「怒涛」という言葉をご存知でしょうか。「怒涛の◯◯」という表現を耳にすることも多いのではないでしょうか。今回は、「怒涛」の正しい意味と使い方を例文付きで解説します。また、「怒涛」の類語や対義語、英語表現も合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「怒涛」の読み方は「どとう」です。 「怒」は音読みで「ド」、訓読みで「いかる・おこる」と読み、 「涛」は音読みで「トウ」、訓読みで「なみ」と読みます。
「怒涛」の基本義は「荒れ狂う大波」です。 「怒」には「おこる」という意味もありますが、「勢いが激しい」という意味があります。 「涛」は、「なみ・おおなみ」という意味がある漢字です。 そこから転じて「激しい勢いで押し寄せるさま」の比喩としての意味を持つようになりました。 日常的に使う「怒涛」の意味はほぼ後者です。
「怒涛」の漢字は「怒濤」と表記することもあります。 「怒涛」は「怒濤」の俗字です。 公式な場で用いられてきた標準的な「正字」に対し、主に世間一般で用いられてきたとされる異体字のことを「俗字」といいます。 意味に違いはありません。 「涛」と「濤」はどちらも常用漢字ではありませんが、「濤」の方が画数が多いため、「涛」を使うことが多いです。 「濤」のサンズイは「水」を表し、音符の「壽」は「長くつらなる」「長く生きる」を意味します。 「壽」の俗字が「寿」で、「長寿」などの熟語を思い浮かべると漢字の意味がイメージしやすいでしょう。 「濤」で「長くつらなう水」=「大きな波」ということになります。 「濤」を使った熟語には他にも「狂濤」「波濤」「松濤」「涛声」「銀濤」などがあります。
「怒涛」は、「怒涛の+名詞」で使用されることが多いです。 例えば、
といった言い回しで、荒れ狂う波のように激しい様子を言い表すことができます。 詳しい使い方については例文を参考にしてください。
例文
「怒涛のごとく+動詞」「怒涛のように+動詞」で大波のように押し寄せる様子を表す表現になります。 例えば、「怒涛のごとく押し寄せた」は、大波のように激しく押し寄せる様子を表しています。 「怒涛のごとく」は「怒涛の如く」と書くこともあります。 また、「怒涛のごとき」「怒涛のような」とすると後に名詞が続きます。 意味は同じで「大波のように押し寄せる◯◯」となります。 例えば、
といった使い方をします。
例文
「怒涛」を使った四字熟語に「疾風怒濤」というものがあります。 「疾風怒濤」は「しっぷうどとう」と読みます。 「疾風怒濤」は「事態の変化が激しく大きく変わる様子」を意味する四字熟語です。 「疾風」は「速く吹く風」を意味していて、「怒涛」が「激しい波」を意味しています。 この「疾風」と「怒涛」という熟語を組み合わせた四字熟語が「疾風怒濤」です。 本来は「激しい風と荒れ狂う波」を表現している四字熟語で、転じて「時代などが激しく変わっていくこと」という意味で使用されるようになりました。
例文
「怒涛に迷う」という使い方をしばしば見ることがありますが、これは誤用です。 正しくは「路頭に迷う」です。 「路頭」は「道ばた」という意味で、道に迷っていたり生活に困っていることを「路頭に迷う」と言い表すことができます。 「怒涛」と「路頭」は、同じ三文字の言葉で響きも似ているので混合されやすいですが、意味は全く違います。 「怒涛に迷う」という日本語はありませんので注意しましょう。
例文
「怒涛」を「激しい大波」という意味で使うのは稀です。 「怒涛」が元々「大波」という意味であることを知っている人の方が少ないのではないでしょうか。 「大波」という意味の「怒涛」をよく一緒に使われる表現が「逆巻く」です。 「逆巻く」とは「川や潮の流れに逆らうように波が怒ること」「波が激しく立つこと」です。 「逆巻く怒涛」「怒涛が逆巻く」などといいます。 あまり使用機会はありませんが、小説などでたまに見かけます。
