「恙なく」という言葉は、手紙の挨拶や、スピーチなどで耳にすることの多い言葉だと思いますが、正しい意味と使い方はご存知でしょうか。今回は「恙なく」の正しい意味や使い方を例文付きで紹介します。また、「恙なく」と「ツツガムシ」の関係や、「恙なく」と「滞りなく」の違い、英語表現も紹介しますので、参考にしてください。
「恙なく」は「つつがなく」と読みます。 「恙」は、音読みで「よう」と読み、訓読みで「つつが・うれい」と読みます。 「恙」は「うれい・心配事・病気」という意味があります。
「恙なく」の意味は「病気・災難などがないさま」です。 「恙なく」は、「心配ごとや病気」という意味のある「恙」に「ない(無い)という言葉がついているので、「心配ごとや病気などの災難がない」という意味であるということになります。 「恙なく」という言葉には様々な意味合いが含まれています。 例えば、「順調であること」「無事であること」「健康であること」を伝えることができます。 「順調である」という事を「恙なく」という言葉で伝える場合は、「恙なく進んでおります」というような言い回し、「問題なく物事が順調に進んでいます」ということを伝えることができます。 「無事である」ということを伝える場合は、「恙なく毎日を過ごしています」といった言い回しをし、「悪い事も特におきず平穏にくらしています」ということを伝えることができ、「健康に元気に過ごしています」ということも伝えられます。
「恙なく」の語源は「恙」という漢字の持つ意味にあると言われています。 上記、読み方で「恙」という漢字について説明した通り、「恙」という漢字には「病気」や「災難」という意味があります。 そこから、「恙」が「無い」つまり「病気や災難が無い」という状態を指す言葉として「恙ない」という言葉が使用されるようになったというのが語源であると言われています。
「恙なく」の語源は「ツツガムシ」であるとも言われていますが、「ツツガムシ」は語源ではありません。 「ツツガムシ」とはダニの一種で、古代の日本ではツツガムシに噛まれることで起きる「ツツガムシ病」という感染症が、恐れられていました。 この「ツツガムシ病」にかからなかったという言葉から「恙ない」という言葉が生またというのが語源だと言われていました。 しかし、実際は、当時まだ原因不明だったその病を人々は「恙虫」という妖怪の仕業だとしており、後にその病気がダニによる感染症だったとわかって、そのダニに「恙虫(ツツガムシ)」と名付けたということが判明しました。 つまり、「恙なく」という言葉が先にあり、「ツツガムシ」が後から使われるようになった名前であるということです。
「恙(つつが)」は古代中国では霊獣として言い伝えられていました。 「恙」は虎や豹よりも凶暴で、人さえも食い殺すと恐れられていた霊獣です。 徳川家康は、そんな恐ろしい霊獣、「恙」でさえも簡単に飼いならしたとし、日光東照宮にある唐門の屋根には、守り神として「恙」が置かれています。
「恙なく進む」は、ビジネスにおける進捗状況の報告で使用される言い回しです。 「恙なく進む」とは、「何の問題もなく」「順調に進んでいる」というような意味で、例えば「プロジェクトの進捗状況を教えていただけますか」といった質問をされたときの返事として使用することができます。 また、トラブルに対してだけではなく「時間的にも間に合います・問題ありません」というような時間的な遅れの有無も、報告することができる言葉です。 しかし、「恙なく」という言葉には、「問題が起きそうだったけどおきなかった」というようなマイナスの意味も含まれている言葉の為、目上の人に使うべきではないとしている人もいます。 スムーズに進捗しているのであれば、「滞りなく」といった表現をするのが無難と言えるでしょう。
「恙なく」は、年賀状などの新年の挨拶にも使用されます。 「つつがなく新年」というような言い回しをし、「おかげさまで、つつがなく新年を迎えることができました」ろいうような使い方をします。 「何事もなく年を越すことができ、平穏にお正月を迎えることができました」というような意味になります。
「つつがなくお過ごしください」は、手紙やメールの挨拶文で使用することができます。 「つつがなく過ごす」ということは、「病気やケガなく平穏に過ごす」ということです。 手紙や、メールの挨拶文で「つつがなくお過ごしください」と使用すると「平穏な日々をお祈りします」といった意味を込めることができます。
