「門出」という言葉をご存知でしょうか。卒業や入学のお祝いの言葉としてもよく使用される言葉ですよね。今回は、「門出」の正しい意味と使い方を例文付きで紹介します。また、「門出」の類語や英語表現も合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「門出」の読み方は、「かどで」です。 「かどいで」と読んでいた時代もありますが、現在は「かどで」と読まれますので、「かどで」で覚えておきましょう。 「門」は、音読みで「モン」訓読みで「かど」と読みます。 「出」は、音読みで「シュツ・スイ」訓読みで「でる・だす」と読みます。 それぞれ訓読みをして「かどで」と読んでいます。
「門出」の意味は2つあります。 「門出」の1つ目の意味は、「家を出発する」です。 例えば、長旅に出るために家を出発することを、「門出」と言います。 「門出」のもう一つの意味は「新しい生活を始める」です。 実際に旅に出たり、家をでるわけではなく、「新しい道に進んでいく」ことを「門出」と表現することができるのです。
「門出」という言葉の由来は、文字通り「門を出る」というところから来ています。 この場合の「門」とは「家の門」を指しています。 そこから、そのまま「家の門を出る」=門出になりました。 また、今のように交通手段が発達しているわけではなかった昔、「家を出る」という行為は命がけなものであったため、家を出るときはいつも「強い意思」をもたなければならないものでした。 そこから強い意思をもって、新しい道に進んでいくといった様子にも「門出」という言葉を使用するようになりました。
「門出」は「首途」と書くこともできます。 「首途」は「くびと」ではなく、「かどで」と読みます。 「首」は「物事のはじめ」を意味し、「途」は「どこまでも伸びる道」と意味しています。 「首途」は当て字ですが、「門出」と意味の違いはありません。 「首途」には「家を出る」という意味もありますが、「どこまでも伸びるを歩き始める」というニュアンスで「新しいはじまり」や「旅立ち」の時に使用されることが多いです。
「門出」は、古語でも使用されていた言葉で、「源氏物語」にも「門出」という言葉が登場しています。 古語では、「かどいで」とも読み、
という意味で使用されていました。 なぜ「仮の」という意味があるかというと、平安時代の旅は吉日・吉方(えほう)を選んでひとまず近くに移ることが多かったからです。 そこで準備を整えてから、旅の日程の都合のよう日に出発するのが普通でした。
紀貫之によって書かれた日本最古の日記『土佐日記』の冒頭部分でも「門出」という文言が登場します。
男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。それの年のしはすの二十日あまり一日の、戌の時に門出す。
『土佐日記』では、筆者は男性でありながら女性に仮託し、実情よりも心情に重きが置かれています。 中学または高校の古文の授業でやったことがある人も多いのではないでしょうか?
スイートピーの花言葉は、「門出」です。 その他にも、
という花言葉があり、まさに「卒業」にぴったりな花です。 スイートピーの花言葉の由来は、スイートピーの花が飛び立とうとしている蝶の形に見えるからではないかと言われています。
「門出」は入学式・卒業式・結婚式などのめでたい場面でのお祝いの言葉として使用します。 今までやってきたことを終えて新しいスタートを切る人、人生の大きな節目を迎える人に対して、お祝いや応援の言葉を述べるときに使います。 ビジネスシーンでは栄転や転職する人の送別会などで使われます。
例文
かしこまったお祝いの場面以外でも、「門出に立ち会う」「門出を応援する」などと一般的に使用することがあります。 例えば、
といった言い回しがあります。
例文
「門出送り」は、「かどでおくり」と言います。 「門出送り」は、「卒業生が門から出るのを見送ること」です。 卒業式が終わって出てきた卒業生を、在校生がお祝いの言葉を拍手で送りだすことを、「門出送り」といいます。 よく卒業式の後、在校生が門の前で両手を上げて、アーチを作りますよね。あれが「門出送り」です。
よく使用されている表現ですが、
などは厳密には二重表現ということができます。 なぜなら、「門出」という言葉自体に「新しい生活」という意味が含まれているからです。 つまり、「頭痛が痛い」と言っているのと同じです。 しかし、この世の中は二重表現であっても、多くの人が使うことによって一般化されることがあります。 例えば、「内定が決まる」「一番最初」など、何気なく使っている二重表現って実はたくさんあるのです! よって、「新たな門出」なども許容ということになります。
