「略儀ながら」という言葉をご存知でしょうか。手紙やメールにおいて「略儀ながら書面を以って」という表現を目にしたことがあるという方が多いかもしれません。「略儀ながら」と聞くと難しそうな感じがしますよね。手紙の締めに使われている表現です。適切に使うためには意味についてきちんと知っておく必要があります。そこで今回は「略儀ながら」の意味や使い方、類語について解説していきます。正しく覚えて上手く使えるようにしましょう!
「略儀ながら」は「りゃくぎながら」と読みます。 「略」は音読みで「リャク」、訓読みで「はかる・おかす・はぶく・ほぼ・おさめる」と読みます。 「儀」は音読みで「ギ」、訓読みで「のり・よい」と読みます。
「略儀」とは「正式な手続きを省略した方式」を意味します。 「儀」とは、「正しい振る舞い、作法、踏むべき手順」を表します。「儀」は「律儀」「礼儀」「儀式」といった言葉があるように、礼節を重んじる日本の伝統を表す漢字です。 それを略したものなので、「略儀」は「踏むべき手続きを簡素化したもの」という意味になります。
「ながら」は「ではありますが」という意味です。 よって、「略儀ながら」で「正しい手続きを省略して簡単ではありますが」という意味になります。
「略儀ながら」は「本来ならば直接対面してお話すべきですができませんので、申し訳ないですが書面で失礼いたします」という気持ちが込められた表現です。 「略儀ながら」は、直接会って挨拶できない場合に使います。その後実際に会う場合もありますし、必ずしも後から会う必要があるというわけでもありません。 使い方としては、
などとなります。 「略儀ながら書中にて」は、「正しい手続きを略して簡単ではありますが、手紙で」という意味です。 「略儀ながら」を「略儀ではございますが」とすると、より丁寧な表現になります。
「略儀ながら」は、結びの言葉として文末で使うのがルールです。文頭で使うのは不適切になります。 例えば、文頭で「略儀ながら書面を以ってご挨拶申し上げます」と述べた後に、「まだまだ寒い日が続きますのでお体に気をつけてください」「それから先日の件についてお聞きしたいことがあるのですが」などと文章が続くは不自然です。 要件を述べた後に、そろそろ終わるというところで「略儀ながら書中にて失礼いたします」などと書き文章を締めます。
「略儀ながら」は書き言葉で使う表現になります。 口頭で言っても間違いではありませんが、かなり堅い印象になってしまいます。 口頭で使う場合は「簡単ではありますが」「簡単ではございますが」と言うのが普通です。 結婚式のスピーチなどで「簡単ではありますが、お祝いの言葉とさせていただきます」といったように用います。「もう少し言いたいことはあるが、いろいろ都合があるのでここまでにします」という意味合いが含まれます。
「略儀ながら」は年末年始の挨拶、お礼、お詫び、お悔やみ、季節の挨拶、お祝い、報告など様々な場面で使います。 主に「略式ながら書面を以って◯◯申し上げます」の形で使います。「◯◯」の部分には、お祝いだったら「お祝い申し上げます」、お悔やみだったら「お悔やみ申し上げます」など場面に応じた表現が入ります。
例文
「略式」も「正式の手続きや手順を省略して手軽にした方式」を意味します。「略式」と「略儀」は同義語です。 「略式」と「略儀」は同じ意味ですが、「略式ながら」とは基本的にいいません。 「略式」は「略式の礼服」「略式の服装」「略式の礼装」といったように、「簡単なもの、手軽なもの」という意味で「の」を伴って使用するのが一般的です。
例文
「不躾ながら」は「ぶしつけながら」と読みます。 「不躾」は「礼儀作法をわきまえないこと、無作法であること」を意味します。「不躾ながら」とすると「礼儀作法をわきまえていませんが、失礼ではありますが」という意味になります。 「不躾ながら」は何か目上の人に対して意見をする時やお願い、質問などをする時に用います。「不躾ながら、お願いいたします」などと文頭において使います。 「不躾ではございますが」と言うこともできます。これは挨拶やスピーチの締めの言葉として使うことが多いです。
例文
