「要因」という言葉には、2つの意味があるということをご存知でしょうか。普段何気なく耳にしている言葉でも、意味や使い方を理解できていないことってありますよね。今回は「要因」の正しい意味と使い方を例文付きで紹介します。また「因子」や「原因」など「要因」の類語との違いや英語表現についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
「要因」の1つ目の意味は「ある物事を発生させた主要な原因」です。 「要」には「かなめ・大切なところ」という意味があり、 「因」は、「もと・事の起こり・由来」という意味があります。 したがって、物事が起こる1番の大切な部分という意味になります。 この場合の「要因」は、起こるべきではないことが起きてしまった場合などネガティブなことに対して使うのが普通です。 例えば「事故の要因を調査する」などと使い、「決定的な要因」はそうなってしまった一番の原因と言えるものを指します。
例文
「要因」の2つ目の意味は「ある物事を成立させる主要な要素」です。 例えば、「成功の要因は〜」「体調不良の要因は〜」というように使います。 「結果的にそうなることになった要素」に対して使用しています。 また、「人的要因」「環境要因」などと人事用語としても使われます。 「人的要因」とは人事用語で、ビジネスシーンでよく見聞きする言葉です。 「他者要因」などと哲学用語としても使用されます。 「他者要因」があれば「自己要因」もある気がしてしまいますが、「自己原因」が正しいです。 「自己原因」は、「自らが自己の存在の原因となっているもの」という意味で使用されます。 さらに、「要因解析」「要因分析」などと統計学用語としても使用されます。
例文
「要因」の同音異義語には、「要員」という言葉があります。 「要員」の意味は「ある物事のために必要な人員」です。 例えば、「運送要員」は「運送のために必要な人員」という意味になります。 「補充要員」は、足りない人員の穴埋めをする人を指す言葉です。
「因子」の意味は、「ある結果を生ずる元になる要素」です。 したがって「要因」の2つ目の意味と「因子」は完全な同義です。 しかし、「因子」には「要因」の1つ目の意味では使われません。 「因子」は何か物事を引き起こす要素を指し、潜在的な要素も含みます。 したがって、「因子」がいくつか集まって「要因」となると言えます。
例文
「原因」の意味は、「ある物事を引き起こす元」です。 「要因」の1つ目の意味と「原因」はほぼ同義ですが、微妙な違いがあります。 「要因」=「主な原因」です。 原因は複数あることがありますが、そのうち最大の原因を「要因」といいます。 「要因」は全て「原因」ですが、「原因」は必ずしも「要因」とは限りません。 例えば、太った原因が「暴飲暴食」「運動不足」「仕事のストレス」の3つあった場合、要因は「主要な原因」なので「運動不足」などと基本的には1つ選ぶ必要があります。(要因が複数あっても問題ありません)
例文
「要因」と「理由」の違いを説明するには、「原因」と「理由」の違いを理解するのがよいでしょう。 「原因」と「理由」の違いは混乱する人が多いと思います。
「理由」の方が「原因」より意味が広いです。 「理由」はポジティブなこと・ネガティブなことのどちらにも使うことができますが、「原因」はマイナスなことにしか使いません。 「原因」は基本的に「理由」に置き換えることが可能です。ただし、ネガティブなことに対しては 「原因」を使う方が自然です。 例えば、「事故が発生した理由」と言えなくもないですが、「事故の原因」とした方がベターです。 ちなみに、「理由」には「言い訳」というもう1つの意味があります。
例文
「背景」は「自分の後ろの景観や光景」を指す言葉ですが、「ある人や事件の背後にあるもの」という意味でも使用されます。 例えば、「この恐喝事件の背景には暴力団の存在があった」といった使い方をします。 簡単にいうと物事の背景に潜んでいる事情という意味です。 表向きではわからないけれど関係していることに使用されるという点で、「要因」とはニュアンスの違いがあります。 「背景」は、「理由」や「原因」というよりも「要因」「因子」に近いと言えるでしょう。
例文
「要素」の意味は「物事を成り立たせるもと」です。 「要因」の2つ目の意味と「要素」はほぼ同義です。 「要因」=「主な要素」となります。 したがって、「要因」の中に様々な「要素」や「原因」が含まれているということになります。 また、「要素」はIT用語としても使用されます。 IT用語の「要素」とは、WEBページ作成などで使用するコンピューターに解釈させたい部分のことを言います。
例文
「誘因」の意味は「ある作用を引き起こす原因」で、「要因」の1つ目の意味とほぼ同義です。 「誘因」は「原因」の同義語であると言えるでしょう。 「誘因」は、「主な原因」という意味ではなく、「原因」という意味である点以外違いは見られません。
例文
「起因(きいん)」の意味は、「物事の怒った原因」です。 「起因」も「原因」の同義語です。 したがって、「起因」と「要因」違いも「原因」と同じになります。
例文
「真因」は「本当の原因」という意味です。 したがって、「要因」よりももっと真相に基づいたものとなります。 「原因」など表面的なものではなく、背後に隠されているものを指します。 また、「真因」は「ある病気にかかりやすい素質」という意味の医療用語でもあります。
例文
「要因」の完全な同義語が「主因」です。 「主因」は、「ある結果を生じさせる主な原因」という意味です。 「要因」を「主因」に言い換えても何の問題もありません。
例文
「素因(そいん)」は「おおもとの原因」という意味なので、「要因」の同義語です。 日常生活では、あまり聞き慣れない言葉ですよね。 医学用語では「一般的素因」「個人的素因」というようによく使用されます。 また法律用語で、事件の犯人が以前から精神病であったなどの素因があった場合に「素因減額」といって損害賠償を減額することがあります。 このように、専門的な分野においてよく使用される言葉であると言えるでしょう。
例文
「作因(さくいん)」の意味は「芸術など表現の動機となる中心の考え」です。 例えば、絵画において「〜を表現したかった」といった考えや思いが「作因」になります。 芸術など表現の動機となる考えを指す場合に「要因」という言葉を使うことはありません。 したがって「作因」と「要因」は使用する場面が異なると言えるでしょう。
例文
「要因」は元々「agent」の訳語です。 「agent」の原義は「反応・変化などを起こす力」です。 そこから転じて「スパイ」「代理店」という意味ももつようになりました。
This food contains several cancer-causing agents.
この食品はいくつかの発がん性物質を含む。
「因子」の英語は「factor」です。 「要因」を意味する一般的な英語は「factor」です。
The major factor in his downfall is his own personality.
彼の身の破滅の主要な要因は彼自身の性格だ。
「原因」を意味する英語は、
です。
The cause of chaos in politics is covid-19 pandemic.
政治における混乱の要因は新型コロナウイルスのパンデミックだ。
「要素」の英語は「element」です。
Hard work is a vital element of your success.
勤勉さは成功に重要な要素だ。
「理由」の英語は「reason」です。 「excuse」は「言い訳」という意味です。
いかがでしたか? 「要因」について理解していただけたでしょうか。 ✓「要因」の意味①は「ある物事を発生させた主要な原因」 ✓「要因」の意味②は「ある物事を成立させる主要な要素」 ✓「要因」の類語には「因子」「原因」「理由」などがある