「口さがない」という言葉をご存知ですか?今回は「口さがない」の意味や使い方を例文付きで解説します。また「口さがない」の類語や英語表現も合わせて紹介しますので是非参考にしてください。
「口さがない」は「くちさがない」と読みます。 「こうさがない」「ろさがない」ではありません。
「口さがない」は「口やかましく、人のことを無責任・無遠慮に批判する」「汚い言葉で、あることないこと言いふらす傾向にある」という意味です。 「口さがない」は、「口」に「さがない」という言葉を組み合わせてできています。 その人のダメなところを指摘したり指導をするのではなく、自分勝手に自分の感情で批判をしたり、信憑性もないことを無責任に言いふらしたりするイメージです。
「口さがない」の漢字表記にすると、「口性無い」となります。 「性(さが)」には、「その人の生まれ持っているもの」という意味があります。 「口差が無い」ではないので注意してください。 しかし、「口性無い」は現代になって使用されるようになった「当て字」です。 一般的な文章では「口さがない」と表記します。
古語「さがなし」の原義は「たちが悪い」「意地悪」です。 それと「口」が組み合わさって「口が悪い。つつしみなく人のことをとやかく言う」という意味になりました。 古語「さがなし」では単体でも「口が悪い」という意味にもなります。 源氏物語にも「着たへる物どもをさへ言ひ立つるも、物事ひさがなきやうなれ」という一文があります。 これは、現代語訳にすると「着ている着物のことまであれこれ口悪くいわれているようですが」となります。
「口さがない」は聞き慣れない表現なので、方言なのではないかと思う人もいるかもしれませんが、違います。 「さがない」という言葉が古語であり現代では使われないため、「口さがない」は時代がかった言葉に感じられます。 しかしながら、「口さがない」は標準語であり特定の地域の方言等ではありません。
「口さがない」は、「口さがない人」「口さがない連中」などと人に対して使います。 「口さがない人」は「口汚く他人を無遠慮に批判する人」という悪い意味で使います。 「口さがない連中」などと集団を指す場合もあります。 ただし「口さがない」は批判的な言葉なので、直接本人に対して言ったり、目上の人に対して使ったりするのは避けた方がいいでしょう。
例文
「人」だけではなく「世間」に対しても「口さがない」という表現は使います。 その場合は「ゴシップ好きな社会」を指します。 根も葉もない噂話を記事にしている週刊誌を作っている人たち、それを手にとって喜んでいるようなお茶の間は、まさに「口さがない世間」と言えます。
例文
「言葉」「噂」などを「口さがない」で修飾するのは誤りです。 この場合は「口さがない世間の言葉」「口さがない連中の噂」などと表現する必要があります。 したがって、「口さがない言葉を言う」「口さがない噂」という使い方をすることはできません。 しいていうならば「心ない言葉」「心ない噂」などで「誹謗中傷」というニュアンスになります。
「口さがなく」で副詞的に使うことができます。 上述したように、「口さがない言葉」は誤用となりますが「口さがなく言われる」と副詞的な使い方をすることで正しい表現です。 「口さがなく言われる」は「やかましく色々と悪い噂をされる」という意味になります。 「口さがない噂」も「口さがなく噂をする」という副詞的な使い方が正しいです。 「口さがなく噂をする」で、「やかましく悪い噂をする」というニュアンスになります。
例文
「さがな口」だと、「悪口」という意味になります。 例えば「さがな口ばかり言うと顔が歪みますよ」で、「悪口ばかり言うと顔が歪みますよ」という意味です。 「口さがない」は、「口悪く他人を批判するような人」というその人の性格を指します。 一方「さがな口」は「悪口」を指す言葉なので、ニュアンスの違いがあると言えます。 なんとなく「口さがない口」を「さがな口」と言い換えても問題ないような気がしてしまいますが、この2つを言い換えることはできません。
例文
「不躾(ぶしつけ)」は、「礼儀作法をわきまえないこと」「無作法」「無礼」を意味しています。 また「ぶしつけ」には「露骨」「唐突」という意味も含まれます。 「不躾」は、主に自分の行動や発言に対して使われる言葉です。 例えば「不躾で申し訳ありませんが〜」と言った場合は、「大変失礼で申し訳ありませんが〜」と、自分の行動をへりくだって言うことになります。 自分をへりくだった表現なので、目上の人に対して使うことが可能です。
例文
「毒舌(どくぜつ)」の意味は「辛辣な皮肉や悪口を言うこと」です。 見方が非常に手厳しく、表現の仕方や言い方がきついことを「毒舌」と言います。 「毒舌」という言葉自体には、「口さがない」と同様にただ「皮肉や悪口を言う」というマイナスな意味しかありませんが、「毒舌な人」と人の性格を表す意味では、「媚びへつらうことなくハッキリ物事を言う人」というプラスの意味も含まれることがあります。 「口さがない」には、悪い意味しかありません。
例文
