「承前」という言葉をご存知ですか?最近ではツイッターの投稿などでも目にすることが多いかもしれませんが、「承前」はネット用語ではありません。今回は、「承前」という言葉の意味や使い方を例文付きで紹介します。また、類語や英語表現も合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「承前」は、「しょうぜん」と読みます。 「承」は音読みで「ショウ」、訓読みで「うけたまわる」 「前」は音読みで「ゼン」、訓読みで「まえ」
「承前」の意味は、「前の文章を受け継ぐこと」です。 「承」という漢字には「受け継ぐ」「承る」という意味があります。 「前」という漢字には、「空間的に前・進んでいくほう」「時間的に前」という意味があります。 漢字の意味の組み合わせ的にも「前のものを、うけつぐ」という意味であるということがおわかりいただけるかと思います。 前から続いている文章の続きを書くときの文頭に「承前」という言葉をつけることで、「前から続いている文章の続きなんだな」ということがわかります。
「承前」という言葉は、上述したように「前の文章を受け継ぐこと」という意味で使用される言葉なので、使用場面は文章を書くときになります。 基本的にビジネスメールなど、かしこまった文章で使用される言葉です。 何らかの理由でメールを分けて送る場合に、後から送るメールに「承前」という言葉をつけると、前のメールの続きであることが相手に伝わります。 区切れた後の、次に書き出す文頭や、二通目以降の文頭に「承前」と書き加えるのが正しい使用方法です。 ビジネスメールでは「前の文章の続きなんですが〜」と言うよりも「承前」とした方がスマートですね。
例文
「承前」は、最近ツイッターでも使用している人が多いですよね。 ツイッター投稿は一度に投稿できる文字数が決まっていますので、一つのツイートに書ききれず文字数をオーバーした場合に、ツイートをいくつかわけて投稿することが一般的です。 その際「前のツイートの続きです」という意味で「承前」という言葉を使用します。 ツイッターでは、
など、カッコの使い方は人それぞれバラエティーがあります。 しかし、「承前」は決してネット用語ではありません。 ビジネスメールなどでも使用することができるかしこまった表現です。
例文
(承前)現在は自宅警備員の仕事をしっかり勤め上げています。
(承前)すべて冷食です。
「承前」は、小説の冒頭にも使用されます。 小説においても「承前」で「前の話の続き」という意味になります。 連続小説などの冒頭に使用し、「前からの続きであり、新しいお話ではありませんよ」ということを、読者に伝えています。
例文
「承前敬語」は誤用で、「承前啓後」が正しい表記になります。 「承前啓後」は、「しょうぜんけいご」と読みます。 「承前啓後」の意味は、「昔から受け継いできた物を大事にして、未来を切り開くこと」です。 この場合の「承前」も「前のものを受け継ぐ」という意味で使用されていて、昔から伝わる学問や技術を生かして、未来に繋げるという意味になります。 簡単に言えば、「代々受け継ぐ」という意味で、ビジネスシーンなどかしこまった場面で使用される表現です。 ちなみに「承前敬語」という言葉はありませんので、書き間違いや変換ミスには気をつけましょう。 また、「承前啓後」の中国語簡体字は「承前启后」となります。
英文法用語に「承前語句」があります。 「承前語句」とは「it」に代表される前の文章の意味を受け継いで「それ、あれ、その」などと指す言葉です。 this, these, that, those, he, she, they, the,,,など多くあります。 「承前代名詞」という場合もあります。
「承前料理」もよく見かける誤用で、正しくは「精進料理」です。 「精進料理」は「しょうじんりょうり」と読みます。 「精進料理」とは、仏教の教えに基づいて、殺生や煩悩に刺激を与えないことを主眼にして調理された料理のことを言います。 主に、野菜や豆、穀類を調理した料理で、お寺で生活をする僧が食べる大変質素な食事としてしられています。 響きがとても似ていますが「承前料理」というものはありません。
「前述」は、「ぜんじゅつ」と読みます。 「前述」の意味は、「前に述べたこと」です。 「前」という漢字は、「承前」と同じように「空間的に前・進んでいくほう」「時間的に前」という意味で使用されています。 「述」は、「のべる・言う」という意味があります。 なので、「前述」は「前に述べる」という意味になるということがわかります。 前にも述べたことを繰り返し言うときに、「前に述べましたが〜」という意味で「前述した通り〜」といった言い回しで使用されます。
例文
