「腐心」という言葉をご存知でしょうか。「再建に腐心する」「研究に腐心する」などと言います。では、「腐心」とはどのような意味なのでしょうか。日常会話で使うことは少ないので、あまり耳慣れない言葉かもしれません。「腐った心」と書くので良いイメージが思い浮かびませんよね。どういった場面で使うのか、色々と疑問に思います。言葉を正しく使うためには、意味をきちんと覚えておく必要があります。そこで今回は「腐心」の意味や使い方、類語、「苦心」との違いについて解説していきます。「腐心」を正しく知って、上手く使えるようにしましょう!
「腐心」は<ふしん>と読みます。 同音語は「不審」「不信」「不振」「普請」などと、たくさんあるので間違えないようにしましょう。 「腐」は音読みで「フ」、訓読みで「くさる・くされる・くさらす」と読みます。 「腐」は「心を苦しめること」を意味します。 「心」は音読みで「シン」、訓読みで「こころ」と読みます。 「心」は「心臓。こころ」を意味します。 「腐心」の意味は「事を進めようとして、心を苦しめ悩ますこと。ある物事を成し遂げようと、考え込んでしまうこと」です。 難しい問題を解決するために必死に考えたりしているにも関わらず、全く状況に変化がなく苦労している様子を表します。
ある事を進めるために、心をいため悩んでしまうという場合に「腐心」を使います。 主に、「▲▲に腐心する」という形で使います。 「腐心」は手間や時間がかかって、解決することが難しい問題に頭を抱えるという場合に使うのが適します。 例えば、「経営の再建に腐心する」「生物研究に腐心する」などと言います。 「赤色かピンク色かどちらのお洋服にしようか腐心する」「アイスクリームかかき氷どちらを食べるか腐心する」などとは言いません。大した問題ではない場合「腐心」は使わないので注意が必要です。 言い回しとしては、
などとなります。
例文
苦労していることが一目で分かる目上の人に、「ご苦労されていますよね」「苦労していますね」などと行った言葉を掛ける際は「腐心」を使うことができます。 目上の人に使う場合は、「ご腐心」「腐心される」などと使います。 「腐心」は敬語として使うこともできますが、「腐る」という言葉を用いているためあまり印象が良くありません。 目上の人にはなるべく「腐心」は使わず、他の表現に言い換えるのが良いでしょう。 「腐心」の言い換え表現としては、「ご心労」「ご心痛」「ご案じ」などがあります。 よく使われる言葉「心労」は、気に病んでいるさま・精神的に苦労しているさまを表しています。相手が辛そうにしている時に、「ご心労のほどお察し申し上げます」などと声をかけることができます。 「心痛」は「ご心痛の深さお察しいたします」といったように、お悔やみの言葉として使用することが多いです。
例文
「腐」は「豆腐」「腐敗」「腐臭」「腐食」などと使われているように、「古い。ダメになる」という意味をイメージしますが、「心を悩ます」という意味も含まれます。 「腐心」と書くのは、「本当はそこまでしなくても良いことを、ある程度まで行い悩むこと」を表しているからです。 「心が腐る」というのは比喩で、実際には心は腐っていません。 中国の歴史書『史記』に「腐心」という言葉が出てきます。 秦時代、燕の国には皇子:丹(たん)という人物がいました。 丹は荊軻(けいか)に始皇帝の暗殺をお願いしました。その荊軻は将軍に暗殺計画の作戦として、首を差し出すように依頼しました。 始皇帝を憎んでいた将軍は、荊軻の依頼を受け入れます。史記では、始皇帝に復讐するためには、と嫌々ながらも首を差し出す将軍の心の様子を、「切歯腐心」と表しています。 そこから「ある事に苦しむ」という意味で「腐心」が使われるようになりました。 「切歯腐心」については下記で説明しています。
⚠「腐心」は「腐った心」という文字が使われていますが、「根性の曲がった」「ふてくした」「いやいやと」などの意味はありませんので注意してください。 「面倒臭いために腐心する」「かったるくて腐心している」などと使うのは誤用になります。 「腐」という言葉に戸惑ってしまいますが、「腐心」は「悩みながらも解決のため頑張る」と意味なので注意しましょう。
