「皮肉」という言葉をご存知でしょうか。「皮肉を言う」「皮肉を言われた」というような形で耳にしたことがあるのではないでしょうか。今回は、「皮肉」の意味と使い方を紹介します!さらに、「皮肉」と「嫌味」の違いや、「皮肉」な人の特徴、「皮肉屋」の対処法についてもまとめました。
「皮肉」は「ひにく」と読みます。 「かわにく」とは読みませんので、注意してください。
「皮肉(ひにく)」とは、「相手の欠点・弱点を遠回しに非難したりからかったりすること」です。 相手が気にしているようなことをわざと褒めるような言い回しで言葉に出してそれとなく示してくることを「皮肉」といいます。 直接的な言い方ではなく、あくまでも遠回しな言い方でつついてくるのがポイントです。 どういった表現が「皮肉」になるのかについては、具体例を後述しますので、参考にしてください。 さらに、「皮肉」には「期待していたこととは、まったく違った結果になってしまうこと」という意味で、「皮肉にも〜・・・となってしまった」というような使い方をすることもできます。
「皮肉」の元は「皮肉骨髄」という仏教語です。 「皮肉骨髄」とは、中国禅宗の始祖達磨大師が弟子たちに伝えた言葉で、大師は修行中の弟子たちに、それぞれ、
という評価をしていきました。ここから頭の文字をとって「皮肉骨髄」と言われています。 「皮を得たり」は、表面は理解しているが本質には達していないということを意味していて、反対に「髄を得たり」は理解度が高いという評価であるということがわかります。 つまり、いい言葉を言っていると見せかけて「あなたの理解度はまだまだですね」と遠回しに非難しているのです。 ここから、「皮肉」という言葉だけが残り、遠回しに欠点を指摘するような意味合いとして使用されるようになりました。
「皮肉」と言う言葉は、「皮肉な○○」というように形容詞として使用することができます。 例えば、
というような使い方があります。
例文
「皮肉を言う」「皮肉を込める」は、相手の弱点をからかったり、相手を見下すようなニュアンスのある言葉を発言する時に使用できる言い回しです。 「皮肉を込める」の「込める」は、「心を込める」と同じように「充分に気持ちを含ませる」とう意味で使用されています。 つまり、「皮肉を込める」で「言葉に皮肉の意味合いを込める」という意味になります。
例文
「皮肉が効く」は、言われた本人がネガティブな感情になるようなダメージを与えたときに使用する表現です。 「効く」とは、「薬が効く」と使用されることがあるように、「効能が現れる」という意味があります。 したがって、皮肉を言われて「自分は皮肉を言われている・・・!」と落ち込んだり、傷ついたりイライラするといった気持ちの変化があったときに使用されます。 最近では、自分の言動に対して、単純に相手が傷ついたり動揺するといった気持ちの変化があると「効いてる効いてる〜!」と言うことも多いです。
「皮肉にも〜・・・」は、「期待していたこととは、まったく違った結果になってしまうこと」という意味で使用されます。 つまり、「望んでいないことが起きてしまった」という状況に使う言い回しです。
例文
「嫌味(いやみ)」とは、「人にわざと不快な感じや思をおこさせること」です。 「嫌味」は「間接的ではなく、直接的でストレートに人に不快感を与える言動」であり、「嫌味」な言動をとられた側は瞬時に不快感を覚えます。 つまり、「皮肉」と「嫌味」の違いは、
ということです。 また、
という違いがあります。
例文
「皮肉」のその他の類語には「風刺」「当て擦り」「シニカル」などがあります。
「風刺(ふうし)」の意味は、「欠点や罪悪を遠回しに批判すること」です。 また、社会や人物の欠点を嘲笑的に表現することを「風刺」といいます。 例文
「当て擦り(あてこすり)」の意味は「当てこすること、またはその言葉」というです。 簡単に言うと、遠回しに相手が気づくように悪口を言うことを「当て擦り」といいます。 例文
「シニカル」の意味は「皮肉な態度をとるさま。冷笑的」です。 「シニカル」の語源は「他人のよい面を信じず、人はみな自己中心的だと思うこと」という意味になります。これを日本語では「皮肉的な態度」と訳してします。 例文