「先述」は、「せんじゅつ」と読みます。 「先述」は、先程紹介したばかりの「前述」の「前」が「先」になったものです。 つまり、「先に述べる」と書いて「先述」となっているので、「先述」は、「先に述べたこと」という意味で使用することができます。 「前」も「先」も、変わらないので、「前述」を「先述」に言い換えることも可能です。
例文
「既出」は、「きしゅつ」と読みます。 「そくで」「がいしゅつ」ではありませんので、読み間違いに注意しましょう! 「既出」の意味は、「すでにでている・すでに掲げている」です。 「既」という漢字には、「すでに・もはや・物事が進んでいる」という意味があり、 「出」には、「あらわれる」という意味があります。 したがって、「既出」は「すでに出ている」という意味になります。 例えば、「既出ですが、再度提案させていただきます」といったように、「すでに提案しましたが〜」といった意味や、「すでに前にも出ていますが〜」といった意味合いで使用されます。 インターネットのコメントなどでも、状況を提供するときに「既出だったらすみません」と言われることが多いですよね。
例文
「続き」の意味は「続いていく具合」「あとに続いていく部分」です。 例えば、「前回の続きですが〜」と使用すれば、聞き手に「前話したことの続きの話をこれからするんだな」ということがわかります。 「これは前回の続き」という情報を聞き手や読み手に与えることで、読み手は前回聞いたり、読んだりした情報を思い出してくれるので、いちいち「前回はこうで〜」という説明をしなくても済みます。 あくまでも「続き」なので、新しい話として聞き手が情報を取り入れてしまうと、何を言っているのかちんぷんかんぷんになってしまうんですよね。 「承前」「先述」などは、文章で使用されますが、「続き」は口語でも使用することができます。
例文
「前陳」は、「ぜんちん」と読みます。 「前陳」は、スーパーなど商品を品出しするときに、「古いものを手前に陳列する」(賞味期限の関係で、新しいものは後ろに並べなければいけない)という意味で使用される言葉として知られているのではないでしょうか。 実は、「陳」には「並べる」という意味だけではなく「述べる・告げる」という意味もあります。 つまり、「前陳」で「前に述べたこと」という意味になり、「前述」「先述」と同義であると言えます。
例文
「承前」の逆の意味ということで、「承後」という熟語があってもよい気がしますが、このような日本語は存在しません。 「承前」が、「前の文章を受け継ぐ」という意味なので、「承前」という言葉の対義語には、「後のものを受け継ぐ」「後に述べる」といった意味のある言葉があてはまります。 いくつか見てみましょう。
「後述」は、「こうじゅつ」と読みます。 「後述」は、「後で述べること」という意味があります。 「後」は、「のち・あと」という意味があり、「述」は「のべる」という意味があります。 したがって、「後で述べる」という意味になります。 「後述」は、「前述」や「先述」の反対に「後で述べます」「あとで説明します」というニュアンスで使用される言葉で、メールなど文章で使用されます。
例文
「下記」は「かき」と読みます。 「下記」は、「下、または後ろに記してあること」という意味です。 「下」には、「した」という意味があり、「記」は「しるす」という意味があります。 したがって、「下に記す」という意味になり、ある文章や記事の下(後)に書き記されていることを表す場合に使います。 例えば、「詳細は下記の通り」「日時や場所については下記をご参照ください」などと記します。 ただし、「承前」や「前述」などとは違い、「下記」は内容が二枚目や三枚目など別のページに及ぶ場合は使うことができません。
例文
「以下」は「いか」と読みます。 「以下」の意味は「それよりも後。その文章から後に述べること」です。 「以下」と「下記」は、非常に似ていますが、「以下」は長文メールや書類が何枚もある場合、「下記」は短文メールや書類が一枚に収まる場合に使用することができるという違いがあります。 それぞれの書き方としては、
例:「事故が起きた原因は以下の通りです。ひとつめの理由は◯◯〜」 例:「事故が起きた原因は下記の通りです。 原因その一・・・***」
となります。
「以下」を使用した例文
「承前」の英語表現は「continued from previous...」です。
という意味になります。
とすると「次のページに続く」という逆の意味になるので注意です。 物語の最後で使う「to be continued」も、「まだ物語は終わっていない」という意味になります。
「再び始める」を意味する英語は、
があります。 「前回終わったところから」を意味する英語は、
となります。 これらの表現を組み合わせると「前回の続きから始める」という意味になります。 口語ではこれらの表現を使うとよいでしょう。
Okay, then, let me pick up where we left off.
