普段からよくつかわれている「是非」という言葉。 名詞と副詞の2つの使い方があるのはご存知ですか? 今回はそんな「是非」について詳しく説明します。 名詞と副詞の両方の意味と使い方を例文付きで解説します。「可否」との違いやその他の類語、英語表現も紹介しますよ。
まず「是非」という言葉の漢字について説明します。 「是」は「正しい事」を表し、肯定的な意味を持つ 「非」は「正しくない事」を表し、否定的な意味を持つ 反対の意味を持つ「是」と「非」を組み合わせて「良し悪し」「正しいかどうか」といった意味となりました。
名詞としての「是非」について説明します。 意味は、「是と非」「正しいかどうかということ」「道理があることと、道理がないこと」「良いことと、悪いこと」です。 また、「物事の良し悪しを議論し判断すること、批評すること」といった意味もあります。
「幹部からはこのプロジェクト存続の是非を問う声も上がったらしい」 「社員が退職し、社員の中途採用の必要性の是非について議論する」 「契約終了時に継続契約の是非を判断する」 「現在、どうやらダム建設の是非をめぐり激しい論争が続いているようだ」 「他人の趣味や恋愛の是非を論じる女たちほど醜いものはない」
次に副詞として使う「是非」について説明します。 この場合は、何かを相手にお願いするとき、それを「強調」した意味になります。 「事情がどうあろうとも、あることを実現しよう、実現したいという強い意志や要望」を表す言葉です。 「どうあっても」「きっと」、また「心を込めて強く願うさま」「なにとぞ」として文章で用いられています。
「今日の懇親会には是非出てくれと上司に頼まれてしまった」 「是非ともこの問題解決について助言をいただけたらと思います」 「是非一度会いたいと思っています」 「このプロジェクトは是が非でも成功しなければならない」 「是が非でもそれを必要としているわけじゃない」
ビジネスシーンなどで、とある問題や新しいことに対してどうすべきかといった意味で使われています。 「善悪」の意味で使う場合、主な言い回しは
となります。 また、
などのフレーズは否定的なニュアンスでも使います。 これについての詳細は後述します。
それは、強調としての「是非」という言葉は元々「是が非とも」=「是非共」です。 これは「良くも悪くも」「どっちであろうとも」や、また「どうにもこうにも」「なんとしても」といった意味があります。 それが転じて「ぜひとも」といった副詞になり、強調の「是非」として使われるようになりました。 そのため、語源にならい
と、「是非」だけではなく「とも」を付けるとより丁寧な表現となります。 主に
の言い回しで使われます。
昨今では「是非」をひらがなで表記することがあります。 ひらがなの「ぜひ」である場合は、副詞である「強調」を意味する「是非」を指します。 名詞の場合は「是か非か」といった「是非」の漢字の意味を指す言葉です。 そのため、漢字の方が伝わりやすくなります。 副詞の場合は「強調」するもので「是非」の漢字の意味を直接表す言葉ではありません。 そのため、こうでなければいけないといった決まりはないですが、分かりやすいように使い分けられています。
ビジネスシーンなどで、目上の人に対しても「是非」を使うことはよくあります。 若い社員などが使うと勢いもよく、フレッシュかつ一所懸命な様子が伝わります。 しかし、依頼や懇願を「強調」する言葉なので注意が必要です。 何度も「是非!是非!」と言ったり、強い言い方になると強制的であると感じさせてしまいます。 そうすると、やや厚かましく感じたり、相手を断りづらい状況に陥らせてしまう場合があります。 言い方は、程よく丁寧に伝えるよう心掛けましょう。 また、目上の人に対して何か依頼や懇願する際、「是非」に変わる言葉はいくつかあります。
などが使えます。 どれも「〜ください」「お願いします」の前につけると、丁寧な表現となります。 また、「是非」ほどの強調がなく謙った印象を与えます。 ただ、本当に依頼したい場合などは「是非」を使った方が熱量が伝わる場合もあります。 場面によって使い分けたり、同じ言葉を連発しないように覚えておきましょう。
