「取り計らう(とりはからう)」は「物事がうまくいくように処理する」という意味で、ビジネスシーンで依頼する時や感謝を述べる時に使われます。しかし「うまいことやっておく」というニュアンスがあるため、目上の人に対する自分の行為に使うと上から目線な印象を与える可能性があるので注意です。目上の人の行為に対して「お取り計らい」と使う分には問題ありません。
「取り計らう」の読み方は「とりはからう」です。 「計」という字は「計る」で「はかる」とも読みます。 この場合は「計測する」といった意味です。(ものさしなどで長さなどを知る操作をすること)
「取り計らう」の意味は「物事がうまくいくように処理する」です。 物事がうまく運ぶように手段を講じたり、いろいろと考えて物事を処理することを指します。 「計らう」には
といった意味があります。
「取り計らう」は「計らう」の強調表現となります。 「取り」は接頭語です。 接頭語は他の動詞の前に付けて、その動詞の意味を限定したり語勢を強めたりします。 今回の場合は「計らう」の意味合いを強調しています。 他にも接頭語の「取り」がついている言葉には、「取りつくろう」「取り扱う」「取り消す」「取り調べる」などがあります。
「取り計らう」と同じ意味の二字熟語は「取計」「取図」となります。 どちらも「とりはからい」と読み、「取り計らうこと、処分」といった意味になります。
「取り計らう」の語源は古語「計らふ」です。 「計らふ」は、「計り合う」の転と「はかる」に反復継続の助動詞「ふ」が付いたものといった説があります。 「計らふ」の意味は「計らう」と同じです。
となります。
「取り計らう」の敬語表現はあります。 しかし、上司に対して「取り計らいます」と使った場合「うまいことやっておきます」といった意味になります。 これでは上から目線である印象を与えてしまい、上司に不快な思いをさせてしまうことがあります。 気心が知れた先輩などに「よろしく頼むよ」などと言われて「取り計らっておきます」と使う分にはいいですが、上司から仕事を依頼された時や指示された時に使うのは不適切となりますので注意しましょう。 本来は上司から部下に対して「取り計らってね」と使うことが多い言葉です。
自分が「取り計らうこと」を上司に対して使う場合は、「取り計らいいたします」「取り計らう所存です」と使います。 謙譲語の「いたす」「所存」に丁寧語の「ます」がついた言葉ですので、敬語表現としては正しいです。 そのため上司に対して使っても失礼にはあたりません。 ただ、業務に対して使うと上から目線に捉えられてしまう可能性があります。 例えば飲み会のセッティングを頼まれた時に「取り計らいいたします」と使えば「いいお店予約しておきます」「他の人たちにも声を掛けておきます」といった意味合いを伝えることが出来ます。 しかしどんな場面でも「自分はうまくやれる」といった自信があることが伝わってしまう可能性があるので、十分に注意しましょう。
「させていただく」も謙譲語なので、目上の人に使える正しい敬語です。 しかし「相手に許可を得て、ある行為を遠慮しながらすること」を意味します。 そのため、自分自身が取り計らうことに対して「許可を得たうえで遠慮しがちにやります」というのはクドい表現となります。 相手に許可を得なければならないような内容であればいいですが、例えば上司に「取り計らっておいてね」と言われた場合は「はい、取り計らいいたします」で十分です。
相手の「取り計らい」について使いたい場合は尊敬語の「お取り計らい」を使います。 「お」が「尊敬」を表す接頭語となります。 主に、「物事を上手く進めるために相手に労力をかけたり、既にかけてしまったこと」に対して使います。 ただ「お取り計らい」は「細々としたことを処理する」「上手くいくようにいいようにやってもらう」という意味にも取れるので、尊敬語にしても失礼になる場合もあります。 使い方や場面によっては敬意を感じられないと思う人もいますので注意しましょう。
また「お取り計らい」は相手に「取り計らってもらいたい」場合は「お取り計らいのほど、よろしくお願いいたします」などと使います。ビジネスメールで依頼やお願いをする際に締めの言葉として用いられています。 「お取り計らいください」ではやや強い表現となってしまいます。 そのため「お取り計らいのほど」と婉曲表現を用いるといいでしょう。 「ほど」は”断定を避け表現を柔らげるのに用いる語”なので丁寧な言い回しとなります。
ただ、いくら婉曲表現であっても相手に「うまいことやってね」と上から目線な印象を与えてしまう可能性もあります。 そのため「お取り計らい」の前に「恐縮ですが」などとクッション言葉を使うと、敬意を持ってお願いしていることが伝わります。 他にも
