「心なしか」とは「自分の気のせいか。思い込みかもしれないが」という意味で、確たる理由なしにそのように感じられる時に使います。「心なしか」の漢字は「心無しか」ではなく「心做しか」です。「做す(なす)」は作り上げるの意、「か」は断定を避ける助詞で「自分の心が作り上げている(=気のせい)かもしれない」という意味になります。
「心なしか」の意味は「自分の気のせいか(もしれないが)」「思い込みかもしれないが〜ようだ」です。 「心なし」は「こちらの気のせい」「自分はそう思う」という意味です。 助詞「か」は話者の疑問を表し、断定するのを避ける役割があります。 「心なしか」の形で副詞的に使うことが多いです。 「心なし」でも副詞的に使うことができます。
「心なしか」の漢字は「心做しか」です。 漢字をみると「心なしか」の語源が分かります。 「做し」の原形は「做す」で、意味は「作る、作り出す」です。 「行う」「〜になる」といった意味もありますが、「做」の正字は「作」となっています。 そのため「作る」といった意味が強く、音読みでは「サ」「サク」となります。 そして「か」は「不確実」を表す副助詞です。 要するに「心」が「作り出す」のが「不確実」ということになり「気のせいかもしれないが」「思い込みかもしれないが」といった意味になります。 稀に「心成しか」とする場合もありますが、意味は同じです。 ですが、「心無し」は誤記です。 「心無し」は「思いやりのないこと」「心の内を包み隠さない」「物事を深く考えない」などの意味になってしまうので注意です。
「心なしか」は音的に「無」を連想させ、どことなくネガティブなニュアンスに感じられますが、良い意味でも悪い意味でも使うことができます。 例えば、表情が生き生きしているように見える相手に対して「心なしか嬉しそうだね」と、良い意味で使うことが出来ます。 また、表情が暗いように見える相手に対しては「心なしか元気がなさそうだね」と、悪い意味で使うことも出来ます。 どちらの意味合いで使っても、正しい使い方となります。
口頭では「心なしか〜気がする」「心なしか〜ようだ」などの婉曲表現でよく使用されます。 「心なしか」自体が断定を避ける言い回しなので、それに続く表現は断定にする方が文法的には正しいです。 「心なしか嬉しそうな気がする」「心なしか元気がないようだ」となります。
例文
「心なしか」の類語には「どこか」「どことなく」があります。 「どこか」「どことなく」の意味は「はっきりこうであると説明はできないが、雰囲気や印象などがそう感じるさま」です。 「どこがどうとははっきり言えないけれど」といったニュアンスで「どことなく似てる」「どことなく寂しい」などと使います。
例文
「心なしか」の類語に「なんとなく」があります。 漢字では「何と無く」となります。 意味は「どうしてか分からないけど」「はっきりとした理由や目的がないさま」です。
例文
「そこはかとなく」の意味は「明確な理由や原因があるわけではないが、何となくそう感じるさま」です。 「そこはかと」は「確かに、明白に」という意味です。「そこはかと」に否定を表す「なし」を付けることで、「はっきりしない、不明確」という意味になります。 「そこはかとない」は漢字だと「其処は彼と無い」と書きます。其処にいるのが誰だかはっきりしないほど、ぼんやりしている様子を表します。
例文
「顕著」は「けんちょ」と読みます。 意味は「際立って目につくさま」「誰が見ても明らかなほどはっきりとあらわれていること」です。 「顕」という字は「きらびやか」「明らか(色や形がはっきりとしている)」「際立つ(目立つ)」などといった意味を持つ漢字です。 訓読みでは「顕す(あらわす)」です。 「著」は、「著しい(いちじるしい)」でよく知られている漢字だと思います。 意味は、「あらわれる」「明らかになる」「書きあらわす」などといった意味を持つ漢字です。
例文
「明確」は「めいかく」と読みます。 「明確」の意味は「はっきりしていて、疑うことがなく確かであること」です。 「明」は「はっきりしている、あきらか」、「確」は「まちがいなこと」を意味します。 物事がはっきりしていて、絶対に間違いないことを表します。 例えば、「答えを明確にする」と使います。これは「答えがはっきりしていて、確かなこと」というニュアンスになります。 しっかり調べたことによって、絶対に間違いない!と自信がある場合に「明確」を使います。
例文
「明白」は「めいはく」と読みます。 「明白」の意味は「はっきりしていて、疑いようのないこと」です。 「白」には「はっきりしている、確かである」という意味があります。 理由や証拠がはっきりしていて、誰が見ても疑う余地が一切ないことを表します。 例えば、「口を見れば、彼がお菓子を食べていたことは明白だ」と使います。これは「彼がお菓子を食べていたのは、誰の目にも明らかである」というニュアンスになります。
「自明」は「じめい」と読みます。 「自明」の意味は「証明したり説明しなくても、明らかであること」です。 証明したり、説明する必要がないほど、物事が明らかであることを表します。 「自明である」「自明のことだ」「自明な事柄」などと使います。 よく使われる表現が「自明の理(じめいのり)」です。「自明の理」とは「あれこれと説明したり解説する必要のないほど、明らかな道理」を表します。例えば、他人に暴力を振るわないことは、当たり前のことです。これを「人に暴力を振るわないのは自明の理だ」と言います。
例文
「心なしか」の英語は「somehow」です。 「somehow」は「どういうわけか。どことなく」という意味です。
Somehow I feel great today.
心なしか今日は体調がすこぶるよい。
I know this is legal, but somehow it doesn't feel right.
これは合法だとわかってるけど、心なしか正しい感じがしない。
「somehow」と似た言葉に「somewhat」があります。 違いと使い分けを知りたい方は下記の記事を参考にして見てください。
「〜に見える」を意味する「seem」で「心なしか」を表現することもできます。 「It seems to me that...」で「私には...に思える」という意味になります。
It seems to me that she got fat.
心なしか彼女は太ったようだ。
いかがだったでしょうか? 「心なしか」について理解出来たでしょうか? 「心なしか」は「思い込みかもしれないが」「そんな気がする」といった意味で使う言葉です。 「心が無いかもしれないが」と解釈すると意味が分からなくなってしまうので注意です。 「心なしか」は良いことにも悪いことにも使うことができます。 「心なしか」の類語には「そこはかとなく」などがあります。