「陰ながら」という言葉をご存知でしょうか。「陰ながら応援します」「陰ながら見守っています」などと聞いたことがあるかもしれません。では、具体的に「陰ながら」とはどういう意味なのか、どのような場面で使うのかお分かりでしょうか。意味を知らないと使い方に戸惑ってしまいますよね。そこで今回は「陰ながら」の意味や使い方、「影ながら」の違いについて解説していきます。「陰ながら」を正しく習得して、ビジネスマンに相応しい言葉遣いができるようにしましょう。
「陰ながら」は「よそながら」「ひそかに」「人知れず」を意味する副詞です。 「陰ながら◯◯する」といった場合は、「人知れずこっそりと◯◯する」「人の目から隠れてこっそりと◯◯する」という意味合いになります。 「陰」は「物の後の、暗いまたは隠れたところ」「光によって、その物の他にできる姿」を意味します。 「ながら」は「そのまま...として」「...のままで」を意味し、”そのままであとに続くこと”を示しています。
「陰ながら」と単独で使うことはほとんどなく、「陰ながら◯◯する」と動詞を伴って使用します。 「陰ながら◯◯する」と言うと「人知れず◯◯する」という旨を相手に示すことになります。 一般的に、”表立って目立つ行動はしないが、相手を応援するとき・支えるとき”などを指す場合に使います。 「陰ながら」を使った言い回しは以下のようになります。
よく使う《言い回し》
”陰ながら応援〜”とした場合は、「人知れず応援する」「見えないところで応援する」ということになるので、直接協力できるわけではないが「頑張ってね」という励ましを表します。 単に「応援する」というよりも、「陰ながら応援する」と言った方が”応援”の意味が弱くなります。 具体的に力にはなれないが、心情的には味方であることを示していて良好な関係を続けたいときに使える言葉です。また、縁の下の力持ちのような協力関係を志願するときにも用います。 ”陰ながら無事を祈る”、”陰ながら見守る”とした場合は、「相手が安全・安心していられるかは、自分の力でどうにかなることではありませんが、無事を祈ります」ということを表します。「ひそかに」というニュアンスを込めることで、相手への気遣いと謙虚さを示すことができます。 ”陰ながらご成功をお祈りしております”は、企業からの不採用通知であるお祈りメールで使われることが多いです。「見えないところであなたのご成功を祈っています」という意味合いになります。
「陰ながら」か「影ながら」、どちらを使うべきなのか迷うことがありますよね。 適切なのは「陰ながら」になります。 「影」は”物が光を遮ってできる黒い部分”で、「陰」は”隠れて見えない・光の当たらない部分”を表します。
「影」と「陰」の使い分け ◯「影」 (例)影が薄い・影を落とす・影が射す・影踏み・影絵 ◯「陰」 (例)陰口・陰唄・陰になり日向になり・日陰・陰で悪口を言う
メールや文書では変換ミスしやすい部分なので、気をつけるようにしましょう。
「陰ながら応援させていただきます」は「表立った協力はしないけれど、人知れずに応援する」ことを意味します。 このように、相手に対して「人知れずに陰から応援しています」と縁の下の力持ちを想わせるように表現ですので、基本的に目上の人に使っても問題ありません。 しかし、相手によっては「なぜ陰ながら?」「表立っては応援してくれないのか?」と疑問に思ったり、意味が転じて「積極的には応援しないですよ」と受け取られてしまう可能性があります。 ですので、ビジネスシーンでは「陰ながら」ではなく、「微力ながら応援させていただきます」「精一杯応援させていただきます」などに言い換えるのが適切になります。 また「陰ながら応援させていただきます」は”応援する”という意味を弱めてしまっているので、「陰ながら」を省略して「応援させていただきます」としても気持ちは伝わります。
◯人知れず (意味:人に知られないように) 「彼女は人知れず練習している」 ◯こっそり (意味:他人に気づかれないように行動するさま) 「調査のためにこっそり追跡する」 ◯うちうち (意味:表立たないこと) 「うちうちで式を済ます」 ◯ 心密かに (意味:自分の心の中だけでそっと思っているさま) 「心密かに期待を寄せる」 ◯ そっと (意味:他人に知られないように隠れて行動するさま) 「そっとドアを閉める」 ◯ 忍びに (意味:人知れず。ひそかに) 「人の家に忍び込む」
どの類語も「人が知らないうちにこっそりと」を意味します。 しかし、「陰ながら」をこれらで言い換えても、あまりしっくりこないことがあります。 例えば「心密かに応援しています」「人知れずお祈りいたします」「こっそり無事を祈ります」などと、なんとなく違和感を感じますよね。 必ずしも「陰ながら」と言い換えできるとは限らないので、注意しましょう。
「陰ながら」は”人に知られない”ことを表すので、対義語は「目立つ」という意味することになります。 ◯目立つ (意味:いちじるしく人目をひく) 「彼は目立つ服を着ている」 ◯際立つ (意味:他との区別がはっきりとして目立つ) 「周りが黒いため、彼女の白さが際立つ」 ◯表立つ (意味:表沙汰になる。事が公になる) 「話がこじれてとうとう表立ってしまった」 ◯派手に (意味:色どり・装い・行動などが華やかなこと) 「彼女は派手な車でやって来た」
「陰ながら」以外にも「陰」を使った表現があるので、紹介します。
「陰ながら」の英語表現を考えていきましょう。 「陰ながら」を直訳的に「secretly」「behind your back」などと言うことは可能ですが、「陰ながら応援しています」などの文章で使うと不自然です。 日本語の「陰ながら」は、本当に隠れているわけではなく、「自分はあまり力になれないけども」という謙虚な姿勢を表しています。なので下記の例文のようなフレーズが無難だと思います。 「応援している」は、
などのフレーズが自然です。「support」だと「支援、援助」というニュアンスなので少し大袈裟な感じがします。 「応援してるね!」はシンプルに、
などと表現するのもよいと思います。
There is not much I can do, but I'm always rooting for you.
できることは多くないけど、いつでも応援してるよ。
I may not so helpful, but I will do whatever I can for you.
力になれないかもだけど、できることは何でもするよ。
I know I'm nothing for you, but anyway good luck!
おれはお前の何でもないとは思うけど、とりあえず頑張れ!
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「陰ながら」について理解できたでしょうか? ✔︎「陰ながら」は「よそながら」「ひそかに」「人知れず」を意味する ✔︎「影ながら」は間違いで、正しくは「陰ながら」になる ✔︎「陰ながら」の類語には、「人知れず」「心密かに」などがある ✔︎「陰ながら」の対義語は、「目立つ」「派手」などになる