体調を崩してしまった人に対してかける言葉に「お大事に・お大事にしてください」があります。例えば病院に行ったときや、診察を受けた後などにも「お大事に・お大事にしてください」などと声をかけられますよね。しかし、目上の人に対して「お大事に」とは使うことができるのでしょうか。丁寧な言い方はどうなるのでしょうか。そこで今回は「お大事に・お大事にしてください」の意味や正しい使い方、メールでの使い方などについて解説していきます。
「お大事に」の「お」は、敬語の一種である尊敬を表す接頭辞です。 「お大事に」は敬語表現ですが、略されているので、目上の人に対して使うのは失礼にあたる場合があります。 人によっては気にしない、または親しい上司や取引先なら問題になりませんが、違和感を覚える人も少なくありませんので、注意しましょう。 接頭辞「お」は丁寧語と解釈しても間違いではありませんが、「大事にする」という相手の動詞を修飾しているので、尊敬語と解釈する方がよいでしょう。 「どうぞお大事に」「お大事にどうぞ」などと「どうぞ」を加えても、略されていることには変わりないので、目上への使用は不適切です。 「お大事にどうぞ」は医療機関で、医者や看護師が患者に言うことが多々あります。
「お大事に」の「大事」は「だいじ」と読みますが、「大事」には「おおごと」という読みもあります。 「お大事にしてください」の「大事(だいじ)」は、価値を認めて大切に扱うさまを意味します。 「大事に至る」の「大事(だいじ)」は、普通の状態ではなく困った物事を意味します。 「大事(おおごと)」は、平常と変わった重大な事柄、大事件という意味です。
上司やお客様、取引先などビジネスシーンで目上の人に対して「お大事に」と言う場合は、「お大事にしてください」と略さずに使うのが正しい用法です。 「してください」は動詞「する」+丁寧語「ください」で成り立っています。 「ください」は丁寧語ですが、「お」は尊敬語と解釈できるので、目上に問題なく使うことができます。 「〜ください」は敬語ですが命令文なので、目上の人に依頼をする場合は避けるべき表現ですが、「お大事にしてください」は相手の体調をいたわる言葉なので問題ありません。依頼する時は命令文は避けるべきでしょう。 ただし、「お大事にしてください」は、敬語表現の中では敬意の度合いが低いので、口語に適しています。
「お大事にしてください」の例文
「お大事にしてください」より丁寧な敬語に「お大事になさってください」があります。 「なさってください」は、尊敬語「なさる」+ 丁寧語「ください」で成り立っています。 「お」と「なさる」はどちらも尊敬語なので二重敬語だと主張する人もいますが、「お〜なさる」で一つの尊敬表現として広く認められています。
「お大事になさってください」の例文
「お大事になさってください」は上記の言葉と一緒に使うことも可能です。 「お体を大事になさってください」という表現も使うことができます。 「お体をお大事になさってください」と、接頭辞「お」を二度使うと、クドい印象を与えるため、「お体を大事になさってください」がよいです。 ちなみに、「お体をお大事になさってください」としても二重敬語ではありません。二重敬語とは「1つの言葉に対して同じ種類の敬語を複数使うこと」を指します。 「お体」と「お大事に」の「お」はどちらも丁寧語ですが、「体」と「大事」という別の言葉を修飾していますので、二重敬語にあたりません。
「お大事に至りませんようお祈り申し上げます」と表現することもできます。 病気や怪我が大変な状態にはならずに、すみやかに回復してほしいと願っている気持ちを伝えることができます。 かなりかしこまった言い方なので、書き言葉に適しています。 また、親しい上司に使うと少し堅苦しい印象を与える可能性があるので注意しましょう。
「お大事に」は、相手が風邪と怪我のどちらの場合も使うことができます。 ただし、相手が重い病気の場合は避けた方が無難です。 「お大事に」は、風邪や一時的な入院など軽い病気・怪我の場合に使用します。 相手が重い症状の場合には、「養生なさってください」「静養なさってください」などと言うことが一般的です。
