「不便をかける」という言葉をご存知でしょうか。お知らせなどで目にすることが多い表現ですが、「不便をかける」とはどのような意味なのでしょうか。また、この表現は正しいのでしょうか。「ご不便をおかけしますが」などビジネスシーンにおいても見聞きすることが多いです。意味を知っておかないと、しっかりと使うことができませんよね。そこで今回は「ご不便をおかけしますが」の意味や使い方、類語について解説していきます。正しく覚えて、上手く使えるようにしましょう!
「不便をかける」は正しくない日本語なのではないか、という議論がネットなどで存在します。 「迷惑をかける」「苦労をかける」などとは使うが、「不便」に対して「かける」を使うのは不適切ではないか?という議論です。 結論から言うと、「不便をかける」は正しい日本語です。「不便」を広辞苑で調べるても、「不便をかける」という例文が出てきます。
「不便をかける」の「かける」は、「好ましくないことを相手に与える、不都合なことを相手に及ぼすこと」です。 「かける」は漢字だと「掛ける」と書きます。相手によって都合が悪いことをする場合に「◯◯をかける」と表します。「苦労をかける」「迷惑をかける」などと使われています。 「不便」は「便利ではないこと、支障をきたすこと」を意味します。不便なことも相手にとっては好ましくないです。 よって、「不便をかける」は正しい表現になります。
「ご不便をおかけする」という敬語はどうでしょうか? 「ご不便」の接頭語「ご」は丁寧語です。「不便」をただ丁寧に言い表しているだけです。 「おかけする」の「お」は謙譲語です。自分の動作をへりくだっていうことで、その動作の対象である他人に敬意を示しています。 丁寧語と謙譲語は違う種類の敬語なので、二重敬語にはあたりません。 したがって、「ご不便をおかけする」も正しい敬語表現になります。
ビジネスシーンで使う「ご不便をおかけしますが」のフレーズは、ほとんどの場合、
の2通りの言い回しになります。 下記に紹介する5つの例文は、前半の3文が謝罪するフレーズ、後半の2文が理解を求めるフレーズになっています。
「ご不便をおかけして申し訳ございません」は「ご不便をかけてしまい、弁解の余地もない」という意味です。 謝罪の気持ちを述べる場合に使う言い回しです。 例えば、工事で道路が使えないときに、「ご不便をおかけして申し訳ございません」と謝罪することができます。 他にも、あるサービスが改善して、今までよりも便利に使えるようになった場合に「今までご不便をおかけして申し訳ございません」などと言います。 「申し訳ございません」とただ謝るよりも、「ご不便をおかけして」と入れる方が丁寧な表現となります。
「ご容赦」は「ごようしゃ」と読みます。 「容赦」は「相手の間違いを許す」という意味です。「ご容赦ください」は「ミスを大目にみてください、許してください」という意味になります。「ご容赦」を使うことで、申し訳なく思っていることを表現できます。 「ご不便をおかけしますがご容赦くださいませ」は「不便をおかけしますが、大目にみてください」ということを表します。 「ご容赦くださいませ」は相手への謝罪だけではなく、理解を求める意味合いも含まれます。
「ご不便をおかけしておりますことを心よりお詫び申し上げます」は、不便をかけてしまったことを謝る言い回しです。 自分のミスで相手に迷惑をかけてしまったり、損害を与えてしまった場合に使うのが適します。「お詫び申し上げます」は「お詫びします」の謙譲表現なので、より丁寧な表現となります。 不便をかける理由を述べた後に、「お詫び申し上げます」と述べます。「お詫び申し上げます」でも丁寧ですが「心より」「心から」をつけることで、お詫びの気持ちを強めることができます。 丁寧な表現のため、ビジネスシーンにおいてよく使われます。
「ご了承」という言葉がセットでよく使われます。 「了承」は「理解していただき、受け入れる」という意味です。「ご了承ください」とすると、「理解して受け入れてください」と相手に納得を求める言い方となります。 例えば、道路工事のため、道が使えなくなることをお詫びする場合に「工事期間中、ご不便をおかけしますがご了承くださいますようお願い申し上げます」などと使います。 これは「道が使えなくなり不便をおかけしますが、ご理解いただきますようお願いします」という意味です。 このように「ご了承ください」は、相手にお願いをする場合に使う表現となります。
「ご理解」も「ご不便」とセットで使われることが多い言葉です。 「ご理解」は「相手が思っていることや立場を察すること」を意味します。「ご理解の程よろしくお願いいたします」だったら「わかってくださいますようお願いします」という意味になります。 「ご不便をおかけすると存じますが、何卒ご理解の程よろしくお願いいたします」は「不便をおかけするとは思いますが、わかってもらえますようお願いします」という意味です。 例えば、「工事を実施するため騒音などご不便をおかけすると存じますが、何卒ご理解の程よろしくお願いいたします」などと言います。このように、相手にお願いする場合に使う表現となります。
「ご迷惑」は「相手が不利益を受けたり、不快感を感じたりすること」を意味します。 「ご迷惑をおかけしますが」という言い回しが使われます。例えば、相手に資料の作成を依頼する場合に「ご迷惑をおかけしますが、資料の作成をよろしくお願いいたします」と言います。 これは「相手に不利益が生じることは理解している上で、依頼をしていること」になります。ただ、場合によっては失礼に当たる可能性があるので他の言葉に言い換えるのが無難です。 依頼だけではなく、謝罪をするときにも使えます。自分のミスで相手に不利益を生じさせてしまったら「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と謝ることができます。
