「何卒」という言葉をご存知でしょうか。「何卒ご自愛ください」「何卒よろしくお願いいたします」などと使います。では、「何卒」の意味についてしっかりと理解しているでしょうか。日常会話で使うことはほとんどありませんが、ビジネスシーンでは使用頻度が高いです。相手にお願いしたり、メールにおいて使われていることがあります。依頼するときに使うイメージですが、目上の相手に使うことはできるのでしょうか。正しく使うためには、意味についてきちんと知っておくことが必要です。そこで今回は「何卒」の意味や使い方、例文、類語について解説していきます。適切に覚えて、上手く使えるようにしましょう!
「何卒」の読み方は「なにとぞ」です。 「何卒」の読み方は、「なにそつ」ではありません。 「何卒」を「◯◯大学卒業」の略として、学歴のことだと勘違いしている人もいますが違いますので注意してください。
元々「何卒」は「何とか」という形で用いられていました。 そこに強調を表す助動詞「ぞ」がついた「何とかぞ」が使われ始めました。 「何とかぞ」が時代が経つにつれて訛り、今現在用いられている「なにとぞ」が使われるようになりました。 「何卒」は、指示代名詞「なに」+格助詞「と」+強調を表す係助詞「ぞ」で成り立っています。 「なに」に「と」と「ぞ」を付けることで、「どうにかして強く」という意味になり「なに」を強調する役割を担っています。 「何卒」は当て字なので、「なにとぞ」とひらがなで表記することもありますが、ビジネスシーンでは漢字で表記するのが一般的です。
「何卒」は「どうぞ」の堅い表現です。 「期待する」ニュアンスが含まれていて、相手に何かを強くお願いする場合に用いる表現となります。 「何卒よろしくお願いいたします」だったら「どうぞよろしくお願いいたします」という意味になります。 「何卒」を使うことで、文章が改まった印象となるのでビジネスシーンで多用されています。
古語においての「何卒」は「どうにかして、なんとかして」を意味します。 ある物事を行うための手段を尽くそうと思っていることを表します。 「何卒」を使うことで、「なんとかして◯◯する」と自分自身の強い気持ちを表現することができます。 現代では「何卒」は「どうぞ」という意味で、「手を尽くす」という意味では使いません。
「何卒」はビジネスメールや手紙などの書き言葉で使われることが多い表現になります。 話し言葉として使うと、相手に大げさな印象を与えてしまいます。 上記でも触れましたが「何卒」はフォーマルな言い回しですので、ビジネスシーン以外で用いられることはほとんどありません。
「何卒」はビジネスメールで取引先などに対して依頼・お願いするときによく使います。
の2つは最もよく使う表現です。 依頼する内容を具体的に伝えた後に、上記のフレーズを付け加えるように使います。
例文
また、「何卒ご了承ください」というフレーズもよく使われます。 「了承」とは「事情を理解して、それでよしとする」という意味です。 つまり「何卒ご了承ください」とは「どうか理解して受け入れてください」という依頼文になります。 「ご了承ください」の記事に関して、下記の記事で細かく紹介していますので、興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
「◯◯のほど」「◯◯いただきますよう」などのフレーズを頭につけて、具体的に依頼する内容を示すことができます。
などの言い回しが多いです。
例文
「何卒」は謝罪文やお詫びの文でも使うことがあります。 「何卒」を謝罪の文章で使うときは「〜いただきますよう」「〜のほど」を使う場合がほとんどです。 「何卒よろしくお願いいたします」だけでは基本的には謝罪の意味にはなりません。 何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます 何卒ご容赦のほどお願い申し上げます などと言います。 謝罪文では「いたします」よりも丁寧な「申し上げます」を使う方がよいでしょう。
「何卒」は「何卒よろしくお願いいたします」などの形で、依頼や謝罪以外でもただのビジネスメールの締めくくりとしても使われます。 深い意味はなく形式的に、メールの結びの言葉として「何卒よろしくお願いいたします」などと述べることがあります。 文頭に「以上、」と付け足すこともあります。
などと表現します。 その他にも、 「何卒ご自愛ください」 という言い回しもよく使われます。 「何卒ご自愛ください」は「身体を大事にしてください」という意味で、相手の体調気遣う、労りの表現となります。
江戸時代が舞台の時代劇などで侍が「何卒」などと言うのを聞いたことがある方もいらっしゃると思います。 この「何卒」とは「何卒よろしくお願い申し上げます」の略になります。依頼表現を簡略化したものになります。 昔は「何卒」単体でも目上の人に対して使われていました。 近年では、若者がLINEなどのSNSで「何卒!」と単体で使う場合があります。 これは単に「よろしく!」と同じような意味で使っていて、カジュアルな響きがあります。 現代では目上の人に対して「何卒!」というのは、失礼にあたりますので注意しましょう。
