「論旨」という言葉をご存知ですか?あまり日常生活では聞き慣れない言葉かもしれませんが、論文をまとめるときや、ビジネスシーンでは意外とよく耳にする言葉です。今回は、「論旨」という言葉の意味と使い方を例文つきで紹介します。また、類語や英語表現も合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「論旨」は「ろんし」と読みます。 「論」は、音読みで「ロン」、訓読みで「あげつら(う)、と(く)」と読みます。 「旨」は、音読みで「シ」、訓読みで「むね」と読みます。
「論旨」の意味は「議論や文章の中心となる事柄、内容」です。 「論」は「言い合う。議論」という意味で、「旨」は「思うことや述べることの主な内容」という意味です。
上記で説明した「論」と「旨」の意味からわかるように、「論旨」は上の字が下の字を修飾しています。 上の字が下の字を修飾している熟語は他にも「国宝」「県境」「洋楽」などがあります。
「論旨」は主にビジネスシーンで使います。 会社では「プレゼンの論旨をまとめる」「会議の議題が論旨から外れる」などと使うことができます。 ビジネスシーンで生産的に話し合いを進めるために、常に「論旨」を意識するのが大切です。 また、大学の論文などでも「論旨」という言葉を使うことがあります。 論文では「論旨が通る」という言い方がよくされます。 「論旨が通る」とは「伝えたい中心的な事柄が読者に理解してもらえる」という意味になります。 「論旨」の言い回しには
などがあります。
例文
「論旨」を用いた四字熟語に「論旨明快(ろんしめいかい)」があります。 「論旨明快」は、「論旨」と「明快」という2つの熟語を組みあわせた四字熟語です。 「明快」には、「気持ちが良いほど、はっきり筋道が通っている」という意味があります。 したがって、「論旨明快」は「議論や主張などの内容がはっきりしていて分かりやすいこと」を意味します。 内容が明確で分かりやすいことを褒めるときや簡潔に説明してほしいとお願いする場合などに使う四字熟語です。
例文
「諭旨」の意味は、「目上の人が目下の人に、物事の理由を言い聞かせる」です。
とった使われ方をします。 「諭旨退職」は労働契約の解消のいち形態で、労働者が解雇に相当する規則違反を犯したときに一方的に罰するのではなく、面子を保つために、自発的に退社するように促すことを指します。 「論旨」と「諭旨」は漢字が非常に似ていますが、意味が全く違うので注意しましょう。 しばしば「論旨退職」と記入している人をみかけます。
「綸旨」は、「天皇が発給する命令文書」のことです。 厳密には蔵人所(くろうどどころ)が天皇の意を受けて発給します。 「綸旨」は元々「綸言の旨」の略で天皇の意そのものを指す言葉でしたが、平安時代中期以降から公文書の要素をもった奉書を指すようになりました。 「綸言」とは「天皇のお言葉」という意味です。
「趣旨」の意味は、 ①ある物事を行うときのもとにある考えや目的 ②物事の中心となるおもむき。文章や話で言おうとしていること です。 最もよく使用されるのは、①の意味で、物事を行うにあたって、その狙いや目的を表します。 例えば、「訓練の趣旨を理解する」と使います。これは「訓練を行う目的や理由を理解する」という意味になります。 つまり、「趣旨」は「理由」や「目的」「狙い」といった意味があるのです。 「論旨」は、「中心となる内容」を指す言葉であって、目的や狙い、理由という意味はありません。 例えば、ビジネスシーンにおいて「どうしてこのような議論を行っているのか」という理由や目的を指すのが「趣旨」、話の中心となっている事柄が何なのかを指すのが「論旨」と使い分けるとわかりやすいでしょう。
例文
「主旨」は、「文章の主な意味・中心となること」です。 文章・話・考えなどの中心となる事柄、一番大事な部分を表します。 ”中心”となることを示しているので、「趣旨」とは違い目的や理由といった意味は含みません。 例えば、「論文の主旨をつかむ」といった場合は「論文の中心となる一番大事な部分をつかむ」という意味になります。 「趣旨」と「主旨」は、読み方も同じですし、非常に似ていますが、違いがあります。 物事の目的を伝えたい場合は「趣旨」、物事を簡潔に伝えたい場合は「主旨」を使います。 「主旨」は一つだけなのに対して、「趣旨」は複数あってもOKです。 「趣旨」は「主旨」の意味合いも含んでいるので、もしどちらを使えば良いか迷った場合は「趣旨」を使っておけば問題ないでしょう。 「論旨」は「議論の主旨」と言い換えることができ、同義語です。 「主旨」の方が意味が広く、議論以外に対しても使うことができます。
例文
「要旨」の意味は「非常に大切な内容」です。 「非常に大切な点」を意味する「要点」をまとめたものが「要旨」です。 「要旨」と似た言葉に「要約」があります。 「要約」の意味は「非常に大切な内容を短くまとめたもの」です。 「要旨」と「要約」はどちらも「要点」をまとめたものですが、「要約」は短くすることに焦点が置かれています。
例文
「論点」は、「議論となる問題点」という意味です。 例えば、会話で「論点がずれてる」「論点をそらす」といった使い方をすることが多いのではないでしょうか。 「論点」の「論」は「議論の論」、「点」は「問題点の点」と覚えていただけるとわかりやすいかと思います。 「論旨」は「問題点」ではなく「何を述べているのか」という「議論の筋道」を意味する言葉なので、「論点」と「論旨」は類語ではありますが、ニュアンスが違う言葉になります。
例文
「会議にかけて討議する問題」を意味する「議題」ですが、カタカナ語に言い換えると「アジェンダ」になります。 会議やプレゼンの日程や目的(議題)、決定するべき事項をまとめた資料のことを「アジェンダ」と言います。
その他にも
「提案や計画の要点・骨組みとなっているもの」
「文章の中の主な部分」
「議論・論文の主要な部分」
「主な題目・中心となる内容」
「物事の中心になるかなめ」
「物事の中心・要点」
「物事の中心になつ重要な点」 などが、「論旨」の類語になります。
「論旨」の英語表現の中で最も簡単なのは「point」です。 「主旨」ならば「main point」としてもよいでしょう。
Please make your point clear.
論旨を明瞭にしてください。
「論旨」の英語には「gist」もあります。 「gist」は「詳細を省いた、情報の大切な部分をまとめたもの」という意味なので、「要旨」に近いです。 「the gist of」の形で使います。
I didn't understand the gist of he said.
彼の言ったことの論旨が理解できなかった。
「論旨」を「その人が言おうとしていること」と解釈すれば、
などと表現することも可能です。
This is what she is aiming at on this paper.
これが彼女の論文の論旨です。
いかがでしたか? 「論旨」という言葉について理解を深めていただけたでしょうか。 ✓「論旨」の読み方は「ろんし」 ✓「論旨」の意味は「議論の筋道」 ✓「論旨をまとめる」「論旨が通る」などと使う ✓「論旨」を含む四字熟語は「論旨明快」 ✓「諭旨」や「綸旨」など似た言葉にご用心など