「相殺」という言葉をご存知ですか?「〜を相殺する」といった言い回しで耳にすることも多いのではないでしょうか。今回は、「相殺」という言葉の意味と使い方を例文つきで解説します。また、「相殺」の類語表現や、対義語、英語表現も合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「相殺」は読み間違いが多い熟語です。 「そうさつ」や「あいさつ」と読むのは誤りです。 正しくは「そうさい」となります。 「そうさつ」は誤読ですが、頻繁にそのように読まれるため、慣用読みとして一部許容されています。 「殺」という漢字を「さい」と読む日本語は「相殺」のみです。 「殺」には元々2つの意味があり、「さつ」と読むと「ころす。あやめる。いのちをたつ」という意味になります。 「さい」と読むと「減らす。省く」という意味になり、「相殺」の場合こちらの意味で使用されています。 「相」は動詞を修飾して「互いに。一緒に」という意味で使用されています。 したがって、「相殺」で「互いに消す」という意味合いになるということがわかります。
「相殺」を「そうさつ」と読むなら「互いに殺し合う」という意味になる解説されることが時たまありますが、それは間違いです。 そもそも「相殺」の場合の「殺」は、上述しているように「そぐ・減らす」という意味で使用されています。 「そうさつ」と読むのが間違いであり、読み方を変えれば意味が変わるという類の熟語ではありませんので、誤用しないように注意しましょう。
「相殺」の1つ目の意味は「プラスとマイナスを互いに差し引きして帳消しにする」です。 貸し借りや損得などプラスとマイナスを差し引きして帳消しにすることを「相殺」といいます。 例えば「プレゼン準備を助けてもらったので、ランチをおごる」といった行為も「相殺」にあたります。 プラスとマイナスなものは同類でなくてもよいでお互いが納得していれば成り立ちます。 「借りを返してチャラにする」=「マイナス状態からプラスマイナスゼロに戻す」というポジティブな意味合いで使うもありますし、 「長所が短所によって無効になる」=「プラス状態からプラマイゼロになってしまう」というネガティブな意味でも使います。 「イケメンなのに性格が悪くてもあまりモテない」は「+→0」の場合の「相殺」です。 文法的には「AをBで相殺する」「AがBを相殺する」「AでBが相殺させる」などと使います。
例文
「相殺」には「長所・利点などがお互いに影響し合ってよい影響を失ってしまう」という意味もあります。 上記の1つ目の意味は、プラスとマイナスがお互い影響し合ってる場合ですが、2つ目の意味はプラスとプラスが影響し共によさが薄れてしまうという意味合いです。 例えば、「二大主演俳優の魅力を相殺する映画だ」などと使うことができます。 それぞれは素晴らしい演者であるにも関わらず、二人が共演することでお互い影響し合い、二人とも魅力が薄れてしまう状態です。 役者用語では「役を食う」と表現されます。相手の役の存在感を薄れさせてしまうことをいいます。
「相殺」は、1つ目の意味で法律用語・会計用語として主に契約書、領収書などで使用されます。 例えば、本来であれば現金で支払いを行うものをそれ相応のものを渡して支払いをチャラにすることを「相殺精算」といいます。 その際に発行されるのが「相殺領収書」です。証明書を「相殺契約書」と呼びます。 その他にも、 相殺関税・・・海外競争者が支援と補助金を得たことにより生まれる影響を相殺すること 相殺契約・・・債権を対当額で消滅させるという契約 相殺適状・・・双方の債権を相殺することが可能な状態を意味する語。「そうさいてきじょう」と読む 相殺禁止事由・・・相殺適状の場合でも相殺が認められない法的理由 相殺権・・・破産債権をその債務を破産手続きなしに相殺する権利 などの法律用語があります。
「相殺」は、剣道用語としても使用されています。 剣道ではどちらか一方が二回反則行為をした場合、負けになってしまいます。 剣道における「相殺」とは、試合時に二人が同時に二回目の反則をもらった場合に、勝敗をつけるために、その反則はなかったことにするルールを指します。 剣道用語「相殺」は「反則を反則で相殺してお互いチャラにする」という意味です。 AさんがBさんに1000円借金があり、BさんもAさんに1000円借金がある場合に、お互いの借金をないことにするのと似ています。
「差引」の意味は「ある量数から、他の量数を引き去ること」です。 「相殺」の意味の説明にも「差引」という言葉が使われていることから分かるように非常に似ている言葉ですが、微妙に違います。 「差引」には「帳消しにする」という意味は含まれません。 つまり、2つものを差し引きしても必ずしも帳消しになるわけではありません。 差し引きをし帳消しになった場合のみ「相殺」ということができます。 ただし、「差引ゼロ」という表現ならば、「差し引いてゼロになる」という意味になるので、「相殺」と完全に同義になります。
例文
「帳消し」は、「ちょうけし」と読みます。 「帳消し」の意味は、「差し引いて損得がなくなること」です。 本来は、勘定が済んだ時などに、不要な帳面を消すという意味で使用される言葉です。 例えば、売掛金にしていたものの支払いがあって、売掛金がなくなった時などです。 このように、プラスをマイナスに、マイナスをプラスに、という変更があって損得の価値が失われることを「帳消し」という言葉を使用して表現することができます。
