「ままならない」という言葉の意味をご存知でしょうか。「〜することもままならない」などよく耳にする表現ですよね。今回は、「ままならない」という言葉の正しい意味や使い方を例文つきで解説します。また「ままならない」の類語や英語表現、「まま」の他の意味と使い方もあわせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「ままならない」の意味は、「思い通りにならない」です。 「こうしたい」「こうであるべき」という思いとは裏腹に、思うようにできないことを「ままならない」という言葉を使って言い表すことができます。 「〜することができない」というネガティブなニュアンスで使用される言葉です。 「ままならない」の品詞は形容詞です。
「ままならない」を漢字で表記すると「儘ならない」となります。 「儘」は音読みで「ジン」、訓読みで「まま・ことごとく」と読む漢字です。
「ままならない」の「まま」は、「まにま」「まにまに」という和語から転じた言葉です。 「まにま」「まにまに」は現代ではほぼ使用されず、古語だと認識して問題ないでしょう。 「まにま」の漢字は「随」または「随意」です。 「まにま」も「まま」も和語なので、漢字は当て字です。 「随」と「儘」は同義語です。もう一つある同義の漢字が「任」です。 このように語源が同じでも言葉の形が変わると当てる漢字も変わることがあります。 ここに明確な規則性はありませんので、なぜ我々の先祖が「まにま」は「随」で、「まま」は「儘」という漢字を当てたのかは不明です・・・。 「儘」はあまり馴染みのない漢字ですよね。 成り立ちは、ニンベンに「盡」です。 「盡」という漢字は「尽」の旧字体です。 つまり、「人に尽くす」で「儘」です。 よって、人に尽くすということはそこにはエゴがなく、「他人のそのままに任せる」「物事の成り行きに逆らわない」という意味です。 この「成り行きに任せる」という意味が「儘」の基本義です。 「ままならない」は「思い通りにならない」という意味なので、この「まま」は「思い通りになる」という意味のはずですよね。 しかし「成り行きに任せる」と「思い通りになる」はむしろ反対語のような気がします・・・。 この違和感には仏教的思想が影響しています。 「成り行きに任せる」という他力本願的思想は、諦めを表しているわけではなく、阿弥陀仏の本願(力)に頼って生きていくことを示します。 つまり、エゴを持たずに流れのままに生きることが結局は人生思い通りになる、というニュアンスなのです。(深い・・・!) したがって、「儘」は「思い通り」という意味になります。
皆さん馴染みのある言葉に「わがまま」があると思います。 「わがまま」の漢字は「我儘」です。 「我儘」の「儘」は、「ままならない」の「まま」と同じ意味です。 「我儘」は文字通り「自分の思い通り」という意味ですね。 「我儘」は単に自分の思うようにするという意味で、元々は現代の使い方のようなネガティブな意味合いはありませんでした。
「まま」は「まんま」と発音することがあります。 これは「撥音添加」と言われるもので、言葉の間に「ん」が入ることで発音が変わるものです。 例えば、「同じ」は、口語で「おんなじ」と言われたり「何も」は「なんも」と言われることがありますよね。 これが、「撥音添加」なのです。 しかし、「まんまならず」と言うことはほとんどないでしょう。
「ままならない」は、「〜はままならない」「〜はままならぬ」で言い切る形で使用することができます。 「〜はままならない」で、「〜は思うようにならない」「思うようにできない」という意味になります。 古い語感がありますが「ままならぬ」の形でも使います。 「ぬ」は、否定の助動詞「ない」の別形となります。 また、「思うがままにならない」も少し時代がかった言い回しですが、同じ意味です。
例文
「ままならない」は、言い切る形だけではなく「ままならない◯◯」の形でも使用されます。 例えば、
といった使い方をします。 「思いどおりにならない状況だ」「思い通りにならない人生」という不満を伝えるような場面でよく使用される言い回しです。 少し回りくどいですが「思うがままにならないものだ」などと表現することも可能となります。
例文
「〜することもままならない」で、「〜も自由にできない」という意味になります。 「〜することもままにならない」と「に」を入れることもあります。 「水を飲むこともままならない」などと、最低限のことすらできる状態にないことを表すときに使います。
