「慮る」「忖度」「思いやる」の3つの言葉。 似た意味を持つ言葉です。 今回は使い分けの難しい「慮る」「忖度」「思いやる」について解説していきます! それぞれの意味、使い方、例文、英語表現を紹介します。 「慮る」「忖度」「思いやる」の違いをしっかりと覚えましょう!
「慮る」は<おもんぱかる>と読みます。 意味は、「あれこれと思いを巡らすこと、深く考えること」です。 「慮る」は元々「おもひ(い)はかる」読まれていましたが、音が変化していき「おもんはかる」→「おもんぱかる」となったようです。 元々の読み方からも分かるように、「慮る」は「思いはかる」からきた言葉です。 「考える」「思慮」「取り計らう」などといった意味があります。
「慮る」とは、「何か行動しようとするときに、あれこれと周囲の状況や影響などについて深く考えること」を意味します。 そのため、ただ何かを思ったり悩んだりすることではなく、「何か行動を起こすこと」について考える言葉です。 要するに、「慮る」とは「深く考えること」であり、「想像すること」でもあります。 「これをしたら周囲はこうなるだろう」「こうなったら周りにはこういった影響があるだろう」と想像することは、「周囲を思いはかること」です。 ただ考えるだけではなく、「想像し相手を思うこと」が少なからずついていくる言葉であると言えます。 また「慮る」は「相手の気持ちを慮る」「とあることを慮る」などといった言い回しを使います。
「彼女の事情を慮って、飲み会は延期にした」 「部長のあの行動はわたしたち新人を慮ってのことだった」 「他人を慮ってばかりではなく、自分をもっと大切にしてください」 「万が一を慮って、別の方法も考えておく」 「彼はもう少し、他人の心情を慮ることを覚えたほうがいい」
「忖度」は<そんたく>と読みます。 意味は、「他人の気持ちや考えを推しはかること」です。 「忖」は訓読みで「はかる」です。 りっしんべんは「心」、寸は「短い時間」の他に「手」や「人」といった意味があります。 その二つが合わさって「忖」となり、「心に手を当てて人の気持ちを推し量る」の意味を持ちます。 「度」は訓読みで「たび」です。 「度数」や「角度」などから分かるように長さや量や大きさを表す単位の意味、「程度」などから分かるようにほどあい、また「態度」や「度量」などから分かるように人柄や様子を表す意味があります。 そして仏教用語では「さとりの世界や仏の世界へと導く、救う」「はかる、みつもる」があります。 「度」にも人に関わる意味合いが含まれていることが分かります。 その二つが合わさって「忖度」となり、相手との距離などほどあいをはかりながら相手の気持ちを推し量るといった意味となりました。 「忖度」は2017年の流行語大賞になり、その元となった事件により「忖度」という言葉に悪い印象が強くついてしまいましたが、上記でも説明したとおり本来の意味は悪いことを指す言葉ではありません。
「忖度」は名詞のまま「忖度」、「する」をつけて「忖度する」と動詞としても使えます。 「忖度する」は、「相手の気持ちを推し量る」といった意味になります。 相手の気持ちや考えを推し量ること、は「相手が心に留めている本音を察すること」です。 日本人はあまり本音を口に出さず「建前」で話をしたりします。そのため、本音や本心を察することが必要な場面に出くわすことがあります。 そういった際に、相手に対して「忖度」します。 ですが、最近では政界や会社などにおいて「上司など目上の人の意図を推し量り気遣う」といった意味で使われるようになっています。 本来は友人や家族などにも用いるこのとできる言葉ですが、堅苦しい印象があり日常的にはあまり使われません。 会社や政界など畏まった場所で使われることが多いため、上司や目上の人に対する気遣いとして使われるようになったのではないでしょうか。 では、日常生活で「忖度」する時はどういった言葉を使えば良いのでしょうか。 最近「忖度」と似た意味で、SNSやLINEなどで若者を中心に使われているのが「(察し)」「察した」です。 例えば、彼氏がいたA子にも一応クリスマスに彼氏のいない友人たちで女子会をやることを伝えると「行く!」と返事が来たとします。 それに対して、「来れるの…?たのしもうね(察し)」と使います。 これは、「彼氏と別れて傷心していることを忖度し察しました」という意味になります。 このように「忖度する」を若者用語にすると「(察し)」となります。 逆に、先ほどの例でA子に「え、来れるの?」と返事をした場合、A子は「察して」と返します。 それは、「女子会に行ける=彼氏と別れたということを言いたくないから気持ちを汲んでね」といったニュアンスで使われています。 社会人や政治家ではなくても、やはり日常的に「忖度」することは回避できません。 他人と関わる以上、必ず「忖度」する場面には遭遇します。 ではどういった場面で「忖度」が使われるかの詳細は、下記の例文を見て使い方の参考にしてください!
