「せっかく」は日常会話でもビジネスシーンでも頻繁に使用する言葉です。ビジネスシーンでは相手の申し出を断らなくてはいけない場面がよくあります。そういった場合に「せっかく」を使うことで相手の気分を害することなく、上手く断ることができます。そこで今回は「せっかく」の意味や使い方、「わざわざ」との違いについて解説していきます。
「せっかく」には名詞と副詞の2つの品詞があります。 それぞれの意味は以下の通りになります。 ◯名詞の「せっかく」
◯副詞の「せっかく」
「せっかく」には「力を尽くすこと」「困難」「特別」など、マイナスな意味からプラスな意味まで、様々な意味が含まれています。
また「せっかく」は漢字で「折角」と書くこともできます。 「折」は音読みだと「セツ」、訓読みだと「おる」と読みます。 「折」は「おること」「くじける」を意味しています。 「角」は音読みだと「カク」、訓読みだと「かど」「つの」と読みます。 「角」は「一点から出る二つの半直線がつくる図形」「物の端」を意味しています。 ただ「せっかく」は、一般的にひらがなで表記することが多いです。
「力を尽くすこと」という意味での「せっかく」は、故事の話に基づいて作られたと言われています。 その昔、朱雲という人物がそれまで誰も言い負かすことができなかった五角に住む充宗という人物を言い負かしたことが語源です。そのことを人々が「よくぞ鹿の骨を折った」と讃えたことから「せっかく」が誕生したと言われています。 また「特別に・わざわざ」という意味での「せっかく」も故事に基づいて作られたそうです。 敦泰という人物が被っていた頭巾の角が雨に濡れて折れ曲がっていたことが語源です。 それをみた敦泰を慕っている人々が、わざわざ真似て頭巾の角を折ったことから「折角=せっかく」という言葉が誕生したと言われています。
「せっかく」を敬語として使う場合には、注意が必要です。 「せっかく」をビジネスシーンで敬意を払って使う場合は相手の行為に対して使用します。そのため、自分の行為に対しては使用しません。 例えば、「せっかくお茶を用意したので寄っていてください」や「せっかくご用意したのでお越しください」など自分の行為に対して使用するのは間違いになります。 敬語として使う場合には、「せっかくお持ちいただいたので、今見させていただきます」「せっかくのご厚意にも関わらずに、お応えできず大変申し訳ないです」など、あくまでも相手の行為に対して使用しなければいけません。
「せっかく」は、相手が努力や手間を惜しまずに何か行動を起こした場合に使用する言葉です。 「せっかくですが」は、相手の厚意や行動を起こそうとしてくれたことを認めながらも何かを断る場合に使用します。 「せっかくですが」を使うことによって、残念に思っている気持ちや遺憾の気持ち伝えることができるので、相手に不快な思いにさせることなく、やんわりと断ることができます。 相手の誘いを断るときは
などと言うこともできます。 「せっかくですが」は「嬉しく思いますが、諸事情により断るしかない」というニュアンスになります。 例えば、目上の人から食事会に誘われたが自身の都合で参加できないときに「せっかくお誘いいただいたのに〜」と言うことができます。 この場合は「行きたい気持ちはやまやまだが、参加することはできない」という気持ちを表しています。
例文
謝罪・お詫びをするときは「せっかくなのに」「せっかく◯◯なのに」と使うことができます。 「せっかくなのに」は、「相手のしてくれたことに対して、応えることができなくて申し訳ない」というニュアンスになります。 謝罪をするときに前に「せっかくなのに」をつけることによって、相手の努力や苦労をねぎらう気持ちを伝えることができるため、不快な思いをさせることなく謝ることができます。
例文
「せっかく」は副詞としてだけではなく、名詞としても使います。 上記の例文でも何度か登場していますが、こういった場合は「せっかくの◯◯」というように「せっかく」の後に名詞が続きます。 「せっかくの◯◯」の例としては、
となります。 例えば「せっかくの機会」といった場合は、「滅多にない機会」「特別な機会」といった意味合いになります。 「せっかくの◯◯」は比較的良い意味で使われることが多いですが、「せっかくの◯◯ですが」や「せっかくの◯◯だが」といったように断るときにも多く使うことができる言葉です。
例文
「せっかく」はビジネスシーン以外でもカジュアルに日常会話でも使用しますよね。 その場合、「相手の努力を労う」という意味合いはかなり弱いです。 「よい機会だから」「よいタイミングだから」くらいのニュアンスで使用します。
例文
