「釈然としない」という表現がどういった気持ちを表す言葉なのかご存知ですか?説明しろといわれるとなかなか難しい表現ですよね。今回は、「釈然としない」の意味と使い方を例文付きで紹介します。また、似ている表現である「腑に落ちない」との違いも合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「釈然としない」の意味は「迷いや疑いが晴れずもやもやする様子」です。 「釈然」の語源は、熟語を分解するとわかります。 「釈」は「解く・解き明かす」という意味のある漢字です。 「然」は「その通り」と肯定をする意味があり、状態を表す形容詞のあとに添える語でもあります。 この2つの漢字を組み合わせた「釈然」という言葉には「迷いや疑いが晴れる・解き明かされて気持ちがスッキリする」という意味になります。 つまり、「釈然としない」は、「釈然」に「しない」という打ち消しの語を続けているので、反対に「スッキリしない・モヤモヤしている」という様子を表す表現であるということがわかります。
「釈然としない」の読み方は「しゃくぜんとしない」 「釈」は音読みで「シャク」訓読みで「とく・ゆるす・とかす・おく」と読み、 「然」は音読みで「ゼン・セン」訓読みで「しかり・しかし」と読みます。
「釈然」の「釈」を「灼」に書き換えて「灼然」とすると、「輝くさま」「あきらかなさま」という意味になります。 元々「灼然(しゃくぜん)」は、明るくすべてが明らかになることを意味する仏教用語でした。 そして、「灼然」は、主に「神仏の不思議な力が著しく働き、それが非常にあきらかであること」という意味でも使用される言葉でもあります。 「灼然」には2つの読み方があり、「しゃくぜん」と読むこともできますが、「いやちこ」と読まれることもあります。「いやちこ」は「霊験があたらかになる」という意味の大和言葉の読み方です。
「釈然」は、「自分の中にある疑いが晴れずモヤモヤとしている」「迷いが残っていてスッキリしない」という場合に、「〜、釈然としない」という形で使用します。 主に、
といった形で使用されることが多いです。 例えば、「説明をしてもらったがそれでもなお釈然としない」というように、「〜をしてもらったけれど、気持ちのモヤモヤが晴れない」という意味で使用されます。
例文
また、「釈然としない◯◯」といった後ろに名詞で言い回しで使用されることも多いです。 「釈然としない◯◯」といった形だと、「気持ちがスッキリしない◯◯」「迷いや疑いが残りモヤモヤとした◯◯」というような意味になります。 例えば、
といった言い回しがあります。 詳しい使い方については例文を参考にしてください。
例文
「釈然」は「釈然としないまま〜」などと使うこともできます。 主に「釈然としないまま◯◯をする」といった言い回しで使用されます。 例えば、
など、「スッキリしないまま〜をする」「スッキリしないまま〜をした」といったニュアンスで使用されることが多いです。
例文
「釈然としません」は「釈然」に「しない」の丁寧語である「しません」をつけているので、敬語表現になります。 しかし、「釈然としない」は、「あなたの話に納得できない」「どうもスッキリしないよ」という意味なので、敬語表現にしても相手にその気持を伝えるのはそもそも失礼にあたります。 だいたいは、その気持を相手にぶつけずに持ちかえるのがほとんどだと思いますが、どうしても相手に伝えなければ話が進まない、問題が解決しないというのであれば、もっと丁寧な敬語表現を使用して、相手を不愉快にさせないようにする必要があると言えるでしょう。 例えば、「釈然としません」の代用として
などがあります。 ちなみに「◯◯いたしかねます」の「いたす」を「致す」と漢字表記するのは厳密には誤用です。 補助動詞はひらがなにするのがルールとなっていますので、こちらも合わせて覚えておきましょう。
例文
「釈然としてない」を、「釈然とせず」と言い換えても意味は同じです。 「せず」は、「する」の否定の助動詞「ぬ」の連用形に「ず」をつけた表現です。 したがって、「釈然」という言葉に「する」の否定である「せず」を使用しているので「釈然としない」の言い換え表現として使用することができるのです。 「せず」は、「してない」を丁寧に言い換えた表現なので、よりかしこまった場面で使用することが可能です。 使用する場面や文脈によって使い分けれるように、覚えておきたい表現です。
例文
「釈然としない」 ▶︎▶︎▶︎ 「何か心にしこりが残る・スッキリとしない」 「腑に落ちない」 ▶︎▶︎▶︎ 「合点がいかない・納得できない」 「判然としない」 ▶︎▶︎▶︎ 「意味をハッキリ理解できない・よくわからない」
「腑に落ちない」は、「合点がいかない・納得がいかない」という意味があります。 なんとなく気持ちがスッキリせず、モヤモヤとした気持ちになってしまうという点でいえば「釈然としない」も「腑に落ちない」も同じ意味があると言えます。 しかし、「腑に落ちない」は「金額の内訳について説明してもらったが、どうも腑に落ちない」というように、「理解ができない・納得がいかない」というニアンスの強い表現になります。 「釈然としない」は、理由も理解しているし、納得もしているけれど何か心にしこりが残る・スッキリとしないといったニュアンスです。 「腑に落ちない」の場合、納得するまで話し合うことで解決する可能性がありますが、「釈然としない」の場合は、なんとも言えないモヤモヤ感が残っていて、なかなかその人自身の考え方や気持ちが変わらないかぎりそのモヤモヤを晴らすことはできないでしょう。 ただ、「腑に落ちない」も「釈然としない」も微妙なニュアンスの違いはあるものの、同義語として特に使い分けることなく同じように使用している人が多いです。