などと使うと良いでしょう。 「お忙しいところ大変恐縮ではございますが、お取り計らいのほどよろしくお願いいたします」とすれば、とても丁寧な依頼となります。
「お取り計らい」は相手に依頼・お願いするときに使います。 主に、問い合わせしたり、ビジネスメールで何かをお願いするときの締めの挨拶として使います。 お願いするときの言い回しとしては、
などとなります。 これらは、「物事が上手く進むように、お願いします」を意味します。 また「ご査収のうえお取り計らいのほどよろしくお願いいたします」もよく使われます。 「ご査収」は「よく調べて受け取ること」を意味し、相手に何か渡す際に使います。ただ受け取るのではなく、中身や内容の確認をした上で受け取ってくださいということを伝えたい場合に使います。 意味は「ミスや不具合がないか受け取った時点で確認してほしい。もしミスがあったら連絡するか、または適切に処置してほしい」となります。
例文
その他の依頼メールで使える表現には、
などがあります。 「お力添え」の意味は「力を添えること、手を貸すこと」の尊敬語です。 「お力添えいただきますようお願い申し上げます」などと使います。 「ご助力」の意味は「相手を助けること、力を貸すこと」の尊敬語です。 「ご助力を賜れれば幸いです」などと使います。 「ご協力」の意味は「ある目的のために心を合わせて努力すること」の尊敬語です。 「ご協力いただきますようお願いいたします」などと使います。 「ご後援」の意味は「ささえ助けること・援助すること」の尊敬語です。 「今後ともご理解ご支援のほどよろしくお願いい申し上げます」などと使います。 「ご後援」の意味は「後ろ盾となって、うまくことが運ぶように手助けすること」の尊敬語です。 「ご後援いただければ幸いです」などと使います。
例文
相手が物事を進めるうえでうまくいくように労力をかけてくれたことに対して感謝を伝える際にも「取り計らう」を使うことができます。 感謝の言葉として使う場合は、基本的には相手が過去に自分に対する行動などに対して使います。 お礼をするときの言い回しとしては、
などと感謝を表す言葉とともに用います。 これらは「物事を上手く進めるために労力をかけていただき、ありがとうございます」を意味します。
例文
その他の感謝メールで使える表現には
などがあります。 「ご尽力」の意味は「あることのために力を尽くすこと」「努力する」「苦労する」の尊敬語です。 「ご尽力を賜りましたことに厚くお礼申し上げます」などと使います。 「ご配慮」の意味は「他人に対して心をくばること」の尊敬語です。 「ご配慮をいただきありがとうございます」などと使います。 「ご高配」の意味は「相手の配慮」の尊敬語で、「ご配慮」よりもさらに丁寧な表現です。 「格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます」などと使います。 「ご厚情」の意味は「深いなさけや思いやりを持っていること」の尊敬語です。 「一方ならぬご厚情をいただき、感謝申し上げます」などと使います。 「ご深慮」の意味は「深く考えをめぐらすこと」の尊敬語です。 「身に余るご深慮を賜り、誠にありがとうございました」などと使います。 「お心遣い」の意味は「人のためを思っていろいろ気を使うこと」の尊敬語です。 「お心遣いに大変感謝しております」などと使います。
例文
「よしなに」の意味は「うまい具合になるように」となります。 「然る可く(しかるべく)」の意味は「良いように」となります。 「よしなに取り計らう」も「然る可く取り計らう」も「うまく取り計らう」といった意味になります。 「取り計らう」自体に「うまく物事を進める」といった意味がありますが、「よしなに」「然る可く」を付けることで「良い具合で」といった意味合いが強くなります。
「便宜を図る」の意味は「相手にとって利益になるようなことだったり、都合よく物事が運ぶように特別な計らいを行う」となります。 政治家の贈収賄などといった汚職や不正が起きたときによく使われる表現です。 そのため、本来「便宜」は「相手にとって便利なように。良いように」と特に悪い意味ではありませんが、「便宜を図る」は「相手が好都合なようにずるいことを行う」とマイナスなイメージを伴います。 しかし「便宜を図る」は良い意味で用いる事も出来ますが、マイナスなイメージが強いでの目上の人に対して使うのは避けるべきでしょう。 相手が都合よく物事が運ぶようにしてくれた場合は「お取り計らいいただき感謝します」と使いましょう。 ちなみに「取り計らう」と混同して「便宜を計らう」と使うのは誤用ですので注意しましょう。
