「不倶戴天(ふぐたいてん)」とは「同じ天下には生かしておけないと思うほど、憎しみや恨みが深いこと」を意味します。元は父の仇は必ず殺すという意。「不具戴天」は誤り。「倶(とも)には天(てん)を戴(いただ)かず」と訓読します。「不倶」は「一緒にはできない」、「戴天」は「同じ空の下で暮らす」を意味します。「不倶戴天の敵」などと使います。
「不倶戴天」は「ふぐたいてん」と読みます。 「戴」という字は「載」ではないので注意しましょう。 左下の部分が「異」となります。 訓読は「倶(とも)に天を戴(いただ)かず」です 詳しくは語源由来のところで説明していきます。
「不倶戴天」の意味は「同じ空の下で暮らすことは出来ないほど、憎しみが深いこと」です。 「不倶戴天」をそのまま訳すと「同じ天の下にはいない」「同じ空の下では生かしておかない」となります。 そこから、それほど恨みや憎しみ、怒りの感情が強いことを表しています。 「倶」の意味は「一緒にいる」「揃う」です。 そこに打ち消しの語「不」が付き、「不倶」で「一緒にいることが出来ない」「揃うことができない」となります。 「戴」は「いただく」という意味です。 「戴天」は「天をいただく」=「この世に生きていること」を表します。
「不倶戴天」の由来は中国の『礼記(らいき)・典礼上』の「父の讐(あだ)は、与(とも)に共(とも)に天を戴かず」です。 訳すと「父を殺した相手とは同じ天をいただくことは出来ない」となります。 この本来の意味は「父を殺された息子は、必ず仇討ちをするべきだ」です。 そこに、後から「共に生きていけないほど(命をかけてでも報復しなくてはならないほど)、深く恨み憎むこと」ということを指すようになりました。 ちなみに原文は「父之讎、弗與共戴天」です。 その後には「兄弟之讎、不反兵、交遊之讎、不同國」と続きます。 意味は「兄弟の仇は武器を取りに帰らずその場で仕留める、友人の仇は国を同じくして住むことは出来ない」です。 要するに、父・兄弟・友人の仇を許すことは出来ず、殺すべきだといった意味となります。
「不倶戴天」は強い憎しみを持つ相手に対して使います。 その相手のことを
などと言います。 また、お互いが憎しみ合っている場合には
などと使うこともあります。 相手に対して、「恨み続けること」「絶対に許さないこと」を表す際には
と使います。
例文
「不倶戴天」の類語には、
などがあります。 「意趣遺恨」の意味は「何かの手段で晴らさずにはいられない忘れられない恨み」です。 「意趣」の意味には「考え・心ばせ」と「恨みを含むこと、恨む気持ち」があります。「遺恨」の意味は「忘れられない恨み、長い間持ち続けた恨み」です。 「漆身呑炭」の意味は「復讐のためならどんな苦労もいとわないこと」です。 「漆身」は「漆を身体に塗りつけること」「呑炭」は「炭をのむこと」を表します。 身体に漆を塗って肌かぶれさせ皮膚病を装い、炭をのんで声を変えることで相手に自分の姿見分けをつかないようにし、仇を討つ機会をうかがったことに由来します。
例文
「不倶戴天」の対義語は
などがあります。 「一言芳恩」の意味は「ひとこと声をかけてもらったことを忘れずに感謝すること」です。 ちょっと声をかけてもらったことや小さな事柄にも感謝をする心の大切さを表した言葉です。 「一宿一飯」の意味は「一晩泊めてもらったり、一度の食事を恵んでもらうこと」「ちょっとした世話になること」です。 そこから「ちょっとした恩義でも忘れてはいけない」ということを戒めた言葉として使われています。 「報恩謝徳」の意味は「受けた恩や恵みに対して感謝の気持を持つこと」です。 相手からの恩にちゃんと報いようとする気持ちを表した言葉です。
例文
「不倶戴天の敵」は英語で「sworn enemy」と言います。 「sworn」は「swear」の過去分詞で「誓いを立てた」という意味になります。
いかがだったでしょうか? 「不倶戴天」について理解出来たでしょうか? ✔読み方は「ふぐたいてん」 ✔意味は「憎しみや怨みがとても深いこと」 ✔由来は「礼記・典礼上」の「父の讐は、与に共に天を戴かず」 ✔「不倶戴天の敵」「不倶戴天の仲」などと使う ✔類語は「意趣遺恨」「恨み骨髄に徹する」など