「皮肉」の英語は「アイロニー(irony)」です。 「irony(アイロニー)」は「ユーモアを含んだ穏やかな皮肉を指し、相手を傷付けるようなニュアンスは含まれません。
「皮肉」は「sarcasm」「satire」などもあります。 「sarcasm」は「遠まわしに意地悪く相手を非難する」というニュアンスで「嫌味」に近いです。 「satire」は和訳すると「風刺」です。海外メディアは政府のことをイラストなどを使って風刺することが多く、コミュニケーション手段として「satire」は一般的に定着しています。
では、一体どのような表現が「皮肉」となるのでしょうか? 基本的には、「あなたは馬鹿ですね」というように直接的な表現を使って非難するのではなく、「頭が悪い」と心では思っているのに「かしこいから、色々な考えが浮かんできてしまって混乱してしまうんでしょうね」などというように、あえて反対の言葉を使うなどをして「遠回しに相手を非難する」表現が「皮肉」と言われます。 「皮肉」の例えを紹介していきますので、参考にしてみてください。
皮肉の具体例
・テレビはとても教育的だと思う。誰かがスイッチを入れるたびに、私は別の部屋に行って本を読むことになるんだ。 グルーチョ・マルクス 「グルーチョ・マルクス」は、アメリカのコメディアンです。 日本ではその当時「グルーチョ」で定着していて、この「グルーチョ」には「ぶつぶつ」文句を言うという意味でした。 ・無限なものは2つあります。宇宙と人の愚かさ、前者については、断言できませんが。 アインシュタイン 「アインシュタイン」は、ドイツ生まれの理論物理学者で、現代でも「20世紀最高の物理学者」とも言われその名と知らない人はいないのではないでしょうか。 彼が、「人間の愚かさ」について語ったときの名言がごちらになります。 ・バカと死人だけは決して自分の意見を変えない ジェイムズ・ラッセル・ローウェル 「ジェイムズ・ラッセル・ローウェル」は、アメリカのロマン主義の詩人で、「詩」を通して自信の見解を積極的に発表していました。 これは、自分の意見や考えを曲げない人への皮肉を込めた表現です。
普段、他人に対して「皮肉」めいたことばかりの発言をする人のことを「皮肉屋」といいます。 なぜ、「皮肉屋」はわざわざ相手が嫌な気分になってしまうようなことを言ってしまうのでしょうか。 「皮肉屋」の心理として考えられるものを、簡単に紹介します。
「皮肉屋」は、非常に「自己中心的」であると言えるでしょう。 「他人が言われたらどう思うか」と考えれば、「皮肉」なんて相手に言えませんよね。 「相手の気持ち」を考える余裕がないから、自分の一方的な感情で「皮肉」を言ってしまうのです。 さらに、「自己中心的」なのは、「自己愛」が強いということも考えられます。 「自己愛」が強いから、何か上手く行かないことがあるとすべて回りのせいにして、皮肉をぶつけてしまうのでしょう。
「皮肉屋」は、他人と自分をいつも比較しているような傾向があります。 自分に自信があるのならまだいいのですが、「皮肉屋」の場合は、自己評価が低く、「自分に自信がない」ので、他人のあら捜しばかりをして、それを皮肉めいたセリフでチクチクと相手に指していくことで、自分を優位な立場にしたい!という気持ちが強いです。 勝手に比較されて、勝手にあら捜しをされて心無いことを言われなきゃならないなんて本当にひどい話しですよね。。。
「皮肉屋」は嫉妬心が強く、いつでも「隣の芝生が青く」見えていることが多いです。 自分より幸せそうな人や、仕事が上手くいっている・お金を持っているというような人を見ると、嫉妬心からどうしても皮肉めいたことを言わないと気が済まなくなってしまう傾向があります。 単純に「うらやましいな」という気持ちがあるのです。 「尊敬心」など一切なく、「どうしてあの人ばかり上手くいくの?」と妬む気持ちが強い人は無意識でも「皮肉」を言ってしまいがちです。
