「承る」と「受け賜る」は、どちらも「うけたまわる」と読みます。「承る」は、謙譲語で、謹んで聞く・謹んで受けるという意味です。「受け賜る」は、「受ける」に「もらう」の謙譲語「賜る」をつけた言葉で、いただく・頂戴するという意味です。
「承る」は「うけたまわる」と読みます。 「承る」は「受ける」「聞く」「伝え聞く」「引き受ける」の謙譲語で、「謹んで聞く」「謹んで受ける」という意味になります。 「承」漢字一字には、「前のものを引き継ぐ」「相手の意向・意図を受け入れる」といった意味があります。 つまり「承る」は、相手の話を
という意味になります。
「承る」は、相手の話に対して「しっかり聞いた・引き受けた・対応した」という言葉になります。 「承る」は謙譲語のため、目上の相手に対して使うことができます。 主に「承る」は社外の取引先や顧客などと電話で話していて、伝言を受けたときに使用することが多いです。 例としては、相手が伝言をお願いしてきたときに、「はい、確かに◯◯が承りました」といったように使います。「◯◯が承る」と使うことによって、自分が責任を持ってしっかり依頼を引き受けたという印象を相手に与えることができます。 「承る」は社外の相手に対して頻繁に使われますが、社内の上司や先輩に対して使うことは少ないです。社内の相手に対して使う場合は、「承知しました」や「かしこまりました」などの方が頻度が高くなります。 「承る」は社内の相手に対して使うことは少ないですが、社内でも役員クラスの相手に対してはより丁寧な「承る」を使うのが良いでしょう。 他にも、「承る」は「予約を承る」「注文を承る」と使うことができ、この場合は「予約を受けた」「注文を受けた」と言うよりも丁寧な表現になります。
◯「承る」の例文
「受け賜る」は「受ける」+「賜る」で成り立っています。 「受ける」は、「授かる」「承諾する」「受け入れる」という意味で、 「賜る」は、「もらう」の謙譲語で、「いただく・頂戴する」という意味になります。 そもそも「賜る」という言葉自体に「受ける」という意味が含まれているため、「受ける」も「賜る」も意味が重複した言葉になります。 「受け賜る」は「聞く」「頂戴する」となり、意味合いとしては「賜る」とほとんど同じです。 「賜る」は比較的相手を敬う気持ちが強く、堅い場面で使うことが多い言葉になります。
「受け賜る」は、目上の相手から品物や意見をもらったときに使う言葉です。 「受け賜る」は物品を頂いたときに使うことが多いですが、恩恵を受けるという意味で使うこともあります。目上の相手や恩師に大きな恩恵をもらったときに使用し、逆に親しい間柄の相手には使用しない言葉です。 元々「受け賜る」は多く使用されていましたが、畳語(じょうご:同一の単語を重ねた言葉)にあたるため現在は一般的にあまり使用されません。時代とともに徐々に「承りました」が一般的に使われるようになりました。
◯「受け賜る」の例文
「受け賜る」と「承る」の違いとしては、「受け賜る」はモノの授受あるときに使うことが多い言葉で、「承る」はコトのやりとりで使われることが多い言葉です。 「承る」は厚意や助言に対して使う謙譲語で、「受け賜る」は物品や厚意に対して使う謙譲語になります。ですので「結構な物を承りまして」とは使うことはできません。 ただ「受け賜る」も「承る」も、聞くという動作に対してはどちらも使うことのできる言葉になります。しかしニュアンスが少し変わるので気をつけましょう。 (例) ◯「承る」の場合
→謹んで聞くという意味 ◯「受け賜る」の場合
→これからの人生の道標になりそうな、スケールの大きいありがたさを表すという意味
「承る」と同じような意味を表す言葉はたくさんあります。 その中でもよく使われるフレーズを紹介します。
「かしこまる(畏る)」は「つつしんで目上の人の言葉をお承る」という意味の謙譲語で、「相手の言ったことを理解し、その言葉に従う」という意味になります。 「かしこまりました」は、謙譲語「畏る(かしこまる)」+丁寧語「ます」なので丁寧な言葉になります。 「かしこまりました。その件は○○に伝えておきます」のように、「かしこまりました」の後にその後の対応などを伝えるように使うのが一般的でしょう。 「かしこまりました」はとても丁寧な表現なので、主にお客さまや取引先などに対して使うことができます。 「かしこまりました」は「承知」を表す言葉のなかで最も丁寧な言葉に当たります。 相手に敬意を示したいときは「かしこまりました」を使うのが良いでしょう。
◯「かしこまりました」の例文
