「お疲れ様」は相手を労う言葉として使われる言葉ですが、ビジネスシーンでは本来目上の人に対して使うべき言葉ではありません。「お疲れ様です」などと敬語表現にしても同じです。「お疲れ様」は場面や状況によって言い換えが必要な言葉なので詳しく解説していきます。
「お疲れ様」は相手を労う言葉です。 「相手の骨折りをねぎらっていう語」「挨拶として用いる語」とされています。 「お疲れ様です」は、疲れている状態を気遣う言葉になります。また、帰る時などに「先に失礼します」の代わりに「お疲れ様です」といったように挨拶として用いることもできます。
「お疲れ様」は労いの意味が含まれています。 本来、ねぎらいというのは目上の人が目下の者に対して謝意を表す言葉なのです。 そのため「お疲れ様」も本来、目上の人が目下の人に対して使う言葉です。 しかし、昨今では立場関係なく挨拶として「お疲れ様」は使われていますね。 ですので親しい上司、先輩なら使っても問題ありません。 ただし、社長や取締役などかなり身分が上の存在には軽々しく「お疲れ様」を使うべきではありません。 ただ、会社によっては誰に対しても「お疲れ様」を使うことが当たり前となっている場合もありますので、会社の風潮に合わせるのが一番でしょう。
「お疲れ様」の表記には、「お」を漢字にした「御疲れ様」、「様」をひらがなにした「お疲れさま」などがありますが、意味は同じです。 「御疲れ様」はかなり堅苦しい印象を与えます。 「お疲れ様」の「様」は単に丁寧さを足すためのもので、原義である「物事のあり方・方向性」という意味ではないという点からひらがな表記の方がベターといえます。 そのため、人名の下に「様」を付ける際も、「さま」を使う人が多くいます。 日本語では漢字表記が可能でも、補助動詞など本来の意味が薄れている場合はひらがな表記にするのが正式な書き方です。 例えば、「ご確認のほど、よろしくお願いいたします」の「ほど」もただの婉曲表現であり、「物事の程度や数量などの度合い」を表してるわけではないので、「程」ではなくひらがな表記がベターです。 「いたします」も「致します」ではなく補助動詞なのでひらがな表記が正しいです。 また、漢字よりひらがなの方が柔らかい印象を与えるため、ビジネスシーンでは適しているといえます。
接頭語「お」は敬語であり、文脈によって尊敬語、謙譲語、丁寧語の3種類になります。 「お疲れ様」の「お」は尊敬語または丁寧語と解釈できます。 どちらにせよ、「お疲れ様」はすでに敬語であることは間違いありません。
「お疲れ様」だけでも敬語なのですが、かしこまった印象はありませんよね。 そのため「お疲れ様です」と「です」を付けることで丁寧な印象を与えることが出来ます。 社内の挨拶でも「お疲れ様です」を使っているところがほとんどでしょう。 上司も部下も関係なく、すれ違う際の挨拶として一般的に使われています。
「お疲れ様です」を過去形にすると「お疲れ様でした」になります。 丁寧さの度合いは同じです。 「お疲れ様でした」を使う場面は、 ①一日の最後に自分が退勤する際の挨拶 ②他人が退社や引退をする際の挨拶 の2点です。
「ございます」は「です」の丁寧な表現です。 そのため「お疲れ様です」よりも「お疲れ様でございます」の方がより丁寧な言い回しとなります。 過去形で「お疲れ様でございました」と使う時もあります。 主に
と使います。 しかし、やはり「お疲れ様でございます」だとしても社長などの重役に対しては使用を避けるべきです。
「ご苦労様」は目上の人から目下の人に使う言葉です。 他人が自分に対して益をもたらす仕事に従事してくれたことを労うときに使うため、「奉仕」というニュアンスが伴っている。目下の人が目上の人に対して使うことはできません。 また「ご苦労様」は相手の尽力を冷やかしたり、嘲ったり、皮肉を込めて使うこともあります。 例えば、誰もやってないことを一人の人がやり続けていることに対して「たった一人でご苦労様」などと使います。 また批判をしてきた人に対して「わざわざご苦労様です」と使ったりします。
「お世話様です」は「相手が自分のために尽力してくれたことに、労いやお礼を表す語」です。 他人が自分のために力を尽くしてくれたことに対して、感謝の意を表す表現として用います。 力を尽くしてくれたことに「ありがとう」という気持ちを伝える表現で、感謝の気持ちだけではなくて相手を労う気持ちも含まれています。 そのため「お世話様です」は基本的に、目上の人から目下の人に対して使います。 「お世話様です」には労いが込められているので、親しくしている相手への挨拶、お店で対応してくれた店員さんや荷物を届けてくれた配達業者の人に対して使うことが多いです。
朝に、目上の人と会った時や連絡をする時には「おはようございます」を使いましょう。 日常生活で誰にでも用いる言葉ですが、「ございます」と敬語がついていますので使用しても問題ありません。 また「おはようございます」は朝ではなくても使う場合があります。 挨拶する相手とその日はじめて会った際には「おはようございます」と言うことがあります。 ただ、あまりに遅い時間になってくると不自然であるため、その際はその日初めての挨拶でも「お疲れ様です」を使うようにしましょう。
上司が出先や出張などから帰ってきたときは「お帰りなさいませ」を用いることができます。 お帰りなさいは家で待つ家族が使う印象ですが、社内でも用いることができます。 その後に、「たくさん歩いて疲れた」「大変だった」などと上司が言った場合には「大変だったのですね、お疲れ様でした」などと言っても問題ないでしょう。 ただ企業によっては、目下の人が目上の人に対して「お疲れ様です」は使わないといった風潮がある場合には使わないようにしましょう。
