「拝借」は「借りる」の謙譲語で、主にビジネスシーンで何かを借りる際のお願いや、何かを借りた際のお礼として用いられます。そこで今回は「拝借」の意味や使い方について例文付きで解説します。ビジネスメールの例文も紹介します。また、類語や対義語、英語表現も紹介していきます。すでに意味や使い方について知っている方も、今一度確認してみてください。
「拝借」ははいしゃくと読みます。 「拝」は音読みだと「ハイ」、訓読みだと「おがむ」と読みます。 「拝」は「頭を下げて礼をする」「あがめる」「ありがたく受ける」ことを意味します。 「借」は音読みだと「シャク」、訓読みだと「かりる」と読みます。 「借」は「かりる」「ゆるす」ことを意味します。
「拝借」は「借りる」の謙譲語で、「つつしんで借りる」という意味です。 「拝」は「おがむこと」を表しているので、謙遜の気持ちを表すときによく使います。 「おがむ」は感謝を示す行為のことなので、「拝」が含まれる言葉には「ありがたく◯◯する」という気持ちが込められます。 ですので、「拝借する」は「ありがたく借りること」を表します。
「拝借」は、自分が借りる動作をへりくだって言うときに使います。 「借ります」「貸してください」よりも敬意を払った表現となり、ビジネスシーンでもよく使われています。 そのため同等の相手や目下の相手に使うと不自然となります。
「拝借」は基本的には「御本を拝借してもよろしいでしょうか」といったように物を借りる時に使うことが多いですが、「◯◯様のご意見を拝借したいです」「お知恵を拝借したいのですが」といったように使うこともできます。
「拝借」の言い回しは
となります。
例文
件名:会議室の備品拝借のお願い ○○事務長 お疲れ様です。○○部の大沢です。 標題の件、下記の通り申請いたします。 許可のほどよろしくお願いいたします。 - - - 記 - - - ○貸出物品名 テレビモニタ 1つ 有線マイク 1つ ○借用者の所属・氏名 ○○部 大沢葉子 ○貸出期間 平成31年2月14日 13時00分から 平成31年2月14日 18時00分まで ○使用目的 ○○部の新プロジェクト会議で使用するため ○備考 各部署の使用予定がないことは確認済みです。 ーーーーーーーーーーーー ○○部 大沢葉子
件名:新プロジェクトに関するご相談 ○○課長 お疲れ様です。 標題の件、新プロジェクトの開始にあたり、先日○○課長にご指摘いただいた件でご相談がございます。 1.プロジェクトメンバー増員について 2.プロジェクト費用の減額について 3.全社員に配布する資料について 添付した資料に詳細と対策案を記載してあります。 お時間ある時でかまいませんので、ご一読の上ご返信くださいますようよろしくお願いいたします。 ご多忙中にも関わらず恐縮ですが、 ○○課長のお知恵を拝借したく存じます。 よろしくお願いいたします。 ーーーーーーーーーーーー ○○部 大沢葉子
件名:サンプル品貸出のお願い ○○株式会社 ○○部 ○○○○様 いつもお世話になっております。 株式会社○○○の大沢です。 先日は展示会にて新しい機材についてご丁寧に説明いただきありがとうございます。 早速ですが、新しい機材○○のことを上司に説明しましたところ、実際に見て確認したいと申しております。 先日のご説明で、サンプル品の貸し出しが可能とのことでしたので、可能なときに○○を拝借いただきたくお願い申し上げます。 こちらから受け取りに伺いますので、貸出可能な日程をご連絡いただければ幸いです。 ご多忙の中恐縮ではございますが、どうぞよろしくお願いいたします。 株式会社○○○ ○○部 大沢葉子
件名:サンプル品の拝借の御礼 ○○株式会社 ○○部 ○○○○様 いつもお世話になっております。 株式会社○○○の大沢です。 先日はお忙しい中、貴重なお時間をとっていただき、 また○○をご貸与いただきまして 誠にありがとうございました。 おかげさまで滞りなく会議を行うことが出来ました。 厚く御礼申し上げます。 明日、予定通り返却をしに貴社へ伺います。 お忙しいところ大変申し訳ございませんが、 何卒よろしくお願い申し上げます。 株式会社○○○ ○○部 大沢葉子