例文
「棒引き」は「ぼうびき」と読みます。 「棒引き」の意味は、「線を引いて帳簿などの記載を消すこと」です。 賃借関係が解消された場合や、借金をすべて返し終わってなかったことになった場合などに「棒引き」という言葉を使用して表現することができます。
例文
「差引きゼロ」は「差し引いて元のものがゼロになる」という意味です。 プラスの要素や、マイナスの要素が影響しあい、互いの要素を打ち消した結果「ゼロ」という状態にすることを「差し引きゼロ」と言います。 「ゼロ」の状態になるということは、すなわち「なくなる」「帳消しになる」ということです。
例文
「ちゃら」は、「差し引きゼロになること」です。 借り貸しをなしにするなど、ゼロの状態にすることを「ちゃらにする」と言います。 「差し引きゼロ」「相殺される」など、すべて「ちゃらにする」「ちゃらになった」という表現に言い換えることが可能です。
例文
「プラスマイナスゼロ」は「プラスの要素とマイナスの要素が重なって、打ち消しあった状態になること」です。 良かったことが悪いことが起きることによって相殺されたり、反対にマイナスなことがあった後にプラスのことが起きて相殺されるといった状態を「プラスマイナスゼロ」という言葉をつかって表現します。 「プラスマイナスゼロ」は、略して「プラマイゼロ」と略されることが多いです。
例文
「償い」は「つぐない」と読みます。 「償い」は、「故意や過失で相手に与えた損害の埋め合わせをすること」です。 相手に大きな過失を追わせてしまうような場合、何をしても「なかったこと」にはならないと思うので、完全にゼロになるという意味の「相殺」とは若干ニュアンスが異なります。 損害の埋め合わせをして、ゼロにしようという姿勢を「償い」と言います。
例文
「埋め合わせ」は、「空けてしまった穴を別のもので埋めること」です。 例えば、約束していた日に急用が入ってしまってドタキャンしてしまったような場合、別の日に予定を入れ直してもらうなど、一度空いてしまった穴を埋めることを、「埋め合わせ」と言います。 後で補おうとすることを「埋め合わせ」という言葉を使って表現します。
例文
「補填」は「ほてん」と読みます。 「補填」の意味は「不足をうずめおぎなうこと」です。 足りないところや欠けたところをおぎない埋め合わせることを「補填する」などと言います。 「補填」は壊れてしまったり、欠けていたりと損失が発生したときに穴を埋める場合に使う言葉であるということがポイントになります。 主に「お金の不足や欠損を補う」などと金銭の損失の補いに関して使うことが多い言葉です。
例文
「取り消し」は、「ある行為について、過程に問題があるといったことから、なかったことにすること」です。 「撤回」「解消」などが類語に当たります。 あることを、取り消しにすると、なかった状態に戻るので、「相殺」の類語であると言えます。
例文
「御破算」は「ごはさん」と読みます。 「御破算」は、元々「そろばん」で使用する言葉です。 計算に使用していたそろばんの盤面を払ってゼロに戻すことを「御破算」と言います。 そこから転じて、「ふたたびなかった状態に戻す」「元に戻す」という意味で、日常会話でも使用されるようになりました。
例文
「中和」は、「ちゅうわ」と読みます。 「中和」の意味は「性質の反するものが触れて、それぞれの特性を失うこと」です。 元々、科学用語で、酸性物質とアルカリ物質などが合わさることによって、それぞれの特性がなくなるという化学反応を「中和する」と表現していました。 現在では、科学以外でも、例えば正反対の性格の人達が、お互いのいいとこを活かし、悪いところを目立たなくさせるといった意味で「〜によって中和された」と表現することも多いです。
例文
「相殺」の対義語は「相乗」です。 「相乗」は元々は数学用語で「複数の数を掛け合わせる」という意味です。 「相乗平均」「相乗積」などの熟語があります。 そこから転じて、「複数の要素が働き合って、相互に効果を高める」という意味が生まれました。 なさに「相殺」の反対の意味を指します。 「相乗効果」「相乗作用」などと使います。
「〜を相殺する」の英語は「offset」です。 「相殺」を意味する名詞は「counterbalance」があります。
The extra cost of commuting to office offsets the affordable housing.
オフィス通勤の余分なコストがお手頃価格の住宅を相殺してしまう。
What I'm doing now will serve as a counterbalance to last year's debt.
今私がしていることで、昨年の借金は相殺だ。
「無効にする」を意味する英語には、
などがあります。
If you make such a mistake, it will cancel out what you have been doing.
そんあミスを犯したら、君がやってきたことが相殺されてしまうよ。
いかがでしたが? 「相殺」という言葉について理解していただけたでしょうか。 ✓「相殺」は「そうさい」と読む ✓「相殺」は「そうさつ」と読んでも「互いに殺し合う」という意味にはならない ✓「相殺」の意味は「プラスとマイナスを互いに差し引きして帳消しにする」 ✓「プラスとマイナスが互いに影響して効果を失う」場合も「相殺」という ✓「相殺」は法律用語・会計用語としても使う