例文
「判然としない」は、「意味をハッキリ理解できない」という意味です。 「判然」は「ハッキリしている・はっきりよくわかる」という意味の言葉です。 「判然」に「する」の否定形である「しない」という言葉をつけているので「はっきりと理解できない・わからない」という意味になります。 「判然としない」は、例えば、「何を表現したいのか判然としない」というように、「ハッキリとわからない」「理解することができない」といった状態を表す言葉です。 「釈然としない」は「ハッキリと理解できない」というよりは「疑いが晴れずにモヤモヤする」という気持ちを表現しています。
例文
「違和感がある」とは、何かに対する説明や行動などにおいて、「生理的、心理的にしっくり来ない間隔があること」です。 「何が」とはハッキリわからないけれど普段と違う感じがする...という場合や、絶妙にしっくり来ない感覚を「違和感がある」といいます。 「背中に違和感がある」というように、体の調子を言い表すときに使用することもできます。 ちなみに「違和感」を「異和感」と表記する人がいますが、これは一般的には誤りとされています。 辞書などに書かれている表記は「違和感」です。
例文
「疑問が残る」は、「事は済んでいるのに、わからない部分やモヤっとした気持ちがある」という意味で使用される表現です。 例えば、「説明はしてもらったが、それが事実がどうかは疑問が残る」というように、「〜...をしたけれど、まだモヤっとしている」といった場合など、とにかくまだ疑問に思っていたり、疑いが残っているという状態に対して使用します。
例文
「疑念が晴れない」は、「疑いが消え去らない」という意味で使用される表現です。 「晴れない」は、「スッキリしない」という気落ちを表現しています。 したがって、「疑念が晴れない」は、疑っているモヤモヤをしたきもちがスッキリしないということです。 何か相手に対して疑わしい....と思ったことを相手に問い詰めたけれど、はっきりと疑いがなくなることがなかったという場面で「疑いが晴れない」と使用することができます。
例文
「猜疑心」とは、「相手の言動を疑ったり妬んだりする気持ち」 単に疑問に思うだけではなく、相手の行為によって自分が不利になるのではないか?と相手を疑う気持ちのことを表します。 この場合の「抱く」は、「心の中に考えとしてもつ」という意味で使用されていて、「猜疑心を抱く」で、「相手に対して疑いの気持ちをもつ」という意味になります。
例文
「半信半疑」は、「半分信じて、半分疑う」という意味の四字熟語です。 完全に信じるには疑わしい点が残っているが、絶対にそうではないとも言い切れないといったような場合に「半信半疑」という表現使用します。 例えば、「大手企業の社長に告白された!」という場面で、嬉しいけれど、「大手企業の社長が自分なんかを好きになるわけない!騙されるのでは....」と疑う気持ちも半分あるといった状態です。 「信じきれない」というニュアンスが強いということを覚えておきましょう。
例文
「解せない(げせない)」の意味は「納得できない」です。 「解す」の打ち消しであるため、「納得できない」という意味で使用されますが、納得することを「解す」ということはありません。 「解す」の否定形のみ「納得できない」という意味で「解せない」「解せぬ」と表現します。 ちなみに、「解する(かいする)」で、「理解する」という意味になり、「解さない(かいさない)」で「理解がない」という意味になります。 ややこしいですが、混乱してしまわないように注意してください。
例文
「合点(がってん)」は、「承知・納得」という意味のある言葉です。 「合点する」で「承知する」「納得する」という意味で使用される言葉です。 「合点がいかない」は、「いかない」という否定の言葉を続けているので「承知できない・納得いかない」という意味になります。
例文
「瞭然(りょうぜん)」は、「はっきりしていて疑いがないさま」という意味の言葉です。 「瞭然とする」は、何か疑いがあったり、疑問に思っていたことがハッキリとわかって、疑いがなくなった様子を言い表す言葉です。 もはや疑う余地もないほどにハッキリしているという時に「瞭然とする」と言います。
例文
「気が晴れる」とは、「気持ちが晴れやかになる」という意味です。 つまり、悩み事や考え事がなくなったり、不安に思っていたことが解決して、気持ちがスッキリとすることを「気が晴れる」と言います。 例えば、嫌な気持ちを楽しいことをして吹き飛ばしたという場合に「気が晴れた」と表現することができます。
例文
「釈然としない」という日本語は、 ①何かがおかしく、 ②疑問が晴れず、 ③気持ちがスッキリしない の3つのパートに分けることができます。 ①②③のどれを英訳しても「釈然としない」の英語表現になりますので、1つずつ見ていきたいと思います。
「何かがおかしい」の英語は下記のように表現できます。
Something feels weird.