「拝借」は「借りる」ことの謙譲語です。謙譲語は「自分を低くしながらも相手に敬意を示す敬語」です。謙譲語は自分を低くするため、自分のことを表すときに用います。 謙譲語からわかるように「拝借」は「自分が借りること」を伝えたいときに使用するので、他人が「借りること」を表すときは使用しません。 例えば「お車を拝借することはできましたか」と相手に聞くことは間違いになります。 相手の動作に対して使う場合は尊敬語の「お借りになる」を用います。
「ペンをご拝借したいです」といった使い方は間違いになります。 「拝聴」にはすでに謙譲の意味が含まれているため、「ご~する」という謙譲表現を足す必要がないからです。「ご拝借」だと二重敬語になってしまいます。 この場合であったら、「ペンを拝借したいです」が適切になります。 丁寧な表現にしようとして、過剰に敬語を付け加えてしまうと、かえって相手に失礼な印象を与えてしまいます。「拝借」は「ご」をつけずにそのまま使って問題ないので気をつけましょう。
例文
(正)△△様のお知恵を拝借したいです。 *「ご拝借」だと二重敬語のため誤り
(正)お客様が傘をお借りになった *目上の人に対して「拝借」を使うことはできない
(正)本を拝借させてください *「〜ください」は相手の動作に対して使うため誤用
尊敬語:お借りになる、借りられる 謙譲語:恩借する 丁寧語:お借りします
”尊敬語”は、相手に対して敬意を表現する敬語です。 ”謙譲語”は、自分や自分の身内についてへりくだって表現する敬語です。 ”丁寧語”は、ものごとを丁寧に表現する敬語です。 「借りる」の謙譲表現には「拝借」だけでなく「恩借(おんしゃく)」という言葉もあります。 「恩借」の意味は「人の好意によって金銭や品物を借り受けること。また、その金品」になります。 「恩借」は「経営難や借金などで知人や親族などに金を借りる」という意味で使われることが多いです。 「拝借」と「恩借」では意味が全く異なります。
例文
▶「拝借」・・・「借りることをへりくだっていう言葉」 ▶「借用」・・・「何か使用するために借りること」
例えば、「お知恵を拝借したい」とは言いますが「お知恵を借用したい」とは言うことができません。 「拝借」はへりくだった表現で、口語でも文章語としても用いられますが、「借用」は文章語として用いることがほとんどです。 二つとも似ていますが少々異なります。「借用」は敬語でないため目上の人に対しては「拝借」を使うのが良いでしょう。
「借用」は「借りて使うこと」「使うために借りること」を意味します。 「借用」は、使用するのが目的で一時的に自分のものとする場合に使う改まった言い方です。
▶「拝借する」・・・ ▶「盗む」・・・
例えば「傘を拝借する」と「傘を盗む」の違いを説明すると、 「拝借する」の場合は「傘を借り、使ったあとに返す」ということになります。 一方で「盗む」の場合は「傘をひそかに取ってそのままにする」ということになります。 「拝借する」と「盗む」では意味が全く異なるので間違えないようにしましょう。
「盗む」の意味は、
となります。
「借り」の意味は「借りること。また、借りたもの」を指します。 主に借金・借財・負債に対して使われています。 また比喩的に人から受けた恩恵や援助、またはひどい仕打ちなどを受けていながらも、その報いをしていない状態のことを指して使われることもあります。
(意味:金銭や品物を借りること) 「家の改築資金を借り入れする」
(意味:まえがりをすること) 「翌月分の給料を前借りする」
(意味:船・バス・航空機などを借りきること) 「バスをチャーターする」
「借りる」の対義語は「貸す」になります。 ◯貸す (意味: 自分の金や物などを、ある期間だけ他人に使わせる) 「友人にお金を貸す」 ◯貸与 (意味:貸すこと、貸し与えること) 「医師修学資金を貸与する」 ◯貸し出す (意味:金品などを外部へ貸す) 「図書の貸し出しを行う」
「拝見(はいけん)」は「見る」の謙譲語で、自分が見る動作をへりくだって言うときに使う言葉です。 「拝見する」はメールや書類を「見る」「読む」「目を通す」という意味になります。 「内容や目的を理解した」というニュアンスも含まれています。 「拝見」は「拝見します」という形でよく使われます。 例えば、目上の相手に「見せていただいてもよろしいでしょうか」だとくどい言い方になりますが、 「拝見してもよろしいでしょうか」と言い換えることでスマートな印象を与えられます。 「拝見いたします」「拝見させていただきます」は二重敬語になりますが、ビジネスシーンでは慣習的によく使う表現なので、ほとんどの人にとってそこまで違和感のある表現ではありません。
