「ご愛顧」という言葉はビジネスシーンで見聞きしたことがある人も多いのではないでしょうか?挨拶やメールなどでもよく見聞きします。チラシなどでも見かけることがあります。何となくよく見かける言葉ですが正しい意味と使い方をちゃんと理解できているでしょうか?今回は「ご愛顧」の正しい意味と使い方を解説していきます。
「ご愛顧」は「ごあいこ」と読みます。 「愛」は音読みで「アイ」、「顧」は音読みで「コ」と読みます。
「ご愛顧」の意味は「目下の者をひいきにして引き立てること」です。 上の立場にある人が特定の部下や商人などに好意をもち、その者が有利になるように計らうことをいいます。 「愛」には「かわいがる。いつくしむ」という意味があり、「顧」には「思う。目にかける」という意味があります。
「ご愛好」は「ごあいこう」と読みます。 「ご愛好」は「愛好」に接頭辞「ご」をつけた言葉です。 「愛好」の意味は文字通り「物事を愛し好むこと」です。 中国語で「愛好」は「趣味」を意味し、日本でも「趣味や嗜好品、熱中していること」に対して使います。 例えば「彼は演劇を愛好する」などと使います。 また「ジャズ愛好家」など使うことも多いです。 「ご愛顧」と「ご愛好」は読み方が似ているため混合されやすいですが、読み方も意味も違う言葉なので混合してしまわないように注意しましょう。
「ご愛用」は「ごあいよう」と読みます。 「ご愛用」は「愛用」に接頭辞「ご」をつけて使います。 「愛用」の意味は「ある品物を好んでいつも使うこと」です。 例えば「作家の伊佐坂先生ご愛用の万年筆」などと使います。 「ご愛用」も「ご愛顧」とは読み方も意味も違う言葉です。
「ご愛顧」は「愛顧」に尊敬を表す接頭辞「ご」をつけた言葉です。 接頭辞「ご(お)」は文脈によって尊敬語・謙譲語・丁寧語のいずれかになります。 「愛顧」はひいきされる側からいう言葉であり、自分がひいきすることに対して使うことはできません。 よって「愛顧」についている接頭辞「ご」は尊敬語になります。 尊敬語は相手の動作を高めて敬意を示します。 接頭辞「ご(お)」は漢字で「御」と書きます。 平仮名で表記されることが多いですが「御愛顧」と表記しても間違いではありません。 「御愛顧」とるすとより堅い印象になるので、挨拶文などかしこまった文章では漢字で表記することも多いです。
「ご愛顧いただく」は「愛顧してもらう」という意味の敬語表現です。 「ご愛顧いただく」は品詞分解すると「ご」+「愛顧」+「いただく」となります。 「愛顧」についている「ご」は尊敬を表す接頭辞です。 「いただく」は本動詞だと「もらう」、補助動詞だと「〜してもらう」という意味の謙譲語になります。 この場合は補助動詞として使われています。 自分の動作をへりくだり相手に敬意を示します。 「いただく」は漢字で「頂く」を書きますが、漢字で表記するのは本動詞として使う場合です。 例えば「時間をもらう」の場合は「時間をいただく」と書きます。 「ご愛顧いただく」の場合は補助動詞として使われているので平仮名で表記するのが正しいです。
「ご愛顧くださる」は「愛顧してくれる」という意味の敬語表現です。 「ご愛顧くださる」は品詞分解すると「ご」+「愛顧」+「くださる」となります。 「愛顧」についている「ご」は尊敬を表す接頭辞です。 「くださる」は「くれる」の尊敬語です。 尊敬語を二つ使用していますが、「ご〜くださる」の形で相手が〜してくれるという動作について相手を高めることができるので二重敬語(一つの語に対して同じ種類の敬語を二つ以上重ねてしまうこと)ではありません。
「ご愛顧ください」は「愛顧してくれ」という意味の敬語表現です。 「ご愛顧ください」は品詞分解すると「ご」+「愛顧」+「ください」となります。 「愛顧」についている「ご」は尊敬を表す接頭辞です。 「ください」は尊敬語「くださる」の命令形(補助動詞)です。 尊敬語を二つ使用していますが、「ご〜ください」の形で相手に〜してくれと要望・懇願することについて相手を高めることができるのでこの場合も二重敬語にはなりません。 ただし「ご愛顧ください」は正しい敬語表現ですが、命令文でありやや上から目線なのでより丁寧な敬語表現に言い換えるのが望ましいです。
