「致しかねます」という言葉をご存知でしょうか。ビジネスシーンやかしこまった場面で「〜致しかねます」というように断りのフレーズとして耳にしたことがあるのではないでしょうか。今回は、「致しかねます」の正しい意味と使い方について紹介します。「致しかねます」を使用する際の注意点や類語表現についても例文付きで紹介しますので参考にしてください。
「致しかねます」は、「いたしかねます」と読みます。
「致しかねます」に意味は「することが難しい」です。 「致す」が「する」という意味があり、「かねる」は「ある事情が働いて、そうしようともできない」という意味がある言葉です。
といった「できない」という断る意思表示を丁寧に言い表した表現です。
「致しかねます」は、「致す」という言葉と「かねます」という言葉で成り立っています。 「致す」は「する」の謙譲語で、「かねます」は「かねる」という言葉の丁寧語です。 「かねます」という表現自体は敬語ではありませんが、「致す」という謙譲語が使用されていることから「致しかねます」は、謙譲語として使用される言葉です。
例えば、「ご回答致しかねます」というように、「ご○○致しかねます」という表現は、二重敬語であると感じる人も多いかと思いますが、この表現は二重敬語にはなりません。 二重敬語だと感じる理由としては、接頭語の「ご」が尊敬語であると思われてしまうということがあげられます。 しかし、この場合の接頭語は、尊敬語ではなく「ご(お)〜いたす」というセットで謙譲語として使用されているので正しい謙譲語表現となります。
文章で書き表す場面では、「致しかねます」と漢字で表記する場面と、平仮名で「いたしかねます」と表記する場面があり、使い分け方は「致しかねます」を本動詞で使用するか、副助動詞で使用するのかということです。 例えば、
というように「致しかねます」という言葉自体を動詞として使用する本動詞の場合は漢字で表記します。
というような、補助動詞として使用する場合はひらがなで表記します
「致す」の本来の動詞としての意味は「至らせる」「引き起こす」「心を尽くす」「身を捧げる」などがあります。 使用例としては、
などがあげられます。 「する」の謙譲語として「致す」を使う場合は、補助動詞なのでひらがな表記にするのが正しい表記となります。
しかし、現代では漢字の「致しかねます」は一般的に使われることが多いので必ずしも使い分けられているとは限りません。
「致しかねます」は、前に動詞や名詞を入れて、「○○致しかねます」という形で使用されます。 例えば、
というような言葉を入れて使用することが多いです。
「かねる」は「〜することができない」「〜することがむずかしい」という意味で、他の動詞の連用形に付いて、躊躇・不可能・困難を表します。 したがって、「〜致しかねます」というような表現の仕方をすると、「〜したいのですがすることが難しいのです」という遠回しな表現になるので、「できるかもしれない」と誤解を生んでしまう可能性があります。 「かねる」には、「したいけれど」というプラスの意味合いが含まれていることを頭にいれておきましょう。
「致しかねます」は、相手の要望に対して「できない」と答える場面で使用する言葉であるため、失礼のないように伝えることが重要です。 例えば、
というような、相手の気持ちを気遣うクッション言葉を使用すると、ただ「できません」と答えるよりも柔らかい印象になります。
「致しかねます」は、断りの言葉であるため、「ご了承くださいますよう〜」「ご理解ください」「お許しください」といったニュアンスのフォローに言葉を入れると、なお印象がよくなります。 フォローの言葉として例あげると、
などがあります。 目上の人には「ご承知おきください」の変わりに「お含みおきください」を使用するなど場面と相手によって使い分けましょう。
ただ、「致しかねます」と断りの言葉を述べるだけではなく、できない理由をちゃん述べましょう。 自分自身が相手に何かを頼んで断られたりした場合、なぜ断られたのか気になりますよね。 できない理由をも述べずに断ってしまうと、相手も気分が悪くなりますので関係を崩してしまわない為にも一言「〜のため致しかねます」と理由を伝えるほうが好ましいです。
お客様の対応やビジネスシーンといった場面では、「できません」と伝えるだけではなく、「〜は致しかねますが、〜はどうですか」といった代替案を提示することが好ましいです。 例えば、相手が本当に困っていてお願いをしてきたという場面で、ただ「できない」と拒否するよりも代替案を提示することにより相手への配慮をみせることができますし、ビジネスの場面では「できない」で終わらせることは印象が悪いので、できるだけ避けるべきと言えるでしょう。
「致しかねます」は、「できない」という否定的な意味の言葉でありネガティブな印象をうけますが、肯定的に替えると、ネガティブな印象がなくなり相手に伝えやすくなります。 例えば、
というように、印象がだいぶ変わりますので否定的な言い回しをするよりもできるだけ、肯定的な言い回しをするほうが望ましいでしょう。
「できかねます」は「◯◯することが難しい」「◯◯したいが、不可能」という意味になります。「〜したいのはやまやまですが」「〜したい気持ちはありますが」といったニュアンスが含まれます。 「できかねます」を使用する際は、「致しかねます」と同様に、できるのか否か混乱を生む可能性があるので、注意が必要です。 「できません」というつもりで「できかねます」と言っても、「できるかどうか難しいが、できる可能性もある」というニュアンスで捉えてしまう人もいます。
「お受けできません」は「できかねます」とは違い、断定的な表現のため、しっかりと相手に断りの意を伝えることができます。 ただ、断定的な表現は言い方によってはきつい印象を与えてしまうこともあるので、注意が必要です。 「申し訳ございませんが」といったクッション言葉や、「ご容赦ください」といったフォローの言葉を入れてできるだけ相手に不愉快な思いをさせない言い回しを心がけましょう。
「お断りせざるを得ません」は「やむを得ずお断りする」「お断りしないわけにはいかない」という意味で、やや固く丁寧な表現になります。 「せざる負えない(せざるおえない)」は誤用ですので注意しましょう。 「せざるを得ない」は「やむを得ず〜する」「〜しないわけにはいかない」を意味し、
など、色々な動詞と組み合わせて使うことが可能です。
「大変申し訳ありませんが、今回のお話はお断りせざるを得ません」 「誠に心苦しいのですが、◯◯の件に関してはお断りせざるを得ません」 「せっかくのご招待ですが、その日は他に都合があって、お断りせざるを得ません」
「ご遠慮申し上げます」は「慎み控えさせていただきます」「辞退させていただきます」といった意味になります。 「遠慮」には「言葉や言動を慎み控える」という意味があり、行動を自制する気持ちを込めることができます。 また、「ご〜申し上げる」という形では、「ご説明申し上げます」や「ご報告申し上げます」といったように謙譲表現として使用し、何かお断りをするときに、「ご遠慮申し上げます」を使うと、非常に丁寧な印象を与えます。
「致しかねます」の英語表現を見ていきましょう。 ネガティブなことを「思う」という場合は、「I am afraid that...」を使います。 ビジネスシーンで相手にとって不都合なことを伝える場合は、「I'm afraid」が頻繁に使われます。
ポジティブ・ネガティブどちらにも使えるのは「I think that...」「I believe that...」などになります。
I'm afraid that we cannot refund the price of the ticket.
チケットの返金は致しかねます。
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「致しかねます」という言葉について理解していただけましたか? ✓「致しかねます」の読み方は「いたしかねます」 ✓「致しかねます」の意味は「することが難しい」 ✓「◯◯致しかねます」の形で使用することがほとんど ✓「致しかねます」は、「できるかもしれない」と捉えられる可能性がある