「しております」「しています」についてご存知でしょうか。「お待ちしております」「営業しています」などと使います。日常会話でもビジネスシーンでも多く使われているので、聞き覚えがあるという人がほとんどだと思います。では、「しています」と「しております」の違いについて理解しているでしょうか。なんとなく「しております」の方が丁寧に感じますが、実際はどうなのでしょうか。適切に使うためには、しっかりと意味や使い方を押さえておく必要があります。そこで今回は「しております」「しています」の使い方、違い、「しております」を含む表現について解説していきます。違いを正しく知って、上手く使い分けれるようにしましょう!
「います」は、動詞「いる」に丁寧語「ます」が付いた表現です。 「おります」は、「いる」の謙譲語「おる」に、丁寧語「ます」が付いた表現です。 謙譲語といっても、自分の動作の対象を立てる通常の謙譲語とは違い、「謙譲語Ⅱ」または「丁重語」といわれる別の種類の謙譲語です。 丁重語とは、自分の動作を、聞き手に対して改まった気持ちでいう語です。 繰り返しになりますが、丁重語によって敬意が示されるのは動作の対象でなく、話し相手(聞き手)です。 あくまでも聞き手に対して自分をへりくだった言い方なので、謙譲語の一種ではあります。 丁重語は動作の対象に敬意を示しているわけではないので、動作の対象が目下の者や動物、物であっても使うことができます。 例えば「私は犬の散歩をしております」などということが可能です。 この話者は聞き手に対して敬意を示しているのであって、「犬」を立てているわけではありません。 また、丁重語「おる」は自分だけではなく自分側の人物(立てる必要のない第三者)の動作に使うこともできます。 例えば「子供は学校にいっております」などということが可能です。 「子供」は目下の存在なので「おる」を使うことが可能です。動作の主体が目上の存在の場合は尊敬語を使う必要があります。 他の代表的な丁重語には「参る」「申す」「いたす」などがあります。 「しています」「しております」の「し」は「する」の連用形で、「て」は継続を表す接続助詞です。 「し」が本動詞であるため、「いる」「おる」は補助動詞です。 「しています」「しております」はどちらも人が何かの動作を継続していることを丁寧にいう表現です。 ただし、丁寧語よりも丁重語の方が敬意の度合いが高いです。 したがって、「しております」の方がより丁寧な敬語ということになります。 しかし、「おる」は古風な響きがあり違和感を覚える人も少なくありません。 「しています」でも正しい敬語なので、ビジネスシーンでこちらを使っても間違いではありません。
「させていただいております」=動詞「する」+謙譲語「いただく」+丁重語「おります」の形なので、二重敬語ではありません。 丁重語は謙譲語の一種なので、二重敬語のような気もしますが、敬意を示している対象が違うので、二重敬語ではないということができるでしょう。 例えば、「働かせていただいております」の場合、「いただいて」は雇用主に対する敬意、「おります」はこの会話の聞き手に対する敬意を示しています。 また、この表現は「さ入れ敬語」も注意が必要です。「さ入れ敬語」とは、本来助動詞の「せる」を付けなければいけない動詞に「させる」を付けてしまう誤った表現です。 よって、「働かさせていただいております」などは誤った敬語になります。「働かせていただいております」が正しい表現になります。 しかし、「〜せていただいております」は少しクドいと感じる人がいるのも事実です。とても丁寧な表現ではありますが、一方で冗長でもあります。したがって、「働かせていただいております」よりも「働いております」の方がシンプルでスマートに聞こえます。
例文
「いたしております」=「する」の謙譲語「いたす」+丁重語「おります」の形なので、二重敬語ではありません。 この場合の「おります」は「しております」ということなので、動作の継続を表します。 「しております」と同義ですが、謙譲語ということもあって「いたしております」の方が丁寧になります。 「しております」は社内の目上の人に使うことが多いですが、「いたしております」は社外の目上の人やお客様に対して使うことが多いです。馴染みのある目上の人に「いたしております」を使うと、かしこまりすぎてかえって違和感を与えます。 ただ、例えば、何かを送ったことを相手に伝えたい場合などに「お送りいたしております」と言ってしまうと、少々不自然な感じがするので、「お送りいたしました」「お送りしてあります」と言い換えるのが良いでしょう。 このように、「いたしております」だとしっくりこない場合もあるので、文脈によって使うかどうか判断しましょう。
例文
「申し上げております」=「言う」の謙譲語「申し上げる」+丁重語「おります」の形なので、二重敬語ではありません。 「お待ち申し上げております」という形で使うことが多いです。「待っています」という意味です。 親しい人や目下の人にはそのままで良いですが、目上の人やお客様には「お待ち申し上げております」を使いましょう。 よくお店に行ったときなどに「またのご来店をお待ち申し上げております」「ご来館をお待ち申し上げております」などと言われますよね。 ただ日常会話で、「お待ち申し上げております」を使ってしまうと、相手に対する敬意が強い表現なので、堅苦しい・冷たい印象を与えてしまう可能性があります。一般的には「お待ちしております」を使うのが良いでしょう。 自分のことに関して使うので、「社長が申し上げております」「上司が申し上げております」とは言いません。 相手の動作に対して使うには、「おっしゃる通り」「言われる通り」などを使います。
例文
「ご無沙汰」は「長い間相手を訪問しなかったり、便りを出さないでいたりすること」です。 「無沙汰」は「訪問や文通を久しくしないでいること」を意味しています。「ご無沙汰」とすることによって相手を敬い、その人への無沙汰を詫びることを表します。 「すっかりご無沙汰していました」「ご無沙汰ですね」などと言いますよね。 「ご無沙汰しております」は、久しぶりに会う相手に対して使う挨拶語です。長い間訪問も文通もしてなかった相手に使いますが、具体的には数ヶ月〜数年程度会っていなかった人物と久しぶりに再開した場合に使います。 目上の人に使う場合は、「ご無沙汰です」「ご無沙汰しています」だと不適切なので、「ご無沙汰しております」を使うのが適します。 類語には「お久しぶりです」があります。「お久しぶりです」も久しぶりに会った人物に対して使う挨拶語です。 同じ意味ですが、使い方が異なります。 「お久しぶりです」は相手が目下であろうと目上であろうと立場に関係なく使うことができますが、「ご無沙汰しております」は敬意を表すべき目上の人に対して使います。
例文
「しております」「しています」について理解できたでしょうか? ✔︎「しております」「しています」は「動作や状態が現在進行中・継続中であること」を意味 ✔︎ 目上の人には、「しています」よりも丁寧な表現の「しております」を使う ✔︎「〜せていただいております」「いたしております」「申し上げております」は二重敬語ではない ✔︎「お久しぶりです」は親しい間柄の人に使い、目上の人には「ご無沙汰しております」を使う