昨今では、「是非」を用いた文章を略して、「是非」だけが会話において使われることが多くあります。 例えば、 「これ使ってもいいですか?」 「是非!」 といったように、相手に依頼やお願いをされた場合の返答で使われています。 この場合は、「是非とも使ってください」を略して「是非」だけを言っています。 意味合いとしては「使っていいですよ」「どうぞ」といったニュアンスを強調した言い方です。 相手がお願いしたことに対して、こちらもお願いする言葉で返すことでそこに上下関係が生まれないようにする、日本特有の謙遜の表現ですね。 また、 「よかったらこれ食べてください」 「ではせっかくなので、是非」 といったような使い方もされています。 この場合は、「是非とも頂きます」を略して「是非」となっています。 意味合いとしては上述したとおり、依頼や懇願を同じように返すことが謙遜する表現です。 あまり目上の人などに「ぜひ!」だけで返すのは謙遜を表していても丁寧な表現ではないので、最後まで「是非とも使ってください」「是非とも頂きます」と使うようにしましょう。
「是非もない」とは、「当否や善悪の判断をするに至らない」といった意味です。 「しかたがない」「やむを得ない」「選択の余地もない」といったニュアンスを含みます。
「是非もない」とは普段あまり使われていません。 そういった場面では「仕方がない」などと使われるのがほとんどです。 しかし、「仕方がない」というと、「やむを得ない」状況を指しますがニュアンスとして「嫌々やる」と受け取られやすいです。 実際に窮地であったり、選択の余地がないといった意味で「仕方がない」と使っていても間違った受け取られ方をする場合もあります。 特に、目上の人などに使う場合は「是非もないです」と使うと丁寧かつ状況が伝わりやすくなります。 しかし、普段使われていないことを考えると「是非もないです」と突然言うと不自然に感じられる場合もあります。 間違った使い方ではないので、使ってもいいのですが注意は必要です。 また文学や文書などではよく用いられています。 使うとなれば、言い回しは
となります。 詳しくは例文を参考にしてください。
「是非とも」は「是にしても非にしても」「どんなことがあっても」「きっと」を意味する副詞です。 「是非とも」は自分の意志や意向を伝える場合や、相手に何かをお願いする場合に使う表現です。 自分の意志を伝えるときは「きっと〜します」、相手に何かをお願いするときは「必ず〜してください」というニュアンスになります。 「是非とも」は「必ず」とほぼ同じ意味ですが、「必ず」と違い、押し付けがましくなく、柔らかい印象を与えられます。 「是非お越しください」「是非伺います」などと”是非”だけでも意味は通じますが、”是非とも”とすることで、伝えたいことをより強調することができます。 ただ、「是非とも」をあまりにもしつこく使い過ぎてしまうと、相手に不快な思いをさせてしまうことがあるので、最後の一押しとして使うのが適切になります。 「ぜひとも」と平仮名で表記しても問題ありませんが、やや柔らかな印象を与えてしまうため、漢字で表記するのが無難です。
例文
「是非を問う」はよく使われるフレーズのひとつです。 物事に対してそれが良いのか悪いのか、賛成か反対か、などを問いかけるときに使います。 ビジネスシーンでもよく使われています。
▶・・・「是非」は、「正しいことと正しくないこと」 ▶・・・「可否」は、「許されることと許されないこと」また「可決と否決」
「是非」も「可否」も、善し悪しの意味がある言葉ですが、漢字の語源を基に違いを説明すると上記の違いとなります。
よく似た意味をもつ類語の「可否」との違いを説明します。 まずは、「可否」について説明しま。 「可否」は「良し悪し」「賛否」「可決と否決」を表す言葉です。 「可」は「よろしい、できる」という意味です。 元々は「祈りを神が許す」といった意味を表す漢字です。 それが転じ、「許される=よろしい」といった意味になりました。 「否」は「いな、同意しない」という意味です。 元々は「神が承諾しない」を表す漢字です。 それが転じ、「許されない=いな」といった意味になりました。 それに対して「是非」は「正しいことと、正しくないこと」といった意味の熟語です。 「是」は、「正しい事」を表し、「非」は、「正しくない事」を表します。