「ご愛顧のほど」は、「愛顧してくれるよう」という意味です。 「愛顧」に尊敬を表す接頭辞「ご」をつけて、断定を避ける「〜のほど」をつけた敬語表現です。 「ご愛顧のほどよろしくお願いします」などの形で使います。 「〜のほど」を使うことで柔らかい依頼表現になり、相手に強制することなくお願いをすることができます。 「ほど」は漢字で書くと「程」ですが、漢字にはしません。 「程」の本来の意味は、「物事の経過に伴う様子、程度」です。 そこから転じて断定を避ける表現として用いられています。 このように、本来の意味とは違う使い方をする場合は、漢字ではなくひらがな表記にします。
「ご愛顧くださいますようお願いいたします」は、「愛顧してくれるようお願いする」という意味です。 「ご愛顧くださいますよう」は、「愛顧」に尊敬を表す接頭辞「ご」をつけて、「くれ」の尊敬語「ください」と丁寧語「ます」、婉曲表現の「よう」をつけています。 「くださいますよう〜」とすることで、断定を避けた柔らかい依頼表現になります。 「お願いいたします」は、「お願いする」の謙譲語+丁重語+丁寧語です。 「お」は謙譲語の接頭辞です。 「いたす」は丁重語、「ます」は丁寧語です。 「お願いいたします」の「いたす」も補助動詞なので「お願いいたします」と書くのが正しいです。
「ご愛顧いただきますようお願い申し上げます」は「愛顧してもらうようお願いする」という意味です。 「ご愛顧いただきますよう」は、「愛顧」に尊敬を表す接頭辞「ご」をつけて、「もらう」の謙譲語「いただく」と丁寧語の「ます」、婉曲表現の「よう」をつけています。 「いただきますよう〜」で、断定を避けた柔らかい依頼表現になります。 「いただきますよう~」と「くださいますよう~」は言い方が違うだけで意味は同じです。 また「いただきますよう」は謙譲語、「くださいますよう」は尊敬語という敬語の種類の違いもありますが、敬意の度合いも同じです。 しかし、「くださいますよう」が命令形「くれ」の尊敬語を使用しているという点で、謙譲語を使用した「いただいますよう」のほうが謙虚で丁寧な響きがあります。 「お願い申し上げる」は、「お願いする」の謙譲語です。 「お〜申し上げる」で、動作対象を敬う謙譲表現になります。 「申し上げる」は本来「言う」の謙譲語ですが、この表現では「する」という意味の補助動詞です。 「お願い申し上げます」の「ます」は丁寧語です。 「お願いいたします」と「お願い申し上げます」の丁寧の度合いはどちらも同じですが、「お願い申し上げます」の方が意味的に謙虚で、やや丁寧です。 そのため、ビジネスシーンなどでは「お願い申し上げます」が使われる傾向があります。
「ご愛顧賜りますよう」は「愛顧してもらうよう」という意味の敬語表現です。 「ご愛顧賜りますよう」は「愛顧」に尊敬を表す接頭辞「ご」をつけて、「もらう」の謙譲語「賜る」と婉曲表現の「よう」をつけています。 「ご愛顧賜りますようお願い申し上げます」などの形で、直接的な表現を避けた柔らかい依頼表現になります。 「ご愛顧いただきますよう」と「ご愛顧賜りますよう」は、どちらも「もらう」の謙譲語を使った敬語表現ですが、「賜る」は「いただく」よりも一段を恐れ多い気持ちを込めて使われる謙譲語です。 よって「ご愛顧賜りますよう」のほうが謙虚でかしこまった敬語表現であるといえます。
「ご愛顧」は上述したように、ひいきされる側からいう言葉です。 よって、自分が相手がひいきすることに対して使うことはできません。 例えば、「ご愛顧させていただきます」などの使い方はできないので注意しましょう。
「ご愛顧」は、主にビジネスシーンで取引きをしてくれている相手に対してや、商品を購入してくれているお客様などに対して使う言葉です。 日常会話で使われることはありません。 例えば日常生活でよくしてくれている相手にお礼を伝えたい場合は「お世話になっております」などが適しています。
「ご愛顧」は、基本的に書き言葉として文章で使われます。 お世話になっている取引先の相手であっても口語で使うのは硬苦しすぎるので、口語で使う場合は「お世話になっております」などと言い換えたほうが自然です。 ただし、式典のスピーチなどフォーマルな場面では、口語でも使われることがあります。
「ご愛顧」は、企業や法人側がいつも贔屓(ひいき)してもらっている顧客に対して送る手紙やビジネスメールの文頭の挨拶として使うことができます。 本文に入る前に、冒頭で日頃お世話になっているお礼を伝えます。 時候の挨拶を入れるとより丁寧です。 時候の挨拶は、季節や気候に応じた心情を表す言葉で、「拝啓」などの頭語に続けて書きます。 例えば「拝啓 秋分の候、平素は格別のご愛顧を賜り〜」などと入れます。 また、年賀状や暑中見舞い、お中元の送り状などでも使うことができます。