はい、それでは、前回の話の続きをさせてください。
「温故知新」は音読みで「おんこちしん」です。 「温故知新」の意味は「昔のことを研究して、そこから新しい知識や道理を見つけ出すこと」です。 「温故知新」における「温」は、「たずねる」と読みます。 そして「尋ねる」「習う」「復習する」「よみがえらせる」といった意味を持っています。 「故」という字は、「昔、以前」「もとより、はじめから」「古い」などといった意味があります。 それらが組み合わさり「過去のことを研究する」といった意味になりました。 「知新」はそのまま「知る」と「新しい」で「新しいことを知る、新しい知識をもつ」といった意味になります。
例文
「覧古考新」は、「らんここうしん」 「覧古考新」の意味は「古い事柄を顧みて、新しい問題を考察すること」です。 上述した「温故知新」と非常に良くにている四字熟語として知られていますが、 「温故知新」は、「昔のことから、新しい知識や道理を見つける」 「覧古考新」は、「昔のことから、新しい問題を考察すること」 であるため、意味合いが微妙に違いますよね。 「温故知新」は「古きを知り新しきを知る」 「覧古考新」は「古きを顧みて新しきを考察する」 と考えるとわかりやすいでしょう。 どちらにしても、昔のことを引き継ぎ、未来のために活かすという意味があるので、「前のものを引き継ぐ」という意味のある「承前啓後」の類語になります。
例文
「彰往察来」は、「しゅうおうらいさつ」と読みます。 「彰往察来」の意味は、「昔の出来事を明らかにして、これから先のことを予測すること」です。 「彰往察来」は、「往を彰かにして来を察す」とも言います。 「章」とには「明らかにする」という意味があり、古いことを明らかにして未来を考えるという意味で使用される四字熟語です。 「彰往察来」も「温故知新」と似ていますが、「彰往察来」のほうが、「未来を考える」というニュアンスが強いです。
例文
「不易流行」は、「ふえきりゅうこう」と読みます。 「不易」の意味は「いつまでも変わらないこと」です。 「流行」は「時代に応じて変化すること」という意味があります。 「不易流行」は、「いつまでも変化をしないことと、時代に応じて変化することは同じぐらい大切だ」という意味の四字熟語です。 「不易流行」は、元々松尾芭蕉が述べていた理念です。 現在では、ビジネスシーンでも使用される四字熟語です。 また、「本来の形を大切にしながら、新しい要素を取り入れて成長していきましょう」といった意味で経営理念にしている会社も多いです。
例文
「悄然」の意味は、「気にかかることがあって、元気がないこと」です。 「悄」は「しょんぼりする、元気がなくなること」を意味します。 気力を失って落ち込んでいること、がっかりしていることを表します。古典においては「ひっそとしていて寂しいさま」という意味で使われています。 「悄然」は主に書き言葉として用います。話し言葉として使うことは少ないです。 例えば、「落選と聞き、悄然としてしまう」と用います。「落選と聞いて、落ち込む」というニュアンスになります。
例文
「悚然/竦然」の意味は、「ひどく恐れる様」「ぞっとしてすくむ様」です。 「悚/竦」には、「おそれる・びくびくする」という意味があります。 後に続く「然」は、状態を表す形容詞の後に添える語として使用されています。 主に、恐怖で身動きがとれないような状態を言い表す言葉です。 「悚然/竦然とする」「悚然/竦然〜・・・とて◯◯◯を感じた」というような使い方をします。
例文
「蕭然」の意味は、「ひっそりとしていて者寂しい様子」です。 「蕭」という漢字には「ものさびしい・しずかな」という意味があります。 「然」は、上述した通り、状態を表す形容詞の後に添える語として使用されています。 がらんとしていて寂しいような様子を「蕭然」という言葉を使用して表現することができます。 自然に対してよく使用される「〜たる」という表現を使って、「蕭然たる〜...」という使い方をすることもあります。
例文
「小善」の意味は、「ちょっとした善行」です。 「善行」とは、「道徳にかなった良い行い」のことを言います。 つまり、「小」は「小さいこと」という意味で「善」は「良い行い」という意味で使用されているということがわかります。
例文
いかがでしたか? 「承前」という言葉について理解していただけたでしょうか。 ✓「承前」の読み方は「しょうぜん」 ✓「承前」の意味は「前の文章を受け継ぐこと」 ✓「承前」はビジネスメールやツイッターで使用される。 ✓「承前」の類語には「前述」「先述」などがある