「冥利に尽きる」は「みょうりにつきる」と読み、「ある立場においてこの上なく幸せを感じる」という意味です。「職人冥利に尽きる」などと使います。今回は「冥利に尽きる」の意味と使い方、敬語表現、類語、対義語、英語表現を詳しく解説していきます。
「冥利に尽きる」は、「みょうりにつきる」と読みます。 「冥」は音読みで「メイ・ミョウ」と読みます。 「利」は音読みで「リ」、訓読みで「きく」と読みます。 「冥」は「冥王星(メイオウセイ)」という惑星の名前に使われている漢字として知られているためか、「めいりにつきる」と読み間違えられることが多いです。 「冥利」は「めいり」ではなく「みょうり」と読むので注意しましょう。
「冥利に尽きる」の意味は、「ある立場においてこの上ない幸せを感じる」です。 職人や役者、作家、料理人、医師など様々な職業の人が、その職業においてしてきた努力が何らかの形で報われたときに喜びを表す表現です。
「冥利に尽きる」の「冥利」は仏教用語です。 「冥利」とは「神仏が知らず知らずのうちに授ける恩恵」を指します。 「冥利に尽きる」とは文字通り、「これ以上神仏からの恩恵を受けることはできない」「神仏から見放される」という意味になります。 これだけ見るとネガティブな意味に思いますが、「これ以上の恩恵を望めないほど、今が幸福だ」というのが正しい解釈です。 よって、「冥利に尽きる」で「ある立場や境遇において、この上ない大きな恩恵を受けてありがたく幸せに思う」という意味になります。 「冥利が尽きる」だと、「これ以上神仏からの恩恵は受けられない」という真逆の意味になってしまうので注意してください。
「冥利に尽きる」は、「◯◯冥利に尽きる」の形で使用するのが基本的な使い方になります。 「冥利に尽きる」の前の「◯◯」に、役職が入ります。 よく使われる例をあげると
などがあります。 日常生活で使用するよりも、何か賞を受賞したなど高い評価を受けたときのスピーチなどかしこまった場面で使用されることが多いです。
例文
「冥利に尽きる」は、「◯◯として冥利に尽きる」という言い回しでもよく使用されます。 この場合の「〜として」は、「〜の立場で」という意味で使用されています。 したがって、「◯◯冥利に尽きる」でも、「◯◯として冥利に尽きる」でも同じ意味になります。
例文
「冥利」は特別な名誉なことに対して使います。 よって、お金や物品を受け取る時には使えません。 例えば、何か特別にプレゼントをもらったなど得をしたという場合にその喜びを「冥利に付きる」と使用するのは間違いです。 評価を受けたり、賞を受賞するなどお金に変えられないような恩恵を受けた場合に使用できる表現なので誤った使い方をしてしまわないように注意しましょう。
「冥利に尽きる」は、敬語にすると「冥利に尽きます」となります。 連用形である「冥利に尽き」に丁寧語の助動詞「ます」とをつけています。 ただ、「〜ます」は丁寧語であるため相手に対する敬意に欠けます。 ですので、「〜と言っていただけるなんて」「このような賞をいただき〜」というように前に敬語表現に変えられるものがあれば敬語表現にすると敬意を示すことができるので尚良いでしょう。 堅苦しい表現なので日常生活ではあまり使用することはないと思いますが、ビジネスシーンでは割とよく使用できる表現なので覚えておくと良いです。 例えば、上司など目上の人に褒められたときに「お褒めの言葉をいただけるなんて社員冥利に尽きます」と喜びを表現することができます。
例文
「冥利が悪い」は「バチがあたる」という意味になります。 「冥利」には、「神仏が知らず知らずのうちに授ける恩恵」という意味があるということを上述しました。 「悪い」は「好ましくない状態」を表現する言葉です。 好ましくないことをしてしまって、神仏の加護を受けることができないという意味で「冥利が悪い」という言葉を使用します。 例えば、「〜をしてしまうのは冥利が悪いのではないか」で、「〜をすることはバチが当たることなのではないか」という意味になります。
例文
「冥利」を使った言葉には、「商売冥利」「商い冥利」というものがあります。 「商売冥利(しょうばいめいり」)」は、
