「稚拙」という言葉をご存知ですか?「稚拙」は「稚拙な文章」「稚拙な行動」という形で使われていますが、正しい使い方なのでしょうか?また「幼稚」とはどのような違いがあるのでしょうか。そこで今回は「稚拙」の意味や使い方を紹介します。また、「稚拙」の類語や対義語についても紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「稚拙」の読み方は「ちせつ」です。
「稚拙」の意味は「子供っぽくて下手なこと」です。 「稚拙」とは端的に言えば「技術がない、技術力が低い」という意味です。 「稚」が「まだ十分成長していない」つまり「子供じみていて」という意味で、 「拙」が「つたない、へた」という意味です。
「稚拙美」は「ちせつび」と読みます。 「稚拙美」は「未熟でつたないが、素朴さや純朴さが感じられる美しさ」を表します。 多彩で派手な美しさではなく、未熟でつたないものの、そういった部分に純粋で素朴な独特の美しさを感じることを表現しています。 アート界での「稚拙美」の代表例といえば、ピカソです。
「稚拙(ちせつ)」と似た言葉に「幼稚(ようち)」があります。 「幼稚」の意味は「子供のように未熟なこと」です。 「幼稚」の元の意味は「おさないこと」です。例えば「幼稚園」などと使いますよね。 「幼」と「稚」はどちらも「おさないこと」を意味する漢字です。 一言で言い換えるならば、 「稚拙」=「下手」 「幼稚」=「未熟」 という意味になります。 「稚拙」は、技術や出来具合に対して使い、 「幼稚」は、考え方や行動に対して使います。
「稚拙な行動」「稚拙な発言」「稚拙な言動」「稚拙な判断」「稚拙な考え」「稚拙な人」などと使っている人をよく見かけますが、これらは不自然な日本語です。 例えば「稚拙な行動」は「技術が低い行動」という意味ではなく「子供っぽくて未熟な行動」という意味で使っていると思われます。 「行動」そのものが技術によって、できるできない、うまいへた、という話ではないですよね? そのため、正しくは「幼稚な行動」です。 その他も「幼稚な発言」「幼稚な言動」「幼稚な判断」「幼稚な考え」「幼稚な人」というのが正しいでしょう。
例文
「稚拙」は「技術がなく巧みでない」という意味で、技術や出来具合に対して使うので、
などと使うのが正しいです。 「あまりに稚拙な○○」とすると、稚拙であることが強調できます。 名詞として使うときは「稚拙さ」と表現します。
例文
「稚拙ながら」は自分のやり方や、相手にやろうとしていること、考えが未熟であることを謙遜する場合に使う表現です。 「稚拙ながら、◯◯をさせてもらいます」「稚拙ながら、◯◯をさせていただきます」という形で用います。 例えば、「稚拙ながら、本日司会を務めさせていただきます」と使います。 この場合は、自分が司会を務めることについて謙遜しています。 他にも「稚拙ながら、画家をさせていただいております」と、自分の職業を謙遜する場合にも使うことができます。 ビジネスシーンでは謙遜する場面が多く、「稚拙ながら」を使用することが頻繁にあります。
例文
「稚拙な文章ではございますが」は、ビジネスメールや書面において使われる表現です。 「稚拙」という言葉を使うことで、謙遜の気持ちを表すことができます。 「稚拙な文章ではございますが、最後までお読みいただき、誠にありがとうございます」などと、結びの挨拶として使うことが多いです。 謙遜の気持ちを表しているので、目下や同等の人ではなく、目上の人に使う表現となります。
というような使い方をします。
例文
「稚拙」は「技術がない、巧みではない」という意味なので、
などが類語にあたります。 「下手」は「技術や手際が悪くて、物事を上手く行えないこと」を意味します。「字が下手」「料理が下手」などと使います。 例えば、作品を完成させた時に、中途半端な出来の場合、「稚拙な出来」または「下手な出来」と表現することができます。 「不器用」は「細かい作業や仕事が上手くないこと」という意味で、「不器用な人」「不器用な手つき」などと用います。 「苦手」「不得意」「不得手」は「その物事が上手くできず、自信がないこと」を表します。
例文
「稚拙」と意味も使い方も全く同じである熟語が「拙劣(せつれつ)」です。 「拙劣」は「物事が下手で衰えていること」を意味します。 「拙劣な文章」などと使います。 「劣」という言葉が使われているので、「拙劣」は「稚拙」よりも強意的です。 上記で紹介したビジネスメールの箇所で、「稚拙な文章ではございますが」の代わりに「拙劣な文章ではございますが」とやると、より堅くかつ謙虚な響きが強くなります。
