「寂しい」と「淋しい」は、どちらも「さみしい」と読む同音異義語です。「寂しい」の意味は、何かが欠けている物足りなさや、物悲しい様子です。例えば「人通りが少なくて寂しい」などと使います。「淋しい」の意味は、涙を連想させるような悲しさや心細さです。「友人が遠くに引っ越してしまって淋しい」などと使います。
「寂しい」と「淋しい」の違いをご存知ですか? とくに使い分ける必要がないと考えている人もいれば、なんとなくニュアンスの違いを感じるから使い分けているなんて人もいるのではないでしょうか。 実は、厳密に言えば、「寂しい」と「淋しい」も意味としては同じもので、どちらを使用しても伝えたいことは伝わるので、とくに使い分ける必要もありません。 しかし、「寂しい」と「淋しい」で若干のニュアンスの違いで使い分けている人もいますで、それぞれの違いを紹介していきます!
「寂しい」は、「静寂」という言葉に使用されている「寂」という漢字からもわかるように、「物音もしない、しんとして寂しい」という物悲しい様子を表している言葉です。 つまり、周りの環境や様子を表現するときによく使用される言葉です。 また、「口が寂しい」というように「何かが欠けているうような物足りなさ」という意味でも使用されます。
「淋」という漢字には、「そそぐ・水をそそぐ・ぬれる」という意味があり、「氵」(さんずい)が使用されていることからもわかるように、「淋しい」には「涙を連想させるような悲しさや心細さ」を表現する言葉として使用されます。 つまり、涙を流すようなさみしさや心細さを表現するような心情を意味しています。
「寂しい」は「物音もしないような、しんとした物悲しい」いった意味で使用されることを上述しましたが、主に「情景」を表す言葉として使用される言葉です。 例えば、
といったように静寂な様子に対して「寂しい」と使います。 つまり、「寂しい」という言葉を使用する場合、「寂しさ」を感じる前提となる状況があるということです。 しかし、「状況」を表す場合に使用されることが多いというだけで、心情を表すときに使用することができないということではありませので注意してください。 単純に、「寂しい思いをしている」というように心情を表す言葉としても使用されます。
「淋しい」は、心情を表す言葉として使用される言葉で、涙を流すようなさみしさを表現する場合に使されます。 例えば、
というように、「孤独」を感じたときのさみしさや、誰かを思って涙をながすような気持ちに対しては「淋しい」が使用されます。 しかし、「淋しい」は常用漢字ではありません。 常用漢字とは、新聞や公用文書など一般社会において使用される漢字のことをいいます。 つまり、「淋しい」は常用漢字ではないので、新聞などでは「淋しい」とは表記されないということです。 公用文書では、情景・心情問わず「寂しい」と表記されるので覚えておきましょう。
「寂しい」と「淋しい」、「さみしい」「さびしい」と二通りの読み方があります。 一般的には
といったように、心情を表す場合には「さみしい」と読まれることが多いです。 一方の「さびしい」は、
というように物静かな情景に対して使用されることが多いです。 普段、口頭で使用する場合「さみしい」「さびしい」どちらを使用しても問題ないでしょう。 しかし元々、「さびしい」と読まれていたものが「さみしい」と変化したものであると言われていて、本来の読み方は「さみしい」であるということが考えられます。 よって、公的文章や印刷物でも使用することができる常用漢字である「さびしい」を使用するのが無難であると言えます。
「寂しい」が常用漢字なのであれば、「淋しい」という表記は必要ないのではないかと感じる人もいるかと思いますが、「淋しい」は、手紙やメールを書く時に使用することで手紙の中にさらに感情を込めることができます。 例えば、「○○さんがご退職されてから日々淋しさを感じています」など、心から「さみしい」と感じている気持ちを伝える場合に積極的に使用されます。 また、「夏の終わりに淋しさを感じ・・・」というように哀愁感を出すことも可能です。 わざわざ使い分ける必要もないのですが、このようにちょっとしたニュアンスの違いで使い分けることでより、気持ちを明確に相手に伝えることができるので、使い分けてみても面白いでしょう。
「寂しい(さみしい)」と「淋しい(さみしい)」の違いは、「寂しい」が、物音もしない心とした様子や、何かが欠けている物足りなさなど表すのに対して、「淋しい」は、涙を連想させるような悲しさや心細さを表すという点です。