「キャッチアップ」というビジネス用語を紹介していきます。まずは語源である英語の意味を説明します。「キャッチアップ」という言葉は様々な業界で色々な使われ方がしています。そこで今回は「キャッチアップ」の言葉の意味と使い方を解説していきます。
「キャッチアップ」の基本的な意味は「追いつくこと」です。 優位な者や先行する者を追いかけてそこに並ぼうとする努力を指します。 自分が遅れていることが前提であり、「今はまだ遅れていないが、今後遅れないように付いていく」という意味はないので注意しましょう。 また、「追い抜かす。追いかけている対象を超える」という意味もありません。 「キャッチアップ」の原義は「追いつくこと」ですが、業界ごとに微妙に違うニュアンスで使用します。
カタカナ語「キャッチアップ」は英語「catch up」に由来します。 動詞だと「catch up」ですが、名詞はハイフンを入れて「catch-up」とします。 英語「catch up」の意味は「追いつく」なので、カタカナ語「キャッチアップ」は英語の意味をそのまま引き継いだことになります。
ビジネス用語「キャッチアップ」の意味は、空間的に追い付くことではなく、仕事や学習の進捗の程度に対して使います。 欠席や出張、入社時期の違いなどによる、学習や仕事の進み具合の遅れ(他の従業員と比較)を取り戻す作業を指します。 未経験の業界で職に就いた時に、すでにその業界にいる人たちとのブランクを埋めようとする行為を指すこともあります。 未経験の仕事でキャッチアップすることは具体的に、業務内容やノウハウ、業界構造、ビジネスモデル、職場の人間関係、ナレッジなどがあります。
「キャッチアップ」の例文
経済用語の「キャッチアップ」の意味は、「発展途上国が経済、技術、インフラなどの面で、先進国に追いつこうとすること」です。 特定の分野では発展途上国が進んでいる場合があるので、必ずしも発展途上国が先進国をキャッチアップするという構図にはなりません。 ちなみに、先進国に広がる前に発展途上国で最初に見られる技術革新のことを「リバース・イノベーション」といいます。 国そのものだけではなく、国のあり方や制度などに対しても「キャッチアップ」という言葉は使うことができます。
「キャッチアップ」の例文
語源が英語だけあって、インターネット上やIT業界では「キャッチアップ」が様々な意味で使われています。 ニュースリーダー(RSS)で未読で放置されたニュースを、一気に既読にする機能のことを「キャッチアップ」機能といいます。 未読がずっと蓄積していると、新着のニュースを受信することができないため「キャッチアップ」機能が必須となります。 Tumblrなどのサービスを使い、ネット上にある画像などをワンクリックで取り込む作業を「キャッチアップ」ということもあります。 またコンピュータゲーム用語で「キャッチアップ経験値(キャッチアップexp)」という言葉もあります。 これは自分より強い相手を倒したときにもらえる経験値のことを指します。
医療用語で「キャッチアップ現象」というものがあります。 2016年度の看護師国家試験でも選択問題で出題され話題になりました。 「キャッチアップ現象」とは母体の中にいる赤ちゃんが、出産までの期間中に何らかの原因で成長が遅くなっても、後から一気に成長が加速し問題なく出生することができることを指します。 「キャッチアップ障害(ピックアップ障害ともいう)」は卵子を卵管に取り込む卵管采が機能しない状態のことを指します。 排卵をしても精子の待つ卵管膨大部に取り込めなければ妊娠できないということになります。
放送用語では「キャッチアップ放送」「キャッチアップ配信」というものがあります。 テレビ放送やインターネット配信の番組や動画を、後からもう一度配信する「再放送」のことを指します。 リアルタイムで視聴できなかった人に向けて再度番組を配信することで、番組の認知度を上げ今後の視聴率につなげようというのが根本的な考え方です。 オンデマンドのインターネット放送が増えた現在、「キャッチアップ放送」という概念は風化しつつあります。
水泳に関する用語でも「キャッチアップクロール」というものがあります。 「キャッチアップクロール」とは初心者向けのクロールの泳ぎ方で、両手を一瞬だけですが前で揃える泳ぎ方のことを指します。
「追い上げ」の意味は「 激しく追いかけて、相手との距離や差をしだいに縮めること」です。 「キャッチアップ」と同義語であり、言い換えと使うことができます。 「差が縮まる」という意味では「肉迫する」「僅差に迫る」などの表現もあります。
「追い上げ」と同じく「追」を使った熟語には「追随(ついずい)」「追尾(ついび)」「追走(ついそう)」などがあります。 これらもすべて「キャッチアップ」の類語になります。
同じくカタカナ語(英語)の類語には「チェイス(chase)」があります。 「チェイス」も「追う」という意味ですが、「獲得するために追いかける」という意味なので、「キャッチアップ」とはニュアンスが違います。
「巻き返し」は「劣勢から勢いを盛り返して反撃すること」という意味です。 「巻き返しに出る」「巻き返しを図る」の形で使います。 「劣勢から盛り返す」という意味では「キャッチアップ」と「巻き返し」は類語といえます。 しかし「キャッチアップ」には「反撃する」という意味は含まれません。「巻き返し」は政治やスポーツで使用されます。
「ビハインド」の意味は、「後ろにあること」「試合などで負けていること」です。 何かの後ろにある状態や、後れをとっている状態を「ビハインド」といいます。 「ビハインドする」はビジネスは「遅れる」という意味で使用されます。 例えば、プロジェクトの進捗状況などが予定よりも遅れてしまっていることを「ビハインドする」と言い表わし、「遅れを取り戻すこと」を「ビハインドを取り戻す」と言い表します。
「後塵を拝する」は「こうじんをはいする」と読みます。 「後塵を拝する」は「人に先んじられる」「地位や権勢のある人に従うこと」です。 「後塵」とは、馬車などが通りすぎたあとに立つ砂埃のことです。 「砂埃をあびる」ということは「人に先を越されている」ということであり、そこから「遅れをとること」を「後塵を拝する」というようになりました。 また、「すぐれた権力者の追従する」という意味で使用されます。
「後手に回る」は「ごてにまわる」といいます。 相手に先を越され、受け身の立場に立たされることを「後手に回る」といいます。 上述した「後塵を拝する」と同義です。
「キャッチアップ」の英語は、当たり前ですが「catch up」を使います。ただし、続く前置詞によって意味が変わるので注意です。 「catch up with...」で「...に空間的に追い付く」という意味です。 アメリカ英語では「catch up to...」とすることもあります。 「catch up on...」だと「(情報や流行)に追いつく」という意味になります。 「overtake」だと「追い抜かす」という意味なので似ていますが違う意味です。
She was so fast that I couldn't catch up with her.
彼女はかなり速くて、追いつくことができなかった。
When I hang out with her, I need to catch up on all the gossip.
彼女と遊びに行くときは、最新の芸能情報を頭に入れておかなきゃ。
「catch up」はすでに自分が遅れていることが前提であり、カタカナ語「キャッチアップ」もその意味で限定して使うのが正しいと上述しました。 「遅れていること」が前提でなく、「遅れないように」ついていくの意味の英語は「keep up」です。 「keep up wtih...」で「...においつく」という意味になります。 また「keep myself updated with...」で「自分を...に関してアップデートし続ける」という意味になります。
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