「言及」という言葉をご存知でしょうか。「◯◯に言及する」などと、ニュース番組や新聞などで見聞きすることが多いと思います。では、「言及」の意味を知っていますか。聞いたことはあるけれど、意味はよくわかっていない、雰囲気だけでなんとなく使ってしまっているという方も多いのではありませんか。そこで今回は「言及」の意味や使い方。読み方、類語について解説していきます。言葉は間違って使用していると非常に恥ずかしいです。正しい意味を理解して、上手く使いこなしましょう!
「言及」は「げんきゅう」と読みます。 「ごんきゅう」とは読まないので注意しましょう。 「言」は音読みだと「ゲン」「ゴン」、訓読みだと「いう」「こと」と読みます。 「及」は音読みだと「キュウ」、訓読みだと「およぶ」「および」「およぼす」と読みます。
「言及」の意味は「ある物事を話題に出す」です。 「及ぶ」は「ある点に達すること」を表していて、「言及」で「話をしていて、その話題に関連する事柄まで達する」という意味になります。 簡単に言うと、「〜について述べる」「話が及ぶ」「話の中で〜の話題にふれる」です。 「言及」という言葉がフォーマルな響きがあるせいか、「詳しく述べる」「詳細を言う」「細部まで話す」という意味であると誤解している人が多いので注意してください。 「言及」は単に「(会話や会議、会見などで)ある事柄を話題に上げる」という意味であることを覚えておきましょう。
レポートにおける「言及」は、他者の言葉を参照したり引用したりして、その上で自分の考えを示すことを表します。 レポートのお題で「〜について言及しなさい」などと使われることがしばしばあります。これは「他者の言葉を参照したり引用することで信憑性を高めながら、自分の見解を論理的に説明しなさい」という意味になります。
「未言及」の意味は「話題がある事柄にまで、まだ広がっていないこと」です。 「未」は「まだ〜ない」という意味です。「いつか実現する」という意味合いを含んでいます。 マスコミ・メディアで使われる表現で、日常的にはほとんど使用されない言葉です。
「自己言及」は「自己を主体として、自分自身に何らかの言及や指示をすること」を意味します。 「パラドックス」とは「一見正しく感じるが、実は矛盾している考えや言葉」を表します。 また、「一見間違っているようで実際はある意味で本質をついている」ことを指す場合もあります。 例えば、『「自分は嘘つきだ」とAさんは言った』という文があるとします。 Aさんが嘘つきならば、「自分は嘘つきだ」ということ自体が嘘になるので、「Aさんは正直な人」となります。 とすると、「自分は嘘つき」という前提と食い違ってしまいます。 Aさんが正直であるとして、「自分は嘘つき」は正しいため、「Aさんは嘘つき」となります。 それだと、「Aさんが正直」という前提と食い違います。 このように、「何らかの言及をしようとすると、真偽を判断できず、矛盾が生まれること」を「自己言及のパラドックス」といいます。 ちなみに「自己言及のパラドックス」は英語で「Liar paradox(嘘つきパラドックス)」といいます。
「言及」の「書く」バージョンである「書及」という日本語は存在しません。 「書及する」「書及される」などとは使いません。 しかし、「記事や小説で文章で話題に上げる」という意味でも(言ってるわけではなく書いている場合でも)「言及」という言葉を使うことはできます。 「今月号の雑誌で、あの事件について言及されている」などと使うことが可能です。
「言及」と「言う」の違いは「及ぼす」という意味が含まれているか否かです。 「言及」を「言い及ぼす」という意味ですが、「及ぼす」ってどういう意味だろ?と思いますよね。 「言及する」は「(会議や会見で)話題に上げる」という意味です。 「言う」は単に「言葉に出す」という意味です。 「言う」の同義語に「述べる」もありますが、「言及する」と「述べる」の違いも同じです。 「言う」「述べる」の方が意味が圧倒的に広く、発声する場合ならどんな場面でも使うことができる言葉です。
「追求」「追求」はどちらも「ついきゅう」と読みます。 「追及」は「原因や責任などを、どこまでも食い下がって追い詰めること」を意味します。 例えば、「会社の闇を追及する」「事故の原因を追及する」などと用います。 「追求」は「目的のものを得ようとして、どこまでも粘り強く追い求めること」を意味します。 例えば、「夢を追求する」「使いやすさを追求した筆箱」などと使います。 「追求」と「追求」の違いに関しては、下記の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみてください。 「言及」は「追及」と同じ「及」という漢字が使われているせいか、「言及」を「追い詰める」という意味と誤解している人がたまにいます。 「言及」はただ話題に上げるだけで、責任を追い詰めるという意味合いは全くありませんので混同しないように注意しましょう。
「〜に言及する」という形で使うのが最も一般的です。「〜について話す、触れる」という意味になります。 「〜について言及する」とも使えます。 「〜について言及すべきだ」「〜について言及する必要がある」などとも用います。 これらは「その話題について触れるべきである、取り上げるべきだ」という意味で使われています。 また、「言及しなさい」「言及せよ」「言及しろ」といった命令形、「言及したい」といった希望を表す形もあります。
