「さもありなん(然も有りなん)」とは「まさに予測してた通りで、全く驚くに値しない」という意味の慣用句。品詞分解すると、「さ」は「そう」を意味する副詞、「も」は同類を意味する係助詞、「あり」はラ変動詞、「なむ(なん)」は完了の助動詞「ぬ」と推量の助動詞「む」の連語で強い推量を意味します。
「さもありなん」の意味は「そうであろう」「もっとも(尤も)だ」「いかにもそうであろう」「たしかにそんなことだろう」です。 分かりやすく説明すると「まさに予測してたことであって、今さら驚くにあたらない」「そうであっても全くおかしくない」とすると分かりやすいかもしれません。 より砕けた表現に言い換えると「そりゃそうだ」です。 「さもありなん」はかなり古風な言い回しであり、意味が理解できない方もいることから、使われる場面はかなり限定的です。
「さもありなん」の漢字は「然も有りなん」です。 「さ(然)」は、上の言葉をうけて、その事態を指し示す語です。 「然」は、「さ」と同義語の「そう」「しか」の漢字としても使われます。 「然」には他にも「ぜん」「ねん」という読み方もあります。 「ある」は「或る」「在る」とも漢字表記しますが、最も一般的な「有る」になります。 ただし、「さもありなん」はこのままひらがな表記することが多いです。
「さもありなん」の発音は「さ」と「な」にアクセントをつけます。 「さも」と「ありなん」の間に一息置くとより聞きやすいです。 「サ↘モ・アリナ↘ン」といった具合です。
「さもありなん」を品詞分解すると「さ/も/あり/なむ」です。 「さ」は「そう」を意味する副詞、 「も」は同類のものを提示するの係助詞、 「あり」はラ変動詞、 「なむ」は推量・許容の複合助動詞で完了の助動詞「ぬ」の未然形「な」と、推量の助動詞「む」が組み合わさった推量を意味する連語、 をそれぞれ表します。 「さ」と「も」は組み合わさり、「さも」で一つで副詞として使うこともあります。 そうのように形容するのがふさわしいという意味で、「いかにも」が同義語です。 「さも誇らしげだ」「さも気持ち良さそうに寝ている」などと使います。 「あり」を補助動詞だと説明される場合がありますが、それは間違いです。 補助動詞ならば、それに対応する本動詞の存在が必要ですが、「さもありなん」には他に動詞はありません。 よって、「あり」が本動詞にあたります。 「さもある」の形でも古文ではよく使われます。 『源氏物語・若紫』にも「さもあることと皆人申す」という一節があります。「そうであるとみんなが言っています」という意味です。 「さもありなん」の同義語には「さもありぬべし」があります。 「ぬ」は完了の助動詞、「べし」は推量の助動詞で、「きっとその通りであろう」という意味になります。
『徒然草(つれづれぐさ)』の中では「さもあらん」と表記して使われています。 意味は「さもありなん」と同じになります。 「さもあらん」が出てくる第八段の原文は 「匂ひなどは仮のものなるに、しばらく衣裳に薫物すと知りながら、えならぬ匂ひには、必ず心ときめきするものなり。九米の仙人の、物洗ふ女の脛の白きを見て、通を失ひけんは、まことに、手足はだへなどのきよらに、肥え、あぶらづきたらんは、外の色ならねば、さもあらんかし。」 となります。 これは人の心を惑わすことは色欲以上のものはないといった内容になります。
「さもありなん」は聞き慣れないせいか、方言ではないかと思う人が多いようです。 埼玉弁に「そうなん?」などがあり、「なん」という響きがそう思わせているかもしれません。 しかし、「さもありなん」は一部の地域のみで使われている表現ではなく、日本全国で古くから使われている大和言葉です。
「さもありなん」は「まあ、そうだよね」という心情を表す時に使います。 何かが起きたときに、それが想定の範囲内であることを伝える時に使います。 推測するのが容易く、当然な事象に対して使います。
例文
「さも」が付く他の表現を紹介していきます。
「さもありなん」の類語を紹介していきます。
例文
「言い得て妙」は「実に上手く言い当てているさま」を言い表していることわざです。 「いいえてみょう」と読みます。 「妙」は、「奇妙である」「不思議である」という意味ではなく、「巧みである・優れている」という意味で使用されています。 つまり、「言い得て妙」は、「巧みに言い得ている」ということです。 意味合いとしては、「うまい言い方をしている」「言われてみればそういうことですね」というようなニュアンスで、相手の言うことに関心している場面で使用される言葉です。
「無理からぬ」の意味は「無理ではない、当然である」 「からぬ」は「よからぬ」などに付いているのと同じで、打ち消しの意味を持ちます。 「むべなるかな」を漢字で書くと「宜なるかな」です。 意味は「いかにももっともだ」「その通りだ」です。 「さもありなんむべなるかな」と組み合わせて使うこともあります。 大和言葉の一つであり「なるほど」を意味します。
例文
「さもありなん」の反対語は「意外」となります。 「意外」の読み方は「いがい」です。 意味は「あらかじめ考えていたことと違うさま、思いの外」です。 予想していたことと、実際に起きたことがとても違っているという場合に「意外」を使います。 「意外」は日常生活でもよく使う言葉ですよね。
「納得がいかない」といった意味の対義語には
などがあります。
「どうりに反する」という意味の対義語には
などがあります。
ネイティブがよく使う「さもありなん」の英語表現には「make sense」があります。 「make sense」は「理にかなっている」という意味です。 「make a lot of sense」「make plenty of sense」などで強調します。
Canceling the dinner tonight makes sense to me.
今夜の外食をキャンセルするのは、さもありなんだ。
「驚かなかった」を意味する「I was not surprised」でも、「さもありなん」を表現することができます。
She couldn't get promoted and I was not surprised at all.
彼女が昇進できなかったのは、さもありなんと思った。
「さもありなん」は「いかにもそうであろう。 たしかにそんなことだろう。 さもあらん」を意味する表現です。 「予想してた通りで、何の驚きもない」という意味です。 「さもありなん」の類語には「当然」「うなずける」などがあります。