忙しいときなどに「立て込む」という表現を使用することってあると思いますが、「立て込む」の正しい意味と使い方をご存知でしょうか。実は「立て込む」という言葉の意味は「忙しい」だけではないのです。今回は、「立て込む」の正しい意味と使い方を例文つきで解説します。また、言い換え表現や対義語、英語表現も合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「立て込む(たてこむ)」には、3つの意味があります。
1つ目の意味は「多くのことが一気に重なること」です。 忙しくて手が離せない時などに「ちょっと今立て込んでいて...」という表現を見聞きしたことがあるのではないでしょうか? この場合の「立て込む」は、「用事が重なっていて、忙しい」「手が回っていない」といったニュアンスで使用されています。 この場合の「込む」は、「こむ」「混雑する」という意味で使用されているため、「立て込む」は予定などやることが詰まっているという意味の表現になるのです。
「立て込む」の2つ目の意味は、「大人数がこみあう」です。 一つの場所に沢山の人が、集まっているような状況に対して「立て込む」という言葉を使用することができます。 例えば、「飲食店はお昼になるとお客が立て込むのでお昼前に行くのがベストだ」といったような使い方です。 通常、こういった使い方をする場合「混む」「混雑する」といった言葉を使って言い表すので、「立て込む」を「こみあう」といった意味で使用するのは聞き慣れないという人のほうが多いかもしれません。
「立て込む」の3つ目の意味は「家などがぎっしりと立ち並ぶ様子」です。 住宅街のように、隙間なく家が立ち並んでいる様子を言い表すことができる表現です。 しかし、この意味の場合は「立て込む」と区別するため「建て込む」とすることが多いです。 「建」は、「たてる・たつ・おこす・つくる」という意味があり、「建築用語」としてよく使用される漢字です。 「家を建てる」のときも「建てる」と書き表しますよね。 「家が立ち並ぶ」も、家に関することなので、「建て込む」と書き表し、「立て込む」と区別しています。
「立ち込む」とすると、2つ目の意味である「多人数がこみあう」「雑踏(ざっとう)する」という意味になります。 ある場所に多くの人が集まっていて混雑している様子を表現する言い回しです。 忙しいという意味の「立て込む」と混んでいるという意味の「立て込む」をよりわかりやすく使い分けたい場合は「立ち込む」という言い回しを使用したほうがわかりやすいでしょう。
「立て込める」の意味は「扉や障子をしめきること」です。 部屋の扉や障子といった建具を締め切って、他の人が入れない空間を作ることを「立て込める」といいます。 「閉めて込める」でも同義で、「閉め切る」と言い換えると分かりやすいでしょう。 「憂鬱な気持ちが立て込める」などと精神面に関していうこともできます。 また、「立ち込める」は「(気体などが)あたり一面を覆う」という意味にもなります。 例えば、「煙りが立ち込めた」などといいます。
「立て込む」の古語の意味は、 ①閉じ込める ②戸・障子などを締め切る です。 ①の「閉じ込める」は、部屋などに入れ、閉めきってしまうことで自由に出入りできないようにしてしまうことを指します。 今昔物語にも、この「閉じ込める」という意味で使用されています。 ②の「戸・障子などを締め切る」という表現は、徒然草にもでてきます。 上述したように、現代でも「閉じ込める」「締め切る」といった意味で「立て込む」という表現を使用することがありますが、古語の「立て込む」には「用事や予定が詰まっている」や「込み合う」という意味はありません。
自分が忙しいことをビジネスメールや電話対応で述べる際は「忙しい」ではなく「立て込む」を使います。 「立て込む」は「(自分のせいではなく)外的要因によって忙しい」と理由をやんわり伝える言い方なので、単に「忙しい」と言うより丁寧になります。 「あなたの要望に応えたいのは山々だが自分ではどうすることもできない」という正当化するニュアンスを持ちます。 ビジネスシーンで自分に対して「忙しい」と使うのは避けましょう。 「忙しい」だけだと「自分の能力がなくて/生産性が低くて/優先順位が付けられなくて、手が回らない」という意味も含むので、目上の相手に対して使用すると失礼にあたります。 例えば、何かをお願いしたときに「ちょっと今忙しいんで...」と言われたらどうでしょうか。 「立て込んでいて...」と言われたほうがまだ「それなら仕方ない」と思えますよね。
「立て込む」「立て込んでいる」を実際に使用する時は、丁寧語「ます」「おります」を使い
と表現することで、敬語(丁寧語)になります。 「います」は、「いる」という言葉に丁寧語の「ます」をつけた言葉です。 「おります」は、「いる」の丁重語の「おる」に丁寧語の「ます」をつけた言葉です。 つまり、「いる」を丁寧語にすると「います」となり、さらに「います」丁重語にすると「おります」となるということです。 「おります」は、自分の行動をへりくだり、話の聞き手に敬意を示す表現です。
例文
ビジネスシーンなどで「立て込む」を使う場面は色々あります。 例えば、
などがあります。 それぞれの例文を見ていきましょう。
例文
「立て込む」は、ビジネスシーンでも、忙しいときに使用できる表現ではありますが、多用しないように注意しましょう。 仕事が立て込んでいる状況が長期的に続いているのは仕事の仕方に問題があるのは明らかです。 いくら立て込んでいても、先方に迷惑をかけるのはよくないことです。 本当に忙しい場合は致し方ないですが、基本的にメール対応はすぐに実行し、誠意をみせましょう。 本当に長期的に立て込んでいる場合は、いつにできるのか伝えるか、担当者を変えてもらうべきでしょう。
「慌ただしい(あわただしい)」という表現も、自分が忙しい時に使える「立て込む」の言い換え表現です。 「慌ただしい」とは、しなければいけないことに、急き立てられていたり、せわしなく落ち着かない様子を表す言葉です。 「今慌ただしくて...」と言われても「忙しいんだな」ということがわかりますよね。 しかし、「慌ただしい」は自分が忙しい時に使える言い換えですが、そこまで丁寧な表現ではないので気の知れた取引先に限定すべし!
