「老婆心」という言葉を知っていますか?「老婆心」とは「必要以上の親切心」を意味する言葉で、目下の者に忠告するときに自分の気持ちをへりくだって使います。「老婆心」の具体的な使い方を例文で解説します。類語や英語も紹介します。
「老婆心」の正しい読み方は「ろうばしん」です。 「老婆心」を「うばごごろ」と読むのは誤りなので注意してください。 「うば」は「ろうば」と同じ意味ですが漢字は異なります。 「うば」の漢字は「姥」となります。 「乳母」とすると意味も変わり、「母に代わって子どもに乳を飲ませて、養育する人」を指します。
「老婆心」の意味は「高齢者の女性が親切心がすぎて不必要なまでに世話を焼くこと」「必要以上に気を遣い、世話をやこうとする気持ち」です。 「老婆心」というのは、「おばさんがガミガミと口うるさく文句を言う」という意味合いではありません。酸いも甘いも経験した人生の先輩である老婆が、子や孫を思うような優しい気持ちで「こうしなさい、ああしなさい」と言うイメージです。
「老婆心」は文字通り、「お婆ちゃんが子や孫を思う気持ち」が語源です。 おばあさんが、心配心から自分の子供や孫に色々口出しをすることがありますよね。 そういう場合に、「親にとっては、幾つになっても子供は子供である」と言ったりします。 心配するつもりで口出しをするのはとても良いことですが、時にそれが度を超えてしまう場合ってありますよね。 そんな様子を「老婆心」と表現します。
「老婆心」は「老婆心ながら」という形で、自分の気持ちをへりくだりながら相手に忠告するときに使います。 相手にいきなりアドバイスをすると、上から目線な響きが強くなってしまうので、「必要以上な親切心で迷惑かもしれませんが」を意味する「老婆心ながら」をクッション言葉として使います。
などの形で使用します。 また、「老婆心ながら」は単に心配している旨を相手に伝えるときにも使います。 「老婆心ながら、心配しています」などと使います。これも「不必要かもしれませんが心配しています」と謙虚さを示す言い回しです。
「老婆心」「老婆心ながら」という言い回しは目上の人に使うことはできません。 「老婆心」は相手に何かを忠告する時に使用すると上記で説明しました。そもそも目上の人に忠告すること事態が失礼な行為にあたります。 なので、「老婆心」を上司や取引先、顧客など目上の人との会話の中で使うことはありません。上から目線になってしまうので注意しましょう。 「老婆心」は目上から目下の者に対して使う言葉であることを覚えておきましょう。 どうしても目上の人に意見したい場合は「僭越ながら」を使います。 「僭越ながら」の意味は「身の程をわきまえず、失礼ながら」で、目上の人に意見するときの謙虚さを表現するために使います。 「僭越ですが」「僭越ではございますが」とするとより丁寧になります。
「老婆心」という言葉は「老婆」という言葉が入っているので女性(特に年配の女性)しか使えないと勘違いしている人が多いですが、「老婆心」は男性が使用しても問題ありません。 「老婆心」の語源は「老婆」が関係していましたが、現在では「老婆心」は慣用句として定着しており、特に性別を意識した表現ではありません。 「老婆心を起こしているようで申し訳ないが」という比喩的なニュアンスで使用することができます。 「年老いた男性」という意味の言葉には「老爺(ろうや)」がありますが、「老爺心」という言葉はありません。笑
「老婆心ながら〜」と親切心を持って助言や忠告を受けたときは、まず感謝の気持ちを述べるのがマナーです。 感謝の後に「承知しました」など相手の意見を”飲み込む”発言も大切です。「しかし」「でも」などと逆説を使って反論するのはその場では抑えましょう。 「勉強になりました」などと付け足してもいいでしょう。 「参考になりました」は目上の人に対して使うことができないので注意してください。 「参考にする」は「自分の意思決定の手がかりとして他人の意見を事例として利用する」という意味になります。 なので、目上に人に対して「参考になりました」と言うと横柄になってしまいます。 よって、「勉強になりました」と言い換えるのが鉄則です。
「老婆心ながら」への返事
◯忠告する場合
◯心配する場合
◯「老婆心」を単体の名詞として使う例文
「老婆心」に最も違い意味の言葉は「お節介(おせっかい)」です。 「お節介」は「不必要に他人の事に首をつっこむ」という意味合いを含み、「老婆心」よりもネガティブなイメージが強い言葉です。
などの形で使うと、自分がこれから発言する内容を謙遜して、意見を述べたり忠告したりするときに使うクッション言葉となります。
例文
「余計なお世話」という言葉も「老婆心」に似た意味を持つ表現です。「大きなお世話」でも同じ意味です。 「老婆心」は「必要以上な親切心」であるのに対して、「余計なお世話」は「不必要な親切心」ですので、若干意味が異なります。 「余計なお世話」は「お節介」の意味に近く、ネガティブな語感が強いです。 「余計なお世話」も「余計なお世話ですが」という形でクッション言葉として使うことができます。
例文
「老婆心」と似た意味を持つ表現には「親切の押し売り」というものがあります。 「押し売り」とは「買う意志のない者に対して無理矢理に売りつける」という意味なので、「親切の押し売り」も「不必要な親切心」という意味合いになります。「お節介」「余計なお世話」よりもネガティブな意味合いは薄いでしょう。 「ありがた迷惑」までいってしまうとネガティブな意味合いが強くなります。
「差し出がましい」の基本の意味は、「でしゃばって、余計なことをするように感じさせる様」です。 相手に対して「必要以上におせっかいなこと」などの意味で使われることもあります。 「差し出がましいですが」「差し出がましいお願いですが」「差し出がましいことを言うようですが」などとクッション言葉で使うことがありますが、「老婆心ながら」のように忠告で使う場合と、「でしゃばって恐縮なのですが・・・」と依頼で使う場合があります。
例文
「老婆心ながら」に該当する英語表現は存在しません。 英語で目下の者で何かを忠告したり助言するときは、前置きは必要なく直接的に発言しても問題ありません。 逆に目上の者に何かを発言するときは、
などと言うのをおすすめします。
いかがでしたか?「老婆心」という言葉の意味と使い方は正しく理解できましたか? 「老婆心」に関して、下記にまとめておきます。 ✔「老婆心」の読み方は「ろうばしん」 ✔「老婆心」の意味は「必要以上に世話をやこうとする気持ち」 ✔「老婆心ながら」で自分の気持ちをへりくだって忠告するときに使う ✔「老婆心ながら」は目上には不適切 ✔「老婆心ながら」は男性も使える ✔「老婆心ながら」の類語は「お節介」