「筋を通す」とは「道理を通す」を意味する慣用句。「筋」の語源は「筋肉の組織」で「細長く一続きになっているもの」のたとえ。「通す」は「一方から他方へ至らせる」の意。「一続きのものを向こう側を通す」つまり「首尾一貫させる」から転じて「道理を通す」という意味になった。
「筋を通す」には2つの意味があります。 ①道理を通す、しかるべき手続きを踏む ②方針や考え方などが最初から最後まで変わらない 「筋を通す」と聞くと、決められたルールに絶対に従わなきゃいけないと思い、「ヤンキーっぽい、めんどくさい、嫌い」などと感じる人も多いのではないでしょうか...? 1つ目の意味しか知らず、2つ目の用法を誤用だと勘違いしている人も多いので注意しましょう。
例文
ビジネスシーンにおける「筋を通す」とは具体的にどういうことを言うのでしょうか? 「誠意を継続させること」「やると決めたことをやり通す」といった意味合いが強くなります。 もちろん時代の流れや取引先・顧客とのやり取りの中で臨機応変に対応していくことも必要です。 しかし、方針や考え方までブレてしまっては信頼されなくなってしまいます。 「こういったものを作りたいという気持ちを持ち続けること」や「自分が担当した仕事を途中で投げ出さないこと」などが「筋を通す」ということになります。
「筋を通す」は恋愛や男女関係においても使われます。 特に恋人がいたり既婚であるのに、新しく好きな人が出来てしまった場合に、今関係のある人と別れることを指します。 浮気や不倫をせず、今の関係を切ってから次の人へいくことを指します。 他にも、デートを仕事などでドタキャンしてしまっても埋め合わせをきちんとすることも「筋を通す」のひとつでしょう。 また仲良くしていたけど好意はなかった相手に告白をされた時に、めんどくさがったり有耶無耶にしたりせず、きちんと断ったりデートを重ねて向き合ったりすることも「筋を通す」と言われることもあります。
筋を通す生き方、とよく使われています。 これは芯を持ってブレないでいることを表します。 自分で決めたことなのに努力などをせずに目標達成をしなかったり、周りに流され続けていたりするのは、筋が通っていないですよね。 ここで言う「筋」は自分自身の信念や夢などを指します。 自分で決めた夢に向かって努力し続けたり、物事に対する信念を曲げずにいることを「筋を通す生き方」と言います。
「筋」の原義は「筋肉の繊維」です。 そこから転じて「細長く一続きになっているもの」という意味があります。 そこからまた転じて「物事の条理、道理」という意味が生まれました。 この意味の「筋」は「筋あい」ともいいます。 「筋」には「線」「家系」「流派」「そのことに関係のある方面」など文脈や使い方によって様々な意味があるので注意しましょう。辞書で調べると15以上の意味が出てきます。
「筋をと通す」の「筋」と同じ意味の「筋」を使った慣用句には、
などがあります。
「筋を通す」と「筋道を通す」は類語ではありません。 「筋道を通す」の意味は「物事を、飛ばさずに順序立てて説明する」です。 「筋道」には「物事の道理」と「物事を行うときの順序、手順」という意味があります。 また「筋道」は「筋道を立てる」「筋道をつける」「筋道を踏む」といった使い方をします。
「筋を通す」の①の意味「道理を通す、しかるべき手続きを踏む」の類語には
などがあります。 「仁義を切る」の意味は「渡世人や香具師の人々が使う業界内のあいさつをしたりや特有のルールを守ると宣言する」です。 一般的にはほとんど使いません。 「筋目を立てる」の意味は「道理にかない、正しい方法で対応する」です。 四字熟語には
があります。 「忠孝仁義」の意味は「主君に対する忠義と親孝行、思いやりと正義」を指します。 「仁義忠孝」とも使われます。
「筋を通す」の②の意味「方針や考え方などが最初から最後まで変わらない」の類語には
などがあります。 「整合性」の意味は「ずれや矛盾がなくて、しっかりとそろっていること」です。 「筋が通っていて矛盾がないさま」を表します。ビジネスの場において使うことが多くなっています。 「一貫性」の意味は「最初から最後まである考えを突き通すこと」「同じ考え方や方法を持続すること」です。 四字熟語には
などがあります。 「首尾一貫」の意味は「方針や考えを最後まで貫くこと」です。 「首尾一貫したやり方」などと使います。 「初志貫徹」の意味は「初めに心に決めた志を最後まで貫き通すこと」です。 自分の意見を変えずに、決めたことをやり続けたり思い続けることです。
「筋立てる」または「「筋を立てる」」は「筋を通す」と同じ意味です。 「理屈・道理の通ったものにする」という意味です。 「きちんと筋立てて説明する」などと使います。
「筋を取る」だと慣用句ではなく文字通りの意味となり、調理用語です。 セロリやきぬさや、さやえんどうなどの野菜のそのまま食すると固いものの繊維を取り除く作業を指します。 鶏ささみなどにも筋はあります。
「筋を売る」「筋を振る」だと「成り行きを話す。また、前もってそれとなく話をしておく」という意味になります。 使用頻度は大変低いです。 元は演劇用語で「役者が狂言のあらすじを前もって説明する」という意味の言葉です。
日本語の「筋を通す」と全く同じ表現は英語にはありませんが、「合理的」を意味する、
などを使って表現することができます。 「make sense」でも「理にかなっている」という意味になり、この文脈で使うことができます。
That's a reasonable suggestion.
それは筋の通った提案だ。
I think what she said makes lots of sense.
彼女が言ったことは筋が通っていると思う。
「stick to his principles」だと「彼の原則・原理に固執する」という意味になり、「筋を通す男」というニュアンスが出ます。
He stuck to his principles to the end.
最後まで彼は筋を通した。
筋を通す人は、時間や約束を必ず守ります。 会社でもプライベートでも遅刻などすることはなく、約束の時間よりも早く到着していることがほとんどです。 会社では30分〜1時間早く来て仕事を片付けている人も多いでしょう。 また口約束などもしっかりと覚えています。 他の人が忘れてしまったことでも覚えているので、「そんなこと言ったっけ?」なんて言われてしまうなんてことも。 しかし例え相手が忘れていたとしても、自分が忘れてしまっているよりマシだと思っています。
筋を通す人は、嘘をつきません。 何かを誤魔化したり、無責任な発言をしたりしません。 自分がミスをした際にはすぐに謝罪をして事情を正直に説明をします。 そしてその後の対処もとても早いです。 また、できないことを「できる」と言って見栄を張ることもしません。 自分を大きく見せようとしたりしません。 筋を通す人は、そういった誇張をする前に努力をしています。
筋を通す人は、例えば所属している部署内全体の成績を上げるために全力を尽くすことができます。 というか、自分が所属している部署内の成績が悪いというような状態を放っておくことはしません。 なので、どうしたらいいのかを常に考え部署全体をひっぱっていきます。 本人がリーダーになろうとしていなくても、積極的に物事に取り組む様子に周りが頼ってリーダーシップを無意識に取ってしまっていることも多いです。 積極的に責任を持って色々考えて動いてくれるので、周りからも頼りにされています。
いかがだったでしょうか? 「筋を通す」について理解出来たでしょうか? ✔意味は「道理を通す」「方針などが終始変わらない」の2つ ✔仕事やビジネス、恋愛などでも使われる ✔由来は「筋肉の繊維」