「完璧主義」な性格が「皮肉屋」にしているということもあります。 例えば、職場なので「皮肉」な言い方で注意してくるパートさんやお局さんっていませんか? そういう人は、大抵「完璧主義」で、新人さんなど少しでもきちんとできていない人がいると、発狂するレベルで苛立ってしまって「皮肉」を言ってしまうのです。 「自分にとって当たり前」なことを「出来ない人」がとにかく許せないという心理があると言えるでしょう。 優しくフォローしてくれればいいのになと思いますが、それができないのが「皮肉屋」です。
「自分がイライラしてる」という感情を抑えられずに、相手に「皮肉」をいってしまう人も多いです。 つまり、自分の感情をうまくコントロールすることができないのです。 仕事が上手くいっていないときや、気持ちの余裕がないときに、周りにもたもたしているような人がいると、ついつい、「あ〜もうっ!!!!」と、元々イライラしている感情に拍車をかけ、ついつい「皮肉屋」となってしまうのでしょう。 つまり、ほとんど「八つ当たり」ということです。 なんだか知らないけれど、すぐにイライラしてしまう人って意外といるんですよね。
例えば、奥さんが家事を全く手伝ってくれない旦那さんに日々ストレスを感じていたとします。 一言、「もっと家事を手伝ってほしいな」と伝えることができればそれで済む話しではあるのですが、奥さんは、「言ったところでこの気持は伝わらない」ということを知っています。 なので、直接「手伝ってほしい」という文句を言う気にもならないのです。 しかし頭ではわかっていても、実際にせわしなく動いている自分の目の前でダラダラされたら、ついつい「皮肉屋さん」になってしまうのです。 このように、心の底で「どうせわかってもらえないから」と諦めてはいてもついつい苛立ちとなって皮肉を言ってしまうことって結構あることなのではないでしょうか。
何となく人の「良いところ」ではなく「悪いとこ」を見つける「あら捜し」が好きな人もいます。 他人の良いところを素直に「良いな」と感じることができないのでしょう。 「どんなにいい人でも絶対に裏があるはず」と思っているし、「かわいい人は性格が絶対に悪いはず」なんて当たり前のように思っているタイプが多いです。 これはやはり上述したように、「自分に自信がない」からどうしても、他人の欠点を見つけたくなってしまい、さらにそこを皮肉をいってつつくことで憂鬱感を感じることで優越感を感じているのです。 まさに「性悪」ですよね。
とにかく相手のことが嫌いで「皮肉」を言っているということもあります。 「嫌いな人」のことって、見ているだけで相手に悪意がなくてもイライラしてしまったりしますよね。 どんなに「嫌いな人」でも、態度や言動に出さないのが「大人」とも言えますが、それができない人もいます。 お互いがお互いのことを「受け入れられない」と思っていることもあるでしょう。 「皮肉」を言われれば、「皮肉」で言い返したくなってしまいますし、どんどん関係が悪化してしまいます。
「皮肉屋」さんに「皮肉」を言われたら、イラっとしてついつい「皮肉」で言い返してしまう人も多いかもしれませんが、ぐっとこらえましょう。 「皮肉」で言い返してしまっては、永遠に「皮肉を言いたくなる人」です。 「これは皮肉を言われている」とわかったら、「すみません・・・」ととにかく低姿勢で返しましょう。 マイナスなイメージを与えたままでは「効いてる♪効いてる♪」と思わせてしまうので、「同じことをしてしまわないように、次回からは〜・・・しますね!」というようにポジティブな姿勢を見せておくと◎ 素直に受け止めている姿勢を見せているのに、それでも「皮肉」を言ってくるのであれば、それはもう勝手に言わせておきましょう。気にすることはありません。
「皮肉」を言われたら、「ご指摘ありがとうございます」と感謝の気持を伝えてみましょう。 「言われなければ気づきませんでした、ありがとうございます」というように、皮肉に対して皮肉と思っていないような返しをすることで、「皮肉屋」は「なんだ、張り合いがないな・・・」と思うはずです。 さらに、「自分の為を思って言ってくれたんだ」なんて解釈をされると、「皮肉」のつもりで発言した自分を情けなく感じてしまいますよね。 「皮肉屋」には自分は「皮肉」でもしっかりと受け止めることができる「心の広い人間です」というアピールをしましょう。
