「頭が上がらない」は「負い目を感じて対等に振る舞えない」という意味の慣用句です。「感謝してもしきれない」「申し訳なくて顔向けできない」などの意味で使うのは誤用です。「頭が上がりません」と敬語表現にすると上司など目上に使うことも可能です。それでは「頭が上がらない」の意味と正しい使い方、類語、対義語、英語表現について詳しく解説していきます。
「頭が上がらない」の意味は「負い目を感じて対等に振る舞えない」です。 相手に迷惑をかけたり、相手の立場や権力が自分よりもすごく圧倒された時って、対等に振る舞えないなと思いますよね。 そういった状態を「頭が上がらない」と言います。 「感謝してもしきれない」「申し訳なくて顔向けできない」などの意味で使うのは誤用です! 頭が上がらない人とは、自分が劣等感を抱くがゆえ、まともに対話ができない相手です。 相手が自分とは比べものにならないほど実力がある場合や自分の能力が著しく低い場合などに使うことができます。 「頭が上がらない人」も褒め言葉にはならないので注意しましょう。
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「頭が上がらない」は「頭の位置を下げたまま=低い」ということになります。 「頭の位置が低い」=「お辞儀・礼」とイメージできます。 「お辞儀」は昔から日本にある動作で儒教でも「礼」は重んじられてきました。 相手に対して挨拶をするとき、お礼を伝えるとき、敬意を表すときなどに行います。 人々は敬意や感謝の気持ちを込めて、お辞儀をします。 お辞儀をすると、相手の頭よりも自分の頭の方が位置が下になります。 「頭が上がらない」はこの「お辞儀」から来ています。 「敬意を表す=相手の方が上の立場」という意味で表すようになりました。
「頭が上がらない」はビジネスシーンで目上に使うことが可能です。 上司や先輩など目上の相手に使う敬語表現は、丁寧語「ます」の否定形「ません」を付けて「頭が上がりません」となります。 自分をへりくだり相手を立てる意味合いで、目上の人に使えます。「恐縮」といった意味を含むこともあります。 ただし、「頭が上がらない」には「負い目を感じる」といったネガティブな意味を含むので、目上の人が言われて嬉しくない場合もあるので注意しましょう。「威圧的だと思われているのかな」などと感じてしまうこともあります。
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「頭が上がらない」と言われた場合は、謙遜しておくのが無難でしょう。 「頭が上がりません」と言われたら「いえいえ、そんなことありません。」などと返しましょう。 後輩など目下の立場の人から言われたり、親しい仲の場合は「頭上げてよ」と返してもいいでしょう。
「頭が上がらない」は恋愛でも使われます。 特に「彼女に頭が上がらない」などと、男性から女性に対して使うことが多いです。 というのも、「姉さん女房」「かかあ天下」などといった言葉があるように、生活をともにする時間が長くなってくると女性が段々と強くなっていくところがあります。 「最近は彼女の方がしっかりしていて頭が上がらない」などと、自分(彼氏側)が支えていたつもりがいつの間にか支えられていた時などに使います。 また、自分が浮気をしたり仕事が忙しくて会えないなど相手を悲しませたりしたにも関わらず、変わらずに優しくしてくれる恋人に対して「頭が上がらない」と使うこともあります。
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医学の世界で「頭が上がらない」という症状は、首下がり症候群という病気となります。 首下がり症候群とは、体幹に対して頭部が前屈した状態になります。 首と背中の間にある筋肉の筋力低下が原因であり、前を見ることが辛くなるほどです。 頭を上げようとすると、首や背中が痛くなります。 歩行が困難になったり、嚥下機能や呼吸機能が低下するなど、日常生活の質を低下させてしまいます。
「頭が下がる」の意味は「尊敬しないではいられない、感心させられる」です。 「頭が下がる」は同等もしくは立場が下の人に対して使います。 「感心する」が目上の人に使えないのと同じで、上から目線な響きがあるので注意しましょう。 そもそも、目上の人に対してはすでに頭は下がっていなければなりません。 下がる、ということはそれまで下がっていなかった=敬意がなかったということになってしまいます。 また、「頭が下がる思い」と使うこともあります。「頭が上がらない思い」ではないので注意しましょう。 「頭が下がる」と同じ意味で目上の相手に使える言葉は「敬服」です。 「敬服」の意味は「その人の態度や日々の行いに尊敬の念を抱くこと」です。 「敬服」は同等か目上の人にのみ使う言葉で「敬服いたします」と目上の相手に使うことが出来ます。
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「頭を下げる」は「お辞儀する」を表します。 「彼は私に気付き頭を下げた」とすれば、「お辞儀をした」ということになります。 また、「謝罪する、詫びる」の意味もあります。 「あの人には頭を下げたくない」とすれば、「謝りたくない」といった意味になります。 そして「敬服する、感服する」といった意味もあります。 上述した「頭が下がる」と似た意味があります。 ただ「頭が下がる」は自分の意思とは関係なく下がってしまうというニュアンスがあります。 それは心底相手に敬意を持っているといった意味が強くなります。 しかし「頭を下げる」は自分の意思で下げています。 そのため「目上の人だから頭を下げる」とした場合、心底敬意があるかどうかは分からないですよね。 ニュアンスとしては、「頭が下がる」の方が相手への敬意が強くなります。
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「うだつが上がらない」の意味は「地位や生活が良くならない」です。 世間的な出世が出来ない、金銭的に恵まれない、ぱっとしないといった意味の表現です。 「うだつ」の漢字は「梲」です。「卯建」とも表記できます。 「梲」とは梁(はり)の上に立てて棟木(むなぎ)を支える短い柱のことです。 この「梲」が上から棟木に押さえつけられているように見えることが語源と言われています。