「門出を開く」はよくある誤用で、正しくは「門戸を開く」です。 「門戸開く」は「もんこをひらく」と読みます。 「門戸」は「門」と「戸」という家の出入り口を意味する言葉で、「家の出入り口」だけではなく、家そのものを指す言葉として使用することもあります。 また、「外部のものを受け入れるための入り口」という意味で使用されたり、何かを始めときに「入門」という意味で「門戸をうかがう」といった使い方をします。 「門戸を開く」は、門を開き、外部との交流を自由にするという意味で使用される表現です。 「門出を開く」では意味が通じなくなってしまうので、「門出」と「門戸」は非常に似ている表現ですが、混同してしまわないようにしましょう。
例文
上司や取引先など目上の人の門出を祝う言葉に「新天地でのご活躍」があります。 「新天地でのご活躍を期待しております」などと「期待」という言葉を使ってしまうと上から目線な響きになってしまうので不適切です。 正しくは「新天地でのご活躍をお祈り申し上げます」「新天地での益々のご活躍を祈念しております」などとするとよいでしょう。
「船出」は、「ふなで」と読みます。 「船出」の意味は、「船から港が出ること」です。 「船が出る」で「船出」ですが、船が出航することだけではく、「船を出して進んでいく」ということから転じて「新しい生活を始めること」という意味で使用することもできます。 「船出」も、「門出」と同様に、卒業や入学といったお祝いの場で使用することができる表現です。
例文
「出立」は、「しゅったつ」と読みます。 「出立」の意味は、「旅に出発すること」です。 また、「物事を新しくはじめること」という意味で使用することもできる言葉です。 基本的に、何かを計画をしていて、その計画に向けて行動をし始めるような場面で「出立」という言葉を使用します。 小説など、文章の中で表現されることが多く、話し言葉としてはあまり使用されません。
例文
「出発」は、「しゅっぱつ」と読みます。 「出発」の意味は、「目的に向かって出かけること」「物事を始めること」です。 どこか目的地に向かって行くときに「出発する」という表現を使用することが一般的ですよね。 その他にも、「社会人として出発した」というように、新しい道に進みだしたことを表現することもできます。 先程紹介した、「出立」と非常に似ていますが、「出発」は、新しい道に向けて歩みだした時に使用される言葉ですが、「出立」は、どちらかと言うと、「新しい道に向けて歩みだす為に行動を起こす」というニュアンスの違いがあります。
例文
「壮途」は「そうと」と読みます。 「壮途」の意味は、「前途に大きな希望をもった勇ましい門出」という意味があります。 「荘」という漢字には、「つよい・素晴らしい」という意味があります。 「途」は、「みち」「みちすじ」という意味があります。 したがって、「壮途」には「強く素晴らしい道筋」という意味があるということがわかります。 「門出」と同じように、新しい道に進んでいくことを「壮途」という言葉を使って表現することができます。
例文
「鹿島立ち」は、「かしまだち」と読みます。 「鹿島立ち」の意味は、「旅行に出発すること」です。 その昔、武士が旅立つときに、道中の無事を鹿島神宮に祈願したことから、「旅行に出る」「旅立ち」という意味で「鹿島を立つ」=「鹿島立ち」という表現が使用されるようになりました。 ちなみに、「鹿島立ち」の語源となっている「鹿島神宮」は、今でも「初まりの地」としてパワースポットになっているそうです!
例文
「旅立ち」は「たびだち」と読みます。 「旅立ち」の意味は、「旅に出ること」です。 転じて、「組織から卒業すること」を「旅立ち」と表現するようになりました。 「門出」は、卒業、入学などどちらの場面でも使用することができますが、「旅立ち」は「旅立っていく」ということなので、「卒業」「退職」といった、別れの場面で使用する言葉です。
例文
「巣立ち」は、「すだち」と読みます。 「巣立ち」の意味は、「ひなが大きくなって巣を離れること」です。 卵から孵ったひなは、大きくなるまで巣の中で親鳥に育ててもらいますが、一人で生きていけるほど成長して一人で巣を飛び立っていきます。 したがって、「巣立ち」とは、「ひなが大きく成長し、親元を離れていくこと」を意味している言葉でもあります。 そこから転じて、卒業など人が大きく成長してその場を離れていく様子を「巣立ち」と表現するようになりました。 実家を離れて一人で生活していくような場面や、学校、会社といった大きな組織から離れ新しい道に進んでく場面で使用される表現です。 「巣立ち」も、「卒業」などお別れの場面で使用することが多い言葉であると言えるでしょう。
例文
「家を出る」を意味する英単語には
などがあります。
「新しい首途」には
などがあります。 新しく門出する人に対して使える表現に「Bon voyage!」があります。 これはフランス語が語源で、「道中ご無事で」という意味になります。
いかがでしたか? 「門出」という言葉について理解していただけたでしょうか。 ✓「門出」の読み方は、「かどで」です。 ✓「門出」の意味は、①家を出発する ②新しい生活を始める ✓門出」の由来は文字通り「門を出る」 ✓「門出」の漢字は「首途」とも書くが、「門出」が一般的 ✓「門出」は入学式・卒業式・結婚式などのお祝いの言葉で使う ✓「門出に立ち会う」「門出を応援する」などと一般的に使う など