「慇懃無礼(いんぎんぶれい)」とは「言葉や態度が丁寧すぎると、かえって嫌味で不快感を与え、相手に失礼なこと」を指します。また「表面上は礼儀正しいが実際は相手を見下している」という意味もあります。「慇」と「懃」はともに「丁寧」、「無礼」は「礼儀知らず」を意味します。「慇懃」の漢字を「殷勤」とするのは誤りです。
「慇懃無礼」の読み方は「いんぎんぶれい」です。 「慇懃」の漢字を「殷勤」とするのは誤記なので注意してください。 「慇懃無礼」の意味は「態度や言動が丁寧すぎることで、かえって相手に無礼であるさま」です。 あまりに丁寧すぎると嫌味で不快感を与えてしまい、誠意が感じられなくなることを指します。 また、「表面はきわめて丁寧であるが、実はとても横柄であること」といった意味もあります。
「慇懃」は「きわめて丁寧で礼儀正しいこと」「心を込めて念入りにするさま」といった意味です。 「慇」は音読みだと「イン」、訓読みだと「いたむ」「ねんごろ」と読みます。 「慇」は「いたむ」「心をいためる」「心がこもっているさま」を意味します。 「憂え悼んで心を傾けることからひいては丁寧」であることを表します。 「懃」は音読みだと「キン」「ゴン」、訓読みだと「ねんごろ」「つとめる」と読みます。 「懃」は「ていねい」「親密になること」「つかれる」を意味します。 「慇懃」という言葉は、7世紀後半から8世紀後半に編まれた万葉集に登場します。 ここでは「ねもころ」と読み、「心を込めて」という意味で使われていました。 平安時代末期に成立した『色葉字類集(いろはじるいしゅう)』では、「いんぎん」と読まれています。 「無礼」は「礼儀にはずれること」「失礼なさま」といった意味です。 「無」は音読みだと「ブ」「ム」、訓読みだと「ない」「なし」と読みます。 「無」は「ないこと」「〜するな」「ないがしろにする、無視する」を意味します。 「礼」は音読みだと「レイ」、訓読みだと「うやまう」「のり」と読みます。 「礼」は「敬意を持ちそれを行動として示すこと」「人が行うべき規範」「作法」「敬意を表す」を意味します。 「失礼、不躾、無作法」などと同義語となります。 この二つを組み合わせて「丁寧で礼儀正しいことが、かえって礼儀にはずれること」という意味になっています。 「慇懃無礼」という言葉については、江戸時代に成立した辞書『諺苑(げんえん)』に載ったのが初出だと言われています。
「慇懃無礼」はビジネスシーンにおいて、過剰なほど礼儀正しく接された時などの場面で使用します。 親しい仲であったり、付き合いの長い人に尊敬語や謙譲語を連発されると、嫌味っぽく感じたりすることってありますよね。 「何か怒ってるのかな?」「逆に失礼だな…」って思ってしまいます。 そういった相手の態度や言動に対して「慇懃無礼な○○」と主に使います。 言い回しとしては
などと使います。
例文
礼も過ぎれば無礼になる
「慇懃無礼」の類語には「おためごかし」があります。 「おためごかし」は漢字で「御為ごかし」と書きます。 意味は「人のためにするように見せかけて、実は自分の利益を図ること」です。 「じょうずごかし」とも言います。 他に、「表面上だけいい顔をする」といった意味の類語には
などがあります。
「慇懃無礼」の対義語は厳密にはありません。 「横柄親切」と紹介されていることもありますが、これはネット上で「慇懃無礼」の対義語を募集した際に“造語でもいい”とされていたことから、誰かによってつくられた言葉であると言われます。 意味は「慇懃無礼」と真逆で「威張った態度を取っているが、実は周りに気を遣っている対応」となります。 こういう人いますよね、という程度です。 また「慇懃」の対義語は「無礼」になります。 「心がとても優しい、心底思いやりがある」といった意味には
などがあります。
「慇懃無礼」の英語を見ていきましょう。 「丁寧すぎて失礼に当たる」を意味する英語表現はありません。 「表面上は極めて丁寧だが、実はバカにしている」を意味する英語は「smarmy」です。 「seem polite but actually look down on me」と表現することもできます。 単に「失礼」を意味する単語は、
などたくさんあります。
He is trying to be friendly, but seemed smarmy.
彼はフレンドリーにしてるようだけど、誠実には見えない。
いかがだったでしょうか? 「慇懃無礼」について理解出来たでしょうか? ✔読み方は「いんぎんぶれい」 ✔意味は「丁寧すぎて、かえって嫌味に感じられ失礼なこと」 ✔「慇懃無礼な人」「慇懃無礼なメール」などと使う ✔類語は「おためごかし」