「承知」とは「旨をうけたまわって知ること」「聞き入れること」といった意味があります。 「承知」は「承る」と「知る」で成り立っています。 「承る」は謙譲語ですが、「承知」は厳密には謙譲語ではありません。 しかし「承知」は「承」という文字を含むため丁寧な表現になっています。 返答するときに、「承知」のみだけでは失礼ですが、「承知しました」「承知です」といったふうに丁寧語をつけることで、目上の相手やお客様に使用するのが適切になります。 ビジネスシーンなどでも、何か依頼を受けたり、相手の話を理解したことを伝えたいときに自然と「承知しました」という言葉を使うのが良いでしょう。 「承知しました」をより丁寧にした「承知いたしました」があります。 「する」の謙譲語「いたす」と丁寧語「ます」の過去形を加えたものです。 謙譲語+丁寧語は敬語のなかで、最上級に当たるのでより丁寧な言葉になります。二重敬語ではないので、そのまま使用しても問題ではありません。
◯「承知しました」の例文
「了解」とは「物事の内容や事情を知り、納得すること」「理解すること」といった意味です。 「了解」という言葉は、尊敬語でも謙譲語でもないので、同等もしくは目下の相手に使うようにしましょう。 「了解しました」は「了解」+「しました」で丁寧な言い方になりますが、軽い印象を与えてしまうため、目上の相手に「了解しました」と使うのは失礼にあたります。「了解」「了解です」も然りです。 目上の相手に使ってはいけない言葉ですが、親しい間柄であれば目上の相手に使っても許される場合があります。
◯「了解しました」の例文
ビジネスシーンや日常生活などで使われることが多いのが「わかりました」という表現です。 「わかりました」という言葉は、元々「わかった」を丁寧に言い換えた言葉です。 「了解しました」と同じように、目上の人に「わかりました」と言っても失礼にはありませんが、少し砕けた印象を与えてしまいます。
◯「わかりました」の例文
「了承しました」は「相手の申し出や事情を納得し、承諾する」という意味になります。 「了承」も「承知」と同じ「承」が使われていますが、謙譲語ではありません。 「了承」には「許可する」「承諾する」という意味合いがあるため、上から目線のニュアンスが含まれます。 目上の者が目下の者に使うのが一般的です。 「了解しました」と「了承しました」は、どちらも同等や目下の者に使う言葉ですが、使用する場面に違いがあります。 「了解しました」は「理解した」ときに使い、「了承しました」は「承諾した」ときに使うと言った部分です。
◯「了承しました」の例文
「御意(ぎょい)」とは「目上の人の考え・ご意向」「おっしゃる通り・お考えのように」といった意味です。 「御意」の「御」は、尊敬語を意味する接頭語になるので、厳密には「御意」は尊敬語の一種と考えられます。 「御意」単体でも使えますが、正式には「御意の通り」「御意にござります」などの形で「おっしゃる通りです」のように目上の人に相槌を打つときや返答の意味になります。 時代劇などで聞いたことがある人もいるかと思いますが、「御意」は鎌倉時代あたりから使われているかなり古い言葉です。 ビジネスシーンや日常生活では意味が伝わらない可能性があり、敬意を示せない場合があるので、あまり使用するのはおすすめしません。
◯「御意」の例文
日本語の「承る」のような英語表現はありません。 一番使うフレーズは「承りました」だと思いますので「承りました」の英語表現を見ていきます。 ビジネスシーンでも使える丁寧な英語表現は、
など。 ビジネスシーンでも使えますが、もう少しカジュアルな表現だと、
などがあります。 これらの表現は「了解」「わかりました」くらいのニュアンスです。 取引先やまだ関係性が深くない上司などには、これらの英語表現は少しライトすぎるかもしれません。 「受け賜りました」も
などでよいでしょう。 それでは例文を見ていきましょう。
"Can you make a copy of this document?" - "You got it."
「この資料コピーしてくれる?」-「承りました」
I understand that you can't make it to the meeting today.
会議に間に合わない件、承りました。
「承る(うけたまわる)」は、「受ける」「聞く」「伝え聞く」「引き受ける」の謙譲語で、「謹んで聞く」「謹んで受ける」という意味です。 「承る」が相手の話を聞いたり、依頼を引き受けたときに使う言葉であるのに対して、「受け賜る」は目上の相手から品物や意見をもたったときに使う言葉であるという違いがあります。
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