例文
自分ではなく、相手が忙しい時には「ご多忙」「ご多用」といった言葉を使用します。 「ご多忙」の意味は「非常に忙しいこと」です。 「ご多忙」は、「多忙」という言葉に丁寧語の「ご」をつけた言葉で、「非常に忙しいこと」という意味があります。 何かと忙しくしている様子に対して使用する言葉です。 「ご多忙」は、敬語である為目上の相手にも使用することができ、例えば、「社長は接待が多く、近頃はご多忙のようですが・・・」というように使用します。 また、「忙しいところ申し訳ないのですが....」というような意味で、ビジネスメールなどで要望・依頼をするときのクッション言葉としても使用できます。 「ご多用」の意味は「たくさん用事があること」です。 「ご多用」は「多用」という言葉に尊敬を表す接続語の「ご」をつけた言葉です。 「ご多忙」と同じように、「ご多用とは存じますが...」といった何か頼み事をするときなどに使用できるクッション用語として使用することができますが、特に「ご多忙」「ご多用」の使い分けはありません。
例文
「取り込む」の意味は「不意な出来事などで、忙しい」です。 ただビジネスシーンでは相手に不意な出来事がない場合でも、申し訳ない気持ちを強調するために使うことがあります。 「取り込む」を使用する場合は、「取り込み」と名詞の形にして使います。 相手の動作に対して使うので、尊敬を表す敬語の接頭語「お」を使うのが普通です。 例えば、
といった言い回しで使用します。 また、自分が忙しい場合も「取り込む」を使うことができます。 その場合、尊敬を表す接頭語の「お」は使わず、 「只今取り込み中でして...」というように使用します。
例文
ビジネスシーンでは使いませんが「立て込む」の類語には、
などもあります。 どの表現も、何かやることでいっぱいいっぱいになっていて、忙しい様子が伝わります。
例文
自分が暇なことをいう表現には、
などがあります。 どの表現も、自分に暇がある・時間が有るという意味があります。 また、相手が暇であることを意味する表現としては、
などがあります。 「時間があれば◯◯してください」といった意味で使用される表現です。 従って、お願いをするときなどに使用すると「暇なときで良いんだな」と思われてしまうので、急ぎの用をお願いするときには使わないほうがいい表現です。
自分が暇なことを伝える例文
相手が暇なことを伝える例文
「立て込む」は、「忙しい」という意味のある言葉なので、反対語は「忙しくない」という意味のある表現になります。 上記では、ビジネスで使用できる対義語を紹介しましたが、「ビジネス以外でも使用できる類語」としては、
などがあります。 どの表現も、やることがなく、手があいている状態を表現する言葉です。
例文
「立て込む」の最も一般的な英語表現は形容詞「busy」です。
の形で使います。 「busy」よりもっと忙しい意味を持つ英単語に「hectic」があります。 「hectic」は「猛烈に忙しい」という意味になります。
I'm so busy with work.
仕事が立て込んでいる。
「忙しくて見動き取れないほどだ」という表現には、
があります。 「caught」は「catch」の過去分詞形です。 「swamp」は「沼」を意味し「be swamped」は直訳で「沼にはまった」という意味ですが、比喩的に「忙しすぎて見動き取れない」という意味になります。
で「手一杯になる」=「忙しい」という意味になります。
「a long day」というイディオム表現もあります。 直訳すると「長い一日」ですが、「忙しい一日」という意味になります。
It's been a long day today.
今日はずっと立て込んでいる。
いかがでしたか? 「立て込む」について理解していただけたでしょうか。 ✓「立て込む」の意味は「多くのことが一気に重なること」 ✓「立て込む」には「こみあう」「家などがぎっしりと建ち並ぶ様子」という意味もある ✓「立て込める」の意味は「扉や障子をしめきること」 ✓ビジネスシーンで自分が「忙しい」時は「立て込む」を使う。