「涎」とは「よだれ」のことで、「垂」は「たらす」という意味です。よって「垂涎」で「食べ物をほしがってヨダレをたらす」という意味になります。転じて「ある物を手に入れたいと強く願うこと」の意もあります。読み方は「すいぜん」ですが、慣習的に「すいえん」と読む場合もあります。「垂涎の的」「垂涎物」などと使います。
「垂涎」の読み方は「すいぜん」です。 「すいせん」「すいえん」とも読むことが出来ます。 ただ「すいえん」だと「膵炎」という病気の意味と聞き間違いすることもあり得るので、「すいぜん」を使うのが無難です。
「垂涎」の意味は「食べ物をほしがってヨダレをたらすこと」です。 「涎」は「ヨダレ」のことです。 「垂」が「垂れる」であるため「ヨダレが垂れる、ヨダレを垂らす」となります。 食べたい時って自然とヨダレが出てしまいますよね。 その様子を表した言葉です。
「垂涎」には「ある物を手に入れたいと強く願うこと」といった意味もあります。 ヨダレが出るほど食べ物を欲しがるように、食べ物以外の物でも手に入れたいと思うことを表しています。 「垂涎」の主な言い回しは
となります。 「垂涎の的」「垂涎の品」は「非常にほしいもの」といった意味となります。 ちなみに「垂涎」は「垂涎する」といった動詞の形では使いません。
例文
「垂涎物」は「欲しくてたまらないほど魅力に満ち溢れているもの」といった意味になります。 欲しいと思わせる魅力があるものに対して「垂涎物」と使います。 ただし、人に対して使いません。 魅力的な人に対して「垂涎物」とすると、人を物扱いしていることになってしまいます。
例文
「垂涎を下げる」という表現は存在しません。 「垂涎」だけで「たらす」の意味が含まれているので二重表現になってしまいます。 「下げる」という言葉を含む慣用句には「溜飲が下がる」があります。 詳しくは下記の記事を参考にしてください。
「垂涎」が用いられている四字熟語に「垂涎三尺」があります。 意味は「ある物を激しく欲しがる様子」です。 「垂涎三尺」を漢字のままの意味にすると「おいしそうなものを見て、三尺(約90cm)もヨダレを垂らす」です。 そこから三尺ものヨダレを垂らすほど欲しい=激しく欲しがる様子ということとなります。 ただ日本ではあまり使われる表現ではありません。
例文
「愛好家垂涎」などと料理に対して使うと「愛好家もヨダレを垂らすほど美味しい」といった意味になります。 他にも
といった表現方法があります。 「垂涎必須」は「絶対ヨダレを垂らすほど美味しい」となります。 ちなみに、中華料理の「よだれ鶏(口水鶏)」はまさにヨダレを垂らすほど美味しいため、このように命名されました。 四川省出身の文筆家が著書において「その美味しさを想像しただけでヨダレが出てしまう」と書いたことが由来とされています。
例文
「流涎」は医学の世界で使われる用語です。 「りゅうぜん」と読み、意味は「ヨダレを流すこと」です。 唾液を嚥下せずに口から流すことなどを指します。 「流涎」は「唾液過多」とも言われています。
「強欲」の意味は「非常に欲が深いこと」です。 ほしいという気持ちが強い点は「垂涎」とほぼ同じ意味になります。 ちなみに「貪欲」との違いはポジティブな意味合いで使うかどうかです。 「貪欲」の意味も「非常に欲が深いこと」です。 次々と欲を出して満足しないこと・非常に欲が深いこと・むさぼって飽くことを知らない様子を表します。 「強欲」はネガティブな意味でしか使いませんが、「貪欲」はポジティブな意味としてもネガティブな意味としても使うことができます。やる気のある様子や一生懸命な様子を表します。
「ある物を手に入れたいと強く願うこと」といった意味の慣用句はいくつかあります。
などです。 「喉から手が出る」は「犬食い」を比喩表現したものです。 人は飢餓状態に陥ると少しでも早く食べたいことから手すら使わずに直接口で食べ物を取りに行くようになります。 その状態が「犬食い」であり、その姿の見苦しさから「喉から手が出る」と比喩表現したと言われています。
例文
「ある物を手に入れたいと強く願うこと」といった意味の二字熟語を紹介します。
などがあります。 どれも「強く願う」といった意味を持つ言葉です。 「庶幾」は「しょき」と読みます。 意味は「心から切に願うこと」です。 「庶」も「幾」も「希う(こいねがう)」といった意味を持ち「庶幾う」でも「こいねがう」と読みます。
「垂涎」の対義語は「満足」です。 「満足」の意味は「望み通りになって心が満ち足りていること」です。 不平不満のないこと、申し分ないこと、十分であることを表す言葉です。 満足するほどお腹いっぱいであることは「満腹」です。
例文
さらに「垂涎」の対義語には「堪能」があります。 「堪能」の意味は「十分に飽き足りること、満足すること」です。 「彼女の手料理を堪能する」など「堪能する」の形で使うことが多くなっています。 精神的に満足する様子を表しており、この場合は「彼女の手料理を美味しくいただいて、心まで満足する様子」を表しています。
例文
「垂涎の的」の和英辞典で調べると、よく「an object of envy」が出てきます。 これは「垂涎の的」を直訳したもので、「an object of」の部分は不要です。 「envy」を「嫉妬」という意味で漠然と覚えている人が多いかと思いますが、 「envy」を「自分が持っていないものを他人が持っていて羨む」という意味です。 動詞と名詞があります。
Her latest luxurious bag was the envy of all her friends.
彼女の最新の高級バッグは全ての友人の垂涎の的だった。
その他にも「垂涎」を意味する英語はあります。
で「...がほしくてたまらない」という意味になります。 食べ物に対しても使うことができる点も「垂涎」と似ています。
Every fan craves for his used t-shirt.
彼の使い古したTシャツは全てのファンの垂涎の品だ。
いかがだったでしょうか? 「垂涎」について理解できたでしょうか? ✔読み方は「すいぜん」 ✔意味は「食べ物をほしがってヨダレをたらすこと」「ある物を手に入れたいと強く願うこと」 ✔「垂涎の的」「垂涎の品」などで「非常にほしいもの」 ✔類語は「強欲」「喉から手が出る」など