例文
「ご愛顧」は、手紙やビジネスメールの文頭だけではなく文末の結びの言葉としても使うことができます。 この場合は「贔屓してくれ」と依頼をしているわけではなく、今後もお付き合いをしてもらえるようにお願いしています。
例文
謝罪文でも、結びの言葉で今後のお付き合いをお願いするときに「ご愛顧」を用いることがあります。 謝罪だけで終わるよりも、謙遜して今後のお付き合いをお願いすると印象が良いです。 ただし、契約が終了してしまう場合や相手に損害を与えるようなことをしてしまった場合は謝罪文のみにしましょう。
例文
企業や店舗が顧客にキャンペーンのお知らせをするときにも「ご愛顧」は用いることができます。 主に、日頃の感謝を伝えます。 また、閉店のお知らせでも用いることができます。 この場合は、今まで目をかけてくれたことへの感謝を伝えるために使います。
例文
「ご愛顧」と同様に、目上の人に対して使える類義語を紹介します。
「お引き立て」の意味は「相手から受けた愛顧や、相手に求める支援のこと」の敬語表現です。 目をかけてもらったことへの感謝を表す場合に使います。 「ご愛顧」「ご贔屓」とほぼ同じ意味です。 「お引き立て」も正しい敬語のため、取引先や顧客などに使うのに適してます。
例文
「ご贔屓」は「気に入った人を目にかけて、可愛がること」の敬語表現を意味します。 「ご愛顧」「お引き立て」とほぼ同じ意味です。 「ご贔屓」も正しい敬語のため、目上の相手に使うことができます。 相手が自分のことを気に入っている場合は、「贔屓にしてもらう」「ご贔屓にあずかる」などと言います。
例文
「ご支援」の意味は「ささえ助けること、援助すること」の敬語表現です。 支援してくれたことへの感謝を表す場合に使います。 「ご愛顧」や「贔屓にしてもらう」といったニュアンスはなく、「支えてもらった」といった意味合いが強くなります。
例文
「ご高配」は「相手の配慮」に対して強い敬意を払った言葉になります。 相手が配慮してくれたり気を使ってくれたこと、また配慮してくれた相手を敬う言葉です。 「ご高配」は「ご配慮」よりもかしこまった表現で、主にビジネス文書やメール・手紙などの挨拶文として用いることが多くあります。 特に取引先や顧客などに対して用いられています。
例文
「ご厚情」は「厚いなさけ」「心からの不快思いやり」の敬語表現となります。 「ご厚情を賜り」「ご厚情の賜物」など、かしこまった挨拶文でもよく用いられている表現です。 親切にしてくれたことへの感謝を表す場合に使います。 ビジネスシーンにおける歓送迎会、送別会、納会、宴会など行事や年賀状、暑中お見舞い状などの挨拶以外にも、結婚式や就任セレモニー、祝賀会、葬儀など式典で使うこともあります。
例文
「お力添え」の意味は、「力を添えること・手を貸すこと」の敬語表現となります。 主に長期間に渡り大勢の人が、協力や手助けをしてくれたことへの感謝を表す場合に使います。 ビジネスシーンでは「お願い・要求するとき」「感謝するとき」「謝罪するとき」の言葉に使われています。
例文
基本的に、「あることのために力を尽くすこと」の敬語表現です。 相手に、「(何かを成し遂げるために)かなりの労力をかけ、助けてくれてありがとうございます」と深く感謝を示したい場合は、「ご尽力」を使うのが良いでしょう。 「お力添え」よりも、実現に向けて走り回ってくれたなど、助けてくれた度合いが強くなっています。個人が一生懸命に協力・援助してくれたイメージです。そのため、多くの人に感謝する場合は「皆様のご尽力」などとよく使われています。
例文
「ご愛顧」は英語で「patronage」と言います。 語源はフランス語で、「後援、保護、奨励、引き立て、ひいき」などの意味があります。 英語でもあまり使うことが少ない堅い表現ですが、「ご愛顧」も堅い表現なので、とても似ています。 例文です。
We appreciate your patronage from the bottom of our heart.
心よりご愛顧感謝いたします。
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