という意味があります。 「商い」は「商売」という意味のある言葉なので「商い冥利」も同じ意味になります。 「商売冥利」「商い冥利」は、商売をしていく上での誓いの言葉としても使用されます。
例文
「男冥利」「女冥利」の意味は、「男・女に産まれた甲斐があること」です。 生きている中で「男に生まれてよかった」「女に生まれてよかった」と、感じる場面で「男冥利」「女冥利」という言葉を使用します。 「男冥利に尽きる」と言えば「男性という立場としてこの上ない幸せを感じている」という意味になります。 「男冥利」は「男として神仏から受ける加護にかけて」という意味で「断じて」「決して」という誓いの言葉として使用されることもあります。
例文
「冥加」の意味は、
です。 「冥加」の「冥」は「暗い」「覆われて光がない」という意味で使用されています。 「加」は、「神仏の加護」を意味していて、「冥加」は普段は見ることができない隠れている神仏の加護を意味する言葉になります。 「冥利」も「神仏が知らず知らずのうちに授ける恩恵」を指す言葉なので同義になります。 「冥加」は「冥加に余る」といった言い回しで良く使用されます。 「冥加に余る」は、「神仏からの恩恵が身に余りすぎてもったいない」という意味で使用される言い回しです。 「冥利」は「冥利に余る」という言い回しでは使用しません。 「冥利」は「〜の立場としてこの上ない幸せを感じる」というニュアンスで使用される言葉なので、使い方やニュアンスに若干の違いがあると言えるでしょう。
例文
「名利」は「みょうり」と読みます。 「名利」の意味は「名声と利益」です。 名誉ある評判や利益を「名利」と言います。 「名利」には「冥利」のように「神仏からの恩恵」という意味はありません。 また、「冥利」はこの上ない幸せを感じる場合に使用する言葉なので、「名利」と「冥利」は同音異義語であることがわかります。 「名利に尽きる」といった使い方はしませんので、変換ミスなどに注意しましょう。
例文
「願ってもない」は、「思ってもいなかった幸運が都合よく起こること」です。 例えば、「このような賞をいただけるなんて願ってもいませんでした」と使用すると、「賞をもらえるような幸運なことが起きるなんて思いもしなかった」という意味になり、思いがけない幸運が訪れたことに対する喜びを表現することができます。 「願ってもない」は「望んでいない」というマイナスな意味ではなく、「願っても叶いそうにないことが起きてありがたい」という意味です。 この上ない幸せや喜びを表現している言葉なので「冥利に尽きる」の類語表現になります。
例文
「身に余る」は、「評価や処遇が過度で自分にはふさわしくない」という意味です。 「自分には合わない」という否定的な意味ではなく、「自分にはもったいない」という謙遜の意味で喜びやありがたいという気持ちを表現しています。 しかし「身に余るお言葉」などは、プラスの意味で使用されますが、「身に余る大役」など「自分には負担が大きすぎる」というマイナスの意味で使用することもあります。 「自分にはもったいなさすぎる」という意味で使用する場合は、喜びを表す言葉として「冥利に尽きる」の類語であると言えるでしょう。
例文
「恐れ多い」は、
という2つの意味があります。 「恐れ多い」を「自分に身にはとてもありがたく、もったいないこと」という意味で使用すると、「ありがたい」という気持ちを表す「冥利に尽きる」の類語表現になります。 目上の人に態度や考えを褒められたり何か品物をもらった場合に、「恐れ多い言葉でございます」「恐れ多い限りでございます」「恐れ多くも〜」などと言います。
例文
「かたじけない」は、好意に対して「ありがたい」「恐れ多い」と感じるという感謝の気持ちを表現する言葉です。 「かたじけない」は「ありがとう」と同じく、感謝の気持ちを伝える表現として使われています。 心からありがたく思っていることを伝えたいときや、自分にはもったいないほど親切にしてくれたときは「かたじけない」が適します。 「かたじけない」には、「恥ずかしい。面目ない」の意味もあります。 ですが、「恥ずかしい」の意味ではほとんど使われていません。
