ビジネスシーンでは「予てより」という言葉をよく見かけますよね。また、新聞やニュースなどでも日常的に見聞きすることが多いです。しかし、いざ使おうとなると、戸惑ってしまったり、どのような場面で使っていいのか分からないということがあります。そこで今回は「予てより」の意味や使い方、例文、類語について解説していきます。「予てより」をしっかり理解して、正しく使いこなせるようにしましょう。
「予てより(予てより)」は「前もって」「あらかじめ」「以前から」を意味しています。 「予て」は「過去のある時点に経験または認識されているさま」を表します。 「予て」だけでも「前に」「以前に」「前もって」を意味します。 そこに、「動作・作用の開始順序や起点、発端を示す」という意味の「より」を付けることによって、前から継続しているということをより強調することができます。 「予てより」は「ある程度思い出せる範囲のこと」を指します。 ”ある程度思い出せる範囲”を表していて、明確に何年前や何十年前といった期間は決まっていません。
「予てより」は「兼ねてより」と書くこともできますが、何か違いはあるのでしょうか? 「兼」は音読みだと「ケン」、訓読みだと「かねる」と読みます。 「兼」は「二つ以上のものを合わせる」「前もって」を意味しています。 「予」は音読みだと「ヨ」、訓読みだと「あらかじめ」「かねて」と読みます。 「予」は「前もって」「ぐずぐずする」「心地よくなる」を意味しています。 「兼ねて」は、古語「兼ぬ(かぬ)」の連用形+接続助詞「て」で成り立っています。古語の「兼ぬ」は「兼ねる」と違って、「予期する」「予測する」「わたる」「あわせる」と意味が多々あります。 「兼ねてより」でも「予てより」と書いても基本的には問題ありませんが、一般的には「予てより」と表記することが多いです。 「兼ねてより」があまり使われない理由は、「兼ねて」は「二つ以上のものを合わせる」という意味で使うことが多いため、「兼ねてより」だと意味が紛らわしくなってしまうからです。
「予て」は「以前から」「あらかじめ」を意味します。 「より」は”起点・動作の開始順序や発端”を示す言葉で、「以前、前」という意味合いになります。 「予て」と「より」はどちらも「以前」を意味しているので、「予てより」は重語になります。 ”重語”とは、同じ意味やニュアンスを持つ言葉を重ねた語のことです。 重語は、相手に違和感を与えたり、くどいという印象をもたれる可能性があるので、基本的にはなるべく使用を避けるべきです。 ただ、「予てより」は一般的に使用されている言葉で、相手に不快感を与えるような言い回しではありません。
「予てより」を使った言い回しはたくさんありますが、「予てより予定....」という使い方は間違いになります。 「予定」は、「行事や行動を前もって定めること。また、そのさま」を意味しています。 このように「予定」には「前もって」という意味が含まれるので、「予て」と「より」が重語で、「かねて」と「予定」も重語です。 ですので、”二重に”重語(「二重」と「重語」も重語なのでは.....w)となります。 「予てより予定...」は絶対に間違いではありませんが、違和感を与えてしまう場合もあるので、「予てより都合」「予てより計画」と言い換えるのが良いでしょう。
「予てより」はビジネスシーンでも日常会話でも使用頻度が高い言葉です。 「予てより」は、「予てより◯◯だった」といったように動詞と組み合わせて使用します。 ここでの動詞は過去形で使うことがほとんどです。 「予てより」は、芸能人の結婚会見などで「予てよりお付き合いしていました〜」なんて使っているのを聞いたことがあると思います。 この場合は、「以前からお付き合いしています」という意味になります。「予てより」を使うことによって丁寧な表現にすることができます。
◯ビジネスシーンでの例文
◯ビジネスシーン以外の例文
「予てより」という言い方以外に、「予てから」という言い方があります。 「予てから」は「予てより」と同じ「以前から」「前もって」という意味で、重語になります。 「予てより」「予てから」は主に口頭で使い、文章で使うのは避けるべきと言われています。 「予てから」と「予てより」が使われることは多いですが、重語のため、正式な表現としては「予て」を使用するのが無難です。実際、新聞記事などでは「予てから」「予てより」という表記はしておらず、「予て」が使われます。 「予てから」「予てより」といった表現を使いたい場合は、「予て」を使用するのが良いでしょう。 「予て」は主に書き言葉として使うことが多く、口頭では、下記で紹介する「以前から」を使うのが適切であると言えます。
「以前」は「それより前」「その前」を意味します。 「以前」は「基準となる時点や期間を含んで、それより前。ある出来事などを境界として、それより前」というニュアンスです。 「以前から」と「予て」は同じ意味になります。 一般的に「予て」を使うよりも、「以前から」を使うことがほとんどです。 口頭では「予て◯◯〜」と言うよりも、「以前から◯◯〜」といった方が、意味が伝わりやすいですよね。
例文
「あらかじめ」は漢字だと「予め」と書きます。 「あらかじめ」は「将来の事態に先立ってある物事を行うさま」を意味しています。 「まだ始まっていないが前もって◯◯する」というニュアンスが含まれます。 「あらかじめ」を使ったフレーズだと「予めご了承ください」がよく使われます。 「あらかじめ」はビジネスシーンでよく使われる表現です。 「あらかじめ」は「かねてから」の言い換えとしては、使えないので注意しましょう。
例文
「前もって」は「あらかじめ」「前々」を意味しています。 「前もって」は「前もって準備していた」「前もって連絡した」といったように使います。 「前もって」には、「ある事が始まる前から◯◯しておく」というニュアンスが含まれているため、「あらかじめ」とほぼ同じ意味になります
例文
「前々から」は「以前から」「かねてから」「ずっと前から」を意味します。 「前々から準備はしていた」「前々から気になっていた」などと使います。
例文
「従来」は「以前から今まで」「これまで」を意味しています。 「従来」は、「従来の方法」「従来の通りに」といったように使います。 「従来」は例えば、「従来より、申し込みはネットでも受け付けている」「それは従来の品と同じ性能が付いている」といったように使用できます。この場合は「今までと同様に」ということを表しています
例文
「常々(つねづね)」は「普段」「いつも」「日常」を意味します。 「常々思っている」といった場合は、「普段から思っている」「いつも思っている」といったニュアンスになります。 「かねてから」とは違って、「前から」ではなく「いつも」を意味しているので間違えないようにしましょう。
例文
「かねがね」は「ある行為が以前から引き続いて何度も行われて現在に至っていること」を意味しています。 「かねがね」は漢字だと、「兼兼」「予予」と書きます。 「かねがね」は、「かねがね伺っております」「かねがね聞いています」といったように、「前から〜」ということを強調しています。
例文
「予てから」について理解できたでしょうか? ✔︎「予てから」は「以前から」「前もって」「あらかじめ」を意味する ✔︎「兼ねてから」と書くこともできるが、一般的に「予てから」と書くことが多い ✔︎「予てから」を言い換えるのであれば、「以前から」を使うのが無難 ✔︎「予てから」の類語には、「前もって」「前々から」「かねがね」などがある
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