「斟酌(しんしゃく)」の意味は、相手の事情や心情をよくみることです。相手の気持ちを推察し、具体的に取り計らったり手加減したりと行動に移すことを表します。「忖度(そんたく)」の意味は、他人の気持ちや考え方を推しはかることです。相手が心に留めている本音を察することを表します。「忖度」には相手の気持ちを推し量ったうえで さらに何か配慮するという意味はありません。
「斟酌(しんしゃく)」の意味は、先方の事情を考慮に入れて穏便に取りはからうことです。 例えば、「斟酌を加える」「斟酌をなければならない」などと使います。 「忖度(そんたく)」の意味は、自分なりに考えて他人の気持ちを推しはかることです。 例えば「部長の気持ちを忖度する」「忖度する余裕がある」などと使います。 「斟酌」は、相手の事情や心情をくみ取った結果、相手への判断や状況、また相手の言動を変えるということを表す言葉で、「忖度」は相手の本当の気持ちを推測することのみを表す言葉です。
斟酌は<しんしゃく>と読みます。 意味は 「相手の事情や心情をよくくみとること、推察すること」 「ほどよく取り計らうこと、気を使い手加減すること」 です。 それらが転じて「控えめにする」「遠慮する」「ためらい」といった意味も持ちます。 また、「酒などを酌み交わすこと」「あれこれと照らし合わせて取捨すること」といった意味もあります。 今回は主に、「相手に対して推し量る」といった意味での「斟酌」について説明していきます。 「斟」という字は、訓読みで「斟む(くむ)」と「斟る(おしはかる)」です。 意味も、訓読みの通りのまま「くむ」「くみとる」「おしはかる」「おみやる」です。 「酌」という字も、訓読みで「酌む(くむ)」です。 意味は「くむ」「おしはかる」「酒」「酒をつぐ」です。 どちらの漢字も、お酒などを「くむ」といった意味があり、また「気持ちをくむ」といった意味も持っています。
「斟酌」といった言葉は、日常生活ではあまり使われていませんが、ビジネスシーンや厳粛な場面で用いられることが多くあります。 また「斟酌」は多くの意味を持つので、文脈や前後の言葉で何を意味しているのかを解釈する必要があります。 ですが、ほとんどが「相手の事情や心情をよく酌みとること、推察すること」の意味で使われています。 「事情や心情をくみとる」の意味で使う場合、動詞として「斟酌する」「斟酌しない」などと言い回されます。 また、「斟酌なく」「斟酌を加える」という言い回しもされます。 たとえば裁判では、「未成年であることを斟酌して責任は問わない」などと使うことがあります。 裁判ではよく立場や状況、また心情をくみ取った判決を下すことがあるからです。 また、相手の事情や心情を汲み取らずに、自分の気持ちを優先することを「斟酌せずに」「斟酌なしに」と使います。 たとえば会議などで、新人や部下が発言をためらっている時に「斟酌せずに発言してください」「斟酌なし言って大丈夫」などと使うことができます。
「斟酌」に似た言葉で「酌量(しゃくりょう)」といった言葉があります。 「情状酌量の余地がある」など、よく裁判の判決で使われる言葉で聞いたことがあるかと思います。 「酌量」は、「裁判官などが事情を汲み取って、処置・処罰などに手心を加えること」です。 要するに「酌量」は裁判で主に使われる言葉で、「事情をくみ取る」だけではなく、それを「考慮して刑罰を軽く」するといった意味があります。 「斟酌」は「くみ取り推察する」という意味はありますが、広い範囲で使われる言葉で「刑罰を軽くする」といった意味は含まれません。 使い分け、聞き分けには注意しましょう。
「身内に不幸のあった彼女を斟酌して裏方の仕事に回ってもらった」 「素直なのはいいことだが、ちっとも斟酌しないのもよろしくない」 「家庭の事情と未成年であることを斟酌し彼に責任を問わない」 「会議に限らず、仕事のことは斟酌せずに何でも思ったことは伝えるように」 「ここではプライベートな事情は一切斟酌されない」
「忖度」は<そんたく>と読みます。 意味は、「他人の気持ちや考えを推しはかること」です。 「忖」は訓読みで「はかる」です。 りっしんべんは「心」、寸は「短い時間」の他に「手」や「人」といった意味があります。 その二つが合わさって「忖」となり、「心に手を当てて人の気持ちを推し量る」の意味を持ちます。 「度」は訓読みで「たび」です。 「度数」や「角度」などから分かるように長さや量や大きさを表す単位の意味、「程度」などから分かるようにほどあい、また「態度」や「度量」などから分かるように人柄や様子を表す意味があります。 そして仏教用語では「さとりの世界や仏の世界へと導く、救う」「はかる、みつもる」があります。 「度」にも人に関わる意味合いが含まれていることが分かります。 その二つが合わさって「忖度」となり、相手との距離などほどあいをはかりながら相手の気持ちを推し量るといった意味となりました。 「忖度」は2017年の流行語大賞になり、その元となった事件により「忖度」という言葉に悪い印象が強くついてしまいましたが、上記でも説明したとおり本来の意味は悪いことを指す言葉ではありません。
「忖度」は、相手の気持ちや考えを推し量ることを表します。 「推しはかる」とは、相手が心に留めている本音を察することです。 日本人はあまり本音を口に出さず「建前」で話をしたりします。そのため、本音や本心を察することが必要な場面に出くわすことがあります。 そういった際に、相手に対して「忖度」します。 最近では政界や会社などにおいて「上司など目上の人の意図を推し量り気遣う」といった意味で使われることもあります。 本来は友人や家族などにも用いるこのとできる言葉ですが、堅苦しい印象があり日常的にはあまり使われません。 会社や政界など畏まった場所で使われることが多いため、上司や目上の人に対する気遣いとして使われるようになったのではないでしょうか。 最近「忖度」と似た意味で、SNSやLINEなどで若者を中心に使われているのが「(察し)」「察した」という言葉を使います。 例えば、彼氏がいたA子にも一応クリスマスに彼氏のいない友人たちで女子会をやることを伝えると「行く!」と返事が来たとします。 それに対して、「来れるの…?たのしもうね(察し)」と使います。 これは、「彼氏と別れて傷心していることを忖度し察しました」という意味になります。
「お得意様の意向を忖度する」 「取引先に忖度した結果、いい契約を結ぶことができた」 「父親を忖度し、大学へは進学せず家業を継ぐ」 「彼女と別れたばかりの彼に忖度して、みんなで飲み会を開いてひたすら馬鹿な話をしていた」 「彼はいつも上司に忖度してばかりで、自分の意志はないのだろうか」 「息子が大学受験に失敗し、近所の人から忖度されているが余計なお世話だ」
「斟酌」と「忖度」の違いについて理解できたでしょうか? 日本語にはよく似た意味を持つ言葉が多数あります。 使い方を間違えると相手に誤解を招くこともあります。 「忖度」は流行語大賞にもなり、世間でもよく使われるようになりました。 また、「忖度」とは日本らしい意味を持つ言葉ですよね。 「斟酌」以外にも「相手の気持ちを推し量る」といった意味を持つ言葉は他にもあります。 しっかりとそれぞれの意味と使い方を覚えておきましょう!
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