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「恐縮」の意味は「身もちぢまるほどに恐れ入ること。相手に迷惑をかけたり、厚意を受けたりして申し訳なく思うこと」です。主に書き言葉で用いられており、口語では「恐れ入ります」が無難となります。 「恐縮」は感謝の気持を述べる時や、依頼・お願いをする時に主に用いられています。 感謝の場合は「恐縮です」「恐縮いたしております」、依頼・お願いの場合は「恐縮ですが」「恐縮ではございますが」と使います。 その他にも断りや辞退、不参加、お休みなどの了承を求める時や目上の人から褒められた時の返事としても使われています。
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「言いなり」と「言われるがまま」の意味は「人の言う通りに従うこと」です。 主体性がなく、自分の気持ちよりも相手の言うことを優先してしまう様子を表します。 「親の言いなり」「上司に言われるがまま」などと使います。
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「抵抗不可能」の意味は「抵抗できない」です。 権力者に対して反抗することが出来ないことを表しています。 他にも「歯向かえない」「逆らえない」「盾突けない」などといった言い回しもあります。
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「頭が上がらない」の反対の意味なら「頭が上がる」では?と思いがちですが、対義語にはなりません。 というのも「頭が上がる」を「対等の立場に立って相手に向かう」といった意味では使うことがほとんどありません。 打消の表現を用い相手に屈服する「頭が上がらない」と使うのが一般的です。 「頭が上がる」は、基本的に使われない表現となっています。
「頭が上がらない」は「対等に振る舞えない」といった意味になるため「対等」が対義語となります。 「対等」の意味は「2つの物事や2人の間に上下・優劣などの差がなく同じ程度であること」です。 「対等な立場」「対等な関係」「対等に戦う」などと使います。
「頭が上がらない」の英語はニュアンスによって、2つ分けることにします。
「借りがあるために負い目を感じ、対等に振る舞えない」というニュアンスならば、
になります。 「owe」は「誰々の恩義を背負っている」という意味で、
などの形で使います。 「indebted」の語源は「debt」で「借金」です。 「借金がある」という意味もありますが、そこから転じて「恩義がある」という意味もあります。
I still feel like I owe him a lot.
彼には頭が上がらない。
「頭が上がらない」の「負い目」つまり「劣等感」に重点を置いた英語表現ならば、
などがあります。
She has it all over us at work.
仕事では誰も彼女に頭が上がらない。
「頭が低い」の意味は「謙虚である」「誰に対しても高ぶらないで丁寧」です。 「腰が低い」と同義となっています。 上述したとおり「頭の位置が下がっている、低い」というのは「相手への敬意を表す」ということになります。 「彼は頭が低い」とした場合、「彼は周りに敬意がある=謙虚である」となります。
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「頭をもたげる」の意味は「それまで意識にのぼらなかった隠れていた考えや気持ち、疑いが浮かび上がってくる」です。 また「次第に勢力をつけて目立つようになる、台頭する」といった意味もあります。 1つ目の意味は、自分自身でそれまで意識していなかった感情などが、心の中に浮かび上がり意識するようになることを指します。 例えば「彼の話を聞いてるうちに、それが正しいのではないかという思いが頭をもたげた」と言った場合、最初は正しいとは思っていなかったけど彼の話を聞いて正しいという感情が浮かび上がってきたということになります。
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「頭が痛い」は「懸念や心配などで思い悩む様子」を表した言葉です。 解決の難しい事柄に対して、心配したり悩んだりするさまです。 もちろん、「頭痛」の意味もあります。
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「頭を抱える」は「物事に思い悩み、途方に暮れる」を表した言葉です。 心配事や悩み事があって、苦慮する様子を指しています。 人が悩んだ時や困り果てた時に、自分の頭に手を回して抱え込む動作を表しています。 抱え込まなくても、つい頭に手をあてていたりすることってありますよね。
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「頭を突っ込む」は「仕事や仲間などに加わる、関わりを持つ」を表した言葉です。 同義語に「首を突っ込む」があります。 これは自ら興味や関心を持ち、関わっていく様子を指します。
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「頭を丸める」は「頭髪をすべて剃ること、丸刈りにする」「出家して僧侶になる」を表した言葉です。 頭髪を全て剃り落とすということは坊主頭になるということです。 それ出家するといった意味になります。
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「頭をかく」の意味は、そのままで頭に手をやってかくことです。 痒くて掻いている場合もありますが、主に照れたり恥じたりした際の仕草のことを指します。 ちなみに心理学的には、頭をかく時はイライラやストレスが溜まっている時の仕草とも言われています。 もしかして自分に照れてるのかな!?なんて思ったら、イライラされていたなんてことになるかもしれませんので、注意しましょう。
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いかがだったでしょうか? 「頭が上がらない」について理解できたでしょうか? ✔意味は「負い目を感じて対等に振る舞えない」 ✔敬語は「頭が上がりません」で上司に使用可 ✔「頭が下がる」は「尊敬しないではいられない、感心させられる」 ✔類語は「恐縮」など、対義語は「対等」 しっかりと意味を理解して使いましょう。