例文
「思い通りになる」「思い通りにする」を意味する「まま」は「思うがまま〜する」「思いのままに〜する」などの形で肯定文でも使います。 「ままならない」のように、「まま」の後に否定の言葉である「ならない」をつけていないので反対に「思い通りに〜をする」という意味になるのです。 自分の好き勝手自由にできる状況や状態を言い表す表現です。
例文
「ままならない」は、かしこまった表現のように感じますが「ままならない」自体は敬語表現ではありません。 「ままならない」を敬語表現にする場合は、「ない」の敬語表現である「〜ません」を使用するなど敬語表現と組み合わせて使用する必要があります。 「ままなりません」 「ままならない状況であると言えます」 といった敬語表現と組み合わせて使用することで、目上の相手やかしこまった場面で失礼なく使用することができます。
例文
「不如意(ふにょい)」の意味は、「思うようにならないこと」です。 特に「経済状態が苦しいこと」を言い表す言葉としてよく使用される言葉です。 よく使用される「手元不如意(てもとふにょい)」は、手元にある資金が少なく思い通りにならないことを言います。
例文
「不自由」は「自由にできずに困ること」です。 「自由」は「何に縛られることもなく、思うままに振る舞えること」を言います。 「自由」に打ち消しの「不」をつけることで、「自由にできない」という意味になります。
例文
「不十分」は、「足りてない部分がある様子」です。 「満ち足りていて不足がない」という意味の「十分」に、打ち消しの「不」をつけているので「足りない」という意味になります。 「不十分」は「足りない」という意味で使用される言葉なのですが、「足りないことで満足することができない」という点で「ままならない」の類語であると言えるでしょう。
例文
「ままならない」の対義語はとして、これと言えるものはありません。 「ままならない」は「自由にできない」「思い通りにできない」という意味なので、強いていえば先ほど紹介した「自由に〜することができる」という意味がある「思うがまま」「思いのまま」が対義語にあたると言えるでしょう。 その他にも、「足りている」という意味のある
なども対義語になります。
「ままならない」の英語はたくさんありますので、代表的な言い方をいくつか紹介します。
My life is always beyond my control.
我が人生はいつもままならぬ。
Things don't always go your way.
物事はままならないないこともある。
Things don't always go the way you want them to.
Things never work out as you expect.
Things never work out as expected.
基本の意味としては、「その場の成り行きに任せる」という意味で使用されます。 例えば、
といったように、自分の意思ではなくその場の雰囲気や周りの人の影響を受けて成り行きに任せているような場合に「まま」という言葉を使います。
例文
また、「もとと同じ状態」という意味で使用されることもあります。 例えば、 昔のままの風景 生のまま食べる 見たままを話す などといった表現です。 例えば、「昔のままの風景」は、「昔の状態から変わっていない風景」という意味です。 先葉の間に「ん」が入る「撥音添加」の説明を前述しましたが、この場合の「まま」は、「まんま」と言われることも多いです。 「撥音添加」にすると「昔のまんまの風景」「生のまんま食べる」「見たまんま話す」となります。 「ままならないまま」と表現した場合、二つ目の「まま」の意味はこれです。 「まま」が二度使われているので不自然に感じる人も多いかもしれませんが、正しい日本語です。
例文
「次の事態に進展しない」と言う意味でも使用されます。 例えば、
などです。 この場合の「まま」も口語では「まんま」と言われることが多いです。
例文
いかがでしたか? 「ままならない」という言葉について理解していただけたでしょうか。 ✓「ままならない」の意味は「思い通りにならない」 ✓「ままならない」の漢字は「儘ならない」 ✓「まま」は「まんま」と発音することも ✓「〜はままならない」「〜はままならぬ」で言い切る形で使用することができる ✓「ままならない◯◯」の形でも使用可能