「恙なく」は、「病気がない・災難がない」という意味であることを説明しましたが、「恙ない」には、「トラブルがおきそうであったが避けることができた」というような、マイナスな意味も含まれている言葉です。 なので、問題が起こるはずのない場面で使用することは避けるべきだとされ、「恙なく」は結婚式やお葬式では使われません。 現代では、「~さんの挙式が恙なく執り行われました」というような使い方をすることが慣例になりつつありますが、「恙なく」の本来の意味をふまえた上で考えると避けるべきと言えるでしょう。 結婚式やお葬式などでは、「滞りなく」「円滑に」という言葉を使用したほうが無難です。
▶「恙なく」・・・「病気・災難などがないさま」 ▶「滞りなく」・・・「物事が順調に進む」
「恙なく」は上記でも説明したように、「何か問題がありそうだったが、問題なく」といったマイナスの意味が込められています。 「滞りなく」は、「問題なくスムーズに」という意味であり、マイナスの意味はありません。 「滞りなく」については後述します。
「滞りなく」の意味は「物事が順調に進む」です。 「滞りなく」の元になっている言葉は「滞り」という言葉で、「滞り」は「物事がスムーズにいかずにつかえる」「停滞する」というような意味の言葉です。 「滞りなく」とは、「滞り」が「無い」ということになるので、「問題なく順調に進んでいる」という意味のある言葉という事になります。 「滞りなく」は、「物事が順調に進んでいる・問題なく」というような場面で使用する言葉です。 例えば、ビジネスシーンではプロジェクトなどの進捗状況を報告する際に、「滞りなく進んでおりますのでご安心ください」といったような使い方をします。 先程も説明したが結婚式やお葬式では「挙式披露宴を滞りなく執り行くことができました」や、「滞りなく告別式を終えることができました」といったように「滞りなく」が使われます。
「遅滞なく」は「ちたいなく」と読みます。 「遅滞」の意味は「物事の進行が滞って遅れること」です。 つまり、「遅滞なく」は「遅滞がない」ということなので、「物事の遅れがない」という、スムーズに物事が進んでいる状況に使用する言葉です。
「何事もなく」は、「なにごともなく」と読みます。 「何事もなく」の意味は、「無事であった・平穏であった」です。 例えば、「何事もなく帰宅できた」という使い方をすると、「事故に合うことなく・無事に帰宅できた」というようなニュアンスになります。
「首尾よく」は、「しゅびよく」と読みます。 「首尾よく」の意味は「物事が都合よく運ぶさま」です。 「首尾」には「初めから終わりまで・終始」という意味があります。 つまり「首尾よく」とは、「首尾がよい」ということになるので、「始まりから終わりまで調子が良い」という意味であるということになります。 「話し合いが首尾よくまとまる」というような使い方をします。
「予定通り」は「よていどおり」と読みます。 「予定通り」の意味は「あらかじめ決めていた内容とそっくり同じであること」です。 「予定」とは、「これからすることを、前もって決めておくこと」です。 つまり、「予定通り」とは、「前もって決めていた通りに順調に物事が進んでいる」ということです。
「スムーズに」とは、「物事が何事もなくうまく進行する様」を表現した言葉です。 「すんなりと」「すらすら」というようなニュアンスです。 「スムーズに」を言い換えると「円滑に」「なめらかに」といった言葉になります。
「恙なく」は英語で「safely(安全に)」「steadily(着実に)」「smoothyly(着実に)」などで表すことができます。
We're proceeding with the project smoothly.
恙なくプロジェクトは進行しています。
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「恙なく」について理解していただけましたか? ✓「恙なく」は「つつがなく」と読む ✓「恙なく」の意味は「病気・災難などがないさま」 ✓「恙なく」は「結婚式・お葬式」での使用は避けるべき ✓「恙なく」の類語は「滞りなく」「遅滞なく」など
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