例文
「お手数」は「おてすう」と読みます。 「お手数」は「ある物事を達成するために必要な労力、動作、手段の数」という意味です。 「お手数をおかけいたしますが」といった言い回しが使われます。 例えば「お手数をおかけしますが、◯◯の件についてご検討のほどよろしくお願いいたします」だったら、「自分が頼んだことによって、相手に何らかの手間をかけさせたり時間を割いてもらって申し訳ない」というお詫びの気持ちが含まれます。 「お手数」には申し訳なく思っているだけではなく、もし検討していただけるとありがたいと、感謝の気持ちも含まれています。
例文
「お手間」は「ある物事に使う時間や労力」を意味します。 「お手間を取らせる」というフレーズが多く使われます。「お手間を取らせる」は「相手がある物事や自分のために時間や労力を費やしてくれること」を表します。 例えば、何かをお願いする場合に、「お手間を取らせてしまい申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします」と言えます。 これは「自分のためにお時間を取らせてもらって申し訳ない」とお詫びする気持ちが含まれます。
例文
「ご都合」は「物事を行う上での事情や、具合の悪いこと」を意味します。 「ご都合」は相手に日程を確認する場合や、スケジュールの調整を行う場合に使う表現です。例えば、会議の日程を決めたい場合に「会議を開催するにあたって、皆様のご都合をお聞かせください」といったように使います。 「ご都合はいかがでしょうか」というフレーズもよく使われます。自分が提案した日程でよいかどうか尋ねる場合に使う表現となります。 「都合がよろしい日を〜」「都合がつく」などと言うよりも、丁寧語の「ご」をつけた「ご都合」を使うことで相手に対して失礼のない言い方となります。
例文
「差し支え」は「さしつかえ」と読みます。 「差し支え」は「物事を行う上で都合の悪い事情」を意味します。 「差し支えなければ」という言い回しがよく使われます。これは「事情が悪くなければ、都合が悪くなければ」という意味です。 相手に依頼する場合に使う表現で、お願いしたことが相手にとって都合の悪いものでなければ、と定めた上で依頼しています。ただ依頼するのではなく、「都合が悪かったら断っても構いません」という相手に選択の余地を与えます。 「差し支えなければ」はクッション言葉として用います。お願いをするときに「差し支えなければ」をつけることによって、印象を柔らかくすることができます。
例文
「不憫」は「可哀想なこと、心を痛めること」を意味します。 「不憫に思う」「不憫な人」などと使います。例えば、事故で怪我をしてしまった人がいると「可哀想だね」「お気の毒だな」と思いますよね。そのことを「事故に遭った人を不憫に思う」と表現することができます。 「不憫」は「不便」と混同されて使われることが多いです。読み方が似ているため間違われやすいですが、意味は全く異なります。 「不便」の代わりに「ご不憫をおかけしますが」と使ってしまわないように注意してください。
例文
「ご不便」の英語は「inconvenience」になります。 「convenience」は「便利さ」という意味の名詞です。 それに否定を意味する接頭語「in」が付いて、「inconvenience」となります。
「ご不便をおかけして、申し訳ございません」は英語で、
We apologize for any inconvenience this may cause.
となります。 「apologize for...」で「...を申し訳ありません」となります。
「We apologize for any inconvenience this may cause.」の後には、
Thank you for your understanding.
ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
という文章を続けるのが定番です。
↓ ビジネスパーソンにおすすめの英会話教室・オンライン英会話に関してまとめましたので、興味のある方はぜひご覧ください。
科学的に正しい英語勉強法
メンタリストとして活躍する筆者が、日本人が陥りやすい効率の薄い勉強方法や勘違いを指摘し、科学的根拠に基づいた正しい英語学習方法を示してくれています。 日本人が本当の意味で英語習得をするための「新発見」が隠れた一冊です。
正しいxxxxの使い方
授業では教わらないスラングワードの詳しい説明や使い方が紹介されています。 タイトルにもされているスラングを始め、様々なスラング英語が網羅されているので読んでいて本当に面白いです。 イラストや例文などが満載なので、これを機会にスラング英語をマスターしちゃいましょう!
「ご不便をおかけしますが」について理解できたでしょうか? ✔︎「不便をかける」は正しい表現 ✔︎「ご不便をおかけして申し訳ありません」「ご不便をおかけしますがご容赦くださいませ」などと使う ✔︎「ご不便」は謝罪する場合や、相手の理解を求める場合に使う ✔︎「ご不便」の類語には、「ご迷惑」「お手数」「差し支え」などがある