な言い回しがある など