例文
という使い方をします。 「〜について言及がある」ならば「その話題に関して触れる」という意味です。 「〜について言及がない」は「その話題に関して触れない」ということを表します。 「一言も言及がない」ならば「その話題に全く触れない」という意味になります。 「言及がありました」は「その話題について話があった」という意味です。
例文
「言及を避ける」は「あえてその話題には触れないこと」を表します。 「言及」と「避ける」を共に使うことで、「その話題について、意図的に触れないこと」という表現になります。 「言及を避けるべきだ」といった使い方もします。
例文
「言及」を目上の人に対して使う場合は、「言及」という言葉自体は敬語でないため、敬語表現を後に続ける必要があります。 主に、「言及する」という形で使われているので、この「する」の部分を敬語に変換します。 敬語にすると、「言及なさる」「言及される」となります。 「なさる」は「する」「なす」の尊敬語、「される」は「する」の尊敬語です。 謙譲語「いただく」と組み合わせて「言及いただく」とすることも可能です。 「いただく」は「してもらう」の謙譲語で、目上の人からの行為を受ける自分をへりくだった表現です。
例文
「言及」は、堅い言葉なので多用しないようにしましょう。 相手が意味がわからない場合に使ってしまうと嫌味っぽくなるので、「言及」は使う相手や場所を選ぶ必要があります。 改まった場面で使うことが多いので、特に日常会話で頻繁に使うと不自然です。 「言及」の言い換え表現は次の項目で詳しく紹介します。
一言に「言及」といっても、どこまで言い及ぼすべきかは状況によって判断する必要があります。 例えば、会社で起きたトラブルについて会議で言及する場合、トラブルの状況を話すのか、原因を突き止めて話すのか、今後の対応を検討して話すのか、関わった人の責任明らかにして話すのか、、、は会議の目的に照らして決定する必要があります。 空気を読まずに不必要なことまで「言及」してしまう、場合によっては相手に不快な印象を与えてしまう可能性もあります。 「言及」する範囲については、常に状況と目的を考慮して決めるようにしましょう。
「言及」という言葉は、政治経済関連の堅い内容を扱うメディア・マスコミで頻繁に使用されます。 テレビの報道番組や新聞、経済政治雑誌など幅広い媒体で見受けられます。 例えば「総理は日米首脳会談で拉致問題に関して言及した」などと使われます。 内容がシリアスなので、「言及した」の代わりに「話題に上げた」としてしまうとフランクな雰囲気になってしまいます。
映画や小説などに対して「言及」を使う場合もあります。 例えば、「この映画では第二次世界大戦に関する言及がある」ならば、単に「話題に上がる」程度の意味ですが、 「第二次世界大戦について言及された映画」とすると、戦争が「テーマ(主題)」である映画という意味になります。 使い方によって意味合いに違いが出てきます。
ビジネスシーンでは、会議やプレゼン、セミナーなどで使います。 例えば、「◯◯さんが以前言及されていた件についてですが」などと使います。 過去に議題に上がったことを示すときに使われます。 挨拶状や通知状、案内状などのビジネス文書で使うこともあります。 社内での従業員同士のコミュニケーションでは日常的に使うことは少ないでしょう。
法律関連文書では日常的には使わない堅い言い回しが数多く存在しますが、その中の1つが「言及」です。 法律の条文や裁判での文言では「〜について触れる」「〜に関して取り上げる」などではなく、「言及する」と書かれています。 「本答弁では、治安維持法の当時の適法性のみに言及され、〜」などと使われたりします。
「話題」とは「会話の中で中心的な材料、話の種」を意味します。 「話題にする」は「そのことに関しての話をすること」を表します。 「話題にする」は「言及」よりもフランクな表現となります。日常会話でも「流行っているゲームを話題にする」「ある事件を取り上げて話題にする」などと使うことができます。 よりフランクにした表現に「話のネタにする」があります。「彼女の噂を話のネタにする」などと用います。
例文
「議題」は「会議で討論する題目」を意味します。 「議題とする」は「ある事柄が議論の対象とすること」を表します。 例えば、「企画の見直しを議題とする」ならば「企画の見直しを議論の対象とすること」という意味です。企画の見直しについて話し合うことを表します。
例文
「論及」は「ろんきゅう」と読みます。 「論及」の意味は「話題がその事柄にまで及んで論じること」です。 「論及」は「言及」とほぼ同じ意味です。違いとしては、「言及」は”軽く触れる”というニュアンスに対して、「論及」は”しっかりと意見を述べる”というニュアンスになります。 例えば、「詳しい部分を論及する」などと使います。
例文
「取り扱う」の意味は、
です。 「取り扱う」には意味が四つあります。 「言及」の類語としては、4つ目の意味で使います。 例えば、「本件を傷害事件として取り扱う」などと用います。何らかの問題やテーマとして取り上げることを表します。 他にも、一つ目の意味では「皿を注意深く取り扱う」、二つ目では「生徒を分け隔てなく取り扱う」、三つ目では「当店は自主制作本も取り扱う」などと使われます。
例文