例文
「不手際」は「ふてぎわ」と読みます。 「不手際」の意味は、
です。 「不手際」はビジネスシーンにおいて使われることが多い表現です。 仕事上で対処や処理の仕方を間違えたり、判断を間違えた為に失敗に繋がってしまったときなどに使います。 例えば、「こちらの不手際によりご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません」と使います。 このように、ミスを謝罪をするときに「不手際」を使います。ここでのミスとは、間違いを犯す・時間に遅れる・不注意など様々です。
例文
「不束者」は「ふつつかもの」と読みます。 「不束者」の意味は「無作法な者、行き届かない者」です。 ビジネスシーンで使うことが多い表現です。 「不束者」は自分のことに精一杯で、人に配慮できなかったり、気が使えないことを謙遜する場合に使います。 例えば、「不束者ではございますが、何卒ご指導の程よろしくお願いいたします」と使います。 これからお世話になる人に対して、自分をへりくだっています。
例文
「上手」は「じょうず」と読みます。 「上手」の意味は、
です。 「絵が上手」「料理が上手」などと使います。他にも、「時間を上手に使う」などと使うこともできます。 また、「お世辞を言う」という意味で、「お上手を言う」と使うこともあります。
例文
「洗練」は「せんれん」と読みます。 「洗練」の意味は「磨き上げて優雅で品位の高いものにすること」です。 不純なものを取り除いて、品格を高めたものへと磨き上げることを表します。 「洗練された」という形で用いることが多いです。 例えば、「洗練されたファッション」ならば「優れたものへと磨き上げられたファッション」を意味します。 「洗練された人」などと、「鍛錬された品格のある人」という意味でも使うことができます。
例文
「熟練」は「じゅくれん」と読みます。 「熟練」の意味は「経験を積んでいて、巧みに行えること」です。 十分に経験を積んでいて技術が優れていることを表します。「熟練者」「熟練した人」「熟練度」などと使います。 例えば、「熟練の技」ならば「たくさんの経験をしてきて、優れた技」を指します。
例文
「堪能」は「たんのう」と読みます。 元々は「かんのう」と読まれていましたが、「たんのう」と慣用読みが定着しました。 「堪能」の意味は、
です。 「堪能」には二つの意味があります。 一つ目は「十分に満足する」という意味で、「本場のイタリア料理を堪能する」などと使います。「◯◯を堪能する」という形で用います。 二つ目の意味は「ある物事に優れていること」です。例えば、「スペイン語に堪能だ」ならば「スペイン語が優れている」という意味になります。
例文 ①の意味
②の意味
「巧妙」は「こうみょう」と読みます。 「巧妙」の意味は「ある物事の方法や技術などが感心するほど優れていること」です。 手際が良く、技術が優れていることを表します。 例えば、「巧妙な手口を使う」ならば「優れた手口を使う」という意味になります。 「巧妙」は「巧妙に操る」「巧妙に仕組まれた」などと、ネガティブな意味で使うことはほとんです。 ポジティブな意味合いで使うことはできません。
例文
「稚拙」の英語は、
などになります。 「稚拙な絵」は「poor picture」ということができますが、「poorly-drawn picture」とするとより明確です。
This is such a poorly written book that no one reads it anymore.
この本はとても稚拙なので、もう誰も読まない。
「childish」は「子供っぽい」という意味で、「幼稚」の英語になります。 「childish」は主に人に対して使います。 「childish pranks(子供じみたイタズラ)」などと物事に対して使うこともあります。
It was so childish of her.
彼女はとても幼稚だ。
「稚拙」について理解していただけましたか? ✔︎「稚拙」は「ちせつ」と読む ✔︎「稚拙」の意味は「子供っぽくて下手なこと」 ✔︎「稚拙な判断」「稚拙な行動」とは言わず、「稚拙な文章」「稚拙な絵」などと使う ✔︎「稚拙」の類語には、「下手」「不手際」「不得意」などがある