「踏襲」は「とうしゅう」と読みますが、どんな意味を持つのでしょうか?ビジネスシーンでもよく使われる覚えておきたい日本語のひとつです。今回は「踏襲」の読み方・意味、使い方や英語表現、さらに類義語・対義語も解説します!そして「継承」との違いも説明します!
「踏襲」は「とうしゅう」と読みます。 「ふしゅう」「ふんしゅう」「しゅうとう」などは誤読です。
「踏襲(とうしゅう)」とは「前人のあとをそのまま受け継ぐこと」を意味する語です。 前人のそれまでのやり方やしきたりなどを変更せずに受け継ぐという意味です。
「踏」は、「蹈」または「沓」の書き換えで使われる漢字です。 「とうしゅう」は本来「蹈襲」と書きますが、「蹈」が常用漢字でないため「踏襲」と書き換えます。 「蹈」の基本義は「ふむ。足でふみつける」です。 そこから転じて「歩く。行く。進む。行う。従う」という意味を持つようになりました。 前人が作った道をふむことから「従う」という意味が生まれました。 「踏襲」の「踏」の意味を「沓」が由来とする記事もありますが、それは誤りです。 それならば「踏襲」の本来の漢字が「沓襲」でなければなりません。
「襲」は「おそう」という意味のイメージが強いですが、本来の意味は「継ぐ」です。「世襲」などと使います。 「襲」は「龍」と「衣」から出来ています。 昔、龍の模様がある衣があり、それを重ねて着ていたことから「重ねる」の意味を持ちました。 また、当時は服が「位(くらい)」を表していたため、龍の模様がある服を着ることは「その位を継ぐ」という意味をもちました。 したがって、「踏」は従うで、「襲」は受け継ぐなので、「踏襲」は似た意味の漢字を2つ組み合わせて成り立った言葉ということがわかります。 「踏襲」は「前人に従い、その人のやり方を受け継ぐ」という意味です。
「踏襲」はビジネスシーンでよく使われています。 主に、後任者が前任者のやり方や考え方を受け継ぐときに使います。 具体的な事業や運営方法に対しても「踏襲」という言葉は使うことができます。 例えば、「前社長のマーケティング手法を踏襲する」「前内閣の政策を踏襲する」「今までのデザインを踏襲する」などともいえます。 「踏襲する」は下記の目的語と一緒によく使われます。
「前例踏襲」という四字熟語もあります。 文字通り「前例を踏襲すること」の意で、以前にあった同じような例に従い、そのときのやり方を受け継ぐことを指します。 「前例踏襲主義」という言葉もあります。 これは、学問・仕事において前例の踏襲を第一とするやり方を指し、悪い意味でも使います。 例えば、現在のやり方に問題があっても、新しい解決策を見出すことはせず、常に前例にならうことなどを指します。
「名前を踏襲する」という表現はしません。 「踏襲する」ものは、基本的にやり方や考え方です。 歌舞伎役者などが先代の名前を受け継ぐことは「襲名(する)」といいます。
「継承」は「前人の身分・財産・任務などを受け継ぐ」といった意味です。 「継承」の場合は、考え方ややり方ではなく、地位や財産を受け継ぐことを指します。 「踏襲」は地位や財産などを受け継ぐという意味で使うことはできません。
「踏襲」の英語表現を考えていきます。 「従来のやり方をそのままやる」というニュアンスの英単語は、
です。 「引き継ぐ」というニュアンスの英単語は、
になります。 例文を見ていきましょう。
I don't want to just follow my predecessor's way.
前任者のやり方をただ踏襲するのはイヤだ。
I will hand over my duties and responsibilities to her.
彼女に私の職務や責務を踏襲してもらいます。