「せっかくだから」は、「せっかくだからいただくよ」や「せっかくだから会いましょう」などといったように、誰かから何か物をもらうときや、誰かに会うときに使うことが多い言葉です。 ただこの「せっかくだから」という言葉は、文法的には誤用になります。 本来「せっかくだから」は、「せっかく」と「だから」を別々に分けて使います。 適切な使い方は「せっかく◯◯だから」となります。「せっかく◯◯だから」を省略して使用することが多くなったため、「せっかくだから」が一般的に使われるようになったとされています。 厳密には誤用なので、ビジネスシーンでは「せっかくだから」というフレーズは避けた方が無難かもしれません。しかし、ほとんどの人にとっては違和感のない言葉なので、そこまで気にする必要はありません。
「せっかくだから」は自分の行為に対して使うのが基本です。 例えば、 相手:こちら、つまらないものですが受け取ってください。 自分:いいえ、結構ですよ。 相手:いえ、受け取ってくださいよ。 自分:では、せっかくだから頂きますね。 などのシチュエーションで使用します。 この場合の「せっかくだから」は、「自分がもらうのは申し訳ないけども、わざわざ持ってきてくれたから頂きます」という意味で「謙虚さ」を表します。 「せっかくだから」は厳密には文法的に誤用ですが、相手に悪い印象は与えませんので、そこまで心配する必要はないでしょう。
「せっかくだから」の具体的な言い換えはありませんが、「せっかくだから」を使わずに思っていることを伝えるためには、素直な気持ちを表すことが必要です。 例えば、誰かが作った料理をもらうときに「せっかくだからもらいます」だともらう理由が極端に言うと「せっかく」になるため大変失礼になります。「せっかく作ってくれたのだから、ありがたくいただきます」と言い換えた方が丁寧な言い方です。この場合は、(料理を)作ってくれたこと・いただくことに感謝するため、「せっかくだから」は誤りになります。 他にも「せっかくだから行こうよ」は「こんな機会はそんなにないからぜひ行こう」と言った方が丁寧です。 これらは全て正しい表現ではないですが、相手に嬉しく思っている気持ちや感謝している気持ちを素直に伝えるためにも、「せっかくだから」という表現はなるべく使用せず、言葉を変えて相手に気持ちを伝えるようにしましょう。
「せっかくなのに」も「せっかくだから」と同様に、「せっかく」と「なのに」を別々に分けて「せっかく◯◯なのに」と使用するのが適切になります。省略して「せっかくなのに」や「せっかくのに」と使われることが多くなっため、こちらが一般的に使用されていますが、本来は間違った使い方です。 「せっかくの休みなのにどこにも遊びに行かない」「せっかくの誘ってくれたのに都合が合わず行けなかった」と使用することが正しい使い方になります。 「なのに」は、断定の助動詞「な」+接続助詞「のに」で成り立っています。 「なのに」は、前述の事柄に対し、あとの事柄がそれと矛盾する内容であることを示す言葉です。 「なのに」の例としては、
といったように接続詞として用います。 「せっかくなのにすみません」「せっかくなのにごめんなさい」と謝るときに使うことが多い表現です。
「せっかくなので」も「せっかくだから」と同様に、略した言葉です。 本来は「せっかく◯◯なので」といった形で使用するのが適切になります。 「なので」は、断定の助動詞「だ」の連体形「な」+理由を表す接続助詞「ので」で成り立っています。 「なので」は、「〜だから」「〜であるから」という意味合いになります。 「なので」の例としては、
といったように接続詞として用います。 また「なので」は近年、「◯◯。なので△△」といったように順接の接続助詞として使われることも多いです。
▶「せっかく」は「あることを行うときに、ついでに他のことも一緒に行うこと」 ===> 後に続く内容は、比較的望ましく、行えたら良いこと ▶「わざわざ」は「別にする必要がないことを意図的に行うこと」 ==> 後に続く内容は、困難や労力を費やすので、本来は行う必要がないこと
「せっかく」と「わざわざ」の大きな違いは、「せっかく」には「ついで」といった意味合いがあることに対して「わざわざ」は手間や時間をかけたといって意味合いがある点です。
「わざわざ」の意味は、
となります。 「わざわざ」は副詞で、漢字だと「態態」と書くことができます。 「態」は音読みだと「タイ」、訓読みだと「わざ」「さま」と読みます。 「態」は「身や心の構え」「広く、ありさま」を意味しています。 「わざわざ」は「何かのついでではなく、このために行っていただき〜」といったニュアンスになります。 「わざわざ」は基本的には相手に対して使う言葉ですが、自分に対して使うこともできます。 ただ自分に対して使う「わざわざ」は、「(そのことをするのに)苦労した」「大変だった」などとマイナスな意味になってしまうので、あまり使用しないことをおすすめします。 「わざわざ」はプラスな意味で使う言葉ですが、「わざわざ◯◯していただかなくても結構です」といったように、使い方によっては嫌味だと誤解されてしまうことがあります。使用する際は注意するようにしましょう。
