「書き下ろし」とは小説を雑誌や新聞などの掲載・連載を経ずに直接書籍化すること、またそのような作品自体を指します。「書き下ろし曲」とした場合は、ドラマの主題歌のためだけに制作させた楽曲を指します。漫画やイラストに対しては「描き下ろし」という漢字が使われます。
「書き下ろし」は「かきおろし」と読みます。 「書き」の原形は「書く」で「かく」と読みます。 「下ろし」の原形は「下ろす」で「おろす」と読みます。 「書き下ろし」の「下ろす」は補助動詞です。 補助動詞はひらがなで書くのが正式表記なため、「書きおろし」が厳密には正しい書き方になります。
「書き下ろし」の意味は「小説や論文などが執筆後にそのまま書籍化されること」です。 小説などは新聞や雑誌などに掲載されてから本になることが多くなっています。 しかし「書き下ろし」は掲載をせずに本として出版されているものを言います。 そのような小説を「書き下ろし小説」といったりします。 また、テレビドラマの脚本において、原作となるものが無くドラマのために脚本家がオリジナルで書いたものも「書き下ろし」と言います。テレビドラマだけでなく、映画や舞台の脚本も同じです。 音楽の分野でも、ドラマの主題歌などのために作ることも「書き下ろし」と言います。 そのような曲を「書き下ろし曲」といったりします。 「書き下ろし」にどんなメリットがあるかというと、まずその本で初めて世に出た内容となるため完全な新作になります。 デメリットは雑誌などに載らないので、原稿を書くともらえる原稿料が手に入らない点が挙げられます。
「書き下ろし」の語源は「下ろす」の意味がポイントです。 「下ろす」の原義は「高い所から下の方へ移す」ですが、もう一つ「中になる物を外に出す」という意味があります。 例えば、「新しい洋服を下ろす」なら「新品を着始める」という意味になります。 ちなみに、服を初めて着ることを「初おろし」というのは二重表現で間違いです。
「書き下ろし」の同音異義語「描き下ろし」があります。 「書き下ろし」と「描き下ろし」の違いは、「書く」と「描く」の違いと一致します。 文字や文章を記すときは「書く」を、模様・図形・記号を記すときは「描く」を使います。 よって、漫画やイラストなどを「かきおろす」場合は、「描き下ろし」の漢字を使います。 「描き下ろし(描下し)イラスト」「描き下ろし漫画」などと併せて使う場合もあります。
「掻き下ろす」とは、「下に向かってかいて、おろす」という意味です。 その名詞が「掻き下ろし」です。 「屋根に積もった雪を掻き下ろす」などと使います。
「書き下ろし文」は誤用で、正しくは「書き下し文」です。 送り仮名が違うだけでなく読み方も違います。 「書き下し」は「かきくだし」と読みます。 「書き下し文」とは「日本語文法の語順に並べ替えた漢文」のことです。 漢文の並びは日本語文法とは並び方が異なります。 そのため、日本語の文法の並び方に合わせる必要があり、そのように書き下した文を「書き下し文」と読みます。
「書き起こし」という言葉もあります。 これは日本画の最後の仕上げをすることです。 薄くなった線描きを、濃い絵の具で書き直すことを指します。 脚本などではなく絵画に使われる言葉です。
また「書き崩し」という言葉もあります。 「崩し書き」とも言われています。 これは「字画を省略し文字を書くこと」です。 草書体や行書体で文字を書くことも指します。
「オリジナル作品」とは「独自に創作した作品のこと」です。 「オリジナル」は「独創的」「独自のもの」といった意味です。 また、複製品に対しては「原作」「原文」といった意味もあります。
「新作」は「新しく作られた作品、新しく作ること」です。 「新作映画」「最新作」などと使われています。
「原作/原著」は「翻訳や脚色される前の元の作品」です。 「原著」は「げんちょ」と読みます。 作品は、他国で発売するために他言語で翻訳されたり、ドラマや映画化に向けて脚色されたりします。 そのため映画化されたりした場合に「この映画の原作は○○の小説」などと使います。
「新刊」は「新しく刊行された書物のこと」です。 また新しく刊行することです。 本屋さんなども「本日発売の新刊」「今月の新刊」といったポップが飾ってあったりしますよね。 最も新しいものであれば「最新刊」と表記されることもあります。
「初版」は「しょはん」と読みます。 意味は「出版された書物の最初の版のこと」です。 「第一版」とも言います。 「版」とは「印刷して書物を作ること」です。 ちなみに「書き下ろし」の類語ではありません。
「下ろし」と「上げる」が反対の言葉になりますが、「書き上げる」は「書き下ろし」の反対語ではありません。 「書き上げる」の意味は「最後まで書いて完成させること」です。 「原稿を書き上げる」「何日もかけて書き上げる」などと使います。
出版関連の用語では
が対になる言葉です。 「掲載」は「けいさい」と読みます。 意味は「雑誌や新聞などに小説など文章を載せること」です。 「連載」は「れんさい」と読みます。 意味は「雑誌や新聞などに、続きものとして小説など文章を載せること」です。
「書き下ろし」を直接した英語表現は存在しません。 よって、「書き下ろす」という行為を英語で説明すると、
writing a piece at the request of a publisher
出版社の要望に応えて、作品を書くこと
となります。
単に「新しく書かれた」を意味する「newly written」で表現することも可能です。 「specially written for...」とすれば、「...のためだけに書かれた」という意味になります。 「original work」とすると「オリジナルの作品」という意味になり、「書き下ろす」とは意味合いがかわり、「原作」という意味になってしまいます。
This new song was written specially for the movie coming out this summer.
この曲は、この夏に上映される映画のために書き下ろされたものです。
「〜でよって書き下ろされた」は「written by」で表現することができます。
I heard that this new novel was written by J.K Rolling.
噂によると、この小説は、JKローリングによって書き下ろされたらしい。
「書き下ろし」とは、小説や論文などが新聞や雑誌などの掲載・連載を経ずに、直接本として出版されることを指します。 また、その作品自体を指す場合もあります。 言い換えると、その本によって、作品がはじめて世に出ることになります。 出版用語であり、「掲載」「連載」の対になる概念です。 映画業界では、本にならず直接上映された作品を指します。 音楽業界でも使われることがあり、「書き下ろし曲」とした場合、「ドラマの主題歌のためだけに制作された楽曲」という意味になります。 漫画やイラストでは、「描き下ろし」という漢字が使われるので注意しましょう。