「辛口」は、本来「口当たりの辛いこと」を意味する言葉です。 そこから転じて、手厳しい言葉を言うことを意味するようになりました。 「悪口」というよりは、「厳しい」というニュアンスが強いと言えます。 何か評価をするような場面で、厳しい評価を口にすることを「辛口評価」と言ったりします。
例文
「口汚い」「口うるさい」「口やかましい」も「口さがない」の類語になります。 「口汚い」は「悪く汚い言葉を使うこと」です。 「おい、てめぇ〜◯◯してんじゃねえよ」など、汚い言葉を使う人を「口汚い」と言います。 「口うるさい」は、「ちょっとのことでもグチグチとやかましく言うこと」です。 例えば、人が気にしないような事でもいちいち「〜しないとダメじゃない」「〜はこうじゃないとダメ」など小言のようにグチグチ言うを「口うるさい」と表現することがあります。 「口やかましい」は、「やかましい」に「声が大きかったり、何かと文句をつけて厳しいこと」という意味があるので、「口うるさい」と同義になります。
例文
「兎や角言う」「何の彼の言う」は、「あれやこれや」という意味です。 「あれやこれや」と、口うるさく言うことを「兎や角言う」「何の彼の言う」と表現することができます。 言う必要のない細かいことまでつついたり、指摘するという場面で使用されることが多いです。
例文
「流言飛語(りゅうげんひご)」の意味は、「世の中で言いふらされる根拠のない情報」です。 「流言飛語」は、「流言」と「飛語」という2つの熟語を組み合わせてできている四字熟語です。 「流言」には「根拠がない噂」という意味があり、「飛語」は、「話が飛び交う」という様子を言い表している言葉です。 したがって、「流言飛語」は「根拠のない情報や噂が飛び交っていること」を意味する四字熟語であるということがわかります。 「口さがない」も根拠のない噂話を言いふらすという意味が含まれるので、「流言飛語」は類語になります。
例文
「糞味噌(くそみそ)」「襤褸糞(ぼろくそ)」は、「価値のないもののように相手をひどくけなすこと」です。 「糞味噌」は、「糞と味噌を一緒にする」という意味で、そこから「価値のあるものとないものの区別がつかない様子」を言い表す言葉として使用されるようになりました。 そこから、さらに「価値のないものように、ひどくけなす」という意味でも使用されます。 「襤褸糞」は「ぼろや糞のように価値のないもの」という意味から転じて、「ぼろや糞のように価値のないもののように悪く言う」という意味で使用されるようになりました。 「口さがない」も、相手のことを好き勝手に悪く言うことを指す言葉なので類語になります。
例文
同じく「口」を含む、似た意味の慣用句には「口幅ったい」「口が減らない」「口が過ぎる」などがあります。 「口幅ったい(くちはばったい)」は、「身の程をわきまえず、生意気なことを言うこと」です。 ただ偉そうなことを言う人に対してだけではなく、「口幅ったいことを申し上げるようですが...」というように、自分のことを言う場合もあります。 目上の人などに、失礼のないように物申すためのクッション言葉になります。 「口が減らない」は、「口が達者なこと」「勢いよく理屈を並べて言い返し続けること」を言い表している表現です。 つまり、「言葉が減らない」ということです。 遠慮することなくペラペラ話す人も「口が減らない人」などと言われることがあります。 「口が過ぎる」は、「言わなくても良いことまで言ってしまうこと」です。 例えば、相手が不愉快になるようなことまで酔った勢いでペラペラと話してしまうといった場合に、「口が過ぎる」という表現を使用することができます。
例文
「口さがない」には、これといった対義語はありません。 「口さがない」は、「人を悪くいうこと」なので、強いていうのであれば「称賛」といった相手を褒める意味合いを持つ言葉が対義語に当たると言えるでしょう。 また、「口汚い」という点で言えば「口清い(くちぎよい)」も対義語にあたります。 「口清い」は、「物言いが立派である」という意味があります。 ただ、「口清い」は「口先だけ立派」という悪い意味で使用されることもあります。
例文
「文句を言う」の英語は、
です。 特に「nag」は「人をイラつかせる言い方で文句をいう」という意味なので、「口さがない」のニュアンスに近いと思います。 「ブーブー言う」という日本語がピッタリな気がします。
などの形で使います。
He is always nagging.
彼は口さがない奴だ。
単に「性格が悪い」を意味する「mean」を使ってもよいかと思います。
He is such a mean guy.
彼は口さがない奴だ。
「口が悪い」という意味合いなら、「have a sharp tongue」という表現になります。
「gossipy」で「噂好きな」という意味になります。
いかがでしたか? 「口さがない」という言葉について理解していただけたでしょうか。 ✓「口さがない」の読み方は「くちさがない」 ✓「口さがない」の意味は「口汚く、他人を無遠慮に批判する傾向にある」 ✓「口さがない」の漢字は「口性無い」 ✓「口さがない人」「口さがない連中」などと人に対して使う