Something is strange.
Something is off.
It just doesn't feel right.
「疑問が晴れない」は下記のように表現できます。
It remains in the dark.
It can't be true.
I'm still having doubts about...
There is still some doubts about...
My suspicions haven't been cleared up.
「気持ちがスッキリしない」の英語表現は下記になります。
I am not happy about...
I'm not very satisfied with....
「然」が付く熟語は、なんとなく意味が似ていて判別しずらいものが多いので、最後に紹介していきたいと思います。
「俄然」の意味は、「急に・突然」「にわかなさま・だしぬけなさま」です。 状態などが今までとは急に変わるさま・突然ある状態になるさま・不意に状況が変わるさまを表します。 例えば、「彼は全然やる気なさそうだったが、賞金が出ると知り、俄然張り切り出した」などと言います。 「今までは消極的だったが、賞金が出ると知って突然意気込み出した」という意味になります。
例文
「唖然」の意味は「予想していなかった事に驚き、あきれて言葉が出ないさま」です。 思いがけなかった物事にびっくりしたり、呆れることによって、あいた口が塞がらない様子を表します。 単に「驚く」ということではなく、「呆れ果てる」という気持ちが含まれます。 誰かの行動や何か物事に驚いて、『・・・』と何て言ったら良いのか分からなくなる状態に陥ることってありますよね。そのような状態が「唖然」です。 「唖然」は「思ったよりも値段が高くて唖然とした」などとマイナスなイメージを伴い使う場合と、「完成した作品の素晴らしさに唖然とした」などとプラスなイメージを伴い使うこともできます。
例文 「呆れる」という意味
「感動する」という意味
「呆然(ぼうぜん)」の意味は、「予想していなかった出来事に、呆気に取られてぼんやりするさま」です。 上述した「唖然」と非常に似ている言葉ですが、「唖然」は「驚き呆れてぼんやりとするさま」、「呆然」は「ショックでぼんやりとするさま」を表します。 言葉が出ないだけの「唖然」と比べて、何もできない「呆然」の方が重症となります。
例文
「憮然」の意味は「落胆したりあきれたりして、どうすることもできないこと」です。 「憮」は「へこむこと、肩を落とすこと」、「然」は「状態を表す語」を意味します。 物事が思い通りにならず、失望したり気落ちしたりしてぼんやりしているさま、放心状態になることを表します。 「腹を立てているさま、不満に思っている様子」という意味で使われていることも多いですが、本来の意味とは異なります。 しかし、近年では「憮然」を「ムッとする、不機嫌になる」という意で使用することが増えています。
例文
「毅然」の意味は、「自分の信念を貫きしっかりしている」という意味です。 「毅」には「意思が強い」「思い切りがいい」という意味があります。 「然」は、状態を表す漢字なので、「毅然」は「意思が強く思い切りの良い様子」を表す言葉であるということがわかります。 「毅然とした態度」などとよく表現されますが、どんなことがあってもブレることなく一貫性をもって行動をしたり発言をするといった堂々とした態度を指します。
例文
「悄然」の意味は「気にかかることがあって、元気がないこと」です。 「悄」は「しょんぼりする、元気がなくなること」を意味します。 気力を失って落ち込んでいること、がっかりしていることを表し、古典においては「ひっそりとしていて寂しいさま」という意味で使われています。 「悄然」は主に書き言葉として用います。話し言葉として使うことは少ないです。
例文
「釈然としない」という表現について理解していただけたでしょうか。 ✓「釈然としない」の意味は「迷いや疑いが晴れずもやもやする様子」 ✓「釈然としない」の読み方は「しゃくぜんとしない」 ✓「釈然としない」は「〜、釈然としない」の形で使うことが多い ✓「釈然としない気持ち」「釈然としない思い」などの形でも使う ✓「釈然としない」は敬語表現にしても目上の人に使うのはNG など