「苦心」は<くしん>と読みます。 「苦心」の意味は「ある物事を成し遂げるために、様々なことに心を痛め苦労すること」です。 「苦」は「身体的・心的につらい思いをすること」を意味します。 「腐心」は「ある物事を成し遂げようと、考え込んでしまい悩むこと」 「苦心」は「ある物事を成し遂げようと、色々と考え苦労すること」 「腐心」と「苦心」はほぼ同じ意味です。 しかし、それぞれ「腐った心」「苦しい心」と書くように、「腐心」の方が「思い悩んでいる」意味合いが強くなります。 このように、「苦心」よりも「腐心」の方が、「解決することが難しい問題に頭を悩ませること」を表します。 「苦心」は「苦心作」「苦心談」などと言うように、苦しみながらも無事に解決したという場合に使うことが多いです。
例文
心痛 (意味:心が痛むほど心配すること) 「無事かどうか気になり、心痛が起こる」 苦慮 (意味:苦しんで色々と考えること) 「君も苦慮しているんだね」 苦労 (意味:様々なことに苦しんで疲れ切ってしまうこと) 「あなたは本当に苦労が絶えないね」 呻吟(しんぎん) (意味:苦しさに呻くこと) 「辛くて呻吟してしまう」 苦吟(くぎん) (意味:苦労しながらも歌を作ること) 「苦吟するなんて偉いよ」 骨折り (意味:精一杯頑張ること) 「骨折りなど当たり前だ」 労苦 (意味:体を苦しめながらも頑張ること) 「労苦してやっとここまで来ることができた」 注力 (意味:ある物事に力を注ぐこと) 「注力したおかげで上手くいった」 尽力 (意味:事を進めるために力を尽くすこと) 「商品の開発に尽力する」 狂奔(きょうほん) (意味:物事に熱中して、そのためだけに真剣に取り組むこと) 「借金返済に狂奔する」 奮闘 (意味:困難に対しても、精一杯立ち向かうこと) 「奮闘することはとても大切だ」 粉骨砕身 (意味:心身がボロボロになる程、頑張ること) 「粉骨砕身して事に励む」 四苦八苦 (意味:苦しみながら頑張ること) 「それを達成するまで四苦八苦する」 悪戦苦闘 (意味:困難に負けないため頑張ること) 「悪戦苦闘しながらもなんとか努力する」 苦心惨憺(くしんさんたん) (意味:苦労して心を痛めてしまうこと) 「苦心惨憺したが、成功した」
安楽 (意味:心に苦労がなくて生き生きとしていること) 「安楽椅子が欲しい」 気楽 (意味:苦労することなく、のびのびしていること) 「気楽に生きていく」 悠々自適 (意味:自分の思うままに、のんびりと生活すること) 「悠々自適に暮らしていきたいものだ」 安逸 (意味:自分の好きなように遊び暮らすこと) 「安逸な日を送っていて楽しそうだ」 気軽 (意味:真剣に考えずに、事を進めていくこと) 「気軽に話しかけてよ」 楽 (意味:心身が落ち着いていて楽しいこと) 「全部話したら楽になった」 のんびり (意味:深刻に考えることなく、静かに落ち着いていること) 「のんびりと進めていこう」 のどか (意味:静かで落ち着いているさま) 「のどかな風景が広がる」 安心 (意味:心配などがなく、心が落ち着くこと) 「彼なら安心して任せられる」 安気 (意味:心が静かなこと) 「君は本当に安気なものだ」
「切歯腐心」は<せっしふしん>と読みます。 「切歯腐心」の意味は「ものすごく怒って、心を痛め思い悩むこと。残念がっていること」です。 歯ぎしりしてしまうほど、残念に思うこと・悩んでしまうことを表します。 「切歯」は「歯をくいしばること。怒っている顔」、「腐心」は「あれこれ考え悩むこと」を意味します。 「切歯腐心」の類語には、「切歯扼腕(せっしやくわん)」「切歯痛憤(せっしつうふん)」「残念無念」などがあります。 「歯ぎしりするほど、怒り残念がること」「ものすごくこれ以上ないほど悔しいこと」を表します。
例文
「腐心」は英語で、
になります。
The CEO is taking great pains to think of new business plans.
社長は新しい事業計画を考えるのに腐心している。
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「腐心」について理解できたでしょうか? ✔︎「腐心」は「事を進めようとして、心を苦しめ悩ますこと」を意味 ✔︎「再建に腐心する」「解決に腐心する」「修復に腐心する」などと使う ✔︎「腐心」は難しく大きな問題を解決する場合に使う ✔︎「腐心」の類語には、「苦労」「骨折り」「苦慮」「呻吟」などがある