上記で紹介した「わざわざ」以外の「せっかく」の類語・言い換えを紹介していきます。
「はるばる」の意味は、
となります。 「はるばる」は副詞で、漢字で書くと「遥遥」となります。 「はるばる」は、相手が労力をかけてしてくれたことを表す言葉です。 「はるばる」の中でも、「長く遠い道に道のりによって隔たれているさま」を表す「遠路はるばる」という言葉は頻繁に使われます。
例文
「ご足労」は、「足を働かせる」「足を運ばせる」ことを意味しています。 つまり「ご足労いただき」は、「わざわざ来てくださって」という意味になります。 「ご足労いただき」を使うことによって、本来は自分から出向かなくてはいけないのに、相手がわざわざ来てくれた場合に、大変申し訳ないという気持ちを表すことができます。 「ご足労いただき」は丁寧な表現になるので、目上の人に対して使うことができる言葉になります。 また「ご足労いただき」の代わりに「ご足労くださり」ということもできます。
例文
「お時間」は、相手を敬ってその空き時間のことを表します。 例えば、「この度は私のためにお時間をかけていただいたにも関わらず、大変申し訳ありませんでした」と言った場合は、「今回は私のためにお手間を取らせたにもかかわらず、何もすることができなくすみません」といったニュアンスになります。 「お時間をかけて」はお詫びだけでなく、「この度は、お忙しい中貴重なお時間をかけていただき誠にありがとうございました」といったように、感謝の気持ちを伝える際にも使えます。 「お時間をかけて」の代わりに「手間を取らせて」と言い換えることもできます。
例文
「骨を折る」は、「苦労する」「尽力する」「いとわないで人の世話をすること」を意味しています。 骨を折るというとものすごく痛々しいイメージがある通り、「骨を折る」は「骨が折れるほど苦労する・力を尽くす」といった意味合いになります。 「骨を折る」は、「精を出して物事に取り組む」「面倒くさがらずに力を尽くす」といったことを表したいときに使うのが適切な使い方です。
例文
「あいにく」は「期待や目的に外れて、都合の悪いさま」を意味しています。 「あいにくですが」は何かを断る場合や、よくない状況を伝える場合に使う言葉です。 断りの言葉や、相手にとって残念なことを知らせるときに「あいにく」もしくは「あいにくですが」を加えることによって、「すみませんが」「残念ですが」というニュアンスを伝えることができます。 「あいにくですが」は、丁寧な表現になるため目上の相手にも使うことができます。
例文
「申し訳ない」は「相手にすまない気持ちで、弁解のしようがない」という意味になります。 「申し訳ありませんが」は、丁寧な謝罪をするときに使う言葉になります。 「申し訳ありませんが、もう少々お待ちください」といったように、相手に対して失礼があったり、迷惑をかけた場合に使います。 「申し訳ございませんが」という言い方もあります。「申し訳ございませんが」の方がより丁寧な表現になりますが、「申し訳ありませんが」の方がよく使われます。
例文
「せっかく」の英語表現を見ていきます。 実は日本語の「せっかく」にあたる英語はありません。 例えば、「せっかくイタリアに来たのだから、ピザ食べようよ」などと言う場合は、「だから」に注目し、「せっかく」は訳す必要がありません。 「だから」と言えば「because」が最初に思い付くと思いますが、このような文章では「since」の方がベターです。 「because」「since」共に「だから」を意味しますが、「since」に続く理由は相手にとって自明で驚きのない理由になります。(逆に「because」は相手にとって意外で考えてもいなかった理由であることもあります) 上記のような文章の場合、イタリアにいうことは相手にとっても自明なため「since」がベターです。
Since you've traveled all the way to Italy, let's have some pizza!
わざわざイタリアに来たんだから、なんかピザでも食べましょう!
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「せっかく」について理解できたでしょうか? ✔︎「せっかく」は、「力を尽くすこと」「苦労すること」を意味している ✔︎「せっかく」はビジネスシーンでは、何かを断るとき・謝罪するときに使用する ✔︎「せっかく」の類語には、「はるばる」「ご足労いただき」などがある ✔︎「せっかくだから」は本来誤用で、「せっかく◯◯だから」が適切な使い方
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