「於いて」という言葉をご存知でしょうか。「〜に於いて」「〜に於いては」といったように使います。では、「於いて」の意味についてしっかりと理解しているでしょうか。「於いて」は日常会話やビジネスシーンなど、様々な場面において使われています。よく使われている言葉ですが、間違って使われている、意味がわからずに使っているということも多いと思います。正しく使うためには、意味についてきちんと知っておくことが必要です。そこで今回は「於いて」の意味や使い方、類語、「ついて」との違いについて解説していきます。適切に知って、上手く使えるようにしましょう!
「於いて」は<おいて>と読みます。 「於」は音読みで「オ・ヨ」、訓読みで「おいて・おける」と読みます。
「おいて」という言葉は、「置く(おく)」の連用形に接続助詞の「て」が付いた「オキテ」の音便形で、元々大和言葉として日本で使われていました。 漢文で使用される「於」という漢字の訓読みとして「おいて」が採用され、そのまま「於いて」という言葉が生まれました。
「於いて」は場所や位置を指します。「〜で」「〜にて」という意味です。 ある物事が行われている場所を表すことができます。 「〜の場所で」という意味で、「◯◯に於いて」という形で用います。 例えば、「大阪に於いてイベントが開催される」といったように使います。これは「大阪でイベントが行われる」という意味です。 場所を示す「於いて」はパーティーやイベントの招待状や、冠婚葬祭の案内状を出すときに使われることが多いです。他にも、ビジネスシーンにおいて講習会や報告会などの案内状を出すときに使います。
例文
「於いて」は時間を指します。「〜のときに」「〜のさいに」という意味です。 ある物事が行われている時間を表すことができます。 「〜の時に」という意味で、「◯◯に於いて」という形で用います。 例えば、「過去に於いて、そういうこともあった」といったように使います。「過去に於いて」とは「過去の時点では」という意味になります。 時間を示す「於いて」は、「◯◯時に於いて」「◯月◯日に於いて」といったように使えます。 また、「大正時代に於いて」「バブル時代に於いて」などと出来事に対しても使うことができます。
例文
「於いて」はある事柄と関係していることを指します。「〜について」「〜に関して」という意味です。 「〜に関連して」という意味で、「◯◯に於いて」という形で用います。 例えば、「Aさんは生物に於いて新しい研究を発表した」といったように使います。これは「生物に関する、新しい研究を発表する」という意味です。 「◯◯に於いて」の「◯◯」の部分には、物事・事柄・行動に関する言葉が入ります。 ある物事との関わりを示す場合に使うので、関連がない場合は使うことはできません。
例文
「於いて」はある人物と関係していることを指します。「〜について」「〜に関して」という意味です。 物事だけではなく人間に対しても「於いて」は使うことが可能です。 同じく「◯◯に於いて」の形で、「〜に関連して」という意味になります。 「Aさんに於いて」「彼に於いて」「彼女に於いて」といったように使います。
例文
「於いて」は「が、は」などの意味で、主語を強調することもあります。 特定の立場がある人物が主語の場合に使います。 例えば、「内閣総理大臣に於いてそれを決す」などと使います。この「に於いて」は「が」と置き換えることが可能です。 この「於いて」には「関連して」という意味合いはありません。
例文
「於いて」に係助詞「は」を付けて、「於いては」とすると、仮条件を示します。「...の場合は」という意味になります。 「◯◯に於いては」という形で用います。「もしも〜の場合は」という意味です。 実際には起きていない事柄が仮に起きたとしたら、という条件を表す表現です。現実に発生しそうなことを、仮定として想定してみることを表します。 例えば、「今は雨が降っていないけれど、もしも雨が降った場合には...」を表す場合は、「雨が降った場合に於いては」と表現することができます。 「この場合に於いては」「そういった場合に於いては」という形で用いることが多いです。
例文
「〜の名に於いて」というのは、「〜を代理する者として」「〜を象徴するものとして」という意味です。 この「おいて」は「もとで」と言い換えることが可能です。
例文
「於いて」は「置く」という言葉が由来していますが、「置いて」と表記するのは間違いです。 「置いて」とすると、「ある場所に残す、放っておく、間隔をあける」という意味になってしまいます。 例えば「置いて」は、「スケッチブックを持って歩くのは重いので、家に置いてきた」といったように使います。 「東京に置いて開催される」「過去に置いて発表される」などと表記すると、意味不明であり、明らかに誤用になります。 「於いて」と「置いて」を混同して使われていることが多いので、注意してください。
「おいて」は送り仮名についてはっきりと決まっているわけではないので、「於いて」でも「於て」でも正しいです。 辞書によって記入方法が異なりますが、広辞苑・明鏡国語辞典などは「於て」になっています。インターネットにおいては、「於いて」の方が多く検索されています。 文化庁が発表している「送り仮名の付け方」によると、「活用語尾以外の部分に他の語を含む語は,含まれている語の送り仮名の付け方によって送る」と記入されています。 つまり、「於いて」の語源は「置いて」なので「於」は「置」と同じく「お」と読み、送り仮名を「いて」と続けるのが正しいということになります。 一方で「読み間違えるおそれのない場合は,活用語尾以外の部分について,送り仮名を省くことができる」とも解説されており、「於て」という送り仮名も正しいと言うことができます。 したがって、「於いて」と「於て」はどちらも正しいということになります。