上記でも触れましたが、「何卒」はビジネスでのみ使う堅い表現になります。 日常会話で使うと、慇懃無礼(読み:「いんぎんぶれい」、意味「丁寧すぎてかえって嫌味っぽく失礼にあたる」)になる可能性がありますので注意しましょう。 ビジネスでのやり取りでも親しい間柄の相手や目下の者などには、「何卒」を使うのは適しません。
「何卒」は丁寧な表現ではありますが、多用するのは不自然なので避けましょう。 一つのメールの中で「何卒」を何回も使ってしまうと、相手にしつこい印象を与えてしまいます。 この場合は「ご了承いただけますよう、何卒お願い申し上げます」とします。1回だけでも十分に丁寧な印象を与えます。
類似表現と併用すると二重表現になってしまうので、「どうぞ」「どうか」などと一緒に使うことはできません。 「何卒」だけでは何か物足りないような感じがして、「どうぞ」や「どうか」を共に使ってしまうことがありますが、これは文法的に不適切にあたります。 「何卒」は「どうぞ」「どうか」の堅い表現であることを覚えておきましょう。
「何卒」はとても堅い表現であるため、単なる丁寧語である「(お願い)します」と使うと不釣り合いになってしまいます。 「何卒」と一緒に使うのは、謙譲語+丁寧語である「(お願い)いたします」「(お願い)申し上げます」にすべきです。 「よろしくお願いします」の頭に付け加えるならば、「どうぞ」「どうか」などがよいでしょう。
「是非」は強調を表す語です。 事情がどうあろうとも、あることを実現しよう、実現したいという強い意志や要望を表します。 親しい間柄の相手の場合は「是非」を使えます。 改まった場面以外で「何卒」を使ってしまうと、相手に大げさな印象を与えてしまうので、代わりに「是非」を使うことができます。目上の人に対しても使えます。 ただ何度も「是非!是非!」などと言ったり、強い言い方になると強制的であると感じさせてしまいます。 「是非」は状況や相手に合わせて、使用するかどうか判断するようにしましょう。 また、「是非とも」という表現もあります。 「是非とも」も「是非」と同様に、自分の意志や意向を伝える場合や、相手に何かをお願いする場合に使います。
例文
「絶対」は「何が何でも、何があっても」という意味です。強調を表す語となります。 「絶対に行かない」「絶対に会う」「絶対に実行する」といったように使います。 強調を表す語ですが、「何卒」と同様にビジネスシーンで使うことはできません。 「絶対」は日常的によく使われている言葉なので、親しい相手や同等などに使います。例えば、何か物事を頼む場合に「絶対にやってね」「絶対にしてね」などと念を押すことができます。 他にも「絶対」は、「彼女の言うことは絶対だ」「絶対の真理」といったように、他に比べられるものがなかったり、何かに制限されないという意味でも使うことができます。
例文
「どうか」は「心の底から強く願っている様子」を意味します。 何かを心から強くお願いしたり、物事を頼むという場合に「どうか」を使います。 「何卒」は「どうか」を丁寧にした表現です。ですので、ビジネスシーンで「どうか」を使うと、相手に軽い印象を与えてしまいます。 「どうか」は日常会話で使ったり、親しい相手に対して使う表現となります。 「どうか」は「ものを買うためのお金は自分でどうかする」といったように、物事の解決を願っている様子を表す場合も使うことができます。
例文
「なんとか」は「色々と手を尽くして、あれこれとすること」を意味します。 「なんとか頼む」「なんとかする」「なんとか終わらせる」などと使います。 相手に依頼する場合に「そこをなんとかお願いいたします」といったように使われていることが多いです。「そこをなんとか」は「難しいとは思っているが、色々方法を尽くしてお願いします」という意味になります。 相手に無茶なお願いをする場合に使うことが多いです。 「なんとか」は軽い言葉となるので、目上の人に使うには適しません。 「なんとか」は「十分とは言えないが、ある程度希望通りにである」という意味で使うこともできます。この場合は「なんとか間に合う」「なんとか食べていくことができる」などと使います。
例文
日本語の「よろしくお願いします」のように幅広く使える表現が英語にはそもそもありません。 「何卒」は「よろしくお願いします」を強調する単語なので、「何卒」をどのように英語で解釈するかちょっと難儀です。 「何卒」に関してはわざわざ英訳せずに、シーン別に「よろしくお願いします」の英語表現を使えれば問題なしです。 「よろしくお願いします」の英語表現に関しては下記の記事でまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。
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「何卒」について理解できたでしょうか? ✔︎「何卒」は「なにとぞ」と読む ✔︎「何卒」は「どうぞ」をより堅い表現で、相手に何かを強くお願いするときに使う ✔︎「何卒よろしくお願いいたします」などと、メールの締めや依頼をする場合に使う ✔︎「何卒」は堅い表現なので、日常会話ではなくてビジネスシーンで使う