「まな板にのせる」は「議論や評価の対象として取り上げること」を意味します。 例えば、「今回の会議でまな板にのせられる件」と用います。これは「今回の会議で議論の対象として取り上げられる件」を意味します。 「俎板に載せる」と表記することもあります。 ビジネスシーンだけではなく、日常会話で使うこともあります。
例文
「暗示」の意味は、
です。 直接的に示すのではなく、手がかりとなる情報によってそれとなくわかることを表します。 例えば、「今日の雨は不採用を暗示しているようだ」と用います。これは「雨が、不採用をそれとなく示している」というニュアンスになります。 はっきりと言及するのに気が引ける場合は、暗示するのが良いです。
例文
「自粛」は「じしゅく」と読みます。 「自粛」の意味は「自ら進んで言動や態度を改めてつつしむこと」です。 何らかの問題を起こして、それに対して世間の目や他者からの評価を気にして、行うはずだったことを取りやめたりする、といった場合に使います。 例えば、「発言を自粛する」ならば「意見を述べないことを自ら決める」というニュアンスになります。 他にも、「活動を自粛する」「放送を自粛する」などと使うこともできます。
例文
「差し控える」は「さしひかえる」と読みます。 「差し控える」の意味は、
です。 主に二つ目の意味で使います。例えば、「発言を差し控える」ならば「遠慮して発言をやめること」を表します。 状況を見合わせて、物事を控えめにしたり、遠慮してやめることを指します。他にも、「外出を差し控える」「飲酒を差し控える」などと使うこともできます。
例文
「ノーコメント」は「ある物事について、評価や説明を求められた場合に、それを断ること」です。 会見や取材の際に、何らかの批評を求められて、断る場合に使う表現です。「それについてはノーコメントで」「ノーコメントだ」などと用います。 「ノーコメント」はビジネスシーンだけでなく、日常会話でも使うことがあります。
例文
・speak to...:...について言及する - mention...:...について軽く言及する - refer to...:...についてはっきりと言及する - allude to...:...について暗に言及する
「言及する」に最も違い英語表現は「speak to」です。 「speak to 人」だと「誰々に話しかける」という意味ですが、「speak to 物事」とすると「何々ついて言及する」という意味になります。 前者の使い方のみを知っている人は多いのではないでしょうか?「speak to」にはもう1つの使い方があるのを覚えておきましょう。
I won't speak to it, because we haven't announced that information officially.
その情報は公式に発表していないので、言及するは避けます。
「mention」は「あまり詳しいことを説明せずに短く述べる」=「軽く触れる」というニュアンスです。 日本語の「言及」よりもライトなニュアンスですが、「以前言及した通り」などは ・As I mentioned before などと使うことができます。 「talk about」につられて、「mention aout」としないように注意してください。 「mention...」で「...に軽く触れる」という意味になります。
As I mentioned before, we'd like to put more efforts into solving this issue.
前に言った通り、この問題の解決のためにさらなる努力をしていきたいと思います。
I'll mention your idea in the upcoming meeting.
次回の会議では君のアイデアに言及する予定だ。
「refer to」は「きちんと話題に取り上げる」という意味で、「mentihon」よりも強意的です。 「refer to」は「make reference to」と言い換えることも可能です。 「refer back to...」とすると「再び...について言及する」という意味になります。 「refer to」には「〜を参照する」という意味もあります。
When she gives a presentation, she always refers to the book.
彼女はプレゼンするとき、いつもある本を言及する。
I am not referring to that matter.
例の件に言及するつもりはありません。
He referred back to the table of contents.
彼は目次に再び言及した。
「allude」は「暗に言及する」という意味になります。 「間接的に話題に触れる」という意味です。
He alluded to Taro, but never said his name.
彼は暗に太郎について言及したが、一度も彼の名前は言わなかった。
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「言及」について理解できたでしょうか? ✔︎「言及」は<げんきゅう>と読む ✔︎「言及」は「(その事柄に)言い及ぼすこと」を意味 ✔︎「言及」は堅い言葉なので、ビジネスシーンや政治の世界でよく見聞きすることが多い ✔︎「言及」の類語には、「暗示」「引喩」「触れる」などがある