○善し悪し 意味:いいか悪いか、適正であるか適正でないか ○白黒 意味:物事の是非、善悪、正しいか正しくないか、罪がないか罪があるか …この場合は、白が「是(=善や無罪)」、黒が「非(=悪や有罪)」を表します。 言い回しは「白黒つける」「白黒をはっきりさせる」と主に使われます。 ○正誤 意味:正しいことと誤っていること、誤りを正すこと ○優劣 意味:優れているものと劣っているもの、まさりとおとり ○甲乙 意味:第一と第二、ふたつのものの間の優劣
○何卒 意味:手段を尽くそうという意志を表す言葉、相手への強い懇願の気持ちを表す言葉 ○どうぞ 意味:手段を尽くして依頼・嘆願して自分の希望を叶えたいという気持ちを表す ○くれぐれも 意味:依頼や懇願の表現を伴って他者に誠心誠意はたらきかけるさまを表す言葉 ○理が非でも 意味:無理にでも、何が何でも、是が非でも ○雨が降ろうが槍が降ろうが 意味:どんな困難や障害があっても、意志が強く簡単には崩れないたとえ
織田信長が、本能寺の変で明智光秀の謀反と聴いた際に発したとされている有名な言葉に「是非に及ばず」があります。 この、「是非に及ばず」の意味は「光秀の謀反ならば、仕方がない」と解釈されていました。 しかし、織田信長の性格やその発言のあとの行動を考えるとどうもその解釈は違うようです。 「是非に及ばず」の真意は、「是非もない」の意味にもあるように「当否や善悪の判断をするに至らない」ではないかというものです。 要するに、「考えるに及ばない、戦うまでだ」ということです。 織田信長の旧臣である太田牛一にによる、織田信長の一代記「信長公記」に残されている、本能寺の変での信長の発言を紹介します。 「是れは謀叛か、如何なる者の企てぞと、御諚(おおせ)のところに、森乱(森乱丸)申す様に、明智が者と見え申し候と、言上候へば、是非に及ばずと、上意候。透(すき)をあらせず、御殿へ乗り入れ、・・・」 と書いてあります。 まず、「是非に及ばずと、上意候」とありますよね。 この上意とは命令のことを指します。 これは近習(きんじゅ)であった森乱丸に「謀反してきているのは、明智光秀のようです」と伝えられた「是非に及ばず」と命令したと書かれているのです。 そして「透をあらせず、御殿へ乗り入れ」とは、「直ちに御殿へ移って戦闘態勢をとった」ということです。 つまり、信長は「光秀の謀反が本当かどうか、論ずる必要はなく、即刻戦え!」という意味で森乱丸に命じたと解釈できるのです。 織田信長は、根っからの武将ですね、、、(ポッ) ましてや、この時に残っていた女性陣は逃げさせたとも「信長公記」には記されています。 ちなみに!森乱丸って森蘭丸じゃないの?と思った方が多くいらっしゃると思いますが、どうやら本当は「森乱丸」のようですよ。 なんとも豊臣秀吉が森蘭丸に作り変えたとか。。。 織田信長が言った、「是非に及ばず」。 これは「光秀を非難したり、逃げる算段したりなどと考える必要は無い、相手が攻めてきたなら戦うだけだ」といった意味です。 「破壊者」にして「改革者」、「狂気の天才」にして「第六天魔王」と呼ばれ、戦国時代に旋風を巻き起こした風雲児「織田信長」ならではの言葉だったのでは、と思います。
「是非」の英語表現を考えていきましょう。 英語では「是非」に当てはまる単語は存在せず、場面ごとに別の英訳を考える必要があります。 例えば、外国のお友達が「日本に行きたいなー」と言っているとして、「ぜひぜひ!」という場合は、
などと言うことができます。 相手が「...してもいいですか?」と許可を求めてきて「ぜひどうぞ!」と答える場合は、
などと言います。 「一緒に行きますか?」などと誘われたときの「ぜひ!」は、 I'd love to! Sure! などを使います。 「正しいか誤っているか」という意味の「是非」は「right and wrong」と言います。
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「是非」について理解できたでしょうか? ビジネスシーンにおいても、日常生活においてもよく使われている言葉です。 しっかりと理解しておきましょう! ✔名詞の「是非」は「善悪、正しいかどうか」を表す ✔副詞の「是非」は「依頼や懇願」を強調する ✔副詞の場合は「是非とも〜ください」と使うのが丁寧 ✔「是非もない」とは「仕方ない」「やむを得ない」と言う意味 ✔織田信長の「是非に及ばず」は彼の武将らしさがつまった一言 是非しっかりと覚えて正しく使ってください!
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