例えば職場で「皮肉」を言われたら、「どうすればいいと思いますか?」とアドバイスを求めてみましょう。 「それって、私の仕事は遅いと感じているということですよね、ではどの辺をどう改善すればいいと考えていらっしゃるのか教えていただけますか?」と、皮肉を掘り下げた質問で返すことで「皮肉の言われっぱなし」を防ぐことができます。 ただあら捜しをしてそれを言いたいだけの「皮肉屋さん」は、「アドバイスを求められるなんてめんどくさいな」と思って皮肉を言ってこなくなることでしょう。 本当に、悪いところがあって指摘したいという場合も多いので、あくまでも本当に悪いところは改善したいですという真面目な姿勢でアドバイスを求めてくださいね。
あまりにしつこく「皮肉」を言ってくるような「皮肉屋」さんはをまともに相手にしてしまうと心身共に疲れてしまうだけです。 そもそも「皮肉屋」の中には、そういったあなたの参っている姿を見て楽しみたいだけの人もいるので、気にせず気丈に振る舞うことで、「皮肉が効かないなんてつまらないな・・・」と諦めてくれるはずです。 ときにはヘラヘラと笑い飛ばすことも必要なのです。
「皮肉屋」に反抗する勇気のある人は、「皮肉屋」に言われた言葉をそっくりそのままオウム返ししてみましょう。 例えば、「本当に仕事が遅いわね」と言われたら、「○○さんも周りの人に比べたら遅いですよね」というように言い返します。 「皮肉」を言う人って、「自分は皮肉を言われるような人間じゃない」と思っていることが多いので、いざ「皮肉」をそっくりそのまま返されると、ビビってしまう傾向にあります。 上司など、立場が上の人には中々勇気がいることですが同僚などどうとうの 立場の人間には「皮肉のオウムが返し」も効果があるかもしれません。
なんといっても、「皮肉屋」さんとは、必要以上に関わる必要はないでしょう。 職場に「皮肉屋さん」がいるのであれば、「はい、たしかにそうですね」と適当に話しを合わせておいて、プライベートでは関わる必要がありません。 無理をしない人付き合いが大切なので、「不快な思い」をすえう人と一緒に過ごす必要はないのです。 そもそも、「皮肉屋」さんのような性格の人は、あまりの「性悪」に周りの人もどんどん離れていってしまいますので、みんなから距離をおかれているはずです。
というように、自分が一番コンプレックスに感じている部分を
などといちいち口に出されたら、「皮肉だ!」と思ってしまうひとも多いはず。 自分が一番気にしていることを指摘されたら誰だって一度は「皮肉」に思えてしまうのではないでしょうか。
など、自意識過剰でさらに、被害妄想が激しいような人は、何を褒められてもマイナスな感情がわきおこってきて、「褒めているのではない、あれは馬鹿にしているのだ」っと思ってしまいます。 実際に、幼い頃は素直だったにも関わらず、「友人に裏切られてバカにされた」というような歴史があると、被害妄想が強くなってしまうことがあります。
何を言われても「これは皮肉だ」と思ってしまうのは、自分が相手に「皮肉」を言うタイプだからである可能性もあります。 自分が言うからこそ、相手も同じように皮肉を言っているのだと思うのです。 自分が素直に相手を褒めるタイプであれば、相手のことも信用して受け止められるはずなのに、それができないのです。
幼少期から、親に皮肉ばかりを言われて育ってきたり、仲の良かった友人に「皮肉」を言われたということに気がついて傷ついたことがある。というように、何らかのトラウマなどが原因で「何を褒められても信用できない」という人間不信になって、「今自分は皮肉を言われているんだ」という感情に陥ってしまっているということも考えられます。
「皮肉」という言葉について理解していただけましたか? ✓「皮肉」の読み方は「ひにく」 ✓「皮肉」の意味は「相手の欠点・弱点を遠回しに避難したりからかったすること」 ✓「皮肉」の語源は「皮肉骨髄」という仏教語 ✓「皮肉な○○」「皮肉が効く」「皮肉にも」といった使い方をする 「皮肉」を言ってくる人に誰もが一度は出会ったことがあるのではないでしょうか。 職場、町中、等色々な場所に「皮肉屋」は潜んでいます。 「皮肉」を言われていい気分になる人はいませんよね。 「皮肉屋」さんを反面教師にして、良い人間関係を築いていきましょう!