例文
「光栄」の意味は、
となります。 「光栄です」と伝えることで、感謝や喜びを伝えることができます。 例えば「目上の人に褒められた」「賞を受賞した」「大役を引き受けた」「名誉に思う人の来訪を受けた」ときなどです。 「光栄です」は褒められて嬉しい気持ちや、仕事などで特別な地位を与えてもらったときの喜びを表す表現です。
例文
「僥倖」の意味は、
です。 生活していて得る幸せではなく、よほどのことが無い限り手に入らないような幸せや、幸運を願わなければ訪れないような幸せが訪れたときに「僥倖」という言葉を使用します。 藤井四段も20連勝目のインタビューで「僥倖」という言葉を使いました。 これは自分の実力では難しいとされていた勝利を得たことから、思いがけない喜びであったことを「僥倖」と表しました。 このように、本来得るはずもない喜びことなども「僥倖」と表すことができます。
例文
「幸甚」の意味は「非常に嬉しい」です。 「幸甚」は、「思いがけないさいわい」という意味のある「幸」と、「ふつうの程度を超えているさま」「たいへん」「非常に」という意味のある「甚」を組み合わせた言葉なので、「非常に嬉しい」というような意味をもつ言葉になります。
というようなニュアンスで使用されます。 「幸甚です」で、相手の配慮の配慮や心使いに対してなど、相手に感謝の気持ちを使える場面で使用することができます。
例文
「幸せ者」は、「幸運な人」という意味の言葉です。 「私はなんて幸せ者なんだ」という表現をすると、この上ない幸運に恵まれて幸せな状況にあることを言い表すことができます。 しかし、「このような賞をいただくことができて私は幸せ者です」で喜びや幸せを感じていることを表現することができますが、「感謝している」という気持ちは薄いように感じられます。 「冥利に尽きる」だと、「この上ない幸せに感謝している」というようなニュアンスになるので、感謝の気持ちを同時に伝えたい場合や、目上の人に対しては「冥利に尽きる」を使用したほうが良いでしょう。
例文
「果報者」は、「幸せ者」という意味です。 「果報」とは、「よい運を授かって幸運なこと」という意味があります。 また、仏語で「前世での行いの結果として現世で受けることができる報い」という意味もあります。 「果報者」と上述した「幸せ者」は同義です。 幸せなことを表現する言葉としては「冥利に尽きる」の類語になります。
例文
「冥利に尽きる」の対義語に、これといった言葉はありません。 「冥利に尽きる」が、「この上ない幸せを感じる」という意味であることを考えると「不幸」「災難」というように、「不幸せでありがたくないこと」を意味する言葉が対義語に当たると言えるでしょう。 また、先程紹介した「神仏の加護を受けることができない」という意味のある「冥利が悪い」も対義語にあたります。
例文
「冥利に尽きる」は、
などの形容詞を使って表現することができます・
As an actor, I feel blessed to have a fan like you.
あなたのようなファンを持てて、俳優冥利に尽きます。
How lucky he is to have such a beautiful lady for his wife!
こんなに美しい女性を奥さんにもてて、彼も男冥利に尽きるだろう。
「pay off」の原義は「借金を完済する」ですが、そこから転じて「(努力などが)報われる」という意味でも使います。
All of the work I put into creating this piece of music has really paid off.
この曲を気に入っていただけると音楽家冥利に尽きます。(この曲を作るための努力が本当に報われます)
「冥利に尽きる」という表現について理解していただけたでしょうか。 ✓「冥利に尽きる」の読み方は「みょうりにつきる」 ✓「冥利に尽きる」の意味は「ある立場においてこの上ない幸せを感じる」 ✓「冥利に尽きる」の語源は仏教用語 ✓○○冥利に尽きる」「◯◯として冥利に尽きる」の形で使う ✓「冥利に尽きる」はお金や物品を受け取る時には使えないので注意 など