「夏怒涛(なつどとう)」は、俳句の季語として使われる言葉です。 「夏怒涛」の意味は、「炎天下で輝く海から、白い波頭を立てて海岸に打ち寄せる波」です。 また、夏の海は「強い生命力」を感じさせることができます。 日常生活で使用されることはないですが、季語を覚えておくと俳句を読んだときに情景が目に浮かんでくるのでより俳句を楽しむことができます。
「波瀾・波乱」は「激しい変化や曲折があること」です。 「波瀾」と書いても「波乱」と書いても意味は同じです。 ただ、簡単な「波乱」のほうが書き言葉として使用されることが多いと言えるでしょう。 「波」という漢字を使用していることからもわかるように、「怒涛」と同じく「激しく荒れる波」という意味があります。 そこから転じて、激しい変化があることを意味する言葉として使用されるようになりました。 したがって、「怒涛」の類語になります。 また、「事態や揉め事」を意味して使用されることもあります。 例えば、「波乱の人生」は「苦労など様々な出来事や激しい変化があった人生」となります。
例文
「激変(げきへん)」は、「急激に変わること」という意味です。 ゆっくりではなく、誰もが驚くほど急に激しく変わる様子を「激変」という言葉を使って表現することがわかります。 「激変」は、悪い状態になっていく場合に使用されることが多いです。 「激しい」というニュアンスで言えば「怒涛」「波乱」などが類語になります。
例文
「激動」の意味は「政治・社会などが激しく変動すること」です。 状況や、情勢が目まぐるしく変化することを「激動」と言います。 「激動」も「怒涛」と同じく激しさを表す言葉なので、類語になります。 「激動」は、主に社会情勢に対して使用される言葉です。
例文
「怒涛」は、まれに「大波・荒れ狂う波」という意味で使用されることがあります。 なので、波の小ささや穏やかな波を表現している「細波(さざなみ)」「小波」は対義語にあたると言えるでしょう。 「細波」は、細かに立つ波で、小さな波を意味しています。 「小波」も「大波」の反対で、小さな波を意味しています。 また、「細波」も「小波」も「細波のような〜」「小波のような〜」というように、「小さな」「かすかな」というニュアンスで使用することができます。
例文
「安定」は、「物事が落ち着いていて、変動がないこと」です。 「怒涛」は「激しい様子」を表す言葉なので、落ち着いていて変動がない様子を表す「安定」は、まさに対義語になると言えるでしょう。 例えば、「怒涛の日々」は激しく何かに追われながらせかせか毎日を送っている情景を思い浮かべることができます。 反対に「安定した日々」と言えば、何の変わりもなく穏やかに毎日を送っている背景が浮かぶでしょう。
例文
「立て込む」の最も一般的な英語表現は形容詞「busy」です。
の形で使います。 「busy」よりもっと忙しい意味を持つ英単語に「hectic」があります。 「hectic」は「猛烈に忙しい」という意味になります。 「a long day」というイディオム表現もあります。 直訳すると「長い一日」ですが、「忙しい一日」という意味になります。
It's been a long day today.
今日は怒涛の一日だった。
「怒涛のように」は英語で「like crazy」となります。
The competitor is catching up to us like crazy.
競合相手が怒涛のごとく、弊社に追い上げてきた。
いかがでしたか? 「怒涛」という言葉について理解していただけたでしょうか。 ✓「怒涛」の読み方は「どとう」 ✓「怒涛」の意味は、①荒れ狂う大波 ②激しい勢いで押し寄せるさまのたとえ ✓日常的に使う「怒涛」は「激しい勢いで押し寄せるさまのたとえ」 ✓「怒涛」の漢字は「怒濤」と表記することもある ✓「怒涛の○○」で激しい様子を表す