「いけず」とは関西方言で「意地の悪い。つれない。憎たらしい。また、その人」という意味の語。「いけずな人やわ〜」などと冗談っぽく言い、強く非難する場合には使わない。「いけずされる」だと「意地悪される」の意。語源は「行けず」で、とおせんぼする人を指して意地悪だとしたのが由来。
「いけず」の意味は「意地の悪いさま。また、その人」です。 つれない様子や心がねじけていることを指します。 「いけず」単体でも人を指す場合もありますし、「いけずな人」「いけずな男」などと使う場合もあります。 「いけずされる」の形で「意地悪される」という意味になります。
「いけず」は近世までは「悪人」の意味もありました。 国語史でいうと、近世語にあたります。江戸時代の言語のことです。 『浄瑠璃・夏祭浪花鑑』に出があります。 「今も今迚いけず達がわっぱさっぱ」という文章で「今もいつもと変わらず悪人達が言い争っている」といった意味になります。 「わっぱさっぱ」の意味は「大声で言い争うこと」です。
「いけず」を漢字で書くと「行けず」になり、まさにこれが由来です。 相手が通せんぼをするので、自分がそれ以上行くことができません。 だから、その人は意地悪だ、といったことから「いけず」が「意地悪」を表す言葉となりました。 ちなみに「いけず石」は意地悪な石という意味ではなく、車が家を傷つけないようにするため、壁に「行けず」な石ということになります。 また「いけず後家(ごげ)」といった言葉もあります。 「いかず後家」とも言われています。 意味は「いくつになっても後家さんのように嫁がない女性」です。 「意地悪な未亡人」といった意味ではありません。
「いけず」にはもう一つ由来と言われているものがあります。 それは『池之端の芋茎(いけのはたのずいき)』という言葉を短縮して「いけず」となった説です。 「池之端の」は「池の端っこの」という意味です。 「ずいき」とは、里芋の葉茎で、初夏から夏にかけて収穫される野菜です。 池之端の芋茎が、池の水分や栄養を独占してしまい、他の植物には分け与えないことから「意地悪」という意味をもつようになったと言われています。 このように「いけず」は江戸時代の関西の洒落言葉であった可能性もあります。
「いけず」を「悪人」という意味で使っていたのは江戸時代まで、現在では愛憎の念が入り混じった表現となります。 「いけずやわ〜」などと使います。 相手を強く非難する場合には使わず、相手を冗談で批判したり、いじって言ったり、軽いツッコミとして使います。 「もう、意地悪なんだからぁ〜!」といったニュアンスで、本当に拒絶しているわけではありません。 「いけずされる」と使う場合も同じニュアンスです。
例文
「いけず」は元々関西弁であり、京都の人も多く使っています。 「いけず」は愛のある言葉ではありますが、それを嫌味として使うことがあります。 「いけずやなぁ」と言われてちょっとしたことを突っ込まれたくらいに思っていても、実際は「ほんと意地の悪い人間だな」と嫌味を言われている場合があります。 このように京都の人は、一見口ぶりも穏やかであっても実際は嫌味を言っているという言葉があります。 例えば、「ぶぶ漬けでもどうどす?」は「早く帰りなさい」といった意味になります。 「ぶぶ漬け」とはお茶漬けのことです。 実際にお茶漬けを出してくれるわけではありません。「早く帰りなさい」ということを暗に伝えており、「空気も読まずに長居していること」に対する嫌味、要するに「いけず」となります。 また「何を着ても似合わはりますなぁ」は「よくそんな格好ができるね」といった意味になります。 もちろん、京都の人全員が嫌味を言ってくるわけではありませんが、上方漫才のネタにされたりするほど京都ではあるあるのようです。
「いけず」は関西地方の方言で、京都や大阪、兵庫などで主に使用されています。 しかし、関東などその他の地域でも使用される場合があります。 静岡県出身のちびまる子ちゃんの口癖「う~ん、いけずぅ」があったり、埼玉県出身のクレヨンしんちゃんも「いけずぅ~」と言ったりしているため、関西でしか使用しないというわけではありません。
「行けずじまい」とした場合は、「行かずに終わっている」ということです。 例えば「お見舞いに行けずじまい」とした場合は「お見舞いに行けていないまま」であることを表します。 関東では「いかずじまい」という方が一般的です。 漢字は「行かず仕舞い」と書きます。 「〜ず仕舞い」は「〜しないで終わってしまった」という意味です。
「いずれ」の類語には
などがあります。
「いけず」より強意的な意味となる言葉には
などがあります。
「意地悪」を意味する英語表現は「mean」です。 この「mean」は形容詞です。 「mean」は動詞で「〜を意味する」、「means」の形では名詞で「手段」を意味します。 ちなみに「手段」を意味する「means」は、単数形も複数形も「means」で、単複同形と言われます。
You are such a mean man.
いけずな男やわ〜。
「いけず」とは「意地の悪いさま。憎たらしいさま。また、そのような態度をとる人」を指す言葉です。 「いけずな人」とは「不親切な人。つれない人」のことを指し、「あの人いけずやわ~」などと使い、「あの人は意地悪ですね」という意味になります。 また、「いけず」には「いけずされる」という用法もあり、「意地悪される」という意味になります。