上司が先に退社するときは「お気をつけてお帰りください」と使うと良いでしょう。 また、「今日も一日ありがとうございました」も使うことができます。 ただ社内で、先に退社する人に対して「お疲れ様でした」を使う会社も多いです。 その場合は「お疲れ様でした」とだけ声をかけても問題ありませんが、「お疲れ様でした、お気をつけてお帰りください」と使うと丁寧な印象を与えます。
上司よりも自分が先に退社するときは「お先に失礼します」を使いましょう。 「お」は自分のことに対して使っていいのか?と疑問に思う人がいるかと思いますが、結論からいうと問題ありません。 この場合の「お」は謙譲語となります。そのため自分をへりくだって相手を立てた言い回しになります。 ちなみに、「お先です」を使うのはNGです。 「失礼します」という言葉を省略してはいけません。 「失礼」という言葉自体に「他人のもと立ち去ることの丁寧な言い方」といった意味が含まれます。 「お先です」では、立ち去ることへの丁寧な意味合いが含まれませんので、「失礼します」を省略せず「お先に失礼します」と使うようにしましょう。 より丁寧に言うのであれば「お先に失礼いたします」とするといいでしょう。
目上の人がすでにいる部屋に入ったときは「失礼いたします」というようにしましょう。 また、部屋の扉がしまった状態である場合はノックなどをして「○○課の○○です。失礼してもよろしいでしょうか」などと声をかけ、相手が返事をしてから部屋に入るようにしましょう。 そして部屋に入る際、もしくは入ってから「失礼いたします」と言いましょう。
社外から取引先やお客様が来訪した際には「ご足労おかけしました」を使いましょう。 「ご足労」は、相手に自分のいる場所まで足を運んでもらったことを労う意味を持つ言葉です。 その他にも「ご足労おかけしてすみません」「ご足労いただきありがとうございます」などと使うことができます。 相手に足を運んでもらう時には「ご足労をおかけしますが、よろしくお願いします」と使うことも出来ます。
立場の相違が大きい相手と会った際には「ご活躍、感銘を受けております」などと使うと良いでしょう。 また忙しくしている相手との会合が終わったり、自分もしくは相手がその場から離れる場合は「お疲れを癒やし、ご自愛くださいませ」と使うと良いでしょう。 また、目上の立場である人と初対面の場合でも使うことができます。 ただ活躍の経歴などを知らない場合や、大きな功績を残したわけではない場合は大げさだと捉えられてしまう場合もあります。 その場合は「お会いできて光栄です」などと使うようにしましょう。 ただ注意したいのが、敬語のことを考えすぎると、丁寧な言葉になりすぎて不自然になってしまったり違和感を与えてしまう場合があります。 相手との関係性や状況などに合わせて使い分けていきましょう!
「了解」は「物事の内容や事情を知り、納得すること」「理解すること」といった意味で、主に使われています。 「了解」「了解です」は何か頼まれたときにの返事として使われることが多いです。 日常会話で親しい友人に対しても使うことが多いですよね。 そのため丁寧語ではありますが目上の相手に対して使うと軽い印象を与えてしまいます。 同等もしくは目下の者に使うようにしましょう。 「了解」「了解です」は当然のことながら、「了解しました」と丁寧な言い方でも失礼に当たります。 「了解した」という意味で上司に使える言葉は「承知しました」となります。
「なるほどですね」は「です」という丁寧語から敬語のように感じますが、「なるほど」は副詞であるため「ですね」を続けて使用することはできません。 例えば、「うん」という言葉に「ですね」という言葉をつけて「うんですね」と使用することには違和感を感じますよね。 したがって、「なるほどですね」は誤用であり、目上の人などに使用すると失礼な言葉となります さらに、「なるほど」という言葉は「相手の言うことに、確かにそうであるという評価を下して同意する」という意味合いがあるということです。目上の人やビジネスシーンで、相手の言うことを評価するニュアンスのある言い方をすることは、相手の気分を害してしまう可能性があります。 そもそも目上の人が目下の人に対して使用する言葉であるとされています。
謝意を伝える「すみません」ですが、ビジネスシーンではNGです。 「すいません」はくだけた話し言葉なので以ての外ですが、「すみません」も丁寧語ではあってもやや軽い表現であり、謙譲語や尊敬語ではないためビジネスシーンには適していません。 上司など目上の相手に謝罪する場合は、「申し訳ございません」「大変失礼いたしました」を使いましょう。
「〜になります」は、話し言葉として使用されることが多いです。 「〜となります」の方がフォーマルな印象があり、かしこまった場面に適しています。 また「〜になります」は「状態変化」「ある時期に達する」「〜に相当する」といった意味になります。 そのため「こちらが昨日の資料になります」と使うのは、実は誤用なんです。 この場合は「こちらが昨日の資料です(資料でございます)」と使うのが正しいでしょう。 「こちらが昨日の資料になります」とした場合、別のものが昨日の資料に変化する、別のものが昨日の資料に相当するといった意味になってしまいます。
ご存知の方も多いと思いますが、「お疲れ様」は英語に直訳することができません。 場面や状況によって、英語表現を使い分ける必要があります。 頑張った同僚や部下を労う場合は、
軽い挨拶の場合は、
帰り際の挨拶の場合は、
などになります。
いかがでしたか? 「お疲れ様」の意味と使い方はご理解いただけたでしょうか? 最後に「お疲れ様」に関してまとめたいと思います。 ✔「お疲れ様」は本来目上が目下に使うが、一般的には誰に対しても使用可 ✔「お疲れ様」はすでに敬語だが、ビジネスシーンでは言い換えが必要 ✔「お疲れ様」の類語「ご苦労様」「お世話様」も目上には使えない ✔「お疲れ様」の英語表現は直訳不可