例文
「見計らう」の意味は「何かをする時期や時間の見当をつける」です。 また「品物などを見て適当なものを選ぶ」といった意味もあります。 主に使われるのが「頃合いを見計らう」です。 「頃合い」とは「ちょうどよい時期」といった意味なので「適切な時期・時間のおおよその見当をつける」といった意味になります。 相手のところへ出向く際に「頃合いを見計らって行きます」と言った場合、「そちらの都合が良さそうな時間に行きます」「仕事などが落ち着いた頃に行きます」といった意味になります。
例文
「折を見て」の意味は「都合の良いときに」「時期を見計らって」となります。 すぐに答えが出せないときや、時期を見計らう必要がある場合に使われています。 ただ「折を見て」をビジネスシーンで使う際に注意しなければならないことがあります。 それは「適切な時期に」といった意味で使ったとしても「確約してもらえなかった」「かわされてしまった」と相手が思ってしまう場合があるからです。 「折を見て」は、必ずしもその行動をするわけではなく「都合がつけば」という意味合いになるため「都合がつかないかもしれない」といったニュアンスが含まれます。 そのため、いつになるのか分からない時や、実行出来るのかはっきりと約束出来ない場合に、言葉を濁して使うこともあります。 相手から「折を見て連絡します」「折を見て伺います」と言われた場合には、連絡が来ないことや出向かないこともあるかもしれないと念頭に置いておくと良いでしょう。
例文
「時機をうかがう」の意味は「あることを行うのに都合のいい機会の様子を見る」といった意味です。 物事を行うタイミングを見極める際に「時機をうかがう」と使います。 ビジネスシーンでも「時機をうかがいましょう」「時機をうかがって連絡します」などと使います。 しかし「折を見て」と同様に、曖昧な表現となるため使う際には気を付けましょう。 ビジネスシーンで前向きに検討している場合は、その旨を伝える必要があります。
例文
「不本意」の意味は「自分のほんとうの気持ちや望みと違うこと」です。 「不本意ながら」などと使い、この場合は「自ら望んではいないのですが」といった意味になります。 物事が自分の都合の悪い方向に進んいくことや願望とは違っていることに対して使います。
例文
「理不尽」は「りふじん」と読みます。 意味は「道理を尽くさないこと、道理に合わないこと」です。 物事の筋道が通っていないこと、納得のいかないことを表す言葉です。 誰かの故意による道理に合わない言動を「理不尽だ」とよく言います。 日常生活においても、ビジネスシーンにおいても使われている言葉です。 「理不尽」の言い回しは「理不尽な」が主に使われています。 「理不尽な話」「理不尽な出来事」「理不尽な扱い」などと名詞と組み合わさって用いられています。 他にも「理不尽である」「理不尽さ」などとも使われています。
例文
「不条理」は「ふじょうり」と読みます。 意味は「道理に反すること、筋道が通らないこと」です。 「条理」は「物事の道理。筋道。人の行うべき正しい道」を表します。 ”道理”は正しい道、”筋道”は物事の正しい順序を意味しています。 これに”打ち消し・否定の意”を意味する「不」を付けることによって、「不条理」は「道理に合わない」という意味になります。このように、物事の正しい筋道に合わないことを「不条理」と言います。
例文
「火に油を注ぐ」は「感情や行動などをさらに勢いづかせる」です。 主に不本意なことに対して使います。 相手が怒っているような悪い状況をより悪化させてしまう場合に「火に油を注ぐ」と使います。 故意的に悪化させようと「火に油を注ぐ」場合にも、事態を収拾させようとした結果「火に油を注ぐ」ことになってしまう場合にも使われます。
例文
「手配する」という意味ならば「arrange」を使います。
I'll arrange my work so that I can have a few days off next week.
来週数日休めるように仕事を取り計らう。
「対処する」という意味ならば「deal with」が使えます。
We have to deal with this matter very carefully.
この問題はかなり慎重に取り計らわなければならない。
いかがだったでしょうか? 「取り計らう」について理解できたでしょうか? ✔意味は「物事がうまくいくように処理する」 ✔「取り計らう」は「計らう」の強調表現 ✔類語は「便宜を図る」「見計らう」など ✔対義語は「不本意」「火に油を注ぐ」など