「取り急ぎ」は「とりあえず急いで」という意味です。 「取り急ぎ◯◯まで」というフレーズがよく使われます。「取り急ぎ◯◯まで」は、本来詳しく説明すべきところを省略して、とりあえず用件のみを伝える場合に使います。 「取り急ぎご連絡まで」「取り急ぎお礼まで」といったように用います。 「取り急ぎ」は「略儀ながら取り急ぎメールにてお礼申し上げます」といったように、「略儀ながら」と併用することもできます。 「取り急ぎ」だけではやや軽い印象を与えてしまうため、目上の人に対して使用する際は「略儀ながら」と組み合わせるのが良いです。
例文
「非礼」は「礼儀に欠けていること」を意味します。「非礼ながら」とすると「礼儀に欠けてはいますが」という意味になります。 「非礼」は「失礼」や「無礼」と違い、「礼儀に欠ける」ということなので、最大級の失礼を表します。 目上の人に対して何かお願いをしたり、質問をする場合に「非礼ながら」を使います。 「非礼ながら」は改まった堅い表現のため目上の人に対して使うことができます。ただ、「非礼」という表現はストレートな表現でネガティブな印象を与えてしまう恐れがあります。 目上の人に対しては「略儀ながら」を使った方が、丁寧な印象を与えられます。
例文
「まず」は「他の物事よりも先に行うこと」を意味します。「まずは」は「まず」を強調した表現です。 漢字では「先ずは」と表します。 「まずは」は本来詳しく説明すべきところを省略して、とりあえず用件のみを伝える場合に使います。「まずはメールにてお知らせいたします」といったように使います。 「略儀ながら」は改まった堅い表現なので目上の人に対して使うことができます。ただ、親しい間柄の相手や同等に対して使ってしまうと堅苦しい印象を与えてしまいます。そういった場合は「まずは」に言い換えるのがよいです。 また、「略儀ながらまずはメールにてお知らせいたします」といったように「略儀ながら」と「まずは」を併用することもあります。
例文
「第一に」は「物事の最初に、一番初めに」を意味します。 「第一に」は「最初に、真っ先に」という意味で使います。「急いで」という意味合いは含まれません。 「他の何よりも先に」ということを述べたい場合に「第一にお礼申し上げます」「第一に連絡差し上げます」といったように使います。「まず第一に」という形で使われることもあります。 ただ「第一に」はビジネスシーンではあまり使用されない表現ではあります。
例文
「末筆ながら」は「まっぴつながら」と読みます。 「末筆ながら」は「これで手紙を書き終えますが、これで終わりますが」という意味です。 「末筆ながら」は、手紙やメールの結びの言葉として使われる言葉の一つです。「末筆ながら、皆様のご健康をお祈り申し上げます」といったように、「末筆ながら」の後は相手の健康や幸福を祈念する言葉が続きます。 「略儀ながら」は「正式なものではなく、簡単な形になって申し訳ありません」という意味で使われます。「末筆ながら」は「最後になりますが」という意味で、そのことについて詫びる気持ちは含まれません。 「略儀ながら」も「末筆ながら」も文末で使いますが、意味は異なるので上手く使い分けるようにしましょう。
例文
「略儀ながら」は日本のビジネスメールや手紙でしばしば使われる表現ですが、英語表現は存在しません。
First of all, let me thank you for giving me this opportunity to express my gratitude.
まず最初に、私の謝意をお伝えする機会をいただき感謝申し上げます。
などと、「略儀ながら」とは違い、文頭にこのようなフレーズを言うのは可能です。
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「略儀ながら」について理解できたでしょうか? ✔︎「略儀ながら」は「りゃくぎながら」と読む ✔︎「略儀ながら」は「正しい手続きを省略して簡単ではありますが」という意味 ✔︎「略儀ながら」は、直接相手に会うことができない場合に使う表現 ✔︎「略儀ながら」の類語には「不躾ながら」「まずは」「取り急ぎ」などがある