「お大事になさってください」は本人に対してだけではなく、相手の家族や子供など第三者に対しても使うことができます。 「お大事になさるようにお伝えください」と伝言をお願いしてもよいですが、「お大事になさってください」をそのまま使うこともできます。 例えば、上司の子供が体調不良の場合、「この度はご子息がお風邪を召されたと聞きました。お大事になさってください」と言うことが可能です。 実際に体調不良が年下であっても、目上の身内や家族の場合はもちろん尊敬表現である「お大事になさってください」を使います。
「お大事に」は自分の身内や家族、友達に対しても使用可能です。 自分の家族ならば敬語を意識する必要がありませんので、「お大事に」をそのまま使うことができます。 友達にLINE(らいん)やメールで使う場合は、「お大事に」だけだと少し冷たい印象があるので、「お大事にね」「お大事にしてね」などと言うのが無難です。 また、「ゆっくり休んでね」や「無理しないでね」という表現でもよいでしょう。
「お大事に」の言い換えとしてよく使われるのが「一日も早いご回復をお祈りしております」という表現です。 「お大事になさってください。一日も早いご回復をお祈りしております」と併用しても問題ありません。 「ご回復」の「ご」は尊敬語で、「お祈り」の「お」は謙譲語です。 「お祈り」の「お」はなくても敬語として成立しますが、「ご回復」の「ご」はマストですので、省略しないように注意しましょう。
「ご自愛ください」の例文
ご自愛くださいの類似表現には、
があります。 「お体おいといください」は「お体を大事にしてください」という意味になります。 「おいとい」は漢字で「お厭い」となり、「厭う」には「かばう。大事にする。労る」といった意味で現代では健康について言われています。 「おいといください」は「ご自愛ください」より相手の健康を思いやる気持ちが強いですが、一般的にあまり使わない言葉になります。 「お労りください」は「おいたわりください」と読みます。 「労り(いたわり)」は、「心を用いて大切にすること」「気にかけること」を意味しています。 「お労りください」は、相手の健康を強く願う場面では最適な言葉となります。 「お労りください」は、「お大事になさってください」よりも相手を思いやる気持ちが伝わる表現です。 「ご留意ください」に関しては下記の記事をご参考ください。
例文
「養生」は「ようじょう」と読みます。 「養生」の意味は、「怪我や病気の回復に努めること」になります。 「養生」は「休む」という意味で、治療のために休むという意味で使用します。 「ご養生なさってください」とすると、より丁寧です。 「ゆっくり養生なさってください」と言うこともできますが、回復はなるべく早い方が良いのであまり「ゆっくり」「気長に」といった言葉はなるべく使わない方がよいとされています。 「静養」は「せいよう」と読みます。 「静養」の意味は、健康の回復のため心身を静かに落ち着けて休ませることです。 「静養」も、病気の人が健康を回復させるためることを目的として、体を休ませるこということを指します。 「養生」「静養」以外にも「休養」も使えます。
例文
「お大事にしてください」に対する返事ですが、「はい、そうします」「どうも」などと答えるとぶっきらぼうな印象を与えるので、 「お大事にしてください」への返事は、
などと感謝の気持ちを伝えることが大切です。 また、とっさに言葉が出てこない場合は会釈のみでも大丈夫でしょう。
他に病院や薬局で「お大事にしてください」と言われた場合は、
と返答するのが良いでしょう。
「お大事に」の英語表現はいくつかありますが、最も一般的なのは「Take care!」となります。 より丁寧にいうと「Please take care of yourself.」となります。 その他にも、
などと言います。
「お大事に」の中国語は「早日康复(Zǎorì kāngfù)」となります。 「复」は「復」という漢字の略字(簡体字)です。 「早く健康が復活する」という意味です。
「お大事に」の韓国語は「빨리 나으세요(ppalli na-euseyo)」となります。