「於」は常用漢字ではありませんので、「おいて」と平仮名で表記するのが一般的です。 常用漢字でないため、法令や論文、新聞などの公用文では使用されていません。 メールや手紙などでも「おいて」とひらがなで書くのが普通です。読みづらく感じる人も多いですし、漢文調の文章は堅い印象を与えるので基本的には「おいて」と平仮名で書くのが無難でしょう。(上記の例文ではあえて漢字「於いて」を使用しました)
「於いて」は堅い表現なので、敬語ではありませんが、かしこまった場面で使用します。 「於いて」を用いて表現すると、文章全体がフォーマルな印象になります。 例えば、「公民館で料理教室が行われる」を「於いて」を用いて「公民館に於いて料理教室が行われます」と表すと、堅い響きが増します。 「於いて」でも十分丁寧な表現ですが、より丁寧にしたい場合は「於かれては」「於かれましては」などを使うことができます。 「皆様に於かれましては」などと、挨拶やスピーチをするときは、この表現が適します。
「ついて」の漢字は「就いて」になります。 「ついて」は一つ目の意味は「ある事柄に関連していること」になります。 「◯◯について」という形で使います。これは「◯◯に関係している、関して」という意味です。 この意味においては、「おいて」と「ついて」は同義になりますが、「〜について」よりも「〜において」の方が、堅い印象となります。
「ついて」の2つ目の意味は「...ごとに」になります。 例えば、(正月の特別番組でありますが、、、)「英語を使ったら一回について千円の罰金だ」などと使います。 「一回について」とは「一回ごとに、毎回」という意味になります。
手紙や案内状に「於 ◯◯ホテル」「於 11月1日10:00」と書かれているのを見たことがある人もいるかと思います。 この場合の「於」は「於いて」と同じ意味です。「於」=「於いて」となります。 「於 ◯◯ホテル」だったら「◯◯ホテルで行う」と場所を表していて、「於 11月1日10:00」だったら「11月1日の10時に行う」と時間を表します。 「於◯◯」は「◯◯に於いて」という表現を漢文風にした表し方となります。 ここでの「於」は記号として使われているので、「お」とわざわざ読む必要はありません。 このように、「於◯◯」は「於+場所」「於+時間」という形で用いることができます。
場所を表す「於いて」の類語には、
などがあります。 場所を示す表現としてよく使われているのは、「〜で」です。 ある物事が行われることを表す場合に「◯◯で行われる」という形で用います。例えば、「誕生日会は彼の家で行われる」と言います。 他にも、「◯◯に」や「◯◯にて」という表現も使われています。「にて」は「会議はA社にて行われます」と使います。「〜で」に比べると、丁寧な印象となります。
例文
時間を表す「於いて」の類語には、
などがあります。 時間を示す表現としてよく使われているのは、「〜に」「〜で」です。 「時間を表す表現+に、で」という形で用います。例えば、「銀行は午後4時に閉まる」「そのお店は朝の10時に開く」といったように使います。 「〜に」は時間を表すだけではなく、「10歳になる」「還暦になる」といったように年齢を表すこともできます。
例文
ある事柄・人物との関わりを示す「於いて」の類語には、
などがあります。 「に関して」「に関連して」「に関係して」という表現は、「ある物事と何かしらの関係があること」を表します。 例えば、「彼の意見に関して、いくつか聞きたいことがある」と使います。これは「彼の意見に関連していることを、いくつか質問したい」という意味になります。 「に際して」「するに当たって」は「ある行動をすることによって」ということを意味します。 「にまつわる」は「ある物事と深く関係していること」を意味します。
例文
「於いて」の英語は、「in」「at」「on」「as to」「as for」などを状況によって使い分ける必要があります。
「as to」は文中で、「as for」は文頭で使います。
An event was held in Tokyo.
東京においてあるイベントが行われた。
As for educational background, I am ahead of her.
学歴においては、私の方が彼女より勝っている。
東京においてあるイベントが行われた。
An event was held in Tokyo.
「〜の名に於いて」は「in the name of...」です。
They were arrested in the name of the king.
王の名において、彼らは逮捕された。
「於いて」は中国語で「在(zài)」です。 「在(zài)」は英語の「in」に対応したもので、場所を表す時に使います。
「於いて」について理解できたでしょうか? ✔︎「於いて」は「おいて」と読む ✔︎「於いて」は場所や時間、ある物事に関わることを意味する ✔︎「於いて」は常用漢字ではないので、ひらがなで表記するのが良い ✔︎「於いて」の類語には、「〜で」「〜に」「〜にて」「〜に関して」などがある