「布石」という言葉をご存知でしょうか。あまり日常生活では耳にしない言葉かもしれませんが、「布石」は「将来のために備える」という意味のビジネスシーンなどでも使用できる表現です。今回は「布石」という言葉の意味と使い方を例文付きで解説します。また、類語表現や英語表現も合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「布石」は、「ふせき」と読みます。 「布」は、音読みで「フ」訓読みで「ぬの」と読みます。 「石」は、音読みで「セキ・シャク・コク」訓読みで「いし」と読みます。
「布石」の意味は、「将来のために前もって備え整えておくこと」です。 例えば、老後を考えて資産運用をはじめるなど、将来のために備えておくことってありますよね。 そういった、将来を見据えて準備をしたり、整えておくことを「布石」といいます。 簡単に言えば、未来のために何かをしておくことです。 いつかするかもしれない転職のために資格をいくつか習得しておくというのも「布石」です。
「布石」の語源は、囲碁にあります。 「布石」は囲碁で、「石」は墓石、「布」は「敷く」「配置する」という意味があり、全局的な展開を考えて要所要所に石をうっておくことを指す言葉です。 「布石」は「勝負の土台作り」と言われていて、そこから比喩的に、「将来への備え」といった意味で一般的に使用される言葉になったと考えられています。
「布石」は、建築用語では「ぬのいし」と読みます。 建築用語で言う「布石(ぬのいし)」とは、土台下などにおく石のことです。 漢字が同じでも、「ぬのいし」と読んでしまうと意味が変わってしまうので注意しましょう。
「布石」は、「布石を打つ」という言い回しでビジネスシーンや政治の世界でよく使用されます。 どんな仕事であっても、先を見据えて行動をしたり、備えておくことって大切ですよね。 特に営業では、契約をとるためにあらかじめ色々な策を練って準備をしておくものです。 また、政治であればなおさら、行き当たりばったりでは困ってしまいます。 ビジネスや、政治で使用される「布石を打つ」は、「将来のために予め手はずを整える」という意味で、決して悪い意味はありません。 例えば、「新事業への布石を打つ」といった場合は「新事業を成功させるために、前もって必要なこと準備しておくこと」を意味します。 この「打つ」という表現も、囲碁が由来です。
例文
「布石」は、「布石とする」「布石として」といった言い回しでも使用されます。 「布石とする」は、「備えとする」という意味で、「〜を布石とする」で「〜を備えとする」という意味になります。 「布石として」は、「〜の備えとして」といったニュアンスで使用されます。 例えば、 「◯◯の布石として、〜・・・をする」は、「◯◯の備えとして、〜・・・をする」という意味です。
例文
という表現は「将来の備えになる」という意味で使えなくはありませんが、「将来の基礎になる。未来の礎(いしずえ)になる」と言い換えた方が自然です。 また、「将来の布石となる」といった表現もしばしば見受けられますが、これは二重表現になってしまいます。 なぜなら「布石」単体で「将来のための」という意味を含むからです。 よって、「若いうちから英語を学習することは将来の布石となる」ではなく、「英語学習は将来の基礎になる」とした方がよいでしょう。 「礎(いしずえ)」も石ヘンなので、「布石」とどことなくニュアンスが近いです。 「礎」を使用した例文をいくつか紹介しますので、そちらを参考にしてください。
例文
「置く」も「打つ」と同じく囲碁用語ではありますが、「布石を置く」という表現は存在しません。 「布石を置く」は囲碁用語がゆえの誤用といえます。 囲碁用語が語源で「置く」を含む表現には「一目置く」があります。 「一目置く」の意味は、「相手の能力を認めて敬意を払うこと」です。 尊敬する相手に対して一歩譲って遠慮をしている様子を表現している言葉です。
例文
「布石を投じる」という表現もよくある誤用です。 「一石を投じる」と混同していると思われます。 「一石を投じる」は、石を水に投げ込んだときの波紋が広がる様子が語源になっている言葉で、「人々に反響を呼ぶような問題を投げかけること」という意味で使用される慣用句です。
例文