「お得意様の意向を忖度する」 「取引先に忖度した結果、いい契約を結ぶことができた」 「父親を忖度し、大学へは進学せず家業を継ぐ」 「彼女と別れたばかりの彼に忖度して、みんなで飲み会を開いてひたすら馬鹿な話をしていた」 「彼はいつも上司に忖度してばかりで、自分の意志はないのだろうか」 「息子が大学受験に失敗し、近所の人から忖度されているが余計なお世話だ」
「思いやる」には、「同情したり気を使ったりすること」「人の身の上、心情などについて思い巡らし配慮すること」といった意味があります。 ちなみに、「おもいやる」は漢字で「思い遣る」と書きます。 「遣」という字には「贈り物」「賜り物」といった意味もあります。 「思い」を「贈り合う」ことが「思い遣る」だと考えると、「思いやりの心」は素敵だなと感じます。
意味の通り、「誰か相手に気を配る」という意味で使います。 そのため、相手ありきの言葉です。 言い回しは、 「○○を思いやる」 「思いやられる」 「思いやる○○」 などと主に使われています。 また、名詞として「思いやり」とも使われています
「どんな時でもどんな場所でも、常に相手を思いやる心を持っていたい」 「彼には思いやる気持ちが足りなかった」 「全部の理解はできなくても、せめて思いやりの心は持ちましょう」 「仕事も3年目になり、周りを思いやることが出来るようになってきた」 「なんでそんな思いやりのない言葉をぶつけてくるのだろうか」 「いいから失恋した私を思いやれ!」
似たような意味を持つ「慮る」「忖度」「思いやる」の違いとは、何でしょうか? まずそれぞれの意味は、 「慮る」は「あれこれと思いを巡らし深く考えること」 「忖度」は「他人の気持ちや考えを推しはかること」 「思いやる」は「同情したり気を使ったりすること」 でした。若干のニュアンスに違いがありますね。 「慮る」は周囲のことをよく考え、行動をしたらどうなるかと想像をして深く考えることです。 「思い遣る」は、相手の身の上を知った上で、相手の気持ちを考えて配慮することです。 そして「忖度」は、相手の状況を考えて気持ちを推しはかり、相手が心に留めている本音を察することです。
「慮る」「忖度」「思いやる」それぞれの英語表現を見ていきましょう。 「慮る」は「consider」、 「思いやる」は「care about」になります。 「思いやり」という名詞は「compassion」「empathy」などの単語で表現します。 難しいのは「忖度」の英語表現です。そもそも英語圏には「忖度」という文化自体があまりないので、欧米人からすると「忖度」という概念そのものが理解しがたいかもしれません。 「忖度」は英語で「read between lines」が一番近い表現です。「行間を読む」という意味です。
Considering her situation, I put off the party.
彼女の状況を慮って、パーティーは延期にした。
They always care about each other.
彼らはいつもお互いを思いやっています。
I believe that perhaps PM Abe or his wife were reading between the lines.
おそらく安倍首相や彼の奥様は忖度したのだと思います。
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