例文
「拝聴(はいちょう)」は「聞く」の謙譲語で、「つつしんで聞く」という意味です。 「拝聴する」は、「ありがたく聞くこと」を表しています。 ビジネスシーンでの「拝聴」は主に、目上の相手のプレゼンテーションや講演・取引先の話を聞くときに使われます。 「拝聴」は主に書き言葉として使うので、口語ではあまり使いません。 「拝聴」は基本的にメールや手紙など、文面上で使う言葉になります。 よく似た表現に「清聴」という言葉があります。 「ご清聴ありがとうございます」などと聞いたことがある方も多いと思います。 「拝聴」は自分が相手の話を聞くときに使う言葉なのに対して、「清聴」は相手が自分の話を聞いてくれたことに敬意を表す言葉です。
例文
「拝読(はいどく)」は「読む」の謙譲語で、自分が読む動作をへりくだって言うときに使う言葉です。 「拝読する」は「メールや書類を読んだ」という意味になります。 例えば目上の相手に「こちらの資料は拝読されましたか?」と聞くと、逆に相手を下げて自分を高めているという表現になってしまいます。 「拝読」はその読み物を書いた本人に対してへりくだる意味があります。 例えば上司からのメールは「拝読しました」と言いますが、 上司から借りた本を上司に「拝読しました」と伝えるのは、上司に敬意を払っていないことになります。 「拝読」はメールや手紙、資料を読んだことを、相手に伝えるときに使うのが一般的です。 「拝読しました」「拝読します」といったように使うことができます。
例文
「貸してください」の言い方の中でも「拝借」は、非常に改まった表現になります。 「借りる」ことを表す表現は「拝借する」の他にもあるので、紹介します。
日本語の「拝借」はかなり幅広く使われるので、英語に直訳するのは難しいです。 ニュアンス別に違う英語表現を考える必要があります。 下記の例文を見てみてください。ニュアンス別に使用すべき動詞などは全く違います。
I'm so sorry for taking your time.
お時間を拝借して申し訳ありません。
I could really benefit from your expertise.
お知恵を拝借できればありがたいです。
Can I have a word with you?
ちょっとお耳を拝借。
Please get ready to clap your hands once when I say "Yoo."
お手を拝借。
May I use the bathroom please?
おトイレ拝借してもよろしいですか?
I'd like to borrow this book if you're fine with that.
もしよろしければ、こちらの書籍を拝借したいのですが。
※「借りる」の英語表現を「use」と「borrow」どっちにするか問題がよく聞きます。簡単な使い分けは、「動かないもの、動かさないもの」を「借りる」ときは「use」と覚えておけばOKです。ちなみに「borrow」は「無料で借りる」という意味です。「有料で借りる」は「rend」などの使います。
科学的に正しい英語勉強法
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正しいxxxxの使い方
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「拝借」について理解できたでしょうか? ✔︎「拝借」は「借りる」の謙譲語 ✔︎ 謙譲語なので自分の行為に対して使う。自分をへりくだって相手への敬意を示す ✔︎「ご拝借」は二重敬語になってしまうので、注意する ✔︎「拝借」に似ている言葉には、「拝見」「拝読」などがある
敬語の使い方が面白いほど身につく本
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入社1年目ビジネスマナーの教科書
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