「布石を踏む」という表現も誤用で、正しくは「定石を踏む」です。 「定石(じょうせき)」も元は囲碁用語で、「最善とされる決まった打ち方」という意味があります。 そこから転じて「物事を処理するときの、最上とされる決まった方法・手順」という意味になりました。 「定石を踏む」で「決まった通りの方法で処理する」という意味です。
例文
「布石を敷く」「布石を張る」「布石を残す」「布石がある」は、「布石」という言葉を「伏線」と混同しています。 「伏線」は、「後の事の準備として、前もってひそかに設けておくもの」という意味で、「布石」と類語ではありますが、言い回しには違いがあります。 それでは、「布石」の類語「伏線」の正しい使い方を見ていきましょう。
「伏線」は「ふくせん」と読みます。 「ふせん」と読まないように注意してください。 「伏線」の意味は、
となります。 「伏」は「隠れて表面に現れない。ひそむ」を表しているので、「伏線」は「将来に繋がる線を見せないように伏せる(隠す)」という意味になります。 将来のために明確な準備である「布石」とは違い、「伏線」は後に起こることをそれとなく暗示するものです。
などの言い回しで使われます。
例文
「捨て石」は、「すていし」と読みます。 これも囲碁用語で、「より利益を得るために作戦として相手に取らせる石」という意味があります。 また、
という意味で使用される言葉です。
例文
「先手」は「せんて」と読みます。 「先手」の意味は、「先にはじめること・先回りして自分の立場を有利にすること」です。 先を見据えて準備をしておくという意味があるので、「布石」と同義語になります。 さらに、これも囲碁用語です。 囲碁用語では、
という意味で使用されます。
例文
「準備」は、「じゅんび」と読みます。 「準備」の意味は、「物事をする前に、態勢を整え用意をすること」です。 「準備」という言葉じたいに「将来に向けて〜」という意味は含まれませんが、「老後のために準備をする」といった、これからおこることに対して用意をしておくという点でいえば、「布石」と「準備」は同義語であると言えます。
例文
「対策」は「たいさく」と読みます。 「対策」の意味は、「相手の状況や事件の様子に応じて、施す処置の手段」です。 相手や事件の様子に、相応しい行動をとるための手段ややり方を表します。「対策」は物事が起きる前を指します。 「◯◯対策」という形で、「税金対策」「防犯対策」「禁煙対策」「災害対策」「防寒対策」「節電対策」といったように使うことが多いです。 他にも「ライバルチームに勝つためには、対策を考える」と言います。「勝つために施す手段」を意味します。
例文
「予防策」は「よぼうさく」と読みます。 「予防策」の意味は、「悪い事態にならないうように前もって防ぐための処置」です。 つまり、「この先、そうならない為の行動をとる」ということが「予防策」です。 「布石」は、「この先のために備えておく」という意味なので、「布石」も「予防」もその先を見据えて行うことという点で同義語であると言えまるでしょう。
例文
「布石」の対義語は「これ」を言えるものが特にありません。 強いて言うなら、「布石」が「未来のために備える」という意味だと言うことを考えると、
といった、先を見据えていないような行動を意味する言葉が対義語になると言えるでしょう。
例文
「布石」に最も近い英語表現は「準備」を意味する「preparation」です。 動詞は「prepare for...」です。
Preparing for business expansion all the time is CEO's role.
何時も事業拡大の布石を打つのが社長の役割だ。
「戦略」を意味する「strategy」も「布石」の英訳として使うことが可能です。 「strategy」の形容詞は「strategic」です。
That was a strategic move to buy up the competitor.
あれは競合企業を買収するための布石(戦略的行動)だった。
いかがでしたか? 「布石」について理解していただけたでしょうか。 ✓「布石」の読み方は「ふせき」 ✓「布石」の意味は「将来のために前もって備え整えておくこと」 ✓「布石」の語源は囲碁の比喩 ✓「布石」は建築用語では「ぬのいし」なので読み間違